司法修習生の給費制及び修習手当

第0 目次

第1の1 昭和22年の司法修習生の給費制導入
第1の2 平成10年の裁判所法改正
第1の3 平成16年の裁判所法改正
第1の4 平成22年の裁判所法改正及びその後の予算措置
第1の5 平成23年11月採用の新65期からの,修習資金貸与制の導入
第2   給費制時代の司法修習生の各種手当と修習資金貸与制との比較等
第3   司法修習生の給費制廃止違憲訴訟
第4   修習手当
第5の1 司法修習生の給費制に関する裁判所法逐条解説の記載(平成29年8月5日追加
第5の2 司法修習生が裁判所共済組合の組合員であったことに関する裁判所法逐条解説の記載(平成29年8月5日追加
第6   OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当すること等
第7   経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)の文言
第8   司法修習生の身分に関する最高裁判所事務総局審議官の説明(平成29年8月4日追加

*1 「司法修習生の修習資金貸与制」及び「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」も参照して下さい。
*2 日弁連HPの「司法修習生に対する給費の実現と充実した司法修習を」が参考になります。

第1の1 昭和22年の司法修習生の給費制導入

1 制定当時の裁判所法
   制定当時の裁判所法(昭和22年4月16日法律第59号)(昭和22年5月3日施行)(リンク先の「閲覧」タブをクリックすれば,御署名原本を閲覧できます。)は,司法修習生の給費制について以下のとおり定めていました。
第67条(修習・試験)
① 司法修習生は、少なくとも二年間修習をした後試験に合格したときは、司法修習生の修習を終える。
② 司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。
③ 第一項の修習及び試験に関する事項は、最高裁判所がこれを定める。

2 裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律の制定及び廃止
(1) 裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律(昭和22年4月17日法律第65号)(昭和22年5月3日施行)(リンク先の「閲覧」タブをクリックすれば,御署名原本を閲覧できます。)は,司法修習生の給費制について,昭和22年12月31日までの応急的措置として,以下のとおり定めていました。
   そのため,司法官試補(「司法官採用に関する戦前の制度」参照)が昭和22年5月3日に高輪1期又は高輪2期の司法修習生に切り替わった時点で(裁判所法施行令18条参照),司法修習生の給費制が導入されたこととなります。
第8条
①   司法修習生の受ける給与の額は、当分の間、最高裁判所の定めるところによる。
② 前項の給与については、第五条及び第六条の規定を準用する。
③ 司法修習生には、第一項の給与の外、当分の間、一般の官吏の例による給与を支給することができる。
第9条
   裁判官の報酬及び司法修習生の給与等に関する細則は,最高裁判所がこれを定める。
(2)   裁判官の報酬等に関する法律(昭和23年7月1日法律第75号)俸給その他の給与(旅費は除く。)の額に関する規定は昭和23年1月1日に遡及して適用されたことにつき同法付則1項)により,裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律は廃止されました。
   しかし,同法第14条は,「裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第六十五号)は、これを廃止する。但し、司法修習生の受ける給与については、なお従前の例による。」と定めていましたから,引き続き司法修習生の給費制が施行されることとなりました。

第1の2 平成10年の裁判所法改正

平成10年の裁判所法改正に至るまでの経緯
(1)   法曹養成制度等改革協議会は,平成7年11月13日付の意見書において,以下の提言を行いました。
① 司法の機能を充実し国民の法的ニーズに応えるため,中期的には年間1,500人程度を目標として合格者増を図り,かつ,修習期間を大幅に短縮することを骨子とする改革を行い,これに伴って,両訴を必須科目化し,口述試験の見直しを行うことを内容とする司法試験制度の改革を行うべき(多数意見)。
② 今後,法曹三者は,司法試験制度及び法曹養成制度の抜本的改革を実現させるため,直ちに協議を行い,速やかに具体的な方策を採らなければならない。
(2) 最高裁判所,法務省及び日弁連の法曹三者は,平成9年10月28日付けの「司法試験制度と法曹養成制度に関する合意」として,以下の合意を成立させました(「三者協議会における合意について」参照)。
① 司法試験合格者を,平成10年度は800人程度に,平成11年度から年間1,000人程度に増加。
② 司法修習制度について,21世紀を担うにふさわしい法曹を養成するため,修習の内容及び方法について配慮と工夫を行うとの観点に立って,平成11年度に始まる司法修習から修習期間を1年6ヶ月とし,司法研修所における修習では,社会に存在する多様な法的ニーズについての基本的な情報を提供するとともに,法曹としての識見,法曹倫理等の習得を図り,また,実務修習では,社会の実相に触れさせる機会を付与する。
③ 司法試験制度について,平成12年度の第二次試験から,論文式試験の科目につき,憲法,民法,商法及び刑法の4科目に加え,民事訴訟法及び刑事訴訟法を必須科目とし,受験者の負担軽減の観点から,法律選択科目を廃止する。また,受験者の負担軽減等の観点から,口述試験の科目を,論文式試験の科目のうち商法を除く5科目とする。
④ 論文式試験における合格者の決定方法,司法試験合格者の年間1,500人程度への増加及び法曹資格取得後の研修の充実などについて,引き続き協議を行う。

2 平成10年の裁判所法改正の内容

    裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)による改正後の裁判所法67条2項は,「司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。ただし、修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については、この限りでない。」となり,第53期司法修習生以降については,司法修習の期間が1年6月となるとともに,二回試験の合格留保者に対する給与の支給が廃止されることとなりました。

