司法修習生の修習給付金及び修習専念資金

第0 目次

第1の1 71期からの修習給付金
第1の2 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
第1の3 社会保険の被扶養者から,国民健康保険及び国民年金に加入するための手続
第2の1 修習給付金制度が創設されるまでの経緯
第2の2 修習給付金の導入理由等
第2の3 修習給付金の名称に関する説明
第2の4 月額13万5000円の基本給付金の根拠
第2の5 月額3万5000円の住居給付金の根拠
第3の1 修習給付金に関する法務大臣の国会答弁
第3の2 修習給付金に関する法務省大臣官房司法法制部長の国会答弁
第3の3 修習給付金に関する最高裁判所人事局長の国会答弁
第3の4 衆議院法務委員会における国会答弁資料
第3の5 参議院法務委員会における国会答弁資料
第4   裁判所法の一部を改正する法律の成立に当たっての日弁連会長声明等
第5   裁判所法の一部を改正する法律案要綱
第6の1 修習給付金と最低賃金等の比較
第6の2 給費制と修習給付金制度との比較等
第7の1 裁判官の年収(参考)
第7の2 上場企業の時給ランキング2017(参考)
第8   OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当すること等
第9   経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)13条の文言
第10の1   修習専念資金
第10の2 修習専念資金の貸与申請状況
第11の1   修習給付金に関する税務上の取扱い
第11の2   修習給付金と扶養控除及び配偶者控除との関係
第11の3 修習給付金は,理論上は給与所得に該当する可能性があること
第12    弁護士登録5年目の平均所得の推移
第13    原子力損害賠償の状況(参考)

*1   裁判所HPの「司法修習生の修習給付金について」及び「修習専念資金の貸与を申請する第71期司法修習生(選考申込者)へ」に公式の説明が載っています。
   また,法務省の法曹養成制度改革連絡協議会の第8回協議会(平成29年10月11日開催)資料4-3「裁判所法の一部を改正する法律の施行に伴う規則の制定・改正の概要」が載っています。
*2 以下のHPも参照してください。
① 司法修習生の修習資金貸与制
② 司法修習生の給費制及び修習手当
③ 司法修習開始前の日程
司法修習の日程
司法修習期間中の就職説明会の日程
⑥ 二回試験等の日程
⑦   実務修習地の選び方
⑧ 実務修習地ごとの人数の推移等 
*3 以下の資料を掲載しています。
① 修習給付金案内
・ 71期司法修習生向け
・ 72期司法修習生向け
② 裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省提出分は除く。)を掲載しています。
③ 裁判所法の一部を改正する法律案関係資料(平成29年・第193回国会提出)
④ 平成29年の裁判所法改正に関する最高裁判所の想定問答
⑤ 司法修習生の修習給付金の給付に関する規則(平成29年8月4日最高裁判所規則第3号)の本文を掲載しています。
⑥ 導入修習・分野別実務修習参加のための旅費申告書(裏面)記載要領等,及び私事旅行について
⑦ 旅費業務に関する標準マニュアルVer.2-0(平成26年12月の各府省申合せ)
⑧ 旅費業務の取扱いに係るQ&A(平成30年3月)(最高裁判所事務総局経理局監査課)
*4 修習給付金に関する税務上の取扱いの詳細については,以下の記事を参照して下さい。
① 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
② 修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い
③ 修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い
④ 修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法等
→ 平成30年8月23日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「最高裁判所が修習給付金について必要経費として控除することができる経費があるかどうかを検討した際に作成し,又は取得した文書」は存在しません。
*5 弁護士ドットコムニュース「修習生「給費制」がついに復活…残された課題は「金額」と「谷間の世代」」がよくまとまっています。
*6 国税庁HPに「平成28年分民間給与実態統計 調査結果について」(平成29年9月)が載っています。
*7 外部HPの「生活保護 金額 自動計算」を使えば,都道府県,市町村,世帯構成等を入力することで,生活保護費を計算することができます。
*8 財務省HPの「日本の財政関係資料」に,平成17年度以降の財政関係資料が載っています。
*9 平成30年10月1日,健康保険の被扶養者認定の手続が厳格になりました(日本年金機構HPの「平成30年10月1日から、健康保険被扶養者の手続きが変更になりました」シニアガイドHP「2018年10月から、健康保険の「被扶養者」認定が厳格に」参照)。
修習給付金の金額の妥当性に関する国会答弁資料です。
修習給付金は雑所得として所得税及び住民税の課税対象となります。
修習生は国民健康保険の被保険者となり,国民年金の第1号被保険者となります。
生活保護法における単身世帯の住居扶助額の全国平均は月額3万4542円となっています。

第1の1 71期からの修習給付金

0(1) 司法研修所事務局総務課・経理課が作成した「修習給付金案内」に公式の説明が書いてあります。
(2) 修習給付金の支給等に関する新たな制度について(平成29年10月20日付の司法研修所事務局長の事務連絡)を掲載しています。

1(1) 71期からの修習給付金は以下の三つの給付からなります(裁判所法67条の2第2項,及び司法修習生の修習給付金の給付に関する規則(以下「規則」といいます。))。
① 基本給付金
   司法修習生に対して一律月額13万5000円を支給するもの(裁判所法67条の2第3項,並びに規則1条及び2項)
② 住居給付金
   修習期間中に住居費を要する司法修習生に対して月額3万5000円を支給するもの(裁判所法67条の2第4項,並びに規則4条及び5条)
③ 移転給付金
   司法修習生に対して旅費法の移転料基準に準拠して支給するもの(裁判所法67条の2第5項,並びに規則10条及び11条)
(2) 従前の修習資金は,修習専念資金(司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって、修習給付金の支給を受けてもなお必要なもの)となります(裁判所法67条の3)。

2(1) 平成29年度裁判所所管一般会計歳出予算各目明細書(裁判所HPの「平成29年度予算」に掲載されているもの)7頁によれば,修習給付金として11億5237万5000円が計上されています。
   平成29年12月から平成30年3月までの分ですから,司法修習生が1500人であると仮定した場合,11億5237万5000円÷1500人÷4ヶ月=19万2062円となりますから,司法修習生全員に対して基本給付金及び住居給付金(合計18万円)を支給しても余りが出るように計上されています。
(2) 「平成29年度予算のポイント 経済産業,環境,司法・警察係予算(平成28年12月)」21頁によれば,司法修習生関連経費は,平成28年度は54.8億円であるのに対し,平成29年度は46.6億円となっています。
   そのため,71期司法修習生に対するトータルの支給額は,70期司法修習生に対するトータルの支給額よりも少なくなるかもしれません。
(3) 裁判所の予算等については,「裁判所の司法行政」を参照してください。

3(1) 平成28年度以前の司法試験合格者であっても,施行日である平成29年11月1日以降に司法修習生となるのであれば,修習給付金の適用対象になります(裁判所法改正法附則2項参照)。
   また,第70期以前の司法修習生が平成29年11月1日以降に再採用された場合,「その修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間」(改正後の裁判所法67条の2第1項)を経過している場合を除き,修習給付金を支給してもらえます。
(2) 法務省が作成した,「裁判所法の一部改正法案の施行期日を平成29年11月1日とする理由」及び「附則第2項から第4項までの規定について」に詳しいことが書いてあります。

4(1) 司法修習生に対して支給される移転給付金の額については「路程に応じて最高裁判所が定める額とする」(改正後の裁判所法67条5項)と規定されており,その算出に当たり「路程」以外の事情を考慮することは予定されていません(法務省作成の「移転料の額に関する規定ぶりについて」参照)。
(2) 「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」には以下の記載がありますから,導入修習及び集合修習に参加するための引越についても移転料が支給されるのかもしれません。
   「③移転給付」について
   修習に伴う住所又は居所の移転につき,国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年法律第104号)が規定する移転料に準拠して支払われる(注4)。
(注4)具体的には,国家公務員の行政職俸給表(一)3級以下の職員(係長級以下)に準拠して計算される。例えば,福岡市居住の者が司法試験に合格した札幌修習となった場合,①福岡市→埼玉県和光市,②埼玉県和光市→札幌市,③札幌市→埼玉県和光市の3回分の移転料(計34万0500円)が支給されることになる。
(3) 移転給付金の金額は以下のとおりです(規則別表(第十条関係)参照)。
鉄道50km未満:4万6500円
鉄道50km以上100km未満:5万3500円
鉄道100km以上300km未満:6万6000円
鉄道300km以上500km未満:8万1500円
鉄道500km以上1000km未満:10万8000円
鉄道1000km以上1500km未満:11万3500円
鉄道1500km以上2000km未満:12万1500円
鉄道2000km以上:14万1000円

5(1) 修習給付金に関する届出様式としては,振込口座届出書住居届(新規)住居届(喪失)住居届(変更)及び移転届があります。
(2) 振込口座届出書及び移転給付金に関することの問い合わせ先(書類送付先)は司法研修所事務局経理課経理係であり,それ以外に関することの問い合わせ先(書類送付先)は司法研修所事務局総務課人事係です(裁判所HPの「司法修習生の修習給付金について」参照)。

6 司法修習生の修習給付金制度創設に関しては,公明党が日弁連に多大な協力をしたみたいです(平成29年5月1日付の公明党ニュース「司法修習生に「給付金」」参照)。

7 法務省大臣官房司法法制部が平成29年1月に作成した以下の文書を掲載しています。
① 裁判所法の一部を改正する法律案用例集
② 裁判所法の一部を改正する法律案用例集(追加分)

8 平成30年9月5日付の司法行政文書不開示通知書によれば,修習給付金の支給事務に関するマニュアルは,司法修習生に配布している文書を除き,存在しません。
修習給付金案内(71期司法修習生用)
振込口座届出書
住居届(給付金関係:新規)
移転届(給付金関係)

第1の2 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い

〇裁判所HPの「司法修習生」には,「司法修習生は,国家公務員ではありませんが,これに準じた身分にあるものとして取り扱われ,兼業・兼職が禁止され,修習に専念する義務(修習専念義務)や守秘義務などを負うこととされています。」と書いてあります。
平成30年7月9日付の国税庁の行政文書不開示決定通知書によれば,司法修習生に対する修習給付金に関する税務上の取扱いが書いてある文書は存在しません。
平成30年8月23日付の最高裁判所の司法行政文書不開示通知書によれば,最高裁判所が修習給付金について必要経費として控除することができる経費があるかどうかを検討した際に作成し,又は取得した文書は存在しません。
平成30年9月26日付の最高裁判所事務総長の理由説明書によれば,「司法研修所では,修習給付金のうち基本給付金及び住居給付金について,必要経費として控除することができる費用が存在するか検討したが,この検討内容については,文書を作成するほどの複雑な内容のものではなかったことから,文書を作成していない」とのことです。
「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)「修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱いについて」には以下の記載がありますところ,修習給付金案内27頁及び28頁の「所得税等の取扱い」にも同趣旨の記載があります。

1 社会保険の取扱い
(1) 健康保険
〇 国民健康保険に加入することになる(現行貸与制下の司法修習生と同じ。)。
〇 なお,給費制下の司法修習生と同様に裁判所共済組合に加入できないかが問題となるが,国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)第2条第1項第1号は,国家公務員共済組合の組合員たる「職員」の範囲として,「常時勤務に服することを要する国家公務員」(「政令で定める者」,具体的には,同法施行令(昭和33年政令第207号)第2条第2項第4号所定の「国…から給与を受けない者」等を除く。)であることを前提としている。司法修習生は,国家公務員でない上,国から給与を受けない者であるため,同法第2条第1項第1号所定の「職員」には該当しない。
〇 親族が健康保険に加入している場合,その被扶養者として健康保険の「被保険者」(健康保険法(大正11年法律第70号))第3条第1項)とならないかが問題となるが,修習給付金の支給を受けた場合,「主としてその被保険者により生計を維持するもの」(同条第7項)とはいい難いことから,健康保険の被保険者には該当しない。
(2) 年金
〇 健康保険と同様の整理により,国民年金の第一号被保険者(国民年金法(昭和34年法律第141号)第7条第1項第1号)に当たることになる(現行貸与制下の司法修習生と同じ。)。

2 税務上の取扱い
(1) 所得税の課税の有無
〇 修習給付金は,貸与金と異なり返済が予定されていない以上,所得税法上の「所得」に該当する。
〇 なお,修習給付金が非課税所得である「学資に充てるため給付される金品」(所得税法(昭和40年法律第33号)第9条第15号)に該当しないかが問題となり,この点は,国税庁担当者と協議中である(なお,これまでの法務省と国税庁の担当者協議では,修習給付金の金額規模等から,同号に該当する金品と直ちに解するには難しい面があるのではないかという指摘があった。)。
(2) 所得の性格
〇 仮に,非課税所得に該当しない場合,その性格(雑所得か給与所得か)が問題となる。この点も,国税庁担当者と協議することになる(これまでの法務省と国税庁の担当者協議では回答は得られていない。)が,修習給付金は,基本的に雑所得に当たるのではないかと考えられる。すなわち,「給与所得」とは,雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいうところ,修習給付金は,労務提供の対価ではなく(給与とは明らかに性質の異なるものと整理されている。),司法修習生の任用関係を雇用契約類似と整理することも容易ではないからである。
〇 修習給付金について,雑所得となれば,その収入については確定申告を要することになる。
(3) 住民税の課税の有無
〇 住民税も課税されることになる。修習給付金の金額規模からして,非課税要件は満たさないのが通常と考えられる。
国税庁の行政文書不開示決定通知書(修習給付金に関する税務上の取扱いがカイてある文書は存在しません。)
最高裁判所の司法行政文書不開示通知書(修習給付金について必要経費として控除することができる経費があるかどうかを検討した際に作成し,又は取得した文書はありません。)
理由説明書1/2(司法研修所では,修習給付金のうち基本給付金及び住居給付金について,必要経費として控除することができる費用が存在するか検討したが,この検討内容については,文書を作成するほどの複雑な内容のものではなかったことから,文書を作成していません。)
理由説明書2/2

