弁護士任官

目次

第1   総論
第2   指名諮問委員会において指名の適否について判断する基準
第3の1 弁護士任官候補者に関する下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申状況1/2
第3の2 弁護士任官候補者に関する下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申状況2/2
第4   弁護士任官希望者に関する情報収集の実情
第5   弁護士任官に関する説明
第6の1 弁護士任官等に関する協議の取りまとめ1/3
第6の2 弁護士任官等に関する協議の取りまとめ2/3
第6の3 弁護士任官等に関する協議の取りまとめ3/3
第7   非常勤裁判官及び調停委員
第8     法曹一元に関する国会答弁

*0 「裁判所の人事行政事務の実情」は私のブログに移転させました(平成29年11月5日)。
*1   東弁リブラ2009年11月号「裁判官になりませんか?-弁護士任官を考える-」が,東弁リブラ2017年11月号「弁護士任官制度~あなたも裁判官に~」が載っています。
*2 弁護士任官した裁判官のうち,現職裁判官の生年月日等については,以下の期別名簿を参照して下さい。 ③   現職裁判官の期別名簿3/3(60期代)
*3 「裁判官の種類,再任拒否等」も参照してください。

第1 総論

1 弁護士任官とは,平成13年12月7日付の「任官推薦基準及び推薦手続」に基づき,3年以上の弁護士経験を有する弁護士が任官することをいいます。

2(1) 弁護士任官については,日弁連HPの「弁護士任官の推進(弁護士任官等推進センター)」及び「弁護士任官の促進」(各種資料が掲載されています。)が参考になります。
(2) 弁護士任官に関する日弁連パンフレットとしては,「弁護士任官(常勤)Q&A」及び「弁護士になった後裁判官になる道があることを知っていますか(2015年改訂版)」があります。

3 弁護士経験10年未満の人については,裁判官としての適格性の審査において,司法研修所での成績が占める比重が大きいといわれています。
   この点に関して,司法研修所時代の成績の取得方法については,「旧司法試験,司法修習及び二回試験の成績分布及び成績開示」を参照して下さい。

4(1) 日弁連HPの「基礎的な統計情報」における「弁護士の活動領域の拡大」において,常勤任官者数が載っています。
(2) 日弁連は毎年4月,55歳以下の弁護士を対象に,弁護士任官意向アンケートを実施しています(日弁連HPの「弁護士任官の推進(弁護士任官等推進センター)」参照)。
(3) 日弁連は,弁護士任官者を支援する事務所の制度を設けています(日弁連HPの「任官支援事務所について」参照)。

(1)ア 愛知県弁護士会HPの「~弁護士から裁判官へ~竹内浩史さんに聞く」に,39期の竹内浩史弁護士のインタビューが載っています。
   青法協(青年法律家協会)の会員であるものの,弁護士任官できたみたいです。
イ 竹内浩史裁判官は,「弁護士任官どどいつ集」と題するブログを運営しています。
(2) 弁護士任官制度の転機となったのは,平成13年6月の司法制度改革審議会意見書です(西神中央法律事務所ブログ「弁護士任官について~弁護士任官裁判官誕生の軌跡~」参照)。
(3)ア   しらかば法律事務所HP「第48回 弁護士から裁判官への転職」によれば,1992年から2011年までの間に弁護士任官した人は98人です。
イ 東京弁護士会法友会HPの「第2 弁護士任官への取組み」によれば,1962年から2015年6月1日までの任官者数は,合計148人(うち東弁出身者は31人)であり,平成15年4月1日以降に限定した場合,合計87人です。

6(1) 裁判所HPの「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」に,従前の議事録等が載っています。
(2) 首相官邸HPに「弁護士任官等を推進するための具体的措置について」(2001年4月4日付の日弁連文書)が載っています。
(3) NAVERまとめに「弁護士から裁判官が進まない?低調する「弁護士任官」制度の問題点とは? 」が載っています。
(4) 産経ニュースHPの「”純粋培養裁判官”だらけ改善策「弁護士から裁判官」が進まない・希望者の4割が落とされている”理由”」によれば,平成16年度から平成26年度までの弁護士任官希望者の約4割は不採用になっているみたいです。

7(1) 日弁連は,平成14年5月24日の定時総会で,新たな段階を迎えた弁護士任官を全会挙げて推進する決議を出しました。
(2) 日弁連は,平成16年5月28日の定時総会で,弁護士任官を全会挙げて強力に進める決議を出しました。

8   平成29年4月6日開催の弁護士任官者研究会の日程表及び参加者名簿を掲載しています。

9   平成15年7月14日の第3回委員会において了承された「最高裁判所が指名の適否を委員会に諮問することを要しない場合」の内容は以下のとおりです。

下級裁判所裁判官指名諮問委員会規則3条2項2号により最高裁判所が指名の適否を委員会に諮問することを要しない場合

1. かつて判事又は判事補として任命されたことがあり,かつ,免官又は転官から経過した期間が3年以下の者を判事又は判事補に指名する場合。ただし,免官又は転官の時に判事補であった者を判事に指名する場合については,この限りでない。
2. 判事から任命された最高裁判所事務総長を判事又は高等裁判所長官に指名する場合。

第2 指名諮問委員会において指名の適否について判断する基準

平成15年7月14日の第3回委員会において了承された「指名諮問委員会において指名の適否について判断する基準について」は以下のとおりです。

指名諮問委員会において指名の適否について判断する基準について

(検討用たたき台)

1 検討の方針
○裁判官としての指名の適否については,あるべき裁判官像,あるいは裁判官に求められる資質・能力に基づいて検討することが必要
○この点については,既に,司法制度改革審議会において議論され,更に,「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会」においても議論の上,報告書を作成
○当委員会においては,これまでのこのような議論も参考にして検討することが考えられるが,事柄の性質上その内容を一義的に確定し難い面もあるので,立上げ時には一応の方針を議論しておき,その後の具体的な審議の積重ねを通じて適宜見直しを加えることにしてはどうか。