3 司法修習生に対して給与が支給される根拠と裁判所法67条2項の改正の趣旨
   この点に関する法務省の説明は以下のとおりです(平成10年2月4日付の法務省文書参照)。
① 戦後の新憲法の下においては,法曹一体の要請から,法曹養成制度が統一され,裁判官,検察官又は弁護士のいずれを志望するによせ,司法修習生として少なくとも2年間同じ司法修習を経なければならないものとされた。これは,国が責務として,民主国家の実現のため,裁判官及び検察官の志望者だけでなく弁護士志望者に対しても,それらの職責の重要性に鑑み,司法修習生を,将来の日本の司法を支えるべき人材として養成すべきものであるとの考えにたつものであり,このような国の責務としての法曹要請の一環として,司法修習生に対しては,その修習期間中,給与が支給されることとなったものである(裁判所法67条2項)。
② ところで,現在,修習生に対する給与については,所定の2年間の修習期間のみならず,その修習期間経過後も,例えば,二回試験を受験したが合格留保となった者に対しては,追試により合格して修習を終了するまでの間,これが支給されている。
③ しかし,司法修習生に対する国庫からの給与の支給の根拠が上述したところにあり,国は,司法修習生において法曹として求められる水準に到達するのに必要な一定の修習内容・期間を定めて修習をさせ,国民の負託を受けて国として行うべき法曹要請の責務を果たしているものである以上,その一定の期間内において所定の課程を履践しながら,当然に到達すべき水準に達し得なかった者,すなわち自己の責任により合格留保となった者等に対して,その後においてもなお給与の支給を続けることは必ずしも国民の負託にこたえるものとはいえない。そこで,今回の改正により,上記1の司法修習生に対する給与支給についての考え方自体はこれを当然に維持しつつ,国が法曹養成におけるその責務を果たす限度において,すなわち,最高裁判所が修習のため通常必要な期間として定める期間内においてのみ給与の支給を行うこととするものである。なお,通常必要な期間とは,具体的には,司法修習のカリキュラム開始日から終了日までの期間をいう。

4 内閣法制局の法律案審議録
   裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)に関する,内閣法制局の法律案審議録を掲載しています。

第1の3 平成16年の裁判所法改正

1 平成16年の裁判所法改正までの経緯
(1) 司法制度改革審議会意見書及び司法制度改革推進計画の記載 

ア 平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書における記載
   修習生に対する給与の支給(給費制)については,将来的には貸与制への切替えや廃止をすべきではないかとの指摘もあり,新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置付けを考慮しつつ,その在り方を検討すべきである。
イ 司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)における記載
   新司法試験実施後の司法修習が,司法修習生の増加に実効的に対応するとともに,法科大学院での教育内容をも踏まえ,実務修習を中核として位置付けつつ,修習内容を適切に工夫して実施されるよう,司法修習の具体的な内容等について,最高裁における検討状況を踏まえた上で検討を行い,少なくとも主要な事項の枠組みについて結論を得る。また,併せて,司法修習生の給費制の在り方につき検討を行う。
 
(2) 財政制度等審議会の建議
ア 平成13年11月15日の,財政制度等審議会財政制度分科会の「平成14年度予算の編成等に関する建議」における記載
   13.司法制度改革
   司法制度は,社会の複雑化,多様化,国際化,事前規制型から事後チェック型行政への移行といった変化に対応し,見直さなければならないものであり,「司法制度改革審議会意見書」(平成13年6月12日)を踏まえ,司法制度改革を推進することとされているところである。
   今後,裁判の迅速化,司法の人的基盤の拡充等に向けた具体的方策の検討を進める中で,限られた財政資金の効率的使用の観点から,新たな法曹養成制度,国民の司法参加等について合理的な制度を構築していくことが必要である。
   なお,総人件費抑制の必要性や公務員全体の給与の在り方についての検討も踏まえ,裁判所・検察庁等についても,その給与の在り方について適切な検討が加えられるべきである。
イ 平成14年6月3日の,
財政制度等審議会の「平成15年度予算編成の基本的考え方について」における記載
   14.司法制度改革
   司法制度改革については,限られた財政資金の効率的使用の観点から,合理的な制度を構築していくことが必要であり,裁判官,検察官の増員を図る際には,既存の人材の有効活用,訴訟手続改善等の制度の効率的活用を図ることが必要である。また,法科大学院での教育を踏まえた司法修習の在り方,司法修習生の給費制等,これまでの制度や既定予算の見直しを行うことが必要である。
   なお,裁判官,検察官の給与についても,公務員給与の在り方の検討も踏まえ,適切な検討が加えられるべきである。
ウ 平成14年11月20日の,財政制度等審議会の「平成15年度予算の編成等に関する建議」における記載
   10.司法制度改革
   司法機能の充実・強化に当たっては,法曹人口の増大や迅速な紛争解決を実現する司法制度改革に係る国民の負担を軽減するため,訴訟手続き等に関して制度・運用面の改善を可能な限り行うこと,弁護士報酬の透明化・合理化を図ることなどとともに,既定の予算の見直しを行うことが必要である。
  既定の予算の見直しについては,例えば,司法修習生手当に関して,各種の公的給与・給付の見直し等を踏まえ,受益と負担の観点等から,早期に給費制は廃止し,貸与制への切替を行うべきである。
エ 平成15年6月9日の,財政制度等審議会の「平成16年度予算編成の基本的考え方について」における記載
   10.司法制度改革
   裁判の迅速化,公的刑事弁護の拡充,司法ネットの構築等の司法機能の充実・強化に当たっては,限られた財政資金の効率的使用の観点から,最高裁判所による検証,公的試験の投入にふさわしい透明性・説明責任の確保,関連機関との連携等に配意し,合理的かつ機能的な制度・仕組みを構築していくことが必要である。
  また,司法制度改革を進める中で,「15年度建議」でも述べたとおり司法修習生の給費制は早期に廃止し貸与制への切替を行うべきであり,公務員給与の在り方についての見直しも踏まえ,裁判官・検察官の給与の在り方についても見直しに取り組んでいくべきである。
オ 平成16年5月17日付の,財政制度等審議会の「平成17年度予算編成の基本的考え方について」における記載
Ⅱ. 各論 
  10.治安対策・司法制度改革   
(2)司法制度改革
   新たな被疑者国選弁護や司法過疎地域対策などを含めた総合法律支援制度に関しては,その主たる担い手となる日本司法支援センターについて効果的かつ効率的な体制・運営の在り方を検討する必要がある。具体的には,常勤弁護士の活用などによる効果的な弁護士供給体制の構築,地域毎のニーズに応じたきめ細かな対応,関連法律職種,地方公共団体との密接な連携等を実現することが重要である。
  裁判員制度の導入,法曹人口の拡大等に伴い,中期的にも財政負担の増大が見込まれるところである。「11月建議」でも指摘したように,司法修習生の給費制は早期に廃止し貸与制への切替を行うべきであり,また,裁判官・検察官の給与についても,一定の明確な目安を踏まえた昇級の在り方について検討するなど,その在り方について見直しを行うべきである。