第1の3 社会保険の被扶養者から,国民健康保険及び国民年金に加入するための手続

1(1) 司法修習生は修習給付金を支給される結果,社会保険の被扶養者から外れますから,市区役所又は町村役場の窓口において,国民健康保険及び国民年金に加入するための手続が必要となります。
(2)ア 国民健康保険及び国民年金への加入手続の流れは以下のような感じです。
① 親又は配偶者の勤務先に「任意継続被保険者被扶養者(異動)届」,及び今まで使っていた健康保険被保険者証を返却し,社会保険の扶養から外れる手続きをする。
② 親又は配偶者の加入している健康保険組合又は会社から,扶養から外れた日付を確認できる書類としての,「健康保険・厚生年金保険資格喪失証明書」を発行してもらう。
③ 住民票を置いている市区役所又は町村役場の窓口で国民健康保険及び国民年金の加入手続をする。
   その際,健康保険・厚生年金保険資格喪失証明書,マイナンバーが確認できる書類及び本人確認書類を持参する必要があります。
④ 国民健康保険被保険者証が発行される。
イ 協会けんぽHP「任意継続被保険者被扶養者(異動)届 」が載っています。
(3)ア 社会保険の被扶養者から外れたことに基づく国民健康保険への加入手続は,世帯主において14日以内に行う必要があります(国民健康保険法6条5号及び6号・国民健康保険法施行規則3条)。
イ 社会保険の被扶養者から外れたことに基づく国民年金への加入手続は,被保険者本人又は世帯主において14日以内に行う必要があります(国民年金法12条1項及び2項・国民年金法施行規則1条の2第1項)。
ウ 司法修習生は毎年11月27日付で採用されますから,社会保険の被扶養者となっていた司法修習生は,採用日から14日後となる12月11日までに国民健康保険及び国民年金への加入手続をする必要があります。
(4) 「気になるノート。日常の気になるをまとめたブログ」「健康(社会)保険:学生・専業主婦の扶養から外れるときの手続き方法」が参考になります。

2 協会けんぽは毎年,被扶養者資格の再確認をしています(協会けんぽHPの「被扶養者資格の再確認について」参照)。

3 広島県福山市HP「Q会社の健康保険を脱退して,国民健康保険の加入手続き前に病院にかかった場合は,どうなりますか?」に以下の記載があります。
   国民健康保険への加入については,健康保険の空白期間が生じないように,会社の健康保険の資格を喪失した日まで遡って,国民健康保険に加入することになります。 
   手続きについては,14日以内の届出をお願いしていますが,その加入手続きをする前に医療機関にかかり,医療費をいったん全額自己負担された場合は,後日,療養費の申請をしていただければ,一部負担金を除く額をお返しします。ただし,自由診療行為や保険外医療を行った場合などは,必ずしも一部負担金を除く全額が返金されるとは限りません。また,療養費の申請は2年以内に行わないと時効によって権利が消滅しますのでご注意ください。 

4(1) 家計のポータルサイト「健康保険資格喪失証明書とは?どこで発行してくれるの?退職と関係あるの?」が載っています。
(2) 四十代税理士日常日記ブログ「入社・退職後は古い健康保険証は使ったらダメですよ!!の話 」(平成30年3月28日付)が載っています。
(3) 茨城県市町村職員共済組合HP「被扶養者を遡及して資格取消したときの医療費返還について」が載っています。

第2の1 修習給付金制度が創設されるまでの経緯

○修習給付金制度が創設されるまでの経緯は以下のとおりです(衆議院HPの「議案審議経過情報」(裁判所法改正法案)及び「議案審議経過情報」(平成29年度一般会計予算)参照)。
○内閣提出法律案につき,原案作成から公布までの流れが内閣法制局HPの「法律の原案作成から法律の公布まで」に載っています。

平成25年
6月26日
   「法曹養成制度検討会議取りまとめ」(平成25年6月26日付)の「法曹養成課程における経済的支援」において,貸与制を前提とした上で,①分野別実務修習開始時における転居費用の支給,②集合修習期間中の入寮及び③兼業許可に関する従来の運用の緩和を実施すべきいう趣旨のことが記載されました。
7月16日
   「法曹養成制度改革の推進について」(平成25年7月16日法曹養成制度関係閣僚会議決定)2頁の「法曹養成課程における経済的支援」において,①分野別実務修習開始時における転居費用の支給,②集合修習期間中の入寮及び③兼業許可に関する従来の運用の緩和を実施することが期待されるという趣旨のことが記載されました。
平成27年
6月30日
   
「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成27年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)6頁に,「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」と記載されました。
平成28年

6月2日
   「経済財政運営と改革の基本方針2016~600兆円経済への道筋~」(平成28年6月2日閣議決定)(いわゆる骨太方針です。)28頁(PDF36頁)に,「
(前略)法科大学院に要する経済的・時間的負担の縮減や司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化(中略)を推進する。」と記載されました。
8月2日
   「未来への投資を実現する経済対策」(平成28年8月2日閣議決定)22頁(PDF28頁)に,「(2)若者への支援拡充、女性活躍の推進(中略)・法科大学院に要する経済的・時間的負担の縮減や司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化等の推進(法務省、最高裁判所、文部科学省)」と記載されました。
11月4日
・   遅くともこの日までに,裁判所法の一部を改正する法律案について内閣法制局の予備審査が開始しました(「裁判所法の一部を改正する法律案(仮称)について」(平成28年11月4日付)参照)。
・ 裁判所法の一部を改正する法律案新旧対照条文のうち,初期段階のもの(手書きの記載は内閣法制局参事官の手によるものと思われます。)を掲載しています。実際に成立した,裁判所法の一部を改正する法律の条文と全く異なります。
12月8日
   平成29年度司法試験の願書受付が終了しました(法務省HPの「平成29年司法試験の実施について」掲載の「実施日程」参照)。
12月19日
・   法曹三者の幹部が集まって,司法修習生に対する経済的支援策を確認して,これを発表しました平成28年12月19日付の確認事項。なお,法務省HPの「司法修習生に対する経済的支援について」のほか,フォトニュース「司法修習生に対する新たな経済的支援策について法曹三者で確認しました(平成28年12月19日)」)。
・ 法務省大臣官房司法法制部長,最高裁判所事務総局総務局長及び日本弁護士連合会事務総長が「確認事項」を作成しました。
12月22日
   平成29年度予算政府案が閣議決定されました(財務省HPの「平成29年度予算」参照)。
平成29年
1月20日
   平成29年度予算案が衆議院予算委員会に付託されました。
2月1日
   裁判所法の一部を改正する法律案が閣議請議されました(裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省提出分は除く。)参照)。
2月3日
   裁判所法の一部を改正する法律案(第193回国会閣法第5号)(以下「裁判所法改正法案」といいます。)が国会に提出されました(法務省HPの「裁判所法の一部を改正する法律案」のほか,「裁判所法の一部を改正する法律案の概要」参照)。
2月27日
   平成29年度予算案が衆議院予算委員会及び衆議院本会議で可決され,参議院に送付されました。
3月17日
   裁判所法改正法案が衆議院法務委員会に付託されました。
3月27日
   平成29年度予算案が参議院予算委員会及び参議院本会議で可決された結果,平成29年度予算が政府案どおり成立しました(財務省HPの「平成29年度予算」参照)。
3月31日
   裁判所法改正法案が衆議院法務委員会で可決されました。
4月4日
   裁判所法改正法案が衆議院本会議で全会一致で可決され(参議院HPの「議案情報」参照),参議院に送付されました。
4月12日
   裁判所法改正法案が参議院法務委員会に付託されました。
4月18日
   裁判所法改正法案が参議院法務委員会で可決されました。
4月19日
   裁判所法改正法案が参議院本会議で全会一致で可決され(参議院HPの「議案情報」参照,成立しました。
4月26日
   裁判所法改正法(裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号))が公布されました。
6月6日
   日弁連の,「修習給付金の創設を感謝する会~若手法曹が輝く社会へ~」が開催されました。
11月1日
   裁判所法改正法が施行されました。
司法修習生に対する給費制と貸与制(経済的支援)の状況
経済財政運営と改革の基本方針2016等の抜粋(修習給付金関係)
修習給付金制度の趣旨は,法曹志望者が大幅に減少している中で,28年6月の骨太の方針で言及された「法曹人材確保の充実・強化の推進」等を図る点にあることから,修習給付金について,今後,新たに司法修習生として採用される者を対象とすれば足り,現行貸与制下の司法修習生をも対象とする必要性に欠けるとのことです。

第2の2 修習給付金の導入理由等

○修習給付金の導入理由等が書いてある,法務省が作成した「修習給付金(仮称)について」の本文は以下のとおりです。

1 制度内容 
   司法修習生全員に対し,修習給付金(仮称)を支給する制度を導入する。
   なお,現行の貸与制については,貸与額等を見直した上で,新設する上記制度と併存させる。
2 導入理由
(1)   司法修習生の修習専念義務を担保するための財政的措置の経緯 
   戦後,法曹三者を統一的に養成する司法修習制度の創設に伴い,司法修習生に対し国が給与を支給する制度(給費制)が導入された。
   その後,司法制度改革のー環として,新たな法曹養成制度の整備に伴い,平成16年,給費制に代えて,国が修習資金を無利息で貸与する制度 (貸与制)を導入する裁判所法改正法案が成立した。貸与制は,平成22年議員立法により,その施行がー年延期された後,新65期司法修習生(平成23年11月修習開始)から開始されている。加えて,最高裁判所において,第67期司法修習生(平成25年11月修習開始)から,分野別実務修習開始時における転居費用の支給,集合修習期間中に司法研修所内の寮への入寮を希望する者のうち通所圏内に住所を有しない者への入寮に関する配慮,兼業許可基準に関する運用の緩和の措置が実施されている。
(2)   貸与制導入時からの状況の変化
   平成16年裁判所法改正時の貸与制導入時には,その立法理由として,司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)において,「平成22年ころには司法試験の合格者数を3, 000人程度とすることを目指す」とされたことを前提に,①新たな法曹養成制度の整備に当たり,司法修習生の増加に実効的に対応できる制度とする必要があること,②新たな法曹養成制度の整備や日本司法支援センター(法テラス)の創設,裁判員制度の導入等,新たな財政負担を伴う司法制度改革の諸施策を進める上で,限りある財政資金をより効率的に活用し,司法制度全体に関して国民の理解が得られる合理的な国民負担(財政負担)を図る必要があること,③公務員ではなく公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは現行法上異例の制度であること等を考慮すれば,給費制の維持について国民の理解を得るのは困難であることが挙げられていた。
   しかしながら,①の点については,司法試験の年間合格者数3, 000人目標は現実性を欠くものとして「法曹養成制度改革の推進について」(平成25年7月16日法曹養成制度関係閣僚会議決定)において事実上撤回されており平成27年度の司法修習生数は1,787人と,給費制下の平成22年度(2, 124 人)よりも少なくなっている。
   また,②の点についても,司法制度改革関連予算については,貸与制創設当初には想定されていなかった上記3,000人目標の撤回や法科大学院の統廃合等(平成17年度のピーク時には74校あったが,平成28年5月現在,32 校が学生の募集を停止しており,学生の募集をしているのは42校のみ)を背景に平成22年度(567億円)をピークに減少傾向にあり,平成28年度予算では約450億円程度にまで減少している。
   このように,貸与制創設当初は想定されていなかった様々な事情を背景として,現時点では,貸与制導入時から大きな事情の変化が認められる。
   なお,③の点についても,導入予定の制度は,貸与制を前提とするものであり,給与を支給する給費制を復活させるものではなく,制度の連続性・整合性は維持されており,必ずしも妥当しない。
3 司法修習生に対する追加的な支援措置の必要性 
   司法修習生の貸与制の導入を1年延期する平成22年裁判所法改正後,法曹養成フオーラムにおいて法曹の所得調査が実施され,同調査結果等に基づき貸与制を基本とすることが決定された。しかしながら,本年3月,法務省が日弁連・最高裁の協力の下で実施した法曹の所得調査では,弁護士の所得が平成22年の調査時に比べ明らかに減少しており,特に,貸与制導入以降の新65期以降の若手弁護士の所得は,例えば,登録1年の弁護士の所得については58期(平成18年分)では平均値が690万円,中央値が600万円であったのに対し,67期(平成27年分)では平均値が327万円,中央値が317万円となるなど,所得の低い層が拡大している。このように,貸与制を基本とすることの前提とされた弁護士の経済状況についても大きな変化が認められており,現行のような貸与制をそのまま継続すれば,返済に窮する弁護士も出てくるおそれもあり,その安定的な運用に支障を来すおそれがある。
   また,法曹志望者数についても,法科大学院志願者数は平成16年当時は7万2,800人であったのが本年には僅か8, 278人に減少し,適性試験の志願者数も平成15年当時は5万9, 393人であったのが本年には僅か3, 535人に減少するなどしており,こうした傾向に歯止めをかけ,法曹志望者を確保することが喫緊の課題である。「経済財政運営と改革の基本方針2016(本年6月2日閣議決定)や「未来への投資を実現する経済対策」(本年8月2日閣議決定)も,「司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化等…を推進する」ことを求めている。
   法務省・文科省が共同で本年9月~10月に実施した法学部生に対するアンケートにおいても,「法曹等を志望するに当たって感じている不安や迷いは何ですか」という質間に対し,制度的な要因の中では最も多くの学生が「司法修習の1年間,貸与制の下で給与の支給を受けられない」ことを1位に挙げている。また,日弁連のアンケートによれば,68期司法修習生の回答者の約65%が司法試験や法曹を目指すに当たり,経済的不安を感じており,進路選択を迷ったと回答しており,進路選択に迷った者のうち約20%が司法修習の辞退を考えたことがあり,うち約71%がその理由として「貸与制に移行したことによる経済的不安」を挙げている。このような法曹志願者数の減少は,法曹の給源である法曹志願者や司法修習生の質の低下を招き,ひいては有為な法曹の減少につながりかねないものであるから,公共的・公益的使命を有する法曹の役割の重要性に鑑み,経済的不安による法曹志望の阻害要因の除去を図るため,司法修習生に対し,修習給付金(仮称)を支給することとし,併せて法曹の資格要件としての司法修習の確実な履践を担保し,その実効性の更なる確保を図るための方策を導入するとともに,司法修習を終えた者の公益性を高めるための措置を設けることとしたい。
修習給付金の給付関係事務