2 当委員会において指名の適否について判断する基準(一応の方針)
(1) 基本的な考え方
   裁判官に求められる資質・能力を前提にして,審査項目を設定するとともに,それぞれの項目について検討する際の視点(考慮要素)を設定した上で,当委員会において以下の方針の下に指名の適否について審議してはどうか。すなわち,指名候補者について,そのような審査項目を踏まえて,その考慮要素を参考にしつつ,また,健康面も考慮して,総合的に見て裁判官としてふさわしいか否かという観点から判断することにしてはどうか。
○指名候補者の中には,司法修習を終えた者,判事補,判事,弁護士等の様々な類型の者がいるので,指名の適否を判断するに当たっては,それぞれの項目や考慮要素について重点の置き所に差異。

(2) 審査項目及びそれを検討する際の視点(考慮要素)のイメージ
○審査項目としては,以下のものが考えられるが,どうか。
① 事件処理能力(裁判官として事件を適切に処理するのに必要な資質・能力)
② 部等を適切に運営する能力(裁判所全体の中で裁判体(部)を適切に運営するのに必要な資質・能力)
③ 裁判官としての職務を行う上で必要な一般的資質・能力(識見,人物・性格)
○それぞれの項目について検討する際の視点(考慮要素)としては,以下のものが考えるが,どうか。
① 事件処理能力に関する視点のイメージ
ア 法的判断能力(法律知識,法的判断に必要な資質・能力)に関するものとして,例えば,法律知識の正確性・十分性,法的問題についての理解力・分析力・整理力・応用力,証拠を適切に評価する能力,法的判断を適切に表現する能力,合理的な期間内に調査等を遂げて判断を形成する能力など
イ 手続運営能力(裁判手続を合理的に運営するのに必要な資質・能力)に関するものとして,例えば,法廷等における弁論等の指揮能力,当事者との意思疎通能力,担当事件全般を円滑に進行させる能力など
② 部等を適切に運営する能力に関する視点のイメージ例えば,部又は裁判所組織全体を円滑に運営する能力,職員に対する指導能力,職員・裁判官等に適切に対応する能力など
③ 裁判官としての職務を行う上で必要な一般的資質・能力に関する視点のイメージ
ア 識見に関するものとして,例えば,幅広い教養に支えられた視野の広さ,人間性に対する洞察力,社会事象に対する理解力など
イ 人物・性格に関するものとして,例えば,廉直さ,公平さ,寛容さ,勤勉さ,忍耐力,自制心,決断力,慎重さ,注意深さ,思考の柔軟性,独立の気概,精神的勇気,責任感,協調性,積極性など

(3) 判事補の多様な経験について
   現在,判事補が多様な法律専門家としての経験を積む制度について検討が進められているが,その制度が整備された段階では,その制度による多様な経験を積んだことが判事補から判事への指名の適否を検討する上で重要な考慮要素となるものとしてはどうか。

第3の1 弁護士任官候補者に関する下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申状況1/2

1 平成16年4月期任官
・ 指名候補者11人のうち,7人についてだけ指名することが適当とされました(平成15年12月2日第6回議事要旨3頁及び4頁)。
→ 29期の渡邉康弁護士(二弁),31期の間部泰弁護士(横浜弁),33期の鯉沼聡弁護士(東弁),38期の藤田光代弁護士(熊本弁),39期の田口紀子弁護士(二弁),44期の山口格之弁護士及び49期の尾﨑康弁護士(埼玉弁)です。
   ただし,山口格之弁護士は平成16年7月1日任官です。
 
2 平成16年10月期任官
・ 指名候補者1人について指名することが適当とされたみたいです(平成16年6月18日第9回議事要旨2頁及び3頁)。
→ 50期の土井文美弁護士(兵庫弁)です。
 
3 平成17年4月期任官
・ 指名候補者1人について指名することが適当とされました(平成16年12月3日第13回議事要旨3頁及び4頁)。
→ 49期の青木裕史弁護士(東弁)です。
 
4 平成17年10月期任官
・ 指名候補者4人のうち,3人についてだけ指名することが適当とされました(平成17年6月10日第16回議事要旨2頁及び3頁)。
→ 28期の熊谷光喜弁護士(兵庫弁),32期の藤本博史弁護士(一弁)及び42期の嶋末和秀弁護士(一弁)です。
 
5 平成18年4月期任官
・ 指名候補者6人のうち,4人についてだけ指名することが適当とされ,1人について保留とされました(平成17年12月9日第19回議事要旨4頁)。
→ 31期の山崎恵弁護士(東弁),32期の江守英雄弁護士(東弁)及び47期の寺澤(水岸)真由美弁護士(福岡弁)です。
   ただし,寺澤真由美弁護士は平成18年6月1日任官です。
→ 保留とされた1人については,その後,任官希望を取り下げました(平成18年2月6日第20回議事要旨2頁)。
 
6 平成18年10月期任官
・ 指名候補者3人のうち,1人について指名することが適当とされ,1人について9月6日の次回の指名諮問委員会において面接を行った上で指名の適否の判断を行うこととされました(平成18年7月7日第22回議事要旨3頁)。
→ 40期の浅井隆彦弁護士(大弁)(平成18年10月1日任官)及び51期の前原栄智弁護士(愛知弁)(平成18年9月1日任官)と思いますが,なぜか人数が合いません。
→ 保留とされた1人については,その後,任官希望を取り下げました(平成18年9月6日第23回議事要旨2頁)。
 
7 平成19年4月期任官
・ 指名候補者3人のうち,2人についてだけ指名することが適当とされました(平成18年12月8日第25回議事要旨4頁)。
→ 41期の河野匡志弁護士(東弁)及び42期の小倉真樹弁護士(奈良弁)です。
 
8 平成19年10月期任官
・ 指名候補者7人のうち,4人についてだけ指名することが適当とされました(平成19年6月29日第28回議事要旨2頁及び3頁)。
→ 39期の片山昭人弁護士(二弁),39期の本多久美子弁護士(奈良弁),42期の藤岡淳弁護士(二弁)及び45期の塚原聡弁護士(東弁)です。
   ただし,藤岡淳弁護士は平成20年1月16日任官です。

第3の2 弁護士任官候補者に関する下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申状況2/2

9 平成20年4月期任官
・ 指名候補者5人のうち,2人についてだけ指名することが適当とされました(平成19年12月7日第30回議事要旨3頁)。
→ 48期の本多哲哉弁護士(東弁)及び51期の佐々木愛彦弁護士(広島弁)です。
   ただし,本多哲哉弁護士は平成20年6月1日任官です。
 
