1(1)ア 戸倉三郎東京高裁長官は,平成28年6月21日,ツイッターに不適切なつぶやきをしたり,縄で縛られた上半身裸の男性の画像を投稿したりした岡口基一東京高裁第22民事部判事について,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意処分をしました。
しかし,平成28年8月2日付の,東京高裁の司法行政文書不開示通知書によれば,「東京高裁が平成28年6月21日付で岡口基一裁判官を口頭注意処分した際に作成した文書」について,東京高裁は,作成又は取得していないことになっています。
イ togetterまとめに「岡口基一さんokaguchik 国民の皆様へさて,私こと,本日,ツイッターに不適切なつぶやきをしたということで,所属庁の長官から正式な口頭注意処分を受けました。 」が載っています。
(2) ツイッター等のSNSを国家公務員が私的利用する際の注意点については,総務省人事・恩給局の「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」(平成25年6月付)に書いてあります。
2(1) 平成28年9月23日の岡口基一裁判官のツイッターには,「俺の処分の時に作成された膨大な資料は,公文書だから,安易に破棄されていなければ,今後も保管され続けます。過去の俺のつぶやきが全てプリントアウトされ,マーカー引き,付箋,注意書きなどがされ,白ブリーフ画像などは拡大コピーされています。」とか,「俺の処分の時に作られた膨大な資料は廃棄されずに保存されているだろうか・。ダビデエプロン画像の拡大コピーなど」と書いてあります。
そのため,「東京高裁が平成28年6月21日付で岡口基一裁判官を口頭注意処分した際に作成した文書」自体が存在することは間違いないのであって,それが「司法行政文書」に該当するかどうかなのかもしれません。
(2) 平成28年8月2日付の,東京高裁の司法行政文書不開示通知書については,平成28年9月23日付で苦情の申出を出しました。
(3) 「東京高裁が平成28年6月21日付で岡口基一裁判官を口頭注意処分した際に作成した文書」は存在しないとする,平成28年12月14日付の最高裁判所事務総長の理由説明書を掲載しています。
(4) 平成29年度(情)答申第1号(平成29年4月28日答申)では,「東京高裁が平成28年6月21日付で岡口基一裁判官を口頭注意処分した際に作成した文書」は,「本件注意のとき又は本件注意に供するために作成した文書」と読み替えられた上で,文書自体が作成されてないとされました。
3(1) 平成29年3月23日付の司法行政文書不開示通知書によれば,東京高裁長官が下級裁判所事務処理規則21条に基づき注意を与える際の事務手続が分かる文書は,裁判所HPに掲載されている文書(該当する文書は特に見当たりませんが。)を除き,存在しません。
(2) 平成29年度(情)答申第2号(平成29年4月28日答申)には,司法行政手続の中で,下級裁判所事務処理規則21条に基づく裁判官に対する注意の運用において,「どのような手続がとられるのか,文書が作成されるのか,作成されるとしてどのような文書が作成,管理,保存されるのかなどについて,本来,これを公にすると,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意という人事管理に係る事務に関与する判断権者及び職員に対し,文書の作成,管理,保存について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる。」と書いてあります。
しかし,東京高裁長官が下級裁判所事務処理規則21条に基づき注意を与える際の事務手続が分かる文書が存在しないことは,平成29年3月23日付の司法行政文書不開示通知書によって明らかにされています。
4 平成29年6月16日付の司法行政文書不開示通知書によれば,東京高裁が作成した,岡口基一裁判官のtwitterでの発言内容を印刷した文書は存在しません。
5 デジタル鹿砦社(ろくさいしゃ)通信の「司法当局は今なお隠ぺい中 岡口基一裁判官「半裸写真投稿問題」の関係文書」に一連の経緯が書いてあります。
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裁判所の情報公開
第0 目次
第1の2 官民データ活用推進基本法は意識されていないと思われること
第2の1 裁判所に対する情報公開請求の実績