第2の3 修習給付金の名称に関する説明

○修習給付金の名称に関する説明が書いてある,法務省が作成した「「修習給付金(仮称)」の名称について」の本文は以下のとおりです。

1 名称に「給付金」を用いる理由 
   司法修習生に対して支給される渡し切りの金銭(修習給付金(仮称))の名称については,用例上,「手当」又は「給付金」を用いることが考えられる。このうち,「手当」については,一般的には,「労働・勤務などの報酬として与える金銭。また,基本的な給料などのほかに支給する金銭。」(広辞苑)を意味するものとされており,用例上も,「児童手当」など給与ではない支給金の名称に用いられる例もあるものの,「期末手当」「住居手当」など,基本的には本給に付随する給与の名称に用いられる例が多い。これに対し,「給付金」は,犯罪被害者等給付金(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律)や,「老齢年金生活者支援給付金」(年金生活者支援給付金の支給に関する法律)など,支給対象者の生活を支援する等の目的で無償で支給される金銭の名称として用いられる例が多く,反対に,給与の名称として用いられている例は見当たらない。
   司法修習生は,公務員ではなく,国に対して何らかの職務を行う立場にはなく,本改正法案により司法修習生に支給される渡し切りの金銭(修習給付金) は,(司法修習生の生活支援を通じて)修習専念義務を確保するために,修習資金の一部として支給されるものであり,司法修習生の給与として支給されるものではない。このような修習給付金の性格及び上記の用例によれば,修習給付金の名称に「給付金」を用いることにつき,用例上問題はないと考えられる。
   また,修習給付金の支給額については,現在,修習期間中の約1年間にわたり,月額10万円から20万円の範囲内の金額を支給する方向で調整が進められている。他の給付金制度としては,①雇用保険を受給できない求職者が公共職業訓練等を受講することを容易にするため,当該求職者に対し,訓練期間(概ね3月から1年)中,月額10万円を支給する職業訓練受講給付金制度(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律)や,②雇用保険に加入している育休取得中の者に対し,子が1歳(両親が取得する場合は1歳2か月)に達するまでの間,賃金の一定割合(50%ないし67%)の金額を支給する育児休業給付金制度(雇用保険法)等がある。

2 「修習給付金」の名称を用いる理由 
   法令上の「給付金」の名称については,犯罪被害者等給付金(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律),特定B型肝炎ウイルス感染者給付金(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法)のように,その支給の客体に着目した名称,職業訓練受講給付金(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律),育児休業給付金(雇用保険法)のように,支給対象者が置かれた状況に着目した名称のほか,老齢年金生活者支援給付金(年金生活者支援給付金の支給に関する法律),被害回復給付金(犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律)のように,その支給目的に着目した名称があると考えられる。
   本改正法案による給付金については,司法修習を実施している司法修習生に対して支給されるものであり,「修習資金」(本改正法案による改正前の裁判所法第67条の2)との平灰も考慮して,支給対象者が置かれた状況に着目して「修習給付金」との名称にした。

第2の4 月額13万5000円の基本給付金の根拠

1 平成29年3月22日の衆議院法務委員会における国会答弁資料(右側の写真データ参照)には,以下の趣旨の記載があります。
・ 日弁連が実施した第68期司法修習生の修習実態アンケート結果によれば,修習生の実務修習期間中の標準的な1か月の支出状況は,平均支出月額が約18万1000円であり,
・ このうち,住居費の支出を要しない自宅等からの通所者の平均支出月額が約13万5000円,
・ うち,アパートを借りるなどして住居費の支出を要する者の平均支出月額が約20万7000円となっている。

2 「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」には,13万5000円の基本給付金に関して,以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
(1) 日本弁護士連合会が第68期の司法修習生を対象に実施した「修習実態アンケート」によれば,以下のとおり,修習期間中に生活実費及び学資金として月額おおむね13.5万円程度の支出がされている。
(内訳)
① 生活実費(合計約9.4万円)
・ 食   費(約4.0万円)
・ 交 通 費(約0.9万円)
・ 情報通信費(約0.9万円)
・ 水道光熱費(約1.0万円)
・ 就職活動費(約1.1万円)
・ 諸雑費(医療費・衣服費等)(約1.5万円)
※ アンケートに回答した全ての司法修習生の平均値。なお,食費及び水道光熱費については,回答中75%を占める住居費支出のある司法修習生の平均値。
② 学資金(合計約4.0万円)
・ 学 習 費(約1.0万円)
・ 書 籍 代(約0.8万円)
・ OA機器購入費(約1.2万円)
・ 勉強会参加費(約1.0万円)
※ 学習費についてはアンケートに回答した全ての司法修習生の平均値。勉強会参加費は,アンケート結果の交際費(2.7万円)のうち,業務時間外に庁舎や会議室等で行う弁護士等との勉強会の参加費用として日弁連が推計した金額。書籍代及びOA機器購入費は,法曹に必要な能力の修得に資する関連書籍・判例集等やパソコン本体・周辺機器等の初期投資費用を月割で按分した金額として,日弁連が推計した金額
(2) 基本給付の額については,以上のような生活実費及び学習費等に関する司法修習生の生活実態(注1)のほか,法曹人材確保の充実・強化の推進等といった修習給付金制度の導入理由(注2),貸与制との連続性(注3),類似の給付・貸付制度(別紙「生活費等の給付・貸付制度」参照)との均衡等を総合考慮したうえで決定されたものである。
 
(注1)このほか,一般的な生活実態としては,総務省統計局が公表している平成27年度の「家計調査」によれば,単身世帯(全国の全世帯対象。ただし,学生の単身世帯等を除く。)の消費支出は合計約16.0万円(食費約4.0万円,住居費約2.0万円,水道・光熱費約1.2万円,交通・通信費約1.9万円,被服・履物費約0.7万円,諸雑費約1.4万円,教養娯楽費約1.8万円)となっている。
(注2)法曹人材確保の観点から,日本弁護士連合会は,司法修習生に対する給付額として,大学院卒者の平均給与額と同水準を要望していたところ,厚労省「平成28年賃金構造基本統計調査」によれば,大学院卒者の平均給与額は23万1400円(男女計・初任給)である。(注3)現行貸与制では,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金として,月額23万円(基本額)を司法修習生の希望者に貸与されている。後記2のとおり,修習給付金(基本給付額)と貸与額(基本額)を合わせた額は23.5万円となる予定である。
国会答弁資料1/4
国会答弁資料2/4
国会答弁資料3/4
国会答弁資料4/4(住居費支出がない場合,標準的な1ヶ月の支出の状況は13万4625円となっています。)

第2の5 月額3万5000円の住居給付金の根拠

1 平成29年3月22日の,井出庸生衆議院議員(民進党)に対する国会答弁資料7頁に以下の記載があることから,月額3万5000円の住居給付金は,生活保護法における単身世帯の住居扶助額に合わせたのだと思います。

・ 司法修習生が住宅を借り受け,家賃を支払っている場合には,住居給付金として月額3.5万円を支給することを予定。
   この金額は,法曹人材確保の充実・強化の推進を図るという制度の導入理由のほか,ほかの給付制度との比較(注),司法修習生の生活実態その他の諸般の事情を総合考慮して決定したものである。
(注)生活保護法における単身世帯の住居扶助額の全国平均は月額3万4,542円。
   なお,国家公務員については,一般職の職員の給与に関する法律に基づき,住居手当については,月額2万7,000円を上限として支給される。

2 厚生労働省HPの「住宅扶助について」(平成25年11月22日付)に,平成27年7月改正前の生活扶助限度額が載っています。

3 生活保護の総合情報サイト「各都道府県別住宅扶助上限額」(平成27年7月改正後のもの)が載っています。

4 ヨミドクターHPの「貧困と生活保護(20) 健康で文化的な最低限度の住まいは確保されているか」(平成27年12月25日付)によれば,平成27年7月前後の,単身世帯の生活扶助限度額の変化は以下のとおりです。
札幌市:3万6000円(変わらず)
東京都1級地:5万3700円(変わらず)
東京都2級地:5万3700円→4万5000円(8700円減少)
さいたま市:4万7700円→4万5000円(2700円減少)
千葉市:4万5000円→4万1000円(4000円減少)
相模原市:4万6000円→4万1000円(5000円減少)
名古屋市:3万5800円→3万7000円(1200円増加)
大阪市:4万2000円→4万円(2000円減少)
神戸市:4万2500円→4万円(2500円減少)
広島市:4万2000円→3万8000円(4000円減少)
北九州市:3万1500円→2万9000円(2500円減少)
生活保護法における単身世帯の住居扶助額の全国平均は月額3万4542円となっています。

第3の1 修習給付金に関する法務大臣の国会答弁

○金田勝年法務大臣は,平成29年3月1日の参議院法務委員会において,以下の答弁をしています。

1 私ども法務省は、平成二十九年度以降に採用予定の司法修習生に対しまして修習給付金を支給する制度を創設すること等を内容といたします裁判所法の一部改正法案を今国会に提出をいたしたところであります。
2 制度の概要なんですけれども、修習給付金の具体的な支給金額につきましては、最終的には最高裁判所規則において定められることになるのでございますが、基本給付金としては、ただいまの委員の御指摘のとおり、全ての司法修習生に対して一律に月額十三万五千円を支給するほか、司法修習生が住宅を借り受けたり家賃を支払っている場合には、住居給付金といたしまして月額三万五千円、司法修習に伴いまして住所や居所を移転することが必要と認められます場合には、その移転につき移転給付金として国家公務員の旅費法の移転料に準拠した金額を併せて支給することを予定をいたしております。
  また、現在実施されております貸与制につきましては、貸与額を見直しをいたしました上で新たな給付制度と併存するということにいたしております。これは、ただいま御指摘のありましたように、法曹志望者が大幅に減少しておるという状況、新たな時代に対応した質の高い法曹を多数輩出をしていくためにも、法曹志望者の確保というものは喫緊の課題であるという考え方に基づくものであります。
3 平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定におきまして、司法修習生に対します経済的支援の在り方について検討するとされましたほか、魚住先生を始め与党の先生方のお力により、昨年六月の骨太の方針においても法曹人材確保の充実強化を推進することがうたわれたものと承知をいたしております。
   これを受けまして、法曹人材確保の充実強化の推進等を図るために修習給付金制度を創設することとしたものでありまして、法務省としては裁判所法の一部改正法案の早期成立に向けまして引き続き努力をしてまいりたい、このように考えておる次第であります。

第3の2 修習給付金に関する法務省大臣官房司法法制部長の国会答弁

1   日弁連が平成21年8月20日付で発表した「「司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(案)」に対する意見書」に,修習資金貸与制に関する問題点が一通り記載されています。

2 小山太士法務省大臣官房司法法制部長は,平成29年3月21日の衆議院法務委員会において,以下の答弁をしています。 
① まず、税務上の取り扱いについての御質問がございました。
  これは、当時、給費制下におきましては、裁判所法に基づきまして司法修習生に対して給与が支給されておりました。給与でございますので、これは給与所得として課税されていたものと承知しております。
  これに対しまして、修習給付金制度のもとでは、先ほど立法の理由についても御説明しましたが、修習給付金は給与として支給されるものではないわけでございまして、そういうことから、給与所得に該当せず、雑所得として区分されるものと認識してございます。
② 次に、社会保険の関係でございます。
  社会保険につきまして、旧給費制下におきましては、裁判所法に基づきまして、今申し上げましたとおり司法修習生に対して給与が支給されておりましたので、司法修習生は裁判所共済組合への加入が認められておりました。
  これに対しまして、修習給付金制度のもとでは、司法修習生は国家公務員ではございませんし、この修習給付金も給与として支給されるものではございませんので、現状、貸与制でございますが、この貸与制下の司法修習生と同様に、裁判所共済組合の組合員たる職員には該当せず、国民健康保険の被保険者に該当することになるものと認識しております。
  また、司法修習生は、修習期間中、その修習に専念することとされておりまして、修習給付金が労務の提供に対して支払われるものでなく、修習期間中の生活を維持するために必要な費用として定められる額を支給するものであることを踏まえますと、年金の関係でございますが、厚生年金保険の被保険者には該当せず、国民年金の第一号被保険者に該当することになるものと認識しております。

3 小山太士法務省大臣官房司法法制部長は,平成29年3月31日の衆議院法務委員会において,以下の答弁をしています。
   新65期ないし70期に対する救済措置は予定していないと述べています。
① 委員から御指摘がございました、修習給付金制度の創設に伴いまして、現行の貸与制下の司法修習生、これは新六十五期から第七十期まででございますけれども、これに対しましても何らかの救済措置を講ずべきとの御意見があることは我々としても承知しております。
   ただ、修習給付金制度の趣旨でございますが、これは、先ほど御答弁申し上げましたとおり、法曹志望者が大幅に減少している中で、昨年六月の骨太の方針で言及されました、法曹人材確保の充実強化の推進等を図る点にあるわけでございまして、この趣旨に鑑みますと、修習給付金につきましては、今後新たに司法修習生として採用される者を対象とすれば足りるのではないかと考えられたところでございます。
   それからまた、加えて、仮に既に貸与で修習を終えられたような方に何らかの措置を実施するといたしましても、現行貸与制下において貸与を受けていらっしゃらない方もいらっしゃいまして、この取り扱いをどうするかといった制度設計上の困難な問題がございます。また、そもそも、既に修習を終えている人に対して事後的な救済措置を実施することにつき、国民的な理解が得られないのではないかという懸念もあるところでございます。
   ということで、本制度につきましては、救済措置を設けることは予定していないわけでございます。
② 本法案が可決、成立いたしますと、本年十一月に修習が開始される第七十一期の司法修習生から修習給付金を支給することになります。まずは新たな制度を導入していただきまして、その後はこの制度について継続的、安定的に運用していくことが重要であろうと考えております。御理解を賜りたいと考えております。