10 平成20年10月期任官
・ 指名候補者3人のうち,2人についてだけ指名することが適当とされました(平成20年6月27日第33回議事要旨2頁)。
→ 34期の上田日出子弁護士(兵庫弁)及び39期の大沼和子弁護士(東弁)です。
 
11 平成21年4月期任官
・ 指名候補者8人のうち,6人についてだけ指名することが適当とされました(平成20年12月5日第35回議事要旨3頁)。
→ 43期の菅野正二朗弁護士(一弁),46期の野上(小滝)あや弁護士(大弁),47期の渡辺力弁護士(栃木弁),48期の片岡(高橋)早苗弁護士(二弁),51期の下嶋崇弁護士(千葉弁)及び56期の圓道至剛弁護士(一弁)です。
・   1人だけ保留とされましたが,その後,指名することが不適当とされました(平成20年12月19日第36回議事要旨2頁)
 
12 平成22年4月期任官
・ 指名候補者3人のうち,1人についてだけ指名することが適当とされました(平成21年12月1日第40回議事要旨3頁)。
→ 57期の塩原学弁護士(東弁)です。
 
13 平成23年4月期任官
・ 指名候補者8人のうち,5人についてだけ指名することが適当とされました(平成22年12月3日第45回議事要旨4頁)。
→ 36期の泉薫弁護士(大弁),44期の遠藤曜子弁護士(二弁),54期の大畑道広弁護士(大弁),54期の吉田祈代弁護士(東弁)及び56期の長丈博弁護士(熊本弁)です。
 
14 平成24年4月期任官
・ 指名候補者7人のうち,5人についてだけ指名することが適当とされました(平成23年12月2日第50回議事要旨3頁)。
→ 48期の榎本康浩弁護士(岡山弁護士),49期の中尾隆宏弁護士(東弁),51期の清野英之弁護士(東弁),54期の木山智之弁護士(大弁)及び59期の山根(橋本)弁護士(福岡弁)です。
 
15 平成25年4月期任官
・ 指名候補者2人のうち,1人についてだけ指名することが適当とされ(平成24年12月10日の第55回議事要旨3頁),平成24年12月12日の最高裁判所裁判官会議で採用内定となりました。
→ 54期の山田兼司弁護士(一弁)です。
 
16 平成25年10月期任官
・ 指名候補者6人のうち,3人についてだけ指名することが適当とされ(平成25年7月8日の第58回議事要旨3頁),平成25年7月10日の最高裁判所裁判官会議で採用内定となりました。
→ 45期の山田健男弁護士(二弁),51期の山本健一弁護士(二弁)及び53期の黒澤圭子弁護士(東弁)です。
 
17 平成26年4月期任官
・ 指名候補者3人のうち,2人についてだけ指名することが適当とされ(平成25年12月9日の第60回議事要旨3頁),平成25年12月11日の最高裁判所裁判官会議で採用内定となりました。
→ 59期の石上興一弁護士(愛知弁)及び61期の津田裕弁護士(兵庫弁)です。
 
18 平成26年10月期任官
・ 指名候補者2人のうち,2人について指名することが適当とされ(平成26年6月27日の第63回議事要旨3頁),平成26年7月2日の最高裁判所裁判官会議で採用内定となりました。
→ 42期の岸本寛成弁護士(大弁)及び55期の南部潤一郎弁護士(旭川弁)です。
・ 法テラスHPに「Article25 裁判官になったスタッフ弁護士 東京高等裁判所判事 南部潤一郎」が載っています。
 
19 平成27年4月期任官
・ 指名候補者3人のうち,1人についてだけ指名することが適当とされ(平成26年12月5日の第65回議事要旨3頁),平成26年12月10日の最高裁判所裁判官会議で採用内定となりました。
→ 57期の大塚博喜弁護士(東弁)です。
 
20 平成28年4月期任官
・ 指名候補者8人のうち,3人についてだけ指名することが適当とされ(平成27年12月4日の第71回議事要旨3頁),平成27年12月16日の最高裁判所裁判官会議で採用内定となりました。
→ 50期の安部朋美弁護士(兵庫弁),50期の金久保茂弁護士(東弁)及び58期の杉森洋平弁護士(東弁)です。
 
21 平成29年4月期任官
・ 指名候補者6人のうち,2人についてだけ指名することが適当とされました(平成28年12月2日の第76回議事要旨3頁)。
→ 58期の矢向孝子弁護士(二弁)及び新63期の今城智徳弁護士(大弁)です。
平成29年6月12日付の開示文書によれば,平成28年11月11日に4人の健康診断及び面接があり,同月14日に2人の健康診断及び面接があったみたいです。

第4 弁護士任官希望者に関する情報収集の実情

○平成15年7月14日開催の下級裁判所裁判官指名諮問委員会(第3回)議事要旨のうち,弁護士任官希望者に関する情報収集の実情に関する記載(リンク先の2頁ないし13頁)は以下のとおりです。
○■は委員長,○は委員,●は庶務,▲は説明者です。