第2の2 岡口基一裁判官に対する口頭注意処分に関する司法行政文書は作成されていないこと
第3 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申
第4 裁判所の不開示決定は司法審査の対象とならないこと
第5 検察審査会の情報公開
第6 公文書管理法における,参議院内閣委員会の付帯決議
第7 裁判所の情報公開の場合,最高裁平成26年7月14日判決の判示内容は特に考慮されていないこと
第8 裁判所の情報公開に関する統計文書
第9 PKO日報問題に関する特別防衛監察結果報告で示された,行政文書管理及び情報公開業務の改善策
第10 公益通報者保護法と公務員の守秘義務の関係
第11の1 司法に関する情報提供・公開の在り方に関する平成12年6月当時の裁判所の説明
第11の2 司法に関する情報公開の推進(平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書)
*0 公文書等の管理に関する法律1条は,「国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものである」と定めています。
*1 裁判所HPの「裁判所の情報公開・個人情報保護について」には,手続の骨子を定めたが載っています。
*2 以下の文書を掲載しています。
① 裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱(平成27年7月1日からの実施分)
② 裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱の実施の細目について(平成27年4月6日付の最高裁判所事務総長通達)
③ 情報公開に関する運用要領(平成27年7月1日版)
④ 司法行政文書開示手続の手引(平成29年3月21日版)第一部・総論編,第二部・各論編,別紙1~別紙26及び参考資料
⑤ 司法行政文書の開示に伴う開示文書の謄写の取扱いについて(平成22年10月19日付の,最高裁判所事務総局秘書課と司法協会総務部の申合せ)
⑥ 司法行政文書及び保有個人情報の開示の実施に伴う開示文書の謄写の取扱いについて(平成27年3月25日付の,最高裁判所事務総局秘書課と司法協会の申合せ)
*3 以下の記事も参照して下さい。
① 裁判所の文書管理
② 最高裁判所事務総局等の組織
③ 最高裁判所事務総局の事務分掌
④ 行政機関の情報公開
*4 平成30年8月2日付の司法行政文書不開示通知書によれば,会議資料等を事前に準備すると開示対象となるため,当日に作成者(担当部課)から,封筒等に入れ,配付し,開示対象にならないよう (主催の局課は関わっていないよう)にするという取扱いが書いてある文書は存在しません。
*5 平成30年8月2日付の司法行政文書不開示通知書によれば,会議資料等に関するパソコンデータ(ワード,エクセル等)は,会議終了後,直ちに廃棄する方針がとられていることが分かる文書は存在しません。
*6 平成30年8月23日付の司法行政文書不開示通知書によれば,最高裁判所に対する情報公開請求の件数がもっとも多い人の開示請求の状況について取りまとめた文書は存在しません。
第1の1 総論
1 裁判所に対する情報公開請求の一般的な説明
(1) 裁判所に対する情報公開請求の一般的な説明は,裁判所HPの裁判所の情報公開・個人情報保護に掲載されています。
(2) 平成27年7月1日に開始した苦情申立て制度(裁判所の不開示決定又は部分開示決定に対するもの)の一般的な説明は,裁判所HPの情報公開・個人情報保護審査委員会に掲載されています。
(3) 裁判所の情報公開の対象は司法行政文書に限られるのであって,事件記録の閲覧謄写制度がある(民事訴訟法91条)こと等から,裁判事務に関する文書は対象外となっています。
2 裁判事務に関する文書の意義
(2) 裁判事務に関する文書には,事件記録や事件書類(事件に関する書類で記録から分離されたもの)に限られず,専ら裁判事務のために用いるものとして作成し,又は取得した文書で,裁判所の裁判部において管理しているものが含まれます(平成27年度(情)答申第5号(平成28年3月8日答申))。
(3) 最高裁判所事務総局の職員が執筆した「裁判所が保管する歴史公文書の移管」によれば,国立公文書館に移管される裁判所の文書には,裁判文書及び司法行政文書しかありません。