第3の3 修習給付金に関する最高裁判所人事局長の国会答弁

平成29年8月1日付の司法行政文書不開示通知書によれば,裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)に関する国会答弁資料は存在しません。
○堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成29年3月22日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 
1 まず、修習給付金の金額の点の御質問がございました。
   この具体的な金額につきましては最終的に最高裁判所規則において定めることになりますが、基本給付金として全ての修習生に対して一律十三万五千円、そのほか、住宅を借り受け、家賃を支払っている場合には住居給付金、あるいは移転に必要な移転給付金といったものを支給するということを予定しているところでございます。
   これらの修習給付金の額は、制度設計の過程の中で、法曹人材の確保、充実強化の推進等を図るという制度の導入理由のほか、修習中に要する生活費や学資金等の司法修習生の生活実態その他の諸般の事情を総合考慮するなどして決定されたというふうに承知しているところでございます。
   最高裁といたしましては、この新たな給付金制度の円滑な実施及び継続的かつ安定的な運用に努めてまいりたいというふうに考えておりますが、今後、制度のいろいろな問題点等は運用の中で出てくるかもしれません。そのようなところはまた法務省等とも御相談申し上げて、運用については万全を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
2 それから、制度間の不公平の問題も御指摘ありました。
   修習給付金制度の創設に伴いまして、現行貸与制下の修習生、新六十五期から七十期までということですが、これらに対しても何らかの経済的措置や救済措置を講ずべきという意見があることは承知しているところでございます。
   しかしながら、給付金の制度の導入に伴い、現行貸与制下の修習生に対して救済措置を設けるか否かにつきましては、立法政策というところにもかかわるところでございますので、最高裁として、今の段階で意見を述べることは差し控えたいというふうに考えているところでございます。

第3の4 衆議院法務委員会における国会答弁資料

○衆議院法務委員会の会議録のうち,平成29年3月21日開催分同月22日開催分同月24日開催分及び同月31日開催分を掲載しています。
○以下のとおり衆議院法務委員会における国会答弁資料を掲載しています。
1 平成29年3月21日の,安藤裕衆議院議員(自民党)の以下の質問に対するもの
① 司法修習生に対する経済的支援が給費制から貸与制に変わった理由,そして,今回,給付金制度を新設した理由について,法務当局に問う。
② 課税関係について,なぜ給費制下の給与所得から,給付金は雑所得に変わるのか,年金や健康保険は国民年金や国民健康保険ということだが,これもなぜ給費制下の取扱いと変わるのか,法務当局に問う。
③ 大学の給付型奨学金も今国会で法案が提出されているが,司法修習生で奨学金と修習資金の両方の貸与を受けるとかなりの負債を負うことになる。65期から70期までの司法修習生の救済策について,法務当局に問う。
④ 法曹志望者の減少理由をどのように考えているか,法務当局に問う。
⑤ 弁護士になっても就職できない,また収入が低いという減少が現れており,それが有為な法曹人材の確保のため,今後法務省としてどのように取り組むのか,法務大臣に問う。

2 平成29年3月21日の,國重徹衆議院議員(公明党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度の導入の理由について法務当局に問う。
② 平成27年6月の法曹養成制度改革推進会議決定に基づき修習給付金制度の制度設計を担った法務省では,どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度設計をしたのか,法務当局に問う。
③ 今後の修習給付金の金額水準の見直しの在り方につき,制度設計を担った法務省としてはどのように考えているのか,法務当局に問う。
④ 修習給付金について,給付型奨学金等とは異なり,司法修習生に一律に支払う理由につき,法務当局に問う。
⑤ 司法修習生の懲戒的措置に関する規程の整備として,罷免以外に修習の停止及び戒告を設ける理由につき,法務当局に問う。
⑥ 修習停止の期間中に修習給付金は支給されるのか,法務当局に問う。
⑦ 昨年12月の法務省,最高裁判所及び日本弁護士連合会の確認にある「修習の成果の社会還元を推進するための手当て」に関する検討状況につき,法務当局に問う。
⑧ 法曹志望者が大幅に減少している中,今後の法曹養成制度の改革に向けた決意につき,法務大臣に問う。

3 平成29年3月22日の,井出庸生衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 司法修習生の実務修習地についてどのように決まるのか,希望は通るのか,法務大臣に問う。
② 司法修習生の修習先に応じた経済的負担を把握するため,司法修習生の経済的負担につき,アンケートなどの実態調査はしているのか,法務大臣に問う。
③ ①実家から修習先へ通勤できる修習生,②従来の居住地から引っ越しをすることなく修習地に通勤できる修習生,③実家問うから修習先への通勤が不可能で,新たに住居を確保することを迫られる修習生の割合は過去5年でそれぞれどの程度か,法務大臣に問う。
④ 住居費に応じた司法修習生に対する経済的支援はどの程度あり,実体としてどれほどの住宅補助の役割を果たしているのか,法務大臣に問う。
⑤ 司法修習生は,司法修習において,罪刑法定主義や刑法の謙抑主義を改めて学ぶのか,法務大臣に問う。
⑥ 国際法,国際人権法,国際刑事法については,司法修習でどのような形でどのくらいの時間をかけて学ぶのか,法務大臣に問う。
⑦ 将来の司法を担う人材である司法修習生が,激変する国際法,国際人権法,国際刑事法を学ぶ大切さにつき,法務大臣の所見を問う。
⑧ 司法修習において,双罰性についての考え方,日本の裁判例などは教えるのか,法務大臣に問う。
⑨ 司法修習において,国際法と国内法との優先順位,国際法の実効性についてどう教えるのか,法務大臣に問う。

4 平成29年3月22日の,逢坂誠二衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 法曹志望者の減少の要因と解決策につき,法務大臣に問う。
② 司法試験制度の抜本的な見直しにつき,法務大臣に問う。
③ 修習給付金制度の創設は歓迎すべきことだが,修習給付金制度の課題をどのように考えているか,法務大臣に問う。
④ 修習給付金の金額は適切であると考えるか,法務大臣の所見を問う。
⑤ 修習給付金の税務上の取扱いにつき,法務大臣に問う。
⑥ 司法修習生の社会保険の取扱いにつき,法務大臣に問う。
⑦ 司法修習修了者の社会貢献の在り方につき,法務大臣に問う。
⑧ 現行貸与制と修習給付金制度との制度間の不公平につき,法務大臣に問う。

5 平成29年3月22日の,階猛衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 裁判所法改正法案の立法目的は何か,法務大臣に問う。
② 同改正法案で立法目的は達せられるのか,法務大臣に問う。
③ 立法目的を達するために,同改正法案以外に他の選択肢を検討したのか,法務大臣に問う。
④ 司法試験受験資格を見直すべきではないか,法務大臣に問う。
⑤ 予備試験合格者の司法試験合格率が法科大学院修了者の司法試験合格率を上回り続ける理由について,法務大臣に問う。

6 平成29年3月22日の,松浪健太衆議院議員(日本維新の会)の以下の質問に対するもの
① 法曹志望者の減少の要因につき,どのように考えているか,法務当局に問う。
② 弁護士の収入について,平成23年の調査と平成28年の調査を比較して所得中央値が半減した理由は何か,法務当局に問う。
③ 法科大学院出身者である弁護士の平均年収について,法務当局に問う。
④ 法曹人口増大が,弁護士の収入など弁護士の需給バランスに与えた影響について,法務当局に問う。
⑤ 平成28年司法試験について,予備試験合格による受験資格者と法科大学院修了による受験資格者のそれぞれの司法試験合格率について,法務当局に問う。

7 平成29年3月22日の,藤野保史衆議院銀(日本共産党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度創設の意義について,法務大臣の所見を問う。
② 今回の制度設計をした法務省では,どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度としたのか,法務当局に問う。
③ 現行の貸与制下の司法修習生に不公平が生じているが,貸与制下の司法修習生に対する経済的措置や救済措置を講ずべきではないか,法務大臣の所見を問う。
④ 司法修習生に対する懲戒的措置の整備により,司法修習生による自主的な法曹としての識見を高めるための諸活動を萎縮させることにならないか,法務大臣の所見を問う。
⑤ 戦前と異なり,一元的な法曹養成である現行の司法修習を行うことの意義について,法務当局に問う。

8 平成29年3月31日の,階猛衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金を支給する制度を導入した上で,現行制度を維持した場合,来年の司法試験の受験者数は増えるのか,法務大臣の所見を問う。
② 法科大学院修了者の司法試験合格率が予備試験合格者の司法試験合格率より著しく低いことからすれば,予備試験は法科大学院修了者と同等の学識を有することを判定するという司法試験法第5条に照らし,法科大学院は,本来,法科大学院を修了すべきでない者を修了させていることになるのではないか,法務大臣の所見を問う。
③ 法科大学院の修了認定を厳しくし,司法試験法第5条のとおりに法科大学院を修了すべき者に法科大学院修了資格を付与していれば,司法試験受験者は,現在よりもっと減少するのではないか,法務大臣の所見を問う。
④ 仮に,来年も司法試験の受験者数が減少した場合,合格者数1,500人以上という目的は達成できるのか,法務大臣の所見を問う。
⑤ 3月22日の質問時に,私の「まず司法試験の受験資格を見直すことだ」という質問に対し,大臣は「委員のご指摘を踏まえて,検討をしていくプロセスを用意すれば,それはそれで非常に大きな前進になるのではないか」と答弁したが,検討していくプロセスとは具体的に何か,法務大臣の所見を問う。
⑥ 3月22日の質問時に,私が示した法学部に在籍する学生に対する法曹志望に関するアンケートにつき,大臣は「こういう精緻な資料を何枚かいただいてこの話に臨んだことは,私は残念ながら初めてだ」と答弁したが,肝心なデータを部下から得ていないのは,法務省の組織の在り方として問題ではないか,法務大臣の所見を問う。
⑦ 法曹志願者を量的にも質的にも高めていくためには,修習給付金を支給する制度の復活だけでなく,司法試験の受験資格の見直しが不可欠ではないか,法務大臣の所見を問う。

9 平成29年3月31日の,今野智博衆議院議員(自民党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度の意義と,基本給付金を司法修習生全員に一律に支給する制度とした理由について,法務当局に問う。
② これまでの貸与世代の修習生について,何らかの救済策を講じるべきではないか,法務当局に問う。
③ 法曹志望者の確保のため,弁護士が行政庁や企業などで活躍分野を広げる取組が重要と考えるが,法曹有資格者の活動領域の拡大にどのように取り組むのか,法務大臣に問う。

10 平成29年3月31日の,山尾志桜里衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 「谷間の世代」である現行貸与制下の司法修習生の人数と全法曹人口につき,法務大臣に問う。
② 法曹志望者の減少の理由につき,法務大臣に問う。
③ 「谷間の世代」である現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講じない理由につき,法務大臣に問う。
④ 法務省としては,どのような検討の結果,現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講じないこととしたのか,これまでの検討状況の詳細につき,法務大臣に問う。
⑤ 現行貸与制下の司法修習生に対する救済措置を講ずるか否かにつき,法曹養成制度改革連絡協議会で検討されたのか,法務大臣に問う。
⑥ 法曹養成制度改革連絡協議会の議事録が非公開とされている理由は何か,法務大臣に問う。
⑦ (最高裁判所が説明する)予算規模からすれば,現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講ずるべきではないか,法務大臣の所見を問う。
⑧ 昨年12月に法曹三者間で確認された「修習の成果の社会還元」とは何か,法務大臣に問う。
⑨ 「修習の成果の社会還元」と弁護士自治との関係につき,法務大臣に問う。

11 平成29年3月31日の,國重徹衆議院議員(公明党)の以下の質問に対するもの
① 司法試験の合格者について,年間3,000人目標を撤回し,年間1,500人程度とした理由は何か,法務当局に問う。
② 司法修習終了後の弁護士未登録者数の状況は,最近どのような傾向にあるか,法務当局に問う。
③ 法曹有資格者の活動領域の拡大について,法務省としても,取組をバックアップしていくべきではないか,法務当局に問う。

第3の5 参議院法務委員会における国会答弁資料

○参議院法務委員会の会議録のうち,平成29年4月13日開催分及び同月18日開催分を掲載しています。
○以下のとおり参議院法務委員会における国会答弁資料を掲載しています。
1 平成29年4月18日の,元榮太一郎参議院議員(自民党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度の導入に至った理由及びその背景について,法務当局に問う。
② 今回の制度設計に当たり,どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度としたのか,給費制下の支給額と比較して低いのではないか,法務当局に問う。
③ 今回新たな給付制度を導入しつつ,貸与制を併存させる理由は何か,貸与制の内容日打て見直しをするのか,法務当局に問う。
④ 現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講ずるべきではないか,法務当局に問う。
⑤ 基本給付金の額を検討するに当たって,修習期間中の交通費は考慮されたのか,法務当局に問う。
⑥ 法曹資格取得までの期間を短縮するため,法科大学院修了前に司法試験の受験を可能とし,4月から司法修習を開始できるようにすべきと考えるが,法務当局の見解を問う。
⑦ 司法修習期間が1年間と短期間である中,懲戒的措置として戒告を設ける意味はあるのか,法務当局に問う。
⑧ 今後とも,法曹の魅力を高め,法曹人材を確保するための不断の検討を続けるべきではないか,法務大臣の所見を問う。