2 平成16年の裁判所法改正の内容
(1)ア 現行64期までの司法修習生については,「司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。ただし、修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については、この限りでない。」と定める裁判所法67条2項に基づき,給与の支給を受けていました(司法修習生の給費制)。
  しかし,裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)による改正後の裁判所法67条2項は,「司法修習生は、その修習期間中、最高裁判所の定めるところにより、その修習に専念しなければならない。 」となり,平成22年11月1日からの給費制の廃止,修習資金貸与制の導入が決定されました。
イ 裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)3項は,裁判官の報酬等に関する法律(昭和23年7月1日法律第75号)14条ただし書を削りました。
(2) 平成16年の裁判所法改正では当初,新60期司法修習生から貸与制を導入することを前提に,平成18年11月1日から施行することが予定されていました(「裁判所法の一部を改正する法律案」(第161回国会閣法第7号)付則1項参照)。
  しかし,貸与制実施の延長を求める日弁連の活動(平成16年6月14日付の「司法修習給費制の堅持を求める緊急声明」参照)等の結果,裁判所法の一部を改正する法律案に対する修正案が可決されたため,平成22年11月1日から施行される予定ということに変更されました。

3 修習専念義務を明文化した理由
(1) 裁判所法67条2項は,従前は給費制を定めた条文でしたが,貸与制が導入されてからは,修習専念義務を定めた条文となっています。
(2) この点に関する法務省の説明は以下のとおりです(平成16年9月13日付の法務省の参考資料参照)。
  修習資金は,後記のとおり,司法修習生がその修習期間中に修習に専念することができるようにするための経済的支援を行い,修習の実効性を確保するため,すなわち,司法修習生が修習に専念する義務(以下「修習専念義務」という。)を担保するために貸与するものであるところ,このような貸与性の趣旨を法律上明確にするためには,制度の目的・前提となる修習専念義務を法律上規定し,法制的にこれを明確に位置付ける必要がある。そこで,第67条第2項中,削除すべき「国庫から一定額の支給を受ける」を「最高裁判所の定めるところにより,その修習に専念しなければならない」に改めることとしたものである。
  現行の給費制においては,「給与を受ける」と規定することにより,修習期間中の生活を経済的に保障して司法修習生が修習に専念することができるようにする趣旨であることが法律上も明確に定められているということができ,その上更に修習専念義務を法律上規定する必要はないものと考えられるが,貸与制においては,「修習資金を貸与する」と規定するだけでは貸与の趣旨が法律上明確であるとはいえず,これを明確にするためには,法律上,制度の目的・前提となる修習専念義務を規定し,法制的にこれを明確に位置付けた上で,修習資金が,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であることを規定する必要があると考えられる。
  そして,貸与制においても,司法修習の意義・重要性や修習専念義務の内容は変わるものではなく,修習専念義務についての上記の規定は,現在と同じ内容の修習専念義務(抽象的な行為規範としての修習専念義務)を,上記のような法制的な理由から法律上規定するものであり,その具体的な内容(具体的な修習への専念の在り方)については現在と同様に最高裁判所規則で定めるべきものと考えられる(現在は,第67条の第3項の包括委任を根拠として定められている現行規則が,新第2項の個別委任を根拠とすることになるものであり,現行規則の形式等に何ら変更を要するものではない。)。