庶務から,審議資料4に基づき,3の「弁護士からの任官」の部分について説明された。
■:
弁護士任官希望者については,裁判官としての職務を行うのに必要な資質・能力を備えているか否かに関する情報収集が重大な課題になる。事務当局から実情を説明してもらいたい。
▲:
判事の再任の場合は,過去10年間の執務の状況に基づく評価があり,司法修習生から判事補への任官の場合,修習中の成績,教官・指導官からの評価・情報があるが,弁護士任官者の場合は,裁判官としての職務を行うのに必要な資質・能力を備えているか否かに関する資料・情報をまとまった形で入手することが難しい。現在は,裁判官採用選考申込書,日弁連を通じて提出された資料のほか,二回試験等の修習成績や実際の訴訟活動等から窺われる法律実務家としての資質・能力に関する資料等により判断されているが,十分とはいえない。弁護士任官した裁判官の現状について問題がないわけではなく,問題を指摘される弁護士任官者も少なくない。問題点としては,基本的な法律知識・実務知識,決断力,リーダーシップ,積極的な意欲が不足していると指摘されることが多い。弁護士任官者の採用に当たっては,このような問題を生じる可能性のある者をチェックし,排除していくことが不可欠だが,これまでの採用の検討資料では,十分にできなかったと言わざるを得ない。判事補や若手判事クラスであれば,修習当時の成績が有用な情報となるが,もう少しベテランになれば,修習時の成績も出発点の資料として意味はあるが,むしろ,その後の実務経験を通じてどう能力が向上し,法律実務家としての力量を備えたかを判定するのが重要である。そこで,最近の訴訟活動の状況,とりわけ裁判官の目から見たものが重要になるが,現状では,その情報が十分に把握し切れておらず,過去には年収が低く弁護士活動が十分に行われておらず,経済的な安定が任官動機ではないかと疑われる事例もあった。今後,この委員会で的確な審査をしていただくためには,弁護士任官希望者自身から最近の訴訟活動について担当した事件を網羅的に記載したリストを出してもらったり,客観的に年収を示す資料を提出してもらう等の工夫をしていくことが必要ではないかと考えている。
■:
弁護士任官の際に,指名適否に必要な資料をどのように集めるのか御意見を伺いたい。
○:
議論の前提として,日弁連や各地の弁護士会がどのような選考をしているのかを説明したい。平成13年12月に日弁連と最高裁が弁護士任官についての合意をする前は,申込書に資料を付けず,日弁連も審査をせずに経由するだけで申し込んでいた。
現在は,よい人を選ぶ,できるだけ資料をつけて最高裁が判断しやすくするという観点から,近畿弁護士会連合会から始まって,8つのブロックの連合会全てが,弁護士任官適格者選考委員会を運営するようになった。例えば,近畿弁護士会連合会の委員会は,24名のうち8名は市民委員で構成されている。まず,自薦又は他薦があると,小委員会が面接及び資料のチェックを行った後,全体の委員会で決めることになる。したがって,面接は通常2回行うことになる。「裁判官応募者のための調査質問票(自己評価票)」の質問事項を見ると,弁護士業務の特徴,得意分野,自己評価,論文等があればその内容等,かなり詳細な事項を記載するようになっている。収入も書かせている例もある。「裁判官応募者推薦のための評価調査票(第三者評価票)」は,第三者が記載する秘密の調査票である。適切な方を選んで,弁護士の能力等を記載してもらっている。資料としては,申込書,推薦書2通,自己評価票,第三者評価票,準備書面,関係した判決,掲載された論文等がある。3,4か月かけて選考されている。これで万全とは言えないが,従前に比べると充実してきている。弁護士任官者に対し,否定的な評価があることは否定しないが,どのような裁判官像を求めるかによって,評価が変わってくると思う。判決を書く力や法律実務知識はキャリア裁判官に追いつけないかもしれないが,法律実務家として培ったものをどう評価の対象としていくのか,弁護士任官の良さというものを併せて議論していく中で,弁護士任官の審査のスタンスを決めていただきたい。
▲:
確かに,最近は,御説明いただいたような資料が弁護士会から出ているが,それでも能力を判断するのは難しい。自己評価票を見ても,廉直さ,公正さといった項目ごとに,aとかbに丸をつけておられるが,そう評価する根拠は何も書かれていないので,客観的にその評価が正しいのか判定するよすががない。他の弁護士による評価でも,法曹としての能力,弁護士としての評判,裁判官としての適性という項目ごとにaとかbに丸が付けられているが,それがどのような根拠で判定されたのか何も書かれていないことが多いので,よくわからない。裁判官としてやっていける能力の持ち主なのかどうかの判断は,更に資料が充実しないとできない。
○:
弁護士任官した場合のサポート体制はどうなっているのか。
▲:
まず,弁護士任官者がスムーズに裁判官としての仕事に入っていけるよう,それぞれの個性に応じ,最初からいきなり単独裁判を担当してもらうのではなく,地裁の保全事件を担当してもらったり,高裁の陪席裁判官をしてもらったり,配置についてできるだけの配慮をしている。現在は特定分野に限っての任官も受け入れているので,例えば,本人が家事事件を希望する場合には,家裁に配置するなどの配慮もしている。また,弁護士任官者が2名いる部を作るという試みもしている。さらに,弁護士任官者を集めて司法研修所で一定期間の研修も行っている。
○:
「裁判官応募者推薦のための評価調査票(第三者評価票)」は,検察官からも個人的に意見を聴くのか。
○:
そのとおりであり,組織的なものではまったくない。
○:
日弁連が申込書に添付した資料も,当委員会に提出されるのか。
●:
最終的には当委員会に提出されることになるものと思われる。
■:
現在の議論は,地域委員会が弁護士任官者にどのような資料をどう出してもらうかという議論である。審議資料4の3(2)の地域委員会における情報収集のところには,裁判所に対しても指名候補者の名簿を提供し,裁判官が有する情報を提出してもらったらどうかと記載されているが,この点についてはどうか。
○:
弁護士任官適格者選考委員会は,地域委員会に対応する8ブロックの弁護士会連合会に設置されているので,念のため付加しておく。
○:
検察官からも情報収集しているのか。
●:
弁護士任官したい人,あるいは推薦した人から,情報を収集してほしい同僚弁護士,相手方弁護士,裁判官,検察官の名前を挙げてくるので,「裁判官応募者推薦のための評価調査票(第三者評価票)」を出すことになると聞いている。
○:
弁護士任官の場合には,法廷や和解の席などで情報を得ることになるが,東京の場合など,数が多いとなかなか把握しにくい。少なくとも過去3年間に,どんな事件に関与したかという一覧表は出してもらいたい。それをもとにして,どういう訴訟活動を行ってきたかを調査すればよい。弁護士会からの情報だけでなく,もう少し客観的な情報も得たいので,そういう面で地域委員会が果たすべき役割は大きい。
○:
当委員会や地域委員会では,できるだけ多くの情報を得て,実質的な審査を行うべきである。そういう意味で,弁護士任官の場合に,3年間の事件リストを出すのは相当である。弁護士任官の場合に事件リストを提出させるのと同様に,裁判官の再任等の場合にも,裁判官が担当した事件リストも提示してもらいたい。
○:
再任の場合と弁護士任官の場合とは違う。弁護士任官の場合はゼロからのスタートであるが,再任の場合には10年間の実績があり,それを踏まえて何が問題かを審査することになる。ただ,事件だけを見ても把握できないことがある。もう少し何か資料を検討した方がよいのではないか。例えば,弁護士事務所に勤務していた場合ならば,その事務所のトップの弁護士や同僚の弁護士からの推薦状なども1つの資料である。また,収入も有力な資料となろう。
○:
収入と実力とが相関関係にあるかと言えば,必ずしもそうとは限らない。社会的に重要な事件があり,持ち出しをして事件に集中している弁護士の収入が高いはずはない。また,弁護士会の委員会活動をしている者も同様である。弁護士として収入が少ないから裁判官になるというのは問題だと思うが,それを防止するために,収入にこだわりすぎるのは間違っている。
○:
収入が多いからよいとまでは思っていない。今問題なのは,何も活動していない,収入のない人をどう評価するかである。
○:
3年間程度の事件リストを出してもらって裁判所から評価することはよいと思う。弁護士の場合,そこから潜在的な質を評価することができる。収入と評価とが,直接,表裏一体になっているわけではなく,収入が低くても立派な仕事をしている弁護士は多い。そういう人にまで,おしなべて収入報告書を提出させれば,弁護士の裁判官任官への意欲を失わせ,疎外感を感じさせてしまう。むしろ,裁判所等から得られる情報に基づいて,必要がある場合に限って,面接するなり,収入を報告させるようにするべきである。
○:
手弁当で立派な仕事をしている人もいる。必要に応じて年収を出させるのが妥当である。
○:
これまで弁護士から任官された例で,望ましくない人がどれくらい裁判官に任官したのかを把握しているか。
▲:
昭和63年から直近までで判事として51名,判事補として10名の合計61名が任官した。そのうち望ましくない例を具体的な数でいうのは難しい。
○:
弁護士会から推薦があった任官希望者は全員採用されたのか。
▲:
そうではない。不採用になった例もあるし,面接をした結果,その状況などから本人が希望を取り下げた例もある。
○:
それにもかかわらず,問題のある事例があるのか。
▲:
推薦という制度が採用されたのは,ごく最近のことであり,この制度の下で採用された者についての分析はまだできていない。問題があるというのは,昭和63年からの過去の弁護士任官者を全体として見た場合の状況である。
○:
弁護士任官の良さや,弁護士任官者に求められる裁判官像について,お伺いしたい。
○:
弁護士任官に求められる裁判官像としては,上から下を見下ろさないとか,思いやりがあるとか,人間味があふれる裁判官であろう。また,和解がうまいとか,当事者を納得させることができるという長所もある。判決を書く能力が劣っていても,生の社会経験を通じて,裁判官になっていただくことで,弁護士任官の制度が意味のあるものとなり,これまでもそういう人たちを送り出していると思っている。
▲:
我々も弁護士任官を推進したいと考えている。判事補から判事になる者だけというのでは,どうしても均質化しすぎるので,もう少し,多様性を持った方々が裁判官になるのがよい。弁護士が裁判官になることによって,それぞれのバックグラウンドを活かして,いろいろな場面で活躍していただけると思う。ただ,裁判官になった以上,最低限,事件をきちんと処理していただかなくては,当事者に迷惑がかかり,国民にも納得されないであろう。
○:
弁護士任官で,大変能力が高い人もいる。弁護士としての経験を活かして,事件の表には出てこないことを加味して判断することができることもある。ただ,弁護士からの任官者は和解が上手というが,そうとは限らない。和解は,最終的な判断をきちんと決めた上で行わなければならないが,一方当事者の話にのめり込んでしまうという面,ある種の長所というか欠点があるようである。また,判決文がなかなかうまく書けるようにならないとか,判断ができないという面もある。また,通常,裁判官は当事者の供述だけでは簡単に事実認定をしないが,当事者の言葉を信じて間違った認定をしてしまうという面もある。
■:
地域委員会に対して,どういう資料を収集していただくかという面と,我々が当委員会で判断する場合に,地域委員会で収集された資料に基づいてどう判断するかという面がある。
○:
収入についても資料として収集するかどうかを決めた方がよい。私としては,収入が少ない場合や,多い場合に,その理由を説明してもらえれば,説得力のある資料であり,無駄な資料でもないし,圧力にもならないので,必要と考える。
○:
反対である。多くても少なくても説明を求めることは本末転倒であり,何よりも弁護士任官者の意欲をなくしてしまう。3年間の事件リストさえあれば,その力量を判断することができる。一律に収入を明らかにすることは反対である。
○:
私も重ねて反対である。収入というものは,その人にとってはプライバシーの問題でもあり,最初から裸になれというのはいかがなものか。疑問のある人だけでよい。いずれにしても,収入で直接,人の質を量ることに抵抗がある。
○:
事件リストをきちんと出してもらえば,それで大体把握できる。法廷活動が非常に重要である。確定申告書は抵抗が大きいかもしれないが,必要な場合には提出してもらうことが考えられる。
■:
地域委員会は,弁護士任官の場合には,裁判所に対しても問い合わせをすることになるので,過去3年分の事件リストを出してもらう。地域委員会では,集まった情報を整理してとりまとめをすることになるが,その責任で,追加資料として,収入に関する資料が必要と判断した場合には,提出させることとしてはどうか。弁護士任官希望者全員に収入に関する資料を提出させるのは,プライバシーの問題もあり適切ではないのではないか。
○:
検察官は転勤が多いので,必要な場合には他の地域委員会からも情報が得られるようにしてもらいたい。
■:
前回,裁判官の再任の際にも議論されたことであるが,地域委員会での情報収集をどこまで広げるかという問題であろう。
○:
弁護士からの任官の場合,担当した事件のリストを渡されて,それで意見を求められたとしても,特殊な悪い情報は集まるであろうが,その人の裁判官としての適格性に関する情報はなかなか集まらないのではないかという懸念がある。例えば,事件に関与した裁判官や検察官,相手方の弁護士などに対し,フォーマットを決めて,その人の裁判官としての適格性に関するアンケートを実施したりすることはできないか。
○:
悪い情報ばかり集まるということはないと思う。この人は事案に即したいい準備書面を書いているとか,和解交渉の際に誠実に対応していたなどの良い情報は集まるであろう。そういった特徴のない,普通の人については何も情報がないかもしれないが,そういう人は不適とするような人ではないと思う。
○:
審査をする際に,不適格な人を排除するのか,それとも裁判官として適格かどうかを審査するのかの考え方にもよると思うが,先ほど述べたように,事件に関与した者に意見を聞くことはできないのか。
●:
小さな庁ならともかく,例えば,東京では,この人についてということで聞かれても,事件と結びつかないため,答えることは難しいと思う。事件リストがあれば,「ああこの事件か。」ということになり,その記録の中から準備書面を見るなどして,その人の資質・能力を判断できるが,アンケートということになれば,印象点のようなものになりがちで,その基礎にどのような事実関係があるかということが分からないので,指名の適否の判断の資料とし得ないのではないかと思う。
○:
「この事件に関与した方として御意見をお聞かせください。」という方式であれば可能か。
●:
具体的にこれこれの事実に基づいてというように情報の的確性を吟味することができるようなものが書かれるのであれば,可能だと思う。
○:
「この事件に関与したこの人が裁判官になりたいということである。」ということでアンケートを実施することはできないか。
○:
数人の弁護士が関与している場合には,そこで議論し,検討した上で裁判所に書面を出しているという実情もあるようなので,個人の資質に着目してアンケートを実施するというのは困難ではないか。
○:
弁護士会は,従来の弁護士任官適格者選考委員会をまず行い,それに通過した者を弁護士任官希望者として最高裁に提出するというシステムを従来どおり維持するのか。
○:
そうである。
○:
そうなると,地域委員会が情報収集する際には,個々の弁護士には意見を聞くけれども,弁護士会には意見を聞かないということになると思われるが,従来のシステムを変えることは考えていないのか。
○:
地域委員会が動き出したときの状況を見て,手直しが必要かもしれないとは思っている。
○:
弁護士会の任官適格者選考委員会にかかるのはいやだが,裁判官には任官したいというような人もいるかもしれない。円滑に任官を推進するようなシステムを考えることが望ましいと思う。
○:
任官希望者が非常にたくさんいて,各ブロックの連合会がそれを絞るというのであれば問題はないと思うが,そもそもの希望者が少ない状況で,選考委員会も行い,地域委員会の審査も行うということでは大変なのではないかと思う。
■:
平成16年4月に任官予定の弁護士任官希望者について動き出しているようである。
その実情を受けて,地域委員会に何を求めるべきか検討することが相当と思われるので,庶務からそのあたりの実情を説明してもらいたい。