2 平成29年4月18日の有田芳生参議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 本改正法案の立法目的は何か,法務大臣に問う。
② 本改正法案により,法曹志望者は増えるのか,法務当局に問う。
③ 司法試験出願者数の推移について,法務当局に問う。
④ 法曹志望者が減少した理由について,どのように考えるか,法務当局に問う。
⑤ 法科大学院の課程を修了したことを要件とする現行司法試験の受験資格を見直すべきではないか,法務当局に問う。
⑥ 法科大学院修了者の司法試験合格率が,予備試験合格者の司法試験合格率より大幅に低いのは,司法試験法第5条違反ではないか,法務当局に問う。
⑦ 有為な法曹人材の確保に向けた法務大臣の決意を問う。

3 平成29年4月18日の,真山勇一参議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 各種の「子どもの人気職業ランキング」等で法曹関係者の人気下落が著しいが,この点につき,法務大臣の見解を問う。
② 小学生や中学生に対し法曹の魅力を伝える努力をすべきではないか,法務当局に問う。
③ 司法修習制度が存在する理由及び司法修習生に対し修習専念義務が課されている理由について,法務当局に問う。
④ 給費制から貸与制に移行した理由について,法務当局に問う。
⑤ 登録5年目の弁護士の平均的な所得額はどうなっているか,法務当局に問う。
⑥ 登録5年目の弁護士の所得状況に照らし,貸与金の返還義務の負担の軽重についてどのように考えるか,法務大臣の見解を問う。
⑦ 現行の貸与制下の司法修習生に対して救済的措置を講ずるべきではないか,法務大臣の所見を問う。
⑧ 現行の貸与制下の司法修習生に対する救済的措置の是非について検討したことがあるか,法務当局に問う。
⑨ 現行の貸与制下で司法修習を終えて弁護士となった者による独立開業を支援すべきではないか,法務当局の見解を問う。

4 平成29年4月18日の,佐々木さやか参議院議員(公明党)の以下の質問に対するもの

① 修習給付金創設の趣旨及び背景について,法務当局に問う。
② 修習給付金と給費制下における給費の性格や金額の違いについて,法務当局に問う。
③ 法曹有資格者の活動領域の拡大に今後も努めるべきではないか,法務当局に問う。
④ 今回の改正で,修習の停止及び戒告の制度を設けた理由について,法務当局に問う。
⑤ 改正後の裁判所法第68条第1項で,心身の故障等を罷免事由として明記した理由について,法務当局に問う。
⑥ 修習給付金を受け取って法曹となった者の社会貢献活動の在り方についてどのように考えるか,法務大臣の見解を問う。

5 平成29年4月18日の東徹参議院議員(日本維新の会)の以下の質問に対するもの
① 弁護士会は強制加入団体であると言われているが,それに違いはないか,法務当局に問う。
② 弁護士会のような強制加入団体では,政治的中立性を確保することが極めて重要であると考えるが,法務大臣の見解を問う。
③ 弁護士会において,政治的中立性が適切に確保されるため,どのような対策が行われているのか,それが効果的であるのか,法務当局に問う。
④ 今後,法曹をどこまで増やす必要があるのか議論がある中で,なぜ法曹志望者を確保するために給付金制度が必要となるのか,法務大臣の見解を問う。
⑤ 貸与制を導入した理由について,法務当局に問う。
⑥ 司法修習生に対する経済的支援策として,修習給付金制度以外の選択肢を検討しなかったのか,法務当局に問う。
⑦ 昨年12月に法曹三者間において修習給付金制度の内容について確認がされたが,なぜ法曹三者で確認したのか,法務当局の見解を問う。
⑧ なぜ,弁護士等の養成課程において司法修習が必要なのか,法務大臣の見解を問う。
⑨ 修習給付金制度の創設により,国の財政的負担が増大することから,裁判所法を改正して司法修習の期間を短縮すべきではないか,法務当局の見解を問う。

6 平成29年4月18日の,山添拓参議院議員(日本共産党)の以下の質問に対するもの

① 質の高い法曹を輩出する理由についてどのように考えているか,法務大臣の見解を問う。
② 本改正法案は,貸与制に移行したことで法曹志望者の減少に拍車がかかったという反省を踏まえて提出したものか,法務大臣の見解を問う。
③ 給費制下の支給金額及び貸与制下の貸与額は,修習専念義務の下,司法修習生が修習生活を送る上で必要な額であるという前提で制度設計がなされていたのか,法務当局に問う。
④ どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度としたのか,法務当局に問う。
⑤ 貸与制を併存させる理由について,法務当局に問う。
⑥ 本改正法案は,修習給付金だけでは生活できない司法修習生がいるという前提で制度設計されたものか,法務大臣の認識を問う。
⑦ 現行貸与制下の司法修習生の救済について,法務大臣の見解を問う。

7 平成29年4月18日の,糸数慶子参議院議員(沖縄社会大衆党)の以下の質問に対するもの
① 平成29年司法試験出願者数について,法務当局に問う。
② 平成18年(2006年)以降の司法試験出願者数の推移について,法務当局に問う。
③ 法曹志望者の減少の要因について,法務当局に問う。
④ 国選弁護人を10年間担っているある弁護士の方が「法曹を養成する段階では充分な国費を投入することがまずもって求められている。」と述べているが,法曹養成の重要性について,法務大臣の見解を問う。
⑤ 現行貸与制下の司法修習生を救済する必要性があるのではないか,法務大臣の見解を問う。

8 平成29年4月18日の,山口和之参議院議員(無所属)の以下の質問に対するもの

① 本改正法案で「修習の停止」及び「戒告」を新たに設ける趣旨は何か,また,これらはどのような効果を持つ処分か,法務当局に問う。
② 裁判所法で規定されている司法修習制度の目的と意義についてどのように考えるか,法務当局に問う。
③ 司法修習を経ずに弁護士となるルートとして,どのようなものがあるか,また,そのようなルートを経て弁護士になった者と,司法修習を経て弁護士となった者とでは,その資格等に違いがあるか,法務当局に問う。
④ 司法試験合格者のうち,かつては新司法試験組より旧司法試験組の方が,現在は法科大学院組より予備試験組の方が,就職に有利な扱いを受けていると聞くが,法科大学院を経た者が低い評価を受ける原因をどのように考えるか,法務当局に問う。
⑤ 今後,法科大学院改革を含む法曹養成制度改革にどのように取り組んでいくのか,法務大臣の決意を問う。

第4 裁判所法の一部を改正する法律の成立に当たっての日弁連会長声明等

1 日弁連は,平成29年4月19日,「裁判所法の一部を改正する法律の成立に当たっての会長声明」として,以下の会長声明を発表しました。
 
   本日、平成29年度以降に採用される司法修習生に新たな給付型の経済的支援を行う「裁判所法の一部を改正する法律」が、政府提案のとおり可決され成立した。本日まで多大なる御協力をいただいた市民団体、消費者団体、労働団体による「司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会」や法科大学院生、司法修習生、若手弁護士らによる「ビギナーズ・ネット」、法改正の成立に並々ならぬ御尽力をいただいた各政党・国会議員の方々、法務省、最高裁判所等関係諸機関の皆様、更にはこれまで御支援をいただいた諸団体並びに市民の方々に心から感謝申し上げる。
   今回の法改正は、法曹養成課程における経済的負担の重さが法曹への道を断念させる一因となっていることに鑑み、司法修習生に対して修習給付金等を支給する制度を創設することにより、法曹となる人材の確保の推進等を図る、というものであり、法曹養成制度の改革にとって前進である。
   当連合会は、改正法に基づく新たな制度の円滑な実施に最大限の協力をするとともにその継続的かつ安定的な運用を図り、安心して修習に専念できる環境整備を更に進めることにより、一人でも多くの志ある若者が法曹の道を志望することにつながるよう引き続き取り組む。加えて、今後とも、若手法曹と共に、弁護士法第1条に定められた弁護士の使命を果たしていく。
   他方、この法案の審議の過程において、平成23年11月から平成28年11月までに司法修習生に採用されたいわゆる谷間世代の者の経済的負担が改正法施行後に司法修習生に採用された者に比して重くなる、ということについて、指摘がなされ、何らかの措置を講ずべきであるとの意見もあった。当連合会としては、これらの指摘・意見及び谷間世代の声を受け止め、谷間世代の者がその経済的負担等によって法曹としての活動に支障が生じることがないよう、力を尽くす。
   当連合会は、法曹養成制度の改革について、引き続き関係諸機関と連携し、取り組む所存である。

2 平成29年6月1日に第二東京弁護士会が発表した「裁判所法の一部を改正する法律成立に対する会長声明」によれば,第二東京弁護士会は,新65期ないし70期のいわゆる谷間世代(無給修習世代)に対し,会費の一部を免除することを平成29年3月の臨時総会で決議したみたいです。

3(1) 平成28年12月19日付の「司法修習生に対する経済的支援について」では,「給付制度の導入に合わせ,司法修習の確実な履践を担保するとともに,司法修習を終えた者による修習の成果の社会還元を推進するための手当てを行う。」と書いてありますものの,平成29年の裁判所法改正では,この点に関する定めは置かれませんでした。
(2) 平成29年の裁判所法改正に関する想定問答(最高裁判所作成分)8頁には,以下の記載があります。
問 昨年12月の法曹三者確認の内容である,司法修習を終えた者による修習の成果の社会還元を推進するための手当てが法案に盛り込まれていないのはなぜか。
(答)
○ 昨年12月の法曹三者確認では,修習給付金を支給する制度の創設等とともに「司法修習を終えた者による修習の成果の社会還元を推進するための手当てを行う」ことが確認された。
○ 三者確認にある「修習の成果の社会還元を推進するための手当て」としては,公務に従事することとなる裁判官及び検察官以外の弁護士について問題となる。
   この点については,これまでの法務省と日本弁護士連合会との協議の結果,日本弁護士連合会の新たに定めるガイドライン,モデルプラン等において,新たな経済的支援を受けて司法修習を終えた弁護士につき,経済的・社会的弱者に対する各種の法的支援,司法過疎地域への法的サービス等に従事することを推進する方策を講じることが予定されていると承知しており,その確実な実施が見込まれるため,法案には盛り込むこととはしていない。

第5 裁判所法の一部を改正する法律案要綱

○裁判所法の一部を改正する法律案につき,法律案要綱は以下のとおりです(法務省HPの「裁判所法の一部を改正する法律案」参照)。
   法律案要綱に金額の記載はないものの,平成28年12月19日の発表時点で,基本給付金は月額13万5000円であり,住居給付金は月額3万5000円であると決まっていました(平成28年12月19日の「法務大臣臨時記者会見の概要」の「司法修習生に対する経済的支援策に関する質疑について」参照)。
「裁判所法の一部を改正する法律案の概要」(平成28年12月22日付の文書)では,司法修習を終えた者の努力義務規定の創設(改正法附則関係)ということで,「改正法の施行後に開始される司法修習を終えた者は,その修習の成果を社会に還元するよう努めなければならないものとする旨の改正を行う。」とありました(詳細につき「改正法附則において努力義務規定を設ける理由について」参照)が,内閣法制局の予備審査で削られたみたいです。
○司法修習生に対する処分として,修習停止及び戒告が追加されています。
 
裁判所法の一部を改正する法律案要綱
 
第一 司法修習生に対し国が修習給付金を支給する制度の創設等(第六十七条の二及び三関係)
一 司法修習生には、その修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間、修習給付金を支給すること。(第六十七条の二第一項関係)
二 修習給付金の種類は、基本給付金、住居給付金及び移転給付金とすること。(第六十七条の二第二項関係)
三 基本給付金の額は、司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用であって、その修習に専念しなければならないことその他の司法修習生の置かれている状況を勘案して最高裁判所が定める額とすること。(第六十七条の二第三項関係)
四 住居給付金は、司法修習生が自ら居住するため住宅(貸間を含む。以下同じ。)を借り受け、家賃(使用料を含む。以下同じ。)を支払っている場合(配偶者が当該住宅を所有する場合その他の最高裁判所が定める場合を除く。)に支給することとし、その額は、家賃として通常必要な費用の範囲内において最高裁判所が定める額とすること。(第六十七条の二第四項関係)
五 移転給付金は、司法修習生がその修習に伴い住所又は居所を移転することが必要と認められる場合にその移転について支給することとし、その額は、路程に応じて最高裁判所が定める額とすること。(第六十七条の二第五項関係)
六 一から五までに定めるもののほか、修習給付金の支給に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定めること。(第六十七条の二第六項関係)
七 司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金を国が無利息で貸与する制度を変更し、修習専念資金(司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって、修習給付金の支給を受けてもなお必要なもの)を国が無利息で貸与する制度とすること。(第六十七条の三関係)
第二 司法修習生の罷免等に関する所要の規定の整備(第六十八条関係)
一 最高裁判所は、司法修習生に成績不良、心身の故障その他のその修習を継続することが困難である事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは、最高裁判所の定めるところにより、その司法修習生を罷免することができるものとすること。(第六十八条第一項関係)
二 最高裁判所は、司法修習生に品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは、最高裁判所の定めるところにより、その司法修習生を罷免し、その修習の停止を命じ、又は戒告することができるものとすること。(第六十八条第二項関係)
第三 施行期日等(附則関係)
一 この法律は、平成二十九年十一月一日から施行すること。(附則第一項関係)
二 この法律の施行に伴う所要の経過措置について定めること。(附則第二項から第五項まで関係)

第6の1 修習給付金と最低賃金等の比較

1(1)  平成28年10月1日発効の,埼玉県最低賃金は時給845円です(埼玉労働局HPの「埼玉県の最低賃金」参照)。
   そのため,埼玉県において最低賃金で1日8時間働いた場合の30日分の給料は,845円×40時間×30日/7日(約171時間)=14万4857円となります。
(2) 司法修習が労働に該当するとした場合,月額13万5000円(1月の労働時間を171時間とした場合,時給は789円)の修習給付金は,埼玉県の最低賃金を下回ることとなります。
(3) 厚生労働省HP「地域別最低賃金の全国一覧」に,地域別最低賃金の最新版のほか,平成14年度以降の地域別最低賃金改定状況が載っています。
 