4 平成16年の裁判所法改正に関する文書が最高裁判所に存在しないこと
   平成16年の裁判所法改正に関する,①議員への説明,②趣旨説明,③想定問答,④答弁書及び⑤国会審議録といった文書は,最高裁判所には存在しません(平成28年度(最情)第28号(平成28年10月11日答申))。

5 内閣法制局の法律案審議録
   裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)に関する,内閣法制局の法律案審議録を掲載しています。

6   平成16年の裁判所法改正に関する日弁連の会長談話
   平成16年12月3日付の日弁連の会長談話(第161回臨時国会の終了にあたって)には,以下の記載があります。
   本日、第161回臨時国会が会期満了により終了した。今国会において審議された司法制度改革に関連する法案のうち「裁判外紛争解決手続の利用の促進等に関する法律案(ADR法案)」及び「裁判所法の一部を改正する法律案(司法修習生への給費制廃止)」の2法案は可決成立し、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(弁護士報酬の敗訴者負担制度)」は廃案となった。今臨時国会は、司法制度改革推進本部の設置期限が平成16年11月末とされたその最終の国会であり、今次司法制度改革における立法は基本的に完了した。
   日本弁護士連合会は、今次司法制度改革における諸立法により、主権者である国民が裁判官とともに裁判に参画する裁判員制度の創設、被疑者国選弁護制度の創設、利用者である市民が利用しやすい裁判所、日本司法支援センターなどの弁護士へのアクセスの制度及びこれらを支えるべき法曹制度と法曹養成の制度が整備されたことを心から歓迎するものである。

第1の4 平成22年の裁判所法改正及びその後の予算措置

1 平成22年の裁判所法改正
(1)ア 平成22年3月10日の再投票で当選し,同年4月1日に日弁連会長に就任した宇都宮健児弁護士の主導により,日弁連は,給費制の存続を訴える活動を開始しました(日弁連HPの「司法修習生に対する給費の実現と充実した司法修習を」参照)。
  そして,新64期司法修習が開始する前日である平成22年11月26日,給費制を1年間延長する旨の裁判所法改正法が成立しました。
   その結果,同年11月1日から平成23年10月31日までに採用された司法修習生(具体的には,新64期及び現行65期の司法修習生)は,(裁判所法の一部を改正する法律(平成22年12月3日法律第64号))(同日施行)による改正後の裁判所法付則4項・67条2項に基づき,1年間の修習期間中,国庫から一定額の給与(毎月20万4200円)を受けることができることとなりました(詳細につき,司法修習生の給与に関する暫定措置規則(平成22年12月9日最高裁判所規則第11号)参照)。
イ 法科大学院協会理事長は,平成22年10月12日,「修習生の給費制維持は司法制度改革に逆行(理事長所感)」を発表して,司法修習生の給費制を維持することに反対しました。
ウ 平成22年11月18日午前5時,司法修習生の給費制を1年延長するための裁判所法改正を議員立法で行う予定であることがNHKで報道されました。
エ 平成22年9月17日発足の菅第1次改造内閣において第85代法務大臣に就任した柳田稔衆議院議員は,平成22年11月14日に国会軽視発言をした結果,同月22日に法務大臣を辞任し,仙谷由人衆議院議員が第86代法務大臣となりました。
オ 衆議院予算委員長提出予定の裁判所法の一部を改正する法律案に対する国会法第57条の3に基づく内閣の意見要旨(平成22年11月22日付)は,「標記裁判所法の一部を改正する法律案については,政府としては,やむを得ないものと認めます。」というものでした。
カ 日弁連は,平成22年11月26日,「司法修習貸与制施行延期に関する「裁判所法の一部を改正する法律」成立にあたっての会長声明」を出しました。
(2) 司法修習生の貸与制は平成22年11月1日にいったん開始していましたから,同年12月3日,同年11月1日に遡及して司法修習生の給費制が適用されることとなりました。
(3) 菅野雅之最高裁判所事務総局審議官は,平成23年7月13日の第3回「法曹の養成に関するフォーラム」において「早いもので,既に次期第65期の修習生が11月には修習を開始するという状況になっております。昨年は,貸与制がいったん施行された後に,私どもがよく分からない状況のもとで,議員立法によりこれを遡及的に延期するという正に異例の事態が起こり,現場には大きな影響が生じて,その対応に苦慮することになりました。今回は昨年とは異なり,正にこういうお忙しい委員の先生方をお迎えしてこのようなフォーラムで議論していただくという大変貴重な機会が設けられているわけですので,私どもとしてもそういう意味では安心しているところでございます。是非このフォーラムで早期にきちんとした結論を出していただけるようにお願いしたいと申し上げます。」と発言しました(リンク先の16頁)。

2 平成22年の裁判所法改正に関する文書が最高裁判所に存在しないこと
   平成22年の裁判所法改正に関する,①議員への説明,②趣旨説明,③想定問答,④答弁書及び⑤国会審議録といった文書は,最高裁判所には存在しません(平成28年度(最情)第28号(平成28年10月11日答申))。