第5 弁護士任官に関する最高裁判所の説明

○平成15年7月1日開催の下級裁判所裁判官指名諮問委員会(第2回)審議資料4のうち,弁護士任官に関する最高裁判所の説明は以下のとおりです。

3 弁護士からの任官
(1)   情報収集の在り方
   指名候補者に関する情報はその活動している各地域に存在しており,最高裁から委員会に提出できる資料は乏しいので,委員会は,地域委員会に対し情報収集を要請。
(2)   地域委員会における情報収集
   弁護士としての職務活動を通じて示されている法律実務家としての資質・能力に関する情報を収集する必要。弁護士,裁判官,検察官が有している情報の収集がその中心。
★   指名の適否の判断に必要となる資料をいかにして的確に把握するかについて,検討する必要がある。その1つの方法として,一般的に情報収集する場合には,訴訟事件等を通じて裁判官が把握している情報も有用なので,1(2)の1つ目の★に記載した方法に加え,裁判所に対して指名候補者の名簿を提供して,所属する裁判官が指名の適否に関する情報を有する場合
には,それを受け付ける方法が考えられるが,どうか。
(3) 委員会による審議・答申
ア 地域委員会が収集した資料に,最高裁から提供された資料も加え審議し,答申。
イ 最高裁から提供可能な資料としては,最高裁における面接の結果,健康面に問題がある場合の診断書等の他,実務修習結果報告書を含む司法修習中の成績等。
(4) 審議の日程
   4月期採用者については,前年の11月中旬に地域委員会から情報収集結果の報告を得て,12月上旬の委員会で審議し,答申(10月期採用者については,5月中旬に地域委員会から報告を得て,6月上旬の委員会で審議し,答申)することが基本。