2(1) 最低賃金法4条2項は,「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。」と定めています。
(2) 平成28年10月1日以降の東京労働局の最低賃金に関するポスターには,「東京都最低賃金 時間額932円」とか,「守ってる?守られてる?雇う上でも,働く上でも,最低限のルールなんです!!」などと書いてあります(東京労働局HPの「賃金・家内労働関係」参照)。

3(1) ガベージニュースHPの「アルバイトの時給動向をグラフ化してみる(2017年)(最新)」 によれば,2017年3月時点で,パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏)は,全体で999円,販売・サービス系で986円,フード系で968円,介護スタッフで1016円,派遣スタッフで1599円となります。
(2) 1日8時間働いた場合の30日分の給料は,全体で17万1257円,販売・サービス系で16万9028円,フード系で16万5942円,介護スタッフで17万4171円,派遣スタッフで27万4114円となります。

4 公益財団法人国際研修協力機構(略称は「JITCO」です。)HPの「研修生・技能実習生の講習手当・研修手当・賃金情報について」によれば,平成21年度の調査では,技能実習生の全業種平均給与額は14.3万円でした。

5 厚生労働省HPの「青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)について」には,以下のパンフレットが掲載されています。
① ハローワークでは労働関係法令違反があった事業所の新卒求人は受け付けません!
→ 平成28年3月1日以降の取扱いであり,労働基準法,最低賃金法,男女雇用機会均等法及び育児介護休業法に関する規定が対象です。
② 労働関係法令違反があった事業所を新卒者などに紹介しないでください

第6の2 給費制と修習給付金制度との比較等

1   司法修習生の給費制が実施されていた現行65期までの司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです(平成25年12月17日開催の第5回法曹養成制度改革顧問会議の資料3-1「司法修習生に対する支給等一覧」参照)。
① 月額20万4200円(新64期の場合)の給料,地域手当,扶養手当等を支給されており,給与所得として給与所得控除が適用されました。
② 裁判所共済組合の組合員として各種の給付を受けることができました。
③ 実務修習中,通勤手当,住居手当及び寒冷地手当を支給されていました。
④ 集合修習中,通勤手当,住居手当及び日額旅費を支給されていました。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員として,引き続き短期給付及び福祉事業を受けることができました(共済組合の任意継続組合員の意義につき,文部科学省共済組合HPの「退職後の医療」参照)。
(3)ア 裁判所共済組合への加入実績に基づき,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらえます。
  私のねんきん定期便によれば,59期徳島修習(1年6月の修習)(調整手当→地域手当は0%)で扶養手当をもらっていなかった私の場合,公務員厚生年金からの老齢厚生年金は年額2万7407円です。
イ 平成27年10月1日,共済年金は厚生年金に統合された結果,公務員厚生年金となりました(外部HPの「共済年金は厚生年金に統一されます」参照)。
ウ 平成28年7月27日発表の平成27年簡易生命表の概況によれば, 平成27年現在,30歳男性の平均余命は51.46年であり(平均で81.46歳まで生きるということ。),30歳女性の平均余命は57.51年です(平均で87.51歳まで生きるということ。)。
  65歳から老齢厚生年金を受給できますから, 男性であれば平均で16.46年間,女性であれば平均で22.51年間,公務員厚生年金から老齢厚生年金を受給できることとなります。
エ 今後の年金の状況については,厚生労働省HPの「いっしょに検証!公的年金」にある,「財政検証結果レポート」(発表年は16年,21年及び26年)が非常に参考になります。
(4) 給与所得である点で確定申告をする必要がありませんでした。

2 司法修習生の修習給付金が実施される71期以降の司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです。
① 月額13万5000円の基本給付金,月額3万5000円の住居給付金及び引越のための移転給付金は出ますものの,基本給付金及び住居給付金については雑所得として課税の対象となりますし,地域手当及び扶養手当はありません。
② 修習給付金は給与ではない点で裁判所共済組合の組合員となることはできません(国家公務員共済組合法2条1項1号・国家公務員共済組合法施行令2条2項4号「国及び行政執行法人から給与を受けない者」参照)から国民年金及び国民健康保険となります。
③ 実務修習中,通勤手当は出ませんから交通費は自腹になりますし,寒冷地手当は出ませんから寒冷地の実務修習地における暖房代等は自腹になります。
④ 集合修習中,通勤手当及び日額旅費は出ませんから交通費は自腹になります。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員となることはできません。
(3) 裁判所共済組合への加入実績がありませんから,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらうことはできません。
(4) 雑所得である点で確定申告をする必要がありますし,司法研修所の公式見解によれば必要経費がありませんから,その分,所得税及び住民税が高くなります。

3 給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧等
(1) 平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料14(PDF77頁,末尾73頁)に,給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧表が載っています。
(2)   新64期司法修習生の場合,毎月20万4200円の給与を支給されていたほか,諸手当として以下のものがありました。
① 扶養手当
   配偶者につき1万3000円,配偶者以外の扶養親族一人につき6500円等
② 住居手当
   家賃額に応じて2万7000円を限度に支給
③ 通勤手当
   交通機関等の利用者について一ヶ月あたり5万5000円を限度に支給
   自転車等の使用者について使用距離に応じて2000円~2万4500円を支給
④ 地域手当
   支給対象地域で修習を行う者について,給与月額等に,修習地の区分に応じた割合(3%~18%)を乗じて得た額を支給
⑤ 寒冷地手当
   支給対象地域で修習を行う者について,11月から3月までの間,修習地の区分等に応じて7360円~2万6380円を支給
⑥ 期末手当
   年間で,給与月額等の2.6月分を支給
⑦ 勤勉手当 
   年間で,給与月額等の1.29月分を支給 

4 他の公的な研修制度の取扱い
   平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料15(PDF79頁,末尾75頁)によれば,他の公的な研修制度の取扱いは以下のとおりです。
① 防衛大学校
   陸上・海上・航空の各自衛隊の幹部自衛官となる者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は4年です。
② 防衛医科大学校
   医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は6年です。
③ 税務大学校
   税務職員に対する必要な研修等を目的としており,身分は税務職員であり,終了後は引き続き税務職員として勤務し,給与が支給され,期間は個々の研修によります。
④ 警察大学校
   上級幹部に対して必要な知識,技能,指導能力及び管理能力を習得させるための教養等を目的としており,身分は警察官であり,終了後は引き続き警察官として勤務し,給与が支給され,期間は個々の教養課程によります。
⑤ 航空大学校
    航空機の操縦士の教育訓練を目的としており,身分は学生(非公務員)であり,終了後は民間企業等への就職等であり,給与等の支給はなく,期間は2年です。

5 平成17年度決算検査報告における指摘
   最高裁判所ほか79裁判所は,会計検査院の平成17年度決算検査報告において,自動車等を使用して通勤する職員等に対する通勤手当の認定等を適切に行い、適正な支給額となるよう改善させられました(平成17年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項参照)。

第7の1 裁判官の年収(参考)

1 平成27年12月1日時点の,裁判官の推定年収は以下のとおりです(「裁判官の年収及び退職手当」参照)。
(1) 判事の年収
① 任官34年目(34期)~任官40年目(28期)(判事1号)
      約1984万円(地域手当0%)~約2325万円(地域手当18%)
② 任官29年目(39期)~任官33年目(35期)(判事2号)
      約1747万円(地域手当0%)~約2047万円(地域手当18%)
③ 任官24年目(44期)~任官28年目(38期)(判事3号)
      約1630万円(地域手当0%)~約1909万円(地域手当18%)
④ 任官19年目(49期)~任官23年目(45期)(判事4号)
      約1381万円(地域手当0%)~約1618万円(地域手当18%)
⑤ 任官16年目(53期)~任官18年目(50期)(判事5号
      約1192万円(地域手当0%)~約1397万円(地域手当18%)
⑥ 任官14年目(55期)~任官15年目(54期)(判事6号)
      約1070万円(地域手当0%)~約1253万円(地域手当18%)
⑦ 任官13年目(56期)(判事7号)
      約969万円(地域手当0%)~約1135万円(地域手当18%)
⑧ 任官11年目(57期)~任官12年目(58期)(判事8号)
      約871万円(地域手当0%)~約1020万円(地域手当18%)
(2) 判事補の年収
① 任官8年目(現行61期)~任官10年目(59期)(判事補1号)
      約774万円(地域手当0%)~約905万円(地域手当18%)
② 任官7年目(現行62期及び新61期)(判事補2号)
      約711万円(地域手当0%)~約832万円(地域手当18%)
③ 任官6年目(現行63期及び新62期)(判事補3号)
      約653万円(地域手当0%)~約767万円(地域手当18%)
④ 任官5年目(現行64期及び新63期)(判事補4号)
      約611万円(地域手当0%)~約717万円(地域手当18%)
⑤ 任官4年目(新64期)(判事補5号)
      約567万円(地域手当0%)~約665万円(地域手当18%)
⑥ 任官3年目(65期)(判事補6号)
      約555万円(地域手当0%)~約648万円(地域手当18%)
⑦ 任官2年目(66期)(判事補7号)
      約541万円(地域手当0%)~約629万円(地域手当18%)
⑧ 任官1年目(67期)(判事補9号)
      約508万円(地域手当0%)~約584万円(地域手当18%)

2(1) 平成30年1月1日時点の裁判官の報酬等に関する文書を以下のとおり掲載しています。
① 裁判官の給与
② 裁判官・検察官の給与月額表
③ 裁判官特別勤務手当等について
(2) 文書の出典は,平成29年度新任判事補研修です。
裁判官・検察官の給与月額表(地域手当20%の場合)

第7の2 上場企業の時給ランキング2017(参考)

○VORKERSの調査レポートVol.38「上場企業の時給ランキング2017」によれば,以下のとおりです。
   残業時間も含めた労働時間による「時給」だそうです。

1位:GCA株式会社の7682円
2位:株式会社キーエンスの6548円
3位:三菱商事株式会社の6368円
4位:ファナック株式会社の6361円
5位:三井物産株式会社の6296円
6位:伊藤忠商事株式会社の6025円
7位:三菱地所株式会社の5650円
8位:住友商事株式会社の5539円
9位:株式会社ジャフコの5429円
10位:丸紅株式会社の5394円
11位:三井不動産株式会社の5068円
12位:株式会社電通の5062円
13位:双日株式会社の4946円
14位:第一三共株式会社の4875円
15位:日本オラクル株式会社の4830円
16位:アステラス製薬株式会社の4816円
17位:日本有線株式会社の4787円
18位:国際石油開発帝石株式会社の4657円
19位:株式会社商船三井の4657円
20位:三洋貿易株式会社の4646円

第8 OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当すること等

1   国立国会図書館HPの「調査と情報」に掲載されている「諸外国における大学の授業料と奨学金」(「調査と情報」2015年7月9日号)の1頁目には,以下の記載があります。
① OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当する。
② 日本以外のOECD加盟国には,授業料が有償で高額,かつ給付制奨学金がない国は見られない。

2 経済産業省HPの「不安な個人,立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」(平成29年5月 次官・若手プロジェクト)30頁には,「日本は,少子高齢化の影響を考慮したとしても高齢者向け支出に比べて現役世代向け支出が低い」と書いてあります。

第9 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)13条の文言

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)13条は,以下のとおりです。

 1 この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。

2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
(d) 基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化されること。
(e) すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。

3 この規約の締約国は、父母及び場合により法定保護者が、公の機関によって設置される学校以外の学校であって国によって定められ又は承認される最低限度の教育上の基準に適合するものを児童のために選択する自由並びに自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。

4 この条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行なわれる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。 

第10の1 修習専念資金

1 修習専念資金の額は原則として月額10万円ですが,司法修習生が扶養親族を有し,貸与額の変更を希望する場合,月額12万5000円となります(裁判所HPの「司法修習生に対する修習専念資金の貸与制の概要」参照)。
   ただし,配偶者又は子に収入がある場合でも,扶養加算は認められるみたいです(裁判所HPの「修習専念資金貸与FAQ ~これから貸与を受ける方へ~」参照)。

2 法務省の法曹養成制度改革連絡協議会の第8回協議会(平成29年10月11日開催)資料4-6「新旧対照条文(司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則)」が載っています。

3 修習専念資金を借りなくても健康保険の被扶養者から外されるわけですから,黒猫のつぶやきブログ「司法修習の貸与金は借りるべきか?」をも考慮すれば,修習専念資金は借りた方がいいと思います。

4 平成29年11月13日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「外国籍であり,通称の印鑑及び口座しか持っていない場合における,修習専念資金の貸与申請方法が分かる文書」は存在しません。

5 司法修習生が修習中又は修習場所へ行く途中の事故により負傷したような場合,国家公務員災害補償法の規定に基づいた補償を受けることができます(裁判所HPの「修習専念資金貸与FAQ~ その他 貸与制に関する事項 ~」参照)。

6 「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」には,修習専念資金に関して,以下の記載があります。