3 その後の予算措置
(1)ア 新64期及び現行65期に対する給費制を存続する際,最高裁判所長官は,財務大臣に対し,平成22年12月27日付で予算流用等承認要求を行い,財務大臣は,最高裁判所長官に対し,平成23年1月4日付で予算流用等承認を通知しました(財政法33条2項及び3項参照)。
  具体的には,「修習資金貸与金」という目から,「司法修習生手当」という目に,20億4676万2000円を流用しました。金額については,平成22年12月から平成23年3月までの分と思われます。
イ 裁判所法の一部を改正する法律(平成22年12月3日法律第64号の施行に要する経費は,平成22年度において約27億円,平成23年度において約73億円(なお,経過措置により給与を支給する制度が存続する平成24年度において約2億円)の見込みでした。
(2) 裁判所所管の一般会計歳出予算各目明細書のうち,最高裁判所,下級裁判所,検察審査費,裁判費,裁判所施設費及び裁判所予備経費という「項」までの区分は国会の議決事項であるのに対し(財政法23条),「目」への区分は内閣の決定事項です(財政法31条)。

第1の5 平成23年11月採用の新65期からの,修習資金貸与制の導入

1 平成23年3月11日に東日本大震災が発生しました。
   また,法務省の「法曹の要請に関するフォーラム」(平成23年5月25日初開催)は,平成23年8月31日,司法修習生に対する経済的支援の基本的な在り方は,「貸与制を基本とした上で,個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置(十分な資力を有しない者に対する負担軽減措置)を講ずる。」等とする第一次取りまとめを行いました(法務省HPの「法曹の養成に関するフォーラム」の「取りまとめ」参照)。
  そのため,平成23年11月採用の新65期以降については特段の法改正はなされませんでしたから,新65期から司法修習生の修習資金貸与制が導入されました。

2 平成29年4月18日の参議院法務委員会における国会答弁資料によれば,給与制から貸与制に移行した理由は以下のとおりです。
・ 司法修習生の増加に実効的に対応する必要があったこと
・ 司法制度改革の諸施策を進める上で限りある財政資金をより効率的に活用し,司法制度全体に関して国民の理解が得られる合理的な財政負担を図る必要があったこと
・ 公務員ではなく公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは現行法上異例の制度であること
   等を考慮すれば,給費制を維持することについて国民の理解を得ることは困難であった。

3 日弁連が平成21年8月20日付で発表した「「司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(案)」に対する意見書」に,修習資金貸与制に関する問題点が一通り記載されています。

4 修習資金貸与制の詳細については,「司法修習生の修習資金貸与制」を参照してください。

給費制から貸与制に移行した理由

第2 給費制時代の司法修習生の各種手当と修習資金貸与制との比較等

1   司法修習生の給費制が実施されていた現行65期までの司法修習生の場合
(1)   司法修習生は,①裁判所共済組合の組合員として各種の給付を受けることができましたし,②実務修習中,通勤手当,住居手当及び寒冷地手当を支給されていましたし,③集合修習中,通勤手当,住居手当及び日額旅費を支給されていました(平成25年12月17日開催の第5回法曹養成制度改革顧問会議の資料3-1「司法修習生に対する支給等一覧」参照)。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員として,引き続き短期給付及び福祉事業を受けることができました(共済組合の任意継続組合員の意義につき,文部科学省共済組合HPの「退職後の医療」参照)。
(3)ア 裁判所共済組合への加入実績に基づき,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらえます。
  私のねんきん定期便によれば,59期徳島修習(1年6月の修習)(調整手当→地域手当は0%)で扶養手当をもらっていなかった私の場合,公務員厚生年金からの老齢厚生年金は年額2万7407円です。
イ 平成27年10月1日,共済年金は厚生年金に統合された結果,公務員厚生年金となりました(外部HPの「共済年金は厚生年金に統一されます」参照)。
ウ 平成28年7月27日発表の平成27年簡易生命表の概況によれば, 平成27年現在,30歳男性の平均余命は51.46年であり(平均で81.46歳まで生きるということ。),30歳女性の平均余命は57.51年です(平均で87.51歳まで生きるということ。)。
  65歳から老齢厚生年金を受給できますから, 男性であれば平均で16.46年間,女性であれば平均で22.51年間,公務員厚生年金から老齢厚生年金を受給できることとなります。
エ 今後の年金の状況については,厚生労働省HPの「いっしょに検証!公的年金」にある,「財政検証結果レポート」(発表年は16年,21年及び26年)が非常に参考になります。

2 司法修習生の修習資金貸与制が実施された新65期以降の司法修習生の場合
(1)   司法修習生は,①裁判所共済組合の組合員となることはできません(国家公務員共済組合法2条1項1号・国家公務員共済組合法施行令2条2項4号「国及び行政執行法人から給与を受けない者」参照)し,②実務修習中,通勤手当は出ませんから交通費は自腹になりますし,住居手当は出ませんから実家等から実務修習地に通えない限り家賃は自腹になりますし,寒冷地手当は出ませんから寒冷地の実務修習地における暖房代等は自腹になりますし,③集合修習中,通勤手当及び日額旅費は出ませんから交通費は自腹になりますし,住居手当は出ませんから実家等又はいずみ寮から司法研修所に通えない限り家賃は自腹になります。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員となることはできません。
(3) 裁判所共済組合への加入実績がありませんから,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらうことはできません。