第6の1 弁護士任官等に関する協議の取りまとめ1/3

平成13年12月7日付の「弁護士任官等に関する協議の取りまとめ」のうち,本文は以下のとおりです。

   最高裁判所と日本弁護士連合会とは,裁判官の給源の多様化・多元化を図り,21世紀の我が国社会における司法を担う質の高い裁判官を安定的に確保するため,弁護士からの裁判官任官を大幅に拡大することが極めて重要であるとの基本認識の下に,任官することの魅力と任官しやすさを増し,弁護士任官制度を実効あらしめるための具体的方策について,本年4月から,おおむね月2回のペースで協議を重ねた結果,当面講ずべき措置について,以下のとおり協議が整った。
1 日本弁護士連合会の任官推薦基準及び推薦手続
   日本弁護士連合会は,別紙1「任官推薦基準及び推薦手続」を策定するとともに,同記載の「推薦基準」に基づき,同記載の「推薦手続」を経ることを通じて,司法制度改革審議会が示したような多様で豊かな知識・経験と人間性を備えた裁判官となり得る資質,能力を有する弁護士が,できる限り多く裁判官候補者として推薦されるよう努めるものとし,最高裁判所はこれを了承する。
2 最高裁判所の採用手続
   最高裁判所は,日本弁護士連合会から上記手続を経て任官希望者の申込書類が提出された場合には,日本弁護士連合会を通じて提出された資料,実際の訴訟活動等を通じて収集された任官希望者の法律実務家としての資質・能力等裁判官としての適格性に関する資料及びその他の資料を判断材料として,任官希望者の採否について,能力,識見,人柄等を考慮し,総合的に見て裁判官としてふさわしいか否かという観点から検討するものとし,日本弁護士連合会はこれを了承する。
   なお,不採用の場合には,本人から申し出があれば,書面により,その理由を本人に対し開示するものとする。
3 日本弁護士連合会が行う弁護士任官推進のための環境整備方策
   日本弁護士連合会は,弁護士が裁判官に任官しやすくするための環境をより一層整備するとの観点から,以下の方策を推進する。
(1)各弁護士会又は弁護士会連合会に「弁護士任官適格者選考委員会」を設置し,弁護士任官希望者の推薦手続を行う体制を整備する。また,この推薦手続を継続的に行うことができるようにするために,任官希望者名簿の整備を進める。
(2)弁護士任官に伴う事件の引継に関する支障を除去するために,今般の弁護士法の一部を改正する法律に基づく法律事務所の法人化及び共同化を進めることにより,弁護士任官を促進するための環境整備を図る。
(3)任官に伴う受任事件の引継を円滑に行うとともに,退官後の弁護士への復帰を容易にするなどの観点から,弁護士任官希望者や弁護士任官の退官者で,特に必要のある者が在籍することができる事務所の設置,運営を促進する等,弁護士任官を推進するための制度の整備を進める。
4 最高裁判所が行う弁護士任官推進のための環境整備方策
   最高裁判所は,弁護士が裁判官に任官しやすくするための環境をより一層整備するとの観点から,以下の方策を推進する。
(1)「弁護士からの裁判官採用選考要領」を別紙2のとおり改訂する。
   なお,この改訂について,最高裁判所から以下のとおりの説明がされ,日本弁護士連合会はこれを了承した。
ア 従前の「弁護士からの裁判官採用選考要領」3のただし書きの関係について
は,平成19年3月31日までの間の任官者については,引き続き従前と同様の取扱いをするものとする。なお,その間の弁護士任官及びその受入れ側の状況によっては,この期限を更に延長するか否かについて協議する。
イ 「弁護士からの裁判官採用選考要領」5の「採用の形態」については,本人の希望を踏まえ,積極的に取り組むものとする。すなわち,
①短期間の任官については,本人の希望を踏まえ,積極的に取り組む。
②倒産事件,知的財産権事件,商事事件,家庭事件等の専門的分野へ
の任官についても,本人の希望を踏まえ,積極的に取り組む。
   なお,本人の専門的識見の程度によっては,①の場合よりも短期間であっても採用可能な場合もあり得る。
ウ 「弁護士からの裁判官採用選考要領」6(2)のただし書きについては,4月1日付けの採用を原則とするが,平成19年10月までの間は,事情によっては,例外的に10月1日付けの採用も行うものとする。この場合においては,当面は,当年1月10日までに採用申込みをした者を対象に検討するものとする。なお,その間の弁護士任官及びその受入れ側の状況によっては,この期限を更に延長するか否かについて協議する。
(2)本年8月1日,京都地方裁判所において弁護士任官者を中心とする部を発足させたが,今後とも,弁護士任官者の配置の在り方等を工夫,改善し, O.J.T.の充実を図る。
(3)弁護士任官者に対する研修について,より一層の充実を図る。
(4)日本弁護士連合会から,非常勤裁判官の制度化を検討すべきである旨の考えが示され,これに対し,最高裁判所から,この構想の制度化については,憲法上の問題点等が指摘されているが,常勤の裁判官への任官を促進する機能も期待できるので,民事調停事件及び家事調停事件の分野について,いわゆる非常勤裁判官制度を導入する方向で具体的に検討を開始したい,また,その他の非訟事件についても,導入できる分野がないか研究したい旨の説明がされ,日本弁護士連合会はこれを了承した。
5 判事補が裁判官の身分を離れて弁護士の職務経験を積む制度を実効あらしめるための方策
   最高裁判所と日本弁護士連合会は,判事補が裁判官の身分を離れて弁護士の職務経験を積む制度について,司法制度改革推進本部等の関係機関と協力し,司法制度改革審議会の意見の趣旨にのっとった制度設計がされ,その実施に必要な制度の整備がされるように努力する。
6 協議の継続
   最高裁判所と日本弁護士連合会は,弁護士任官の推進,判事補に弁護士の職務経験を積ませる制度及び恒常的協力体制の整備等について,今後とも継続して協議する。

第6の2 弁護士任官等に関する協議の取りまとめ2/3

平成13年12月7日付の「弁護士任官等に関する協議の取りまとめ」のうち,別紙1は以下のとおりです。

任官推薦基準及び推薦手続

日本弁護士連合会は,全国の各地域の弁護士会連合会又は弁護士会において,「推薦基
準」(以下「1」に記載)に従った「推薦手続」(以下「2」に記載)が行われ,司法制度改革審議会が示したような多様で豊かな知識・経験と人間性を備えた裁判官となりうる資質を有する,多数の候補者が推薦されるよう努めるものとする。
1 推薦基準
(1)形式的基準は以下のとおりとする。
①弁護士経験10年以上の判事任官が望ましいが,当面弁護士経験3年以上の判事補任官も可とする。
②年齢55歳位までの者を基本とする。
③懲戒処分を受けたことがないこと
(2)実質的基準は以下のとおりとする。
①法律家としての能力,識見
a. 事実認定能力,識見
b. 法令の解釈適用上の法技術能力
c. 事件処理に必要な理論上及び実務上の専門的知識能力
d. 幅広い教養に支えられた視野の広さ
e. 人間性に対する洞察力
f. 社会事象に対する理解力
②人物・性格面
g. 廉直さ
h. 公正さ
i. 寛容さ
j. 忍耐力
k. 決断力
l. 慎重さ
m. 注意深さ
n. 独立の気概
o. 精神的勇気
p. 協調性
q. 積極性
r. 柔軟性
s. 基本的人権と正義を尊重する心情
t. 自己管理能力・自己評価能力
u. 思思いやり・親切心
③その他
推薦にあたっては,任官希望者の人種,信条,性別,社会的身分,門地,宗教については,これを考慮しない。
 