そして,裁判文書とは,裁判事務,すなわち,一切の法律上の争訟及びその他の法律において裁判所が取り扱う事件に関する一切の事務に関して作成するものであり,「事件記録」及び「事件書類」(例えば,民事事件の判決原本)からなるとされています。
そのため,裁判事務に関する文書のうち,事件記録や事件書類に該当しないものは,司法行政文書にも該当しませんから,国立公文書館に移管されることはないと思われます。
3 情報公開の抜け道が存在すること
外部HPの「国立公文書館は政府の「紙くず箱」だと言った元館長の勇気-(天木直人氏)」には,以下の記載があります。
その毎日新聞の記事は、文書管理のずさんさを許す公文書管理法の欠陥より、もっと深刻な文書管理法の本質的欠陥を指摘している。
すなわち、文書管理法は、官僚たちが都合の悪い文書を隠す事を防げないという。
公文書を作成しなかったり、ひそかに処分したり、中には「個人メモ」という形で、職務に使っても公文書にあたらないからという理由で隠す「抜け道」まで許しているという。
4 裁判官の生年月日は情報公開の対象となること等
(1) 最高裁判所に対して裁判官の略歴等の情報公開請求をしたり,内閣官房内閣総務官に対して裁判官の履歴書等(閣議書添付文書)の情報公開請求をしたりすれば,判事補を含むすべての裁判官の生年月日を開示してもらえます(「裁判官の略歴等の開示について(依頼)」(平成28年6月16日付の最高裁判所事務総局人事局長の文書)のほか,平成28年6月28日付の内閣総理大臣の裁決書参照)。
(2) 裁判所の職員は,文書管理者の指示に従い,裁判所における経緯も含めた意思決定に至る過程及び裁判所の事務の実績を合理的に跡付け,又は検証することができるよう,処理に係る事案が軽微なものである場合を除き,司法行政文書を作成しなければなりません(「司法行政文書の管理について(通達)」(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長通達)第3.1)。
しかし,平成29年度(最情)答申第20号(平成29年7月24日答申)によれば,平成28年6月16日付で,すべての裁判官の生年月日を開示すべきと判断するに至った経緯が分かる文書は存在しないそうです。
5 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の3人の委員の報酬合計
(1) 平成30年9月20日付の開示文書によれば,以下のとおりです。
平成27年度:52万6100円
平成28年度:83万5000円
平成29年度:86万7000円(概数)
(2) 裁判所HPの「過去の開催状況」によれば,平成27年度は9回,平成28年度は14回,平成29年度は15回,委員会が開催されました。
6 その他
(1) 総務省HPに,日弁連人権擁護委員会が作成した「裁判所行政情報開示人権救済申立事件 調査報告書」(平成15年12月)(リンク先の6頁以下)が載っています。
(2) 首相官邸HPに載ってある「国民が利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」について(要旨)(平成12年6月13日付の日弁連文書)(平成12年6月13日開催の第22回司法制度改革審議会配付資料)には,「Ⅵ.司法に関する情報公開」として,「全ての判例情報がインターネット・ホームページにおいて公開されるべきである。その他公開の対象となるものとしては、ADRに関する情報、一定の裁判申立等に必要な書式情報などが考えられる。」と書いてあります。
第1の2 官民データ活用推進基本法は意識されていないと思われること
2条1項
この法律において「官民データ」とは、電磁的記録(中略)に記録された情報(中略)であって、国若しくは地方公共団体又は独立行政法人(中略)若しくはその他の事業者により、その事務又は事業の遂行に当たり、管理され、利用され、又は提供されるものをいう。
3条5項
官民データ活用の推進に当たっては、国民の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化及び効率化に資するよう、国民の利便性の向上に資する分野及び当該分野以外の行政分野において、情報通信の技術の更なる活用の促進が図られなければならない。
3条8項
官民データ活用の推進に当たっては、官民データの効果的かつ効率的な活用を図るため、人工知能関連技術、インターネット・オブ・シングス活用関連技術、クラウド・コンピューティング・サービス関連技術その他の先端的な技術の活用が促進されなければならない。
4条