3 給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧
(1) 平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料14(PDF77頁,末尾73頁)に,給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧表が載っています。
(2)   新64期司法修習生の場合,毎月20万4200円の給与を支給されていたほか,諸手当として以下のものがありました。
① 扶養手当
   配偶者につき1万3000円,配偶者以外の扶養親族一人につき6500円等
② 住居手当
   家賃額に応じて2万7000円を限度に支給
③ 通勤手当
   交通機関等の利用者について一ヶ月あたり5万5000円を限度に支給
  自転車等の使用者について使用距離に応じて2000円~2万4500円を支給
④ 地域手当
   支給対象地域で修習を行う者について,給与月額等に,修習地の区分に応じた割合(3%~18%)を乗じて得た額を支給
⑤ 寒冷地手当
   支給対象地域で修習を行う者について,11月から3月までの間,修習地の区分等に応じて7360円~2万6380円を支給
⑥ 期末手当
   年間で,給与月額等の2.6月分を支給
⑦ 勤勉手当 
   年間で,給与月額等の1.29月分を支給 

4 他の公的な研修制度の取扱い
   平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料15(PDF79頁,末尾75頁)によれば,他の公的な研修制度の取扱いは以下のとおりです。
① 防衛大学校
   陸上・海上・航空の各自衛隊の幹部自衛官となる者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は4年です。
② 防衛医科大学校
   医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は6年です。
③ 税務大学校
   税務職員に対する必要な研修等を目的としており,身分は税務職員であり,終了後は引き続き税務職員として勤務し,給与が支給され,期間は個々の研修によります。
④ 警察大学校
   上級幹部に対して必要な知識,技能,指導能力及び管理能力を習得させるための教養等を目的としており,身分は警察官であり,終了後は引き続き警察官として勤務し,給与が支給され,期間は個々の教養課程によります。
⑤ 航空大学校
    航空機の操縦士の教育訓練を目的としており,身分は学生(非公務員)であり,終了後は民間企業等への就職等であり,給与等の支給はなく,期間は2年です。

5 平成17年度決算検査報告における指摘
   最高裁判所ほか79裁判所は,会計検査院の平成17年度決算検査報告において,自動車等を使用して通勤する職員等に対する通勤手当の認定等を適切に行い、適正な支給額となるよう改善させられました(平成17年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項参照)。

第3 司法修習生の給費制廃止違憲訴訟

1 司法修習生の給費制廃止違憲訴訟については,同訴訟HPに詳細が掲載されています。

2 平成28年8月現在,65期から67期にわたり,全国で8つの裁判が続いているみたいです。

第4 修習手当

1(1) 修習手当とは,司法修習生への給付型の経済的支援をいうものとして,日弁連等が使用していました。
  司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明(平成28年1月20日付の日弁連の会長声明)を見る限り,修習手当は,現行65期までの給費制と異なるように読めます。
(2)ア 修習手当の創設を求める日弁連の活動は,日弁連HPの「司法修習生に対する給費の実現と充実した司法修習を」に書いてあります。
  また,リンク先のイベント欄を見る限り,平成25年6月5日の院内集会までは「給費制復活」という言葉が使われているものの,平成25年10月30日の院内集会以後は「給費の実現」という言葉が使われていて,平成28年10月11日の院内意見交換会は「修習手当の創設」という言葉が使われています。
イ 「院内」集会及び「院内」意見交換会は,衆議院又は参議院の議員会館内の会議室で開催されています。

2(1) 内閣府経済財政諮問会議HPの「経済財政運営と改革の基本方針2016~600兆円経済への道筋~(平成28年6月2日閣議決定)」(いわゆる骨太の方針2016)の末尾28頁(PDF36頁)には,「海洋の安全及び権益の確保、危機管理機能の確保、予防司法(紛争を未然に予防する法務)、国際的な法的紛争対応の充実、総合法律支援など頼りがいのある司法の確保、法科大学院に要する経済的・時間的負担の縮減や司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化、法教育の推進、いわゆるヘイトスピーチの解消に向けた人権擁護施策の推進、死因究明体制の強化、犯罪被害者等支援のための施策の充実、交通安全対策、宇宙インフラの整備・活用、水資源の安全確保に向けた「水循環基本計画」等を推進する。」と書いてあります。
   修習手当について閣議決定で言及されるようになったのはこれが初めてです。
(2) 「未来への投資を実現する経済対策」(平成28年8月2日閣議決定)22頁(PDF28頁)に,「(2)若者への支援拡充、女性活躍の推進(中略)・法科大学院に要する経済的・時間的負担の縮減や司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化等の推進(法務省、最高裁判所、文部科学省)」と記載されました。

3  平成28年7月31日から同年9月29日にかけて,以下のとおり全国各地で,地元弁護士会が主催し,日弁連等が共催した,修習手当の創設を求める市民集会が開催されました。
① 平成28年7月31日 市民集会in東北(場所:仙台弁護士会館4階会議室)
② 平成28年8月6日  市民集会in九州(場所:福岡県弁護士会館3階会議室)
③ 平成28年8月27日 市民集会in中部(場所:愛知県弁護士会館5階ホール)
④ 平成28年9月3日  市民集会in近畿(場所:大阪弁護士会館2階会議室)
⑤ 平成28年9月24日 市民集会in北陸(場所:金沢弁護士会館2階ホール)
⑥ 平成28年9月25日 市民集会in中四国(場所:広島弁護士会館)
⑦ 平成28年9月29日 市民集会in関東(場所:関内ホール・小ホール)

4 71期以降の修習給付金については,「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」を参照してください。