   修習専念資金については「司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって,修習給付金の支給を受けてもなお必要なもの」として司法修習生の希望者に貸与することを予定しており,その額については月額原則10万円程度を想定している。
   これは,司法修習生の修習実態等に鑑みたものであり,司法修習生の通常の支出のうち修習給付金では賄われない費用としては,前記の「修習実態アンケート」(日弁連)及び平成27年度の「家計調査」(総務省統計局)等によれば,以下のとおり,おおむね10万円程度が想定される。
(内訳)合計10.2万円
・社会保険料(約1.6万円)
・所得税・住民税等(約0.5万円)
・勉強会参加費を除く交際費(約1.7万円)
・奨学金返済費用(約0.6万円)
・教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。)(約1.5万円)
・理美容・嗜好品等(約1.4万円)
・自動車等関係費(約0.7万円)
・仕送り金(約0.3万円)
・家具家電・衣服購入費等(約1.9万円)
※ 社会保険料は,平成28年度の国民年金保険料月額。所得税・住民税等は,修習給付金の金額水準に基づく所得税の試算値。勉強会参加費を除く交際費及び奨学金返済費用は,「修習実態アンケート」に回答した全ての司法修習生の平均値。教養娯楽費,理美容・嗜好品等,自動車等関係費及び仕送り金は,「家計調査」における単身世帯の消費支出の平均額。家具家電・衣服購入費は,修習の開始に伴って必要となる初期購入費用(家具家電10万円,衣服費15万円)を月割で按分した金額として,日弁連が推計した金額。
   なお,現行貸与制では,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金として,月額23万円(基本額)が希望者に貸与されている。貸与制度は,修習給付金の創設に伴い,貸与額等を見直した上で併存することになるが,新制度の創設に伴って司法修習生の経済状況や生活実態に変更が生ずるわけではないから,現行貸与制下の貸与額そのものは引き続き相当性が認められる(注5)。現行貸与制下の貸与基本額である23万円から修習給付金の基本額である13.5万円を控除した金額とほぼ一致する10万円を修習専念資金の額とすることは,このような観点からも合理的といえる。
(注5)第69期の司法修習生1,788名のうち貸与申請者は1,205名(67.39%)であり,貸与申請者のうち基本額である月額23万円の貸与を申請した者が894名(74.19%)である(このほか,月額18万円が51名(4.23%)。なお,月額23万円を基礎に,一定要件を満たして加算が認められた月額25.5万円が235名(19.50%),月額28万円が25名(2.07%)となっている。)。司法修習生ごとに貸与を要する事情や使途は様々と思われるが,こうした実績に照らす限り,月額23万円程度が修習期間中の生活の基盤確保に一般的に必要な金額水準になっていると見ることができる。

7 法務の樹海ブログ(ブログ主は71期司法修習生)の「司法修習備忘録①」(平成30年12月1日付)には以下の記載があります。
   71期からは給費制が一部復活していますが、同時に、月々10万円を最高裁判所から借り受けることが可能です。一般的に、借金が増えるのはあまり望ましいとは言えませんが、使わなくてもいいのでとりあえず借りておくべきだと思います。
   13万5000円に、住居費3万5000円を足した17万円は、普通に生活をし、書籍を買って飲み会に行って就職活動するだけでほとんどなくなってしまう金額です。上手に使えば決して司法修習を乗り切れない金額ではないですが、突然の旅行の誘いや、就職活動での移動、弁護士会登録費用など、急にまとまった支出が必要になる場面はいくらでもあります。
   最近の新人弁護士の給料の相場は400万円~700万円だと思われますので、10万円毎月借りて120万円の借金があったとしても1年で余裕で返せます。しかも無利息なのでとりあえず借りておきましょう。
修習専念資金の貸与関係事務1/2
修習専念資金の貸与関係事務2/2

第10の2 修習専念資金の貸与申請状況

修習専念資金の貸与申請状況を参照してください。

第11の1 修習給付金の税務上の取扱い

1 修習給付金に関する確定申告の時期
(1) 最初の修習給付金(12月支給分)について
ア 所得税の確定申告
(ア)   年末調整をされている給与所得者の場合,雑所得が20万円未満であれば確定申告をする必要がありません(所得税法121条1項1号)。
(イ)   12月に支給される最初の修習給付金は基本給付金13万5000円だけです(住居給付金は翌年1月から支給されます。)から,雑所得が20万円以上になることはないです。
   そのため,最初の修習給付金が雑所得に該当することだけを理由に所得税の確定申告をする必要はないです。
イ 住民税の確定申告
(ア)   課税所得がある場合,雑所得が1円でもある限り住民税の確定申告をする必要はあります(外部HPの「副業の所得が年20万円以下のブロガーに必要な住民税の申告の仕方」参照)。
   ただし,住民税の場合,給与所得控除が所得税と同じく65万円ありますし,基礎控除が33万円あります(所得税の場合,基礎控除は38万円です。)。
(イ) 例えば,バイト収入及び最初の修習給付金の合計額が98万円以下である場合,修習給付金について必要経費が認められないと解釈したとしても,住民税の確定申告をする必要はないです。
(2) 2回目以降の修習給付金について(71期司法修習生の場合)
   13万5000円×11回+13万5000円×16/30(71期の場合,平成30年12月12日終了であることに基づく日割り計算)=155万7000円が,平成30年中に支給される基本給付金の合計額となります。
   そして,平成30年中に支給された修習給付金について,平成31年3月15日頃までに確定申告をする必要があります。
(3) 一般の雑所得について特例はないこと
   公的年金等による収入が400万円以下で一定の要件を満たす場合,確定申告を行う必要はない(政府広報オンラインHPの「ご存知ですか?年金受給者の確定申告不要制度」参照)ものの,一般の雑所得についてそのような特例はありません。

修習給付金に関する雑所得を計算する上で,必要経費に算入できる項目及び算入できなさそうな項目
(1) 司法研修所の説明
   修習給付金案内27頁及び28頁の「所得税等の取扱い」には,修習給付金に関する所得税・住民税について,「必要経費として控除することができる経費はありません。」と書いてあります。
(2)   私の個人的意見
   「修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い」を参照して下さい。

3 雑所得内部で損益通算できること
(1) 雑所得内で利益と損失がある場合には相殺することができます(ヤマダ総合公認会計士事務所HP「損益通算・内部通算~内通者は誰だ!?~」参照)。
   そのため,修習給付金に基づく雑所得と,採点バイトに基づく雑損失(バイト収入から書籍代等の必要経費を控除したことによる損失)とについて損益通算することはできます。
(2) FXや先物取引のほとんどは申告分離課税扱いの雑所得です(SOHO・確定申告ガイドHP「損益通算とは?内部通算とは?」参照)から,一般的な雑所得となる修習給付金との間で損益通算することはできません。

4 税務署の申告書等閲覧サービス及び保有個人情報開示請求
(1)   税務署の申告書等閲覧サービスを利用した場合,自分が提出した所得税申告書等を税務署で閲覧させてもらうことはできますものの,コピーをもらうことはできません(国税庁HPの「申告書等閲覧サービスの実施について(事務運営指針)」参照)。
(2) 税務署に対する保有個人情報開示請求をした場合,最短1週間,長くて2,3週間かかるものの,自分が提出した所得税申告書等のコピーを送ってもらえます(外部HPの「税務署に確定申告書の再発行へ!個人の控え写しを紛失した時は?」参照)。

5 修習給付金の税務上の取扱いに関して,最高裁及び国税庁が保有する文書は存在しないこと
(1)   平成29年8月24日付の司法行政文書不開示通知書によれば,71期以降の司法修習生に対する修習給付金が非課税所得又は雑所得に該当するかどうかに関して,最高裁判所が作成し,又は取得した文書は存在しません。
(2) 平成29年8月29日付の行政文書不開示決定通知書によれば,71期以降の司法修習生に対する修習給付金が非課税所得又は雑所得に該当するかどうかに関する法務省と国税庁の協議文書は存在しません。

住民税の特別徴収
(1) 大阪市HPに「個人市・府民税の給与からの特別徴収について」が載っています。
(2) 大阪府では,平成30年度から,府内全43市町村において,原則として法定要件に該当する給与支払者である事業主全てを特別徴収義務者に指定し,個人住民税(個人府民税・市町村民税)の特別徴収(事業主が従業員の個人住民税額を給与から差し引きして納付)を徹底する予定です(大阪府HPの「オール大阪特別徴収推進強化宣言を採択!平成30年度から個人住民税の特別徴収義務者一斉指定を実施します!」参照)。

7 国民健康保険の軽減
(1) 確定申告をすることで世帯全員の所得の合計が基準額以下の世帯であることを証明した場合,医療分,後期高齢者支援金分及び介護分の保険料の平等割及び均等割を軽減されます。
(2) 大阪市の場合,7割・5割・2割軽減の他,独自の3割軽減があります(大阪市HPの「保険料の軽減・減免」参照)。

8 より詳細な説明
(1) 以下の記事を参照して下さい。
① 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
② 修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い
③ 修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い
④ 修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法等
(2) リンク先のブログ記事は,平成30年7月26日の兵庫県弁護士会における修習費用制度勉強会で発表したものを手直ししたものです。

第11の2 修習給付金と,扶養控除及び配偶者控除の関係

1 修習給付金と,扶養控除との関係
(1) 納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合,一定の金額の所得控除が受けられますところ,これを扶養控除といいます。
(2)ア 扶養親族とは,その年の12月31日の現況で,以下の四つの要件のすべてに当てはまる人をいいます(国税庁HPの「No.1180 扶養控除」参照)。
① 配偶者以外の親族等であること。
② 納税者と生計を一にしていること。
③ 年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)。
④ 青色申告の事業専従者としてその年を通じて一度も給料の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
イ 控除対象扶養親族とは,扶養親族のうち,その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
ウ 司法修習生に採用された年についていえば,導入修習開始に際して旅費及び移転給付金が支給され,導入修習中に12月分の修習給付金が支給されると思いますが,引越代等の必要経費を控除すれば,それだけで年間の合計所得金額が38万円を超えるわけではありません。
   そのため,司法修習生に採用された年は控除対象扶養親族のままであると思われます。
(3) 司法修習生に採用された年の翌年の年末,つまり,二回試験の合格発表後の年末の場合,修習給付金に関する雑所得の金額だけで38万円を超えると思われます。
   そのため,司法修習生に採用された年の翌年は控除対象扶養親族から外れると思います。

2 修習給付金と,配偶者控除との関係
(1) 納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合,一定の金額の所得控除が受けられますところ,これを配偶者控除といいます。
(2)ア 控除対象配偶者とは,その年の12月31日の現況で,以下の四つの要件のすべてに当てはまる人をいいます(国税庁HPの「No.1191 配偶者控除」参照)。
① 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
② 納税者と生計を一にしていること。
③ 年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)。
④ 青色申告の事業専従者としてその年を通じて一度も給料の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
イ 司法修習生に採用された年についていえば,導入修習開始に際して旅費及び移転給付金が支給され,導入修習中に12月分の修習給付金が支給されると思いますが,引越代等の必要経費を控除すれば,それだけで年間の合計所得金額が38万円を超えるわけではありません。
   そのため,司法修習生に採用された年は控除対象配偶者のままであると思われます。
(3) 司法修習生に採用された年の翌年の年末,つまり,二回試験の合格発表後の年末の場合,修習給付金に関する雑所得の金額だけで38万円を超えると思われます。
   そのため,司法修習生に採用された年の翌年は控除対象配偶者から外れると思います。

第11の3 修習給付金は,理論上は給与所得に該当する可能性があること

1   給与所得(所得税法28条1項)とは,雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいいます(最高裁昭和56年4月24日判決)。
   そのため,例えば,修習給付金が非課税所得でないとしても,司法修習生による実務修習が実務修習庁会の指揮命令に服して提供した労務に該当するといえる場合,修習給付金は労務の対価として最高裁判所から受ける給付に該当する結果,給与所得であるということで給与所得控除の適用を主張できることとなります。
2   平成29年1月20日付の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では,従前の基準では明確にされていなかった労働時間について以下の説明がなされています。
   労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。そのため、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければならないこと。
   ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱うこと。
(中略)
ウ   参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
3 給与所得とは,使用人や役員に支払う俸給や給料,賃金,歳費,賞与のほか,これらの性質を有するものをいいます(国税庁HPのタックスアンサー「No.2508 給与所得となるもの」参照)。
   つまり,会社と委任関係にある役員に対する給料も給与所得となるわけですから,雇用関係が存在しないというだけの理由で給与所得該当性を否定されるわけではありません。
4 理屈の上では以上のとおりですが,諸般の事情により,修習給付金が給与所得に該当すると裁判所が判断することはあり得ない気がします。

第12 弁護士登録5年目の平均所得の推移

1 法務省の国会答弁資料によれば,弁護士登録5年目の平均所得の推移は以下のとおりです。
 (1) 平成23年の,法曹の要請に関するフォーラムによる調査結果
54期:1386万円
55期:1110万円
56期:1236万円
57期:1204万円
58期:1107万円
(2) 法務省が,平成28年に弁護士を対象に実施したアンケート調査の集計結果
現行61期:648万円
新 61期:697万円
現行62期:643万円
新 62期:690万円
現行63期:697万円
新 63期:686万円

2 平成29年7月25日現在,法科大学院協会HPの「理事長からのメッセージ」には以下の記載があります。
   弁護士の活動領域は着実に拡大しており、活躍の舞台は、法律事務所だけでなく、企業、公務員、国際機関、国会議員政策秘書など実に多様になりました。弁護士の就職難といわれる状況も確実に解消されつつあります。司法試験に合格し司法修習を終えた者の97%が就職でき、しかも、弁護士5年目の年収(中央値-経費等を引く前の数字)は1,081万円と、安定した収入を得ています。
法務省の国会答弁資料

第13 原子力損害賠償の状況等(参考)

1 原子力損害賠償の状況(被災地域によって支給額は異なります。)
(1) 原子力損害賠償紛争審査会(第47回)「資料4-1 原子力損害賠償のお支払い状況等」によれば,平成30年1月17日現在,本賠償の金額が約7兆4960億円であり,仮払補償金が約1529億円みたいです。
(2) 東京電力ホールディングスHP「賠償金のお支払い状況」に,最新の「原子力損害賠償のご請求・お支払い等」が載っています。
(3) 金融庁HPの「東日本大震災に係る保険金・共済金の支払い見込み額、支払い実績等について」(平成23年7月19日付)によれば,保険金の見込み合計が約2兆7000億円,保険金の実績合計が約1兆8000億円です。
(4) zakzak HP「【震災から3年 福島のリアル】賠償の差が生み出した被災生活格差 被害大きくても対象地区外れると…」には以下の記載があります。
   文部科学省によれば、原発事故の賠償金は、原子力損害賠償紛争審査会の指針に基づき、東京電力が負担し、帰還困難区域は故郷喪失慰謝料が上乗せされる。
   同省の試算では、30代の夫、妻、子供2人の持ち家4人世帯が福島県内の都市部へ移住した場合、(1)帰還困難区域で1億675万円(2)居住制限区域で7197万円(3)避難指示解除準備区域で5681万円(いずれも総額)-に分かれる。