国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、官民データ活用の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
11条1項
国及び地方公共団体は、自らが保有する官民データについて、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにしつつ、国民がインターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて容易に利用できるよう、必要な措置を講ずるものとする。
(2) 政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)は,世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(平成29年5月30日閣議決定)(概要につき,「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画 概要」参照)を作成しました(官民データ活用推進基本法8条1項参照)。
2 最高裁判所規則は,その主要なものが裁判所HPの「規則集」に掲載されているだけであり,ここに掲載されていない最高裁判所規則の最新版は通常,インターネットでは入手できません。
しかし,最高裁判所規則は,一般に販売され各地の図書館にも所蔵されている法令集である「現行日本法規」(法務省大臣官房司法法制部編)(税込みで27万円)に掲載されている点で容易に入手可能であることから,溶け込み版も含めて開示請求の対象とする必要はないそうです(平成28年度(最情)答申第39号(平成28年12月2日答申))。
そのため,このことだけからしても,裁判所の情報公開において,官民データ活用推進基本法は意識されていないと思われます。
第2の1 裁判所に対する情報公開請求の実績
0 この記事ボックスでは,私の開示請求等によって最高裁判所の取扱いが変更されて開示文書が増えたり,開示範囲が拡張されたりした事例を記載しています。
ちなみに,日弁連会則11条(非違不正の是正)は,「弁護士は、常に法令が適正に運用されているどうかを注意し、いやしくも非違不正を発見したときは、その是正に努めなければならない。」と定めています。
1 平成26年7月28日付の司法行政文書不開示通知書によれば,同日当時は最高裁判所に存在しなかった,平成14年7月1日から平成23年12月1日までの間の「裁判官の号別在職状況」を,平成27年11月26日付の司法行政文書開示通知書により,開示してもらいました。
2 平成27年10月19日付の「苦情の申出に係る対応について(通知)」により,最高裁判所でされた民事の破棄判決及び破棄決定の裁判年月日及び事件番号は,慣行として公にされている情報(情報公開法5条1号ただし書イ)に該当することを認めてもらいました。
3(1) 平成27年12月1日付の「苦情の申出に係る対応について(通知)」により,51期から60期までの①司法修習生考試結果集計表及び②司法修習生成績集計表を最高裁判所に発見してもらいました。
(2) 司法修習生考試というのは,いわゆる二回試験のことです。
4(1) ①平成28年4月6日付の補充理由説明書及び②平成28年7月28日付の苦情の申し出に係る対応について(通知)により,平成28年3月に廃棄することが予定されていた56期から68期までの実務修習希望地調査表を最高裁判所に開示してもらえました(平成28年度(最情)答申第15号(平成28年6月28日答申)参照)。
→ この件については,平成28年9月23日の産経ニュース「裁判所の情報公開不服審査1年 39件の答申で1件を「裁判所の不開示決定は不当」と苦言」で報道されました。
(2) 平成27年2月12日付の司法行政文書不開示通知書によれば,同日時点では,68期司法修習生の修習希望地を集計した一覧表は,作成又は取得していないことになっていました。
5(1) 平成28年度(最情)答申第40号(平成28年12月21日答申)により,司法大観が司法行政文書開示手続の対象となることを認めてもらいました。
なお,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会が,最高裁判所事務総長の対応について是正すべきという答申を出したのはこれがはじめてです。
(2) 最高裁判所事務総長から,平成29年1月20日付の苦情の申し出に係る対応について(通知)をいただきました。