第5の1 司法修習生の給費制に関する裁判所法逐条解説(昭和44年6月30日発行)の記載

○最高裁判所事務総局総務局が作成した裁判所法逐条解説(昭和44年6月30日発行)(法曹の養成に関するフォーラム第4回会議(平成23年8月4日開催)資料6に含まれています。)396頁ないし398頁には,「司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。」と定める当時の裁判所法67条2項に関して以下の記載があります(改行を追加しました。)。
 
① 一般に、「給与」とは、国および地方公務員、政府関係機関の職員等について、その勤務に対する対価をいい、俸給、給料、報酬、賃金、手当等種々の名称のものを包含するといわれている。
   しかし、司法修習生は、公務員ではなく、従って、また一定の職務を遂行すべき義務を負うわけではなく、ただ誠実に修習をすべき義務を負うにすぎない。
   修習は、国に対する勤務ないし給付の性質をもつものではなく、むしろ自己の向上のためになされるものであるから、修習の対価として給与を受けるということは、意味をなさない。
   ただ、法曹の資格要件としての司法修習生の地位の重要性にかんがみ、これに人材を吸収し、また修習に専念させる等の見地から、とくに一定額の給与が支給されることとされたものである。
② 司法修習生の受ける給与は、本俸に相当する「給与」のほか、調整手当、暫定手当、扶養手当、通勤手当、寒冷地手当等である(報酬法附則14,裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律8等)。
   給与は一定額とされており(注)、現在(昭和44年1月1日)の本俸に相当する給与は月額33,530円である(報酬法附則14、裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律8,9,報酬規則一別表)。
   なお、司法修習生には、旅費が支給される(国家公務員等の旅費に関する法律、国家公務員等の旅費支給規程、昭和27・6・11会甲第1128号「内国旅行の旅費について」最高裁事務総長依命通達参照)。
③ 司法修習生の給与は、「その修習期間中」受けられる。修習期間とは、司法修習生を命ぜられた時(66Ⅰ参照)、試験に合格して修習を終えた時(67Ⅰ参照)、または司法修習生を罷免された時(68参照)までの間をいう。
   司法研修所において修習中であると、裁判所、検察庁等において実務修習中であるとを問わず、弁護士会における実務修習期間もふくまれる。
   病気その他の正当な理由によって修習しないときでも罷免されない限り給与を受けることができる。
④ 司法修習生の給与は、「国庫から」給される。
   司法修習生は、修習の全期間を通じて、修習に関しては、司法研修所長の統轄をうけるものであり、また、司法修習生の修習に関する事務は最高裁判所に置かれる司法研修所で取り扱うものとされている以上、給与も国庫から受けるべきは、当然といえよう。
   ただ、司法修習生のうちには、弁護士を志望する者もおり、かつ、一般に、弁護士会でも実務修習をすること等の関係もあり、疑をさけるため、とくに国庫から給与を受けることが明らかにされたものであろう。
   予算上は、最高裁判所の経費として計上されている。
⑤ 以上のほか、支給の時期等の点については、裁判官の報酬、裁判官以外の裁判所職員の俸給等に準じる。
(注) ここに、「一定額」とは、特定の司法修習生の受ける給与の額が一定であることをいい、必ずしもすべての司法修習生の受ける給与の額が均一であることを意味するものではない(たとえば、修習第2年目の司法修習生の給与の額を収集1年目の司法修習生のそれより多額とすることも考えられよう。もっとも、現在は同一額である。)。
   なお、司法修習生はその地位なる限り、常に給与の全額を受けることができ、一般公務員の懲戒や休職の場合のように、給与を減額されることはない。

第5の2 司法修習生が裁判所共済組合の組合員であったことに関する裁判所法逐条解説の記載

○最高裁判所事務総局総務局が作成した裁判所法逐条解説(昭和44年6月30日発行)(法曹の養成に関するフォーラム第4回会議(平成23年8月4日開催)資料6に含まれています。)385頁には以下の記載があります(改行を追加しました。)。

   昭和33年法律第128号による全面改正前の国家公務員共済組合法の当時は、旧裁判所共済組合運営規則(昭和33裁判所共済組合規則1号)第18条において、「組合員は、裁判所職員(司法修習生を含む。)とする。」とされて、司法修習生は、裁判所共済組合の組合員と取り扱われていた。
   昭和33年法律法律第128号により全面改正された国家公務員共済組合法の施行(昭和33年7月1日)以後は、右のような明確な規定はおかれていない。
   しかし、従前組合員として取り扱われていたこと、前記法律においてこれを除外する経過規定がないこと等を考えると、組合員として取り扱うのが相当であろう。現在、事実上司法修習生は組合員として取り扱われている。

第6 OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当すること等

1   国立国会図書館HPの「調査と情報」に掲載されている「諸外国における大学の授業料と奨学金」(「調査と情報」2015年7月9日号)の1頁目には,以下の記載があります。
① OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当する。
② 日本以外のOECD加盟国には,授業料が有償で高額,かつ給付制奨学金がない国は見られない。

2 経済産業省HPの「不安な個人,立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」(平成29年5月 次官・若手プロジェクト)30頁には,「日本は,少子高齢化の影響を考慮したとしても高齢者向け支出に比べて現役世代向け支出が低い」と書いてあります。

第7 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)の文言

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)13条は,以下のとおりです。

 1 この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。

2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
(d) 基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化されること。
(e) すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。