2 帰還困難区域の住民に対する賠償の金額
(1)ア 日経新聞HPの「原発事故の賠償、4人世帯で9000万円 東電が実績公表」(平成25年10月26日付)には,「文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は25日、東京電力福島第1原子力発電所の事故の賠償実績を公表した。東電が帰還困難区域の住民に支払った額は4人世帯で平均9000万円だった。」とか,「1人あたり月10万円を支払っている避難指示区域の住民への慰謝料は、避難指示を解除してから1年間払い続ける方向で大筋合意した。」と書いてあります。
   また,リンク先の表によれば,東電の賠償実績として,4人世帯の平均値は,財物が4910万円,就労不能損害が1090万円,精神的損害が3000万円であり,合計9000万円とのことですし,単身世帯の平均値は,財物が3210万円,就労不能損害が550万円,精神的損害が750万円であり,合計4510万円とのことです。
イ 日経新聞HPの「原発事故5年、賠償巡り住民分断 同じ町で異なる救済  」(平成28年3月2日付)には,「避難指示区域に指定され、人影のない同県富岡町に商店を構える60歳代男性は店舗の土地・建物への賠償などで「1億5000万円を受け取り、4000万円の借金を返済できた」と打ち明ける。」と書いてあります。
(2) 帰還困難区域の住民に対する慰謝料は,平成26年3月26日付で700万円増えました(東電HPの「移住を余儀なくされたことによる精神的損害に係る賠償のお取り扱いについて」参照)から,合計1450万円です。
(3) 日本エネルギー会議HP「いわき市四倉町が全国3位」(平成28年11月12日付)には,「福島第一原発の事故で浜通りの住民が県内外に避難したが、賠償金支払いを契機に県内、特にいわき市に新たに家を求める動きが強まった。このため、いわき市の土地が高騰、地元市民からは「避難者が地価を吊り上げた、いわき市内に家を持つことが出来なくなった」と嘆く声があがった。」などと書いてあります。
(4) 福島地裁いわき支部平成30年3月22日判決は,帰還困難区域,居住制限区域及び避難指示解除準備区域の原告について一人当たり追加で150万円の慰謝料を認めました。
   なお,原告らの請求額は,1人当たり古里喪失の慰謝料2000万円と避難に伴う精神的苦痛に対する慰謝料として月額50万円だったみたいです(河北新報HP「<原発事故避難者集団訴訟>古里喪失の損害認定、東電に賠償命令 福島地裁いわき支部」(平成30年3月23日付))。
(5)ア 『気になるあの人のウラ側一挙ご開帳SP』(平成30年6月15日,テレビ東京放送分)には以下の記載があります。
   弁護士の通帳を見せてもらう。弁護士の平均年収は1000万円でテレビに出演している弁護士先生は5000万円から1億円になるそうだ。今回、通帳を見せてくれるのは福永活也弁護士。通帳には1週間で6億円の賠償金が入金されていた。独身の福永弁護士は旅行が趣味で今まで旅先は130ヵ国だそうで、登山も趣味で780万円でエベレスト山頂を行っていた。
イ Youtube動画「通帳見たらスゴかった 2018年6月15日 【~気になるあの人のウラ側一挙ご開帳SP~】 」には,新62期の福永活也弁護士に関して,「6億円のうち報酬金は?」→「1億円いかないくらい」(36分23秒の字幕)とか,「被災者への賠償金は140億円 その内の一部を報酬金として受け取る」(37分5秒の字幕)と書いてあります。
(6) 南相馬市で暮らしていますブログ「東電から賠償金をもらっている人と、そうでない人と」には「賠償金でマンションを2つも3つも買ってる人もいるそうです。」などと書いてあります。

3 福島の原子力発電所と地域社会
   Wikipediaの「福島の原子力発電所と地域社会」が非常に参考になります。
   例えば,「2002年の東京電力原発トラブル隠し事件の余波は、立地町村にも降りかかった。トラブル隠し対策のため県が態度を硬化させたことで再稼働が進まない中、検査による収入が見通せないため本発電所の地元8町村で就労していた協力企業の社員(当時約7300名)の消費もまた低迷し、飲食店などには打撃となったという。」などと書いてあります。

4 在外財産補償問題
(1) 在外財産補償問題とは,第二次世界大戦の敗戦によって失われた引揚者などの日本人の在外資産の補償を巡る問題をいいます。
(2)ア 引揚者に対する金銭給付は,昭和32年制定の「引揚者給付金等補償法」に基づき464億円が支給され,昭和42年制定の「引揚者に対する特別交付金支給法」に基づき,全国に350万人いる引揚者に対し,2100億円余りが支給されたみたいです(Wikipediaの「在外財産補償問題」参照)。
イ 東京都福祉保健局HP「引揚者給付金・引揚者特別交付金」によれば,引揚者給付金(厚生労働省所管)は終戦時の年齢に応じて1人当たり2万8000円から7000円であり,引揚者特別交付金(総務省所管)は終戦時の年齢に応じて1人当たり16万円から2万円です。
(3) 平和祈念展示資料館(総務省委託)HP「海外からの引揚者」には,「海外からの引揚者とは、さきの大戦の終結に伴い、生活の本拠としていた海外から故国日本への引揚げを余儀なくされた方々をいいます。身の危険が迫る中、すべてを捨て、大変な労苦を体験しながら故国を目指しましたが、引揚げ途中で亡くなった方も多くいました。」などと書いてあります。

5 日本の戦後賠償の金額等
(1) 日本の戦後賠償については,外務省HPの「歴史問題Q&A 関連資料 日本の具体的戦後処理(賠償,財産・請求権問題)」が詳しいです。
(2)ア 外務省HPの「賠償並びに戦後処理の一環としてなされた経済協力及び支払い等」によれば,日本の戦後賠償の支払総額は264億2864万8268ドル(1兆3525億2789万8145円)みたいです。
イ 主なものは,賠償額10億1208万ドル(3643億4880万円)及び在外財産の放棄236億8100万ドル(3794億9900万円)です。
ウ フィリピンに対する賠償は5億5000万ドル,ベトナムに対する賠償は3900万ドル,ビルマに対する賠償は2億ドル,インドネシアに対する賠償は2億2308万ドルです。
エ 在外財産の放棄のうち,朝鮮が702億5600万円,台湾(中華民国)が425億4200万円,中国(東北)が1465億3200万円,中国(華北)が554億3700万円,中国(華中・華南)が367億1800万円,その他の地域(樺太,南洋,その他丹法地域,欧米諸国等)が280億1400万円です。
(3) NAVERまとめの「日本はドイツのように戦後補償をしていないと主張する人がいますが、本当はどうなんでしょう 」には以下の趣旨の記載があります(②及び③の現在換算の計算方法はよく分かりません。)。
① ドイツの連邦補償法制定以来,同法に基づく給付申請約450万件中220万件が認定され、これまでにおよそ710.5億万マルク(3兆5951.3億円)を給付、現在は約14万人に年間15億マルク(759億円 1人平均月額900マルク(1マルク50.6円換算で45540円))を支払っている。
② 例えばフィリピンには賠償約1980億円、借款約900億円、インドネシアには賠償約803億円、借款約1440億円を支払っています。この他、別表にあるように、賠償、補償の総額は約3565億5千万円、借款約2687億8千万円で併せて6253億円(現在換算20兆971.42億円)にのぼります。
③ これ以外にも事実上の賠償として、当時日本が海外に保有していた財産はすべて没収されました。
   それは日本政府が海外にもっていた預金のほか鉄道、工場、建築物、はては国民個人の預金、住宅までを含み、当時の計算で約1兆1千億円(現在換算35兆3540億円)に達しています。
④ 現在の経済大国、日本ではなく、戦後のまだ貧しい時代に、時には国家予算の3割近くの賠償金を約束し、きちんと実行してきていたのです。
⑤ ドイツは個人補償が中心で、国に対する賠償金は支払っていません。
   一方、日本は国に対する賠償、および経済協力という形で、ドイツの数倍の金額を支払っています。
(4) Wikipediaに「日本の戦争賠償と戦後補償」が載っています。

6 中国残留邦人等への支援
(1)   中国残留邦人等には,中国残留邦人及び樺太残留邦人がいます。
(2) 中国残留邦人等に対する援護の概要は,①従前の支援として,一時帰国援護,永住帰国援護,定着・自立援護のほか,②平成20年から開始された支援として,老齢基礎年金等の満額支給,老齢基礎年金等を補完する支援給付,地域社会における生活支援があり,③平成26年10月から開始された支援として,配偶者に対する支援策があります(外務省HPの「中国残留邦人等への支援」参照)。
(3) 中国帰国者支援・交流センターHP「ご存じですか中国残留邦人問題 中国からの帰国者に温かい支援を!」が載っています。

7 被災者生活再建支援制度に基づく給付金等

(1) 被災者生活再建支援制度の場合,基礎支援金(住宅の被害程度に応じて支給する支援金)が100万円(前回,解体又は長期避難)又は50万円(大規模半壊)であり,加算支援金(住宅の再建方法に応じて支給する支援金)は200万円(建設又は購入),100万円(補修)又は賃借(50万円)です(内閣府防災情報のページ「被災者生活再建支援法」参照)。
(2) 世界のニュース トトメス5世HP「福島の被災貴族 一世帯1億円貰って優雅な生活」に以下の記載があります。
   原発の避難家族が1億円もらった一方で、津波の被害にあった家族は国からの直接補償金と生活費の援助など合計しても数百万円だった筈でした。
   倒壊した家を再建するための支援なども後で実施されたかも知れませんが、支給された金額は福島の原発避難家族の1割以下です。
   金の出所は両者とも要するに日本政府で、違いは原発避難は東電の補償金という名目で出されたという点でした。
(3) 編集者かさこブログ「津波被災者の心の叫び「原発避難者ばかりがなぜ優遇・・・」」が載っています。

8 犯罪被害者等給付金制度等
(1) 犯罪被害者等給付金制度は,犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(昭和55年5月1日法律第36号)に基づく制度です。
(2) 犯罪被害者等給付金制度における障害給付金の場合,犯罪被害者の収入と残った障害の程度に応じて算出した額が支払われますところ,重度の障害が残った場合(障害等級1級から3級までに該当する場合),3974万4000円(最高額)から1056万円(最低額)までの間となります(警察庁HPの「犯罪被害給付制度」参照)。
(3) 平成7年3月20日発生の地下鉄サリン事件を始めとするオウム真理教の犯罪行為による被害者の場合,死亡した人の遺族に対しては2000万円が,後遺障害が残った人に対しては最高で3000万円が支給されています(オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律5条1項)。

9 交通事故における政府保障事業

(1) 国土交通省自動車局保障制度参事官室が運営している政府保障事業は,自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険(共済)の対象とならない「ひき逃げ事故」や「無保険(共済)事故」にあわれた被害者に対し、健康保険や労災保険等の他の社会保険の給付(他法令給付)や本来の損害賠償責任者の支払によっても、なお被害者に損害が残る場合に、最終的な救済措置として、法定限度額の範囲内で、政府(国土交通省)がその損害をてん補する制度です(国土交通省HPの「政府保障事業について(ひき逃げ・無保険事故の被害者の救済)」参照)。
(2) 法定限度額は,傷害の場合が120万円,死亡の場合が3000万円,後遺障害の場合が障害の程度に応じて75万円から4000万円です。
(3) 自動車損害賠償保障事業委託業務実施の手引1/32/3及び3/3を掲載しています。

10 拉致被害者等への支援

(1) 北朝鮮による日本人拉致問題HP「拉致被害者・家族に対する総合的な支援策について」に拉致被害者等への支援が一通り書いてありますし,「帰国被害者等が本邦に永住する場合には、拉致被害者等給付金を、永住の意思決定の時から10年を限度として、毎月、支給する。なお、北朝鮮での生活が非常に長期間に及んでいるため10年間では生活基盤再建に至らない可能性があること等を踏まえ、被害者及び被害者の配偶者については、例外的に5年を限度として支給期限を延長することができる。」とのことです。
(2) 内閣府HPに載ってある「施策名:拉致被害者等への支援」には以下の記載があります。
○拉致被害者等給付金
   帰国した被害者等が1人の世帯で17万円、2人いる世帯で24万円を基本とし、以降1人増えるごとに3万円を加算し、所得により調整を行う(支給期間10年)。また、大都市居住の場合の地域間の調整や子の配偶者等への扶養加算などを行う。
○老齢給付金等の給付
   帰国拉致被害者等の老齢時における良好かつ平穏な生活を保障するための老齢給付金、65歳以上で帰国した拉致被害者に65歳から帰国した時点までの国民年金相当額の特別給付金の支給、子供の国民年金保険料の追納支援等を行う。
○委託費
   派遣形式による指導業務(社会適応・日本語指導、生活自立指導)や社会体験研修、地域交流事業などを被害者等が居住する地方公共団体(県・市町村)に委託する。また、日本語の不自由な高齢者を想定した生活相談といった委託事業も行う。

11 関弁連理事長及び東京三会会長の声明
   関弁連理事長及び東京三会会長が出した「東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から7年を迎えるにあたっての声明」(平成30年3月9日付)には,「原子力発電所事故の被害者に対する救済・賠償は依然として不十分である。いくつかの集団訴訟で国や東京電力の責任を認める画期的判決が出ているが、残念ながら被害者救済に資する十分な賠償を命じたと言える内容ではない。」と書いてあります。
1(1) 被害者側の交通事故(検察審査会を含む。)の初回の面談相談は無料であり,債務整理,相続,情報公開請求その他の面談相談は30分3000円(税込み)ですし,交通事故については,無料の電話相談もやっています(事件受任の可能性があるものに限ります。)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。

2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。