(3) 平成29年3月17日付の司法行政文書不開示通知書により,司法大観は不開示情報に該当するとされました。
平成28年(行情)答申第753号(平成29年2月27日答申)により,司法大観は全部不開示となったことを踏まえたものと思われます。
6 平成29年5月11日付の「苦情の申出に係る対応について(通知)」により,平成3年10月31日付の「税務官署から事件記録等の閲覧謄写の要請があった場合の取扱いについて」を開示してもらいました。
第2の2 岡口基一裁判官に対する口頭注意処分に関する司法行政文書は作成されていないこと
第3 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申
1 最高裁判所の司法行政文書
(1) 最高裁判所が作成又は取得していないとされた司法行政文書
(2) 最高裁判所が直ちに廃棄しているとされた司法行政文書
(3) 不開示事由に該当するとされた最高裁判所の司法行政文書
(4) 司法行政文書開示請求の対象とならないとされた最高裁判所の文書
2 下級裁判所の司法行政文書
(1) 下級裁判所が作成又は取得していないとされた司法行政文書
(2) 下級裁判所が直ちに廃棄しているとされた司法行政文書
(3) 不開示事由に該当するとされた下級裁判所の司法行政文書
(4) 司法行政文書開示請求の対象とならないとされた下級裁判所の司法行政文書
第4 裁判所の不開示決定は司法審査の対象とならないこと
しかし,裁判所の不開示決定は,情報公開法その他の法律に基づくものではありません(東京地裁平成22年12月10日判決)から,「処分」ではないのであって,抗告訴訟の対象とはなりません。
(2) 東京地裁平成22年12月10日判決は以下のとおり判示しています。
2(1) 不適法なことが明らかであって当事者の訴訟活動により適法とすることが全く期待できない訴えについて,口頭弁論を経ずに,訴えを却下する判決又は却下判決に対する控訴を棄却する判決を下す場合には,訴状において被告とされている者に対し訴状,控訴状又は判決正本を送達することを要しません(最高裁平成8年5月28日判決参照)。
そのため,裁判所の不開示決定に対する取消訴訟を提起した場合,民事訴訟法140条に基づき,口頭弁論を経ずに却下判決を下されることがあります。
(2)ア 裁判所の不開示決定に対する取消訴訟において口頭弁論を経る場合,訴状等が法務大臣に送達されますし,処分行政庁とされた最高裁判所事務総長,高裁長官及び地家裁所長において調査回報書を作成する必要があるため,法務省及び裁判所の内部で結構な手間が発生します。
そのため,そのような手間を裁判所及び法務省にかけさせたくない裁判官に当たった場合,口頭弁論を経ずに却下判決が下ることとなります。
イ 東京地裁平成22年12月10日判決の事案では,東京地裁本庁の平成22年の行ウ号の事件数が762件であるにもかかわらず,事件番号が平成22年(行ウ)第32号であることからすれば,口頭弁論を経た上で却下判決が下されたことが分かります(口頭弁論期日につき,暗川ブログの「最高裁裏金裁判 杉原則彦裁判長の暴言」参照)。
3(1) 裁判所の不開示決定に対する取消訴訟を提起した場合,判決言渡期日を事前に告知すらしてもらえずに却下判決を下されることがあります(民事訴訟規則156条ただし書)。
(2) 口頭弁論を経ないで不適法な控訴を却下する判決を言い渡す場合,控訴審はその判決言渡期日につき当事者の呼出手続をなすことを要しません(最高裁昭和33年5月16日判決参照)。
また,口頭弁論を経ないで不適法な上告を却下する判決を言い渡す場合,判決言渡期日を指定し,指定した期日に公開の法廷において判決を言い渡せば足り,当事者に対し当該言渡期日の呼出状を送達することを要しません(最高裁昭和44年2月27日判決参照)。
4 訴え却下の第一審判決を是認して口頭弁論を経ないで控訴棄却の判決を言い渡す場合,当事者に対し判決言渡期日の告知及び呼出手続をすることを要しません(最高裁昭和62年10月1日判決。なお,先例として,最高裁昭和57年10月19日判決参照)。
そのため,地裁の却下判決に対して控訴した場合,判決言渡期日を事前に告知すらしてもらえずに控訴棄却判決を下されることがあります。
第5 検察審査会の情報公開
1 検察審査会の情報公開は,検察審査会の保有する検察審査会行政文書の開示に関する事務の基本的取扱について(平成13年3月29日付の最高裁判所刑事局長通達)に書いてあります。