3 この規約の締約国は、父母及び場合により法定保護者が、公の機関によって設置される学校以外の学校であって国によって定められ又は承認される最低限度の教育上の基準に適合するものを児童のために選択する自由並びに自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。

4 この条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行なわれる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。 

第8 司法修習生の身分に関する最高裁判所事務総局審議官の説明

○菅野雅之最高裁判所事務総局審議官は,平成23年8月4日の「第4回法曹の養成に関するフォーラム」において以下の説明をしています(リンク先の7頁及び8頁)(ナンバリング及び改行を追加しました。)(掲載資料の一覧につき,法務省HPの「法曹の養成に関するフォーラム第4回会議(平成23年8月4日開催)」参照)。
1 今,川上オブザーバーから御指摘いただいた点,具体的には日弁連提出資料の資料6の資料1としてペーパーをお出しいただいているわけですが,このペーパーの中で2ページの3,「司法修習と給費制は不可分一体のもの」との見出しを付けたパラグラフの記述におきまして,その主張の根拠として最高裁判所判決,あるいは最高裁判所事務総局編の裁判所法逐条解説等の記載が援用されているわけでございますが,これらの点については,ちょっと論旨を誤って用いられているのではないかと思われますので,この点についてのみ一言申し上げさせていただきます。
   なお,念のためここで引用されている判例につきましては,本日御参考までに全文を資料7として提出させていただいておりますし,文献につきましては日弁連さん御自身が資料として提出されていますので,正確な事実関係については,後ほどこれらの原典に当たっていただければ,私どもの申し上げたいことを十分に御理解いただけるものと思っております。
2 まず,日弁連が援用する昭和42年の最高裁判所判決は,司法修習生がその身分を離れるに際し,退職手当の支給を求めた事件について,「司法修習生は国家公務員退職手当法にいう国家公務員又はこれに準ずる者に当たらない」との判断を示し,退職手当の請求を棄却した原審の判断を是認したものです。
   この判決は,司法修習生は法曹資格を取得するための修習を行うものであって,国の事務を担当するものでないなどとして,国家公務員には当たらないとし,また,修習期間中,国庫から一定額の給与を受けるほか,諸手当や旅費が支給され,さらに,一定の身分上の規律に服し,兼業を禁止され,守秘義務を負うが,これらは司法修習生をして修習に専念させるための配慮ないしは修習が秘密事項に関することがあるための配慮に過ぎず,司法修習生の勤務形態が国の事務に従事する職員に類似し,又はこれに準ずる形式ないし実態があるからではないとした上で,これらの取扱いを根拠として司法修習生を退職手当法の適用を受け得る職員に準ずる者と解することはできないとしております。
3 このようなことから明らかなように,この判決は,給費制がとられている時代の司法修習生について,給費を受けていることが国家公務員に準じる者に当たると解する根拠にならないとの判断を示したものであって,その理由の中で給費は職務の対価ではなく,修習に専念させるための配慮に過ぎないと述べているものです。
   この事件では給費制の当否が争点となっているのではないことから,この程度の判断にとどまるのは当然のことですが,司法修習生をして,修習に専念させるための配慮として,給費制が必須のものという判断を示したものでないことは明らかでありまして,給費制が政策的に望ましいかどうかについて言及するものでないことも明らかです。
   司法修習制度と給費制が不可分一体のものという日弁連の主張の裏付けとして,この判決を援用するのはいかがなものかと思います。
4 なお,日弁連のペーパーには,修習生の給費と「公務員に準じた身分」とが不可分一体のものであることの根拠として,日弁連提出資料の2番の旧版の司法修習生便覧に,「司法修習生は公務員ではないが,給与,規律,その他の身分関係については公務員に準じた取扱いを受ける」との記載があることを指摘しております。
   しかし,このような記載は給費制のもとで司法修習生に対して給与等が公務員に準じて支給されている実情があることから,それらを含めた司法修習生の身分関係に関する規律を簡潔に説明するものとして,公務員に準じた「取扱い」を受ける旨の表現を用いたものに過ぎず,様々な法律関係において司法修習生を準公務員として取り扱うべきという内容のものではありませんし,またこの司法修習生の身分と給費が不可分一体ということを述べているものでないことは,記載自体からも明らかだと思われます。
5 次に,日弁連がどのような趣旨で裁判所法逐条解説の記載を注記されているのか,ちょっと真意をはかりかねるところはございますが,その記載というのは,貸与制が導入される前の旧裁判所法67条2項に,「司法修習生は,その修習期間中,国庫から一定額の給与を受け
る」との規定の解説の一部分でありまして,司法修習生について給費制の当否を論じ,給費制をとるべきであるという結論を述べるものでは全くなく,給費制がとられている場合には,その給与は弁護士会などからではなく,当然,「国庫から」受けるべきであることを述べているのに過ぎません。
   弁護士会での実務修習もあり,疑義を避けるために,法文上,特に「国庫から」給与を受けることを明らかにしたものであることを解説したものであり,このことは日弁連御自身が提出された資料6の5の逐条解説の「22/49」と表記されております
6 397ページの末行部分のその該当部分及びその前後を併せ読めば明らかだと思います。
   特に,該当部分の前の部分では,先ほどの判例と同様に,給費は職務の対価ではないことを明言しております。
   したがいまして,司法修習制度と給費制が一体不可分のものという日弁連の主張を裏付けるものではないように思っております。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
 
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。