2 検察審査会の情報公開の対象は検察審査会行政文書に限られるのであって,個別の審査事件に関する審査事件記録(審査事件会議録,供述調書,実地見分調書等)は対象外です。
3 検察審査会については,「加害者の不起訴処分を争う検察審査会」及び「検察審査会の事件の処理状況」を参照して下さい。
第6 公文書管理法における,参議院内閣委員会の付帯決議
そして,平成23年4月1日施行の公文書管理法における,平成21年6月23日付けの参議院内閣委員会の付帯決議は以下のとおりです。
一、公文書管理の改革は究極の行政改革であるとの認識のもと、公文書管理の適正な運用を着実に実施していくこと。
第7 裁判所の情報公開の場合,最高裁平成26年7月14日判決の判示内容は特に考慮されていないこと
(2) 最高裁平成26年7月14日判決は,昭和47年の沖縄返還時に日米両政府が交わしたとされる密約文書をめぐり,元新聞記者らが国に対して情報公開法に基づく開示などを求めた訴訟の上告審判決です。
2 裁判所の情報公開の場合,最高裁平成26年7月14日判決が判示するところの「当該行政文書の内容や性質,その作成又は取得の経緯や上記決定時までの期間,その保管の体制や状況等」といった事情は特に考慮されることなく,高等裁判所長官事務打ち合わせに関する配付資料といった短期保有文書は直ちに廃棄されたことになっていることが多いです。
第8 裁判所の情報公開に関する統計文書
第9 PKO日報問題に関する特別防衛監察結果報告で示された,行政文書管理及び情報公開業務の改善策
第10 公益通報者保護法と公務員の守秘義務の関係
第三条各号に定める公益通報をしたことを理由とする一般職の国家公務員、裁判所職員臨時措置法(昭和二十六年法律第二百九十九号)の適用を受ける裁判所職員、国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)の適用を受ける国会職員、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第二条第五項に規定する隊員及び一般職の地方公務員(以下この条において「一般職の国家公務員等」という。)に対する免職その他不利益な取扱いの禁止については、第三条から第五条までの規定にかかわらず、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号。裁判所職員臨時措置法において準用する場合を含む。)、国会職員法、自衛隊法及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)の定めるところによる。この場合において、一般職の国家公務員等の任命権者その他の第二条第一項第一号に掲げる事業者は、第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として一般職の国家公務員等に対して免職その他不利益な取扱いがされることのないよう、これらの法律の規定を適用しなければならない。
2(1) 消費者庁HPに「公益通報者保護法と制度の概要」が載っています。
(2) 通報先は原則として事業者内部又は権限を有する行政機関であり,一定の場合に限り,事業者外部となります(公益通報者保護法3条各号)。
3(1) 平成30年3月30日付の内閣答弁書には以下の記載があります。
公益通報者保護法は、国家公務員法第百条第一項の規定により課される守秘義務を解除するものではないが、公益通報者保護法第二条第三項に規定する通報対象事実(以下「通報対象事実」という。)は、犯罪行為などの反社会性が明白な行為の事実であり、国家公務員法第百条第一項に規定する「秘密」として保護するに値しないと考えられるため、そもそも、通報対象事実について、一般職の国家公務員が公益通報をしたとしても、同項の規定に違反するものではないと考えられる。
(2) 仮に最高裁が「不存在」と説明している司法行政文書が存在していた場合,そのことを公益通報することは守秘義務違反にはならないのかも知れません。
第11の1 司法に関する情報提供・公開の在り方に関する平成12年6月当時の裁判所の説明
判決データを全てデータベースに保存して,外部からの閲覧・謄写の請求にも迅速に対応できるようにするという話はどうなったのかしら?という気がします。
第11の2 司法に関する情報公開の推進(平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。