2 推薦手続
(1)所属弁護士会に対する推薦の申込
①他薦の場合は本人の承諾を前提とする。
②自薦,他薦を問わず,推薦者がある場合には,推薦書を添付する。
(2)所属弁護士会又は弁護士会連合会の「弁護士任官適格者選考委員会」による選考
手続
①本人から質問票への回答及び関連資料の提出を受ける。a 質問票は,情報収集のための照会先に関する事柄を含む。b 質問票は,弁護士としての実績や任官基準の適否に関する事柄が理解できる内容のものとする。c 関連資料は,取り扱った主要事件や弁護士会会務に関して作成した書面,論文及び随筆等,質問票への回答書記載の事実が認定できるものを含む。
②上記の回答に基づいて,次のうちの複数の関係者に質問票を送付する。
a. 同一事務所の所属弁護士
b. 同一弁護士会の所属弁護士
c. 司法修習の同期生
d. 事件を共同して担当した弁護士
e. 事件の相手方であった弁護士
f. 事件の審理を担当した検察官
g. 事件の審理を担当した裁判官
h. その他
③弁護士会から以下の事項に関する資料の提出を受ける。
i. 会務,役職等に関する経歴
j. 賞罰,倫理に関する事項
④上記の資料に基づいて,本人に対する面接を行う。
⑤上記の結果に基づいて,推薦の可否を答申する。
(3)所属弁護士会又は弁護士会連合会による推薦
所属弁護士会又は弁護士会連合会は,上記答申を尊重し,推薦の可否を決定する。
(4)最高裁判所への申込方法上記推薦手続に基づく任官希望者は,日本弁護士連合会を経由し,上記推薦手続を行った弁護士会又は弁護士会連合会の推薦書及び資料等を添付して,最高裁判所事務総局人事局に所定の申込書を提出する。
(5)推薦手続を経ない任官申込みの取扱い
任官希望者から最高裁判所に直接申込みがなされた場合,最高裁判所において,上記
推薦手続が存在することを教示し,その手続を経る機会を与える。

第6の3 弁護士任官等に関する協議の取りまとめ3/3

平成13年12月7日付の「弁護士任官等に関する協議の取りまとめ」のうち,別紙2は以下のとおりです。

弁護士からの裁判官採用選考要領

1 選考を受けることができる者
   5年以上弁護士の職にあり,裁判官として少なくとも5年程度は勤務しうる者であって,年齢55歳位までの者。なお,当面,3年以上弁護士の職にある者も選考の対象とする。
2 報酬
   法曹としての経験年数を考慮して決定する。
3 任地
   初任地は,本人の希望,家族の状況,受入れ部署の充員状況等を考慮して決定し,その後の任地は,同期の裁判官の例に準ずる。
4 選考の内容
(1)書面及び面接による考査人物及び専門的素養について,書面及び面接による考査を行う。
(2)健康診断裁判官の職務に耐えられるかどうかについて行う。
(3)身上調査選考を受けることができる資格の有無及び申込書記載事項の真否について行う。
5 採用の形態
(1)短期間の任官本人の希望があれば,10年に満たない期間を勤務期間として予定した任官を妨げない。ただし,少なくとも5年程度であることを要する。
(2)専門的分野への任官専門的分野,例えば倒産事件,知的財産権事件,商事事件,家庭事件等の特化した領域の裁判事務を担当する形態での任官希望については,当該分野に関する本人の知識・経験,受入れ部署の実情等を踏まえ検討する。その後の任地,配置についても,同様とする。
6 申込方法
1. (1)申込書類を,最高裁判所事務総局人事局に,日本弁護士連合会を経由し又は直接提出する。
2. (2)申込受付期間随時。ただし,原則として4月1日付けの採用になるので,当面は,前年の7月1日までに申し込むものとする。
3. (3)申込書類
ア 申込書(所定の様式による。)
イ 履歴書
ウ 弁護士登録期間を証する証明書
エ 戸籍謄本
オ 写真
7 その他
   この要領1に該当しない者からの裁判官の採用については,従前のとおりとする。

第7 非常勤裁判官及び調停委員

1 非常勤裁判官
(1) 5年以上の弁護士経験のある弁護士が裁判官の代役として調停手続を主宰することがあります(民事調停法23条の2所定の民事調停官,家事事件手続法250条所定の家事調停官)ものの,裁判官と同様,調停が終了する段階で出てくることが多いです。
(2) 民事調停官及び家事調停官は総称して非常勤裁判官(=パートタイム裁判官)といわれる存在であり,週に1回だけ簡易裁判所又は家庭裁判所で勤務しており,2年間の任期で再任されることができます。
(3)ア 日弁連及び最高裁判所は,平成14年8月23日,「いわゆる非常勤裁判官制度の創設について(弁護士任官等に関する協議会の協議の取りまとめ)」という合意を成立させました。
イ  非常勤裁判官の制度は,平成15年7月25日法律第128号による改正後の民事調停法及び家事審判法(当時)に基づき,平成16年1月1日に開始しました。
(4) 民事調停事件における民事調停官の権限は裁判官と同じです(民事調停法23条の3第2項)し,家事調停事件における家事調停官の権限も裁判官と同じです(家事事件手続法251条2項)。
(5)   「民事調停官及び家事調停官の任免等について」(平成15年12月3日付の最高裁判所事務総長通達)を掲載しています。
(6) 日弁連HPの「基礎的な統計情報」における「弁護士の活動領域の拡大」において,非常勤任官者数が載っています。
(7) 日弁連パンフレットとして,「弁護士任官Q&A-非常勤-」があります。

2 調停委員
(1) 調停手続を担当する調停委員会(民事調停法5条,家事事件手続法247条)は,裁判官1名と調停委員2名の合計3名によって構成されており(民事調停法6条,家事事件手続法248条1項参照),裁判官が指揮します(民事調停規則17条,家事事件手続法259条)。
   ただし,実際の調停手続は,男女各1名の調停委員(民間の人です。)が担当し,裁判官は通常,調停が終了する段階で出てくるだけです。なぜなら,裁判官は同じ時間帯に10件近くの調停事件を担当しているからです。
(2) 民事調停における裁判官は調停主任といわれる(民事調停法6条)のに対し,家事調停における裁判官は単に裁判官といわれます(家事事件手続法248条参照)。
(3) 調停委員の職業の内訳は,弁護士が1割余り,弁護士を除く士業が2割余り(会計士,税理士,司法書士等),会社・団体の役員・理事が1割余り,無職者(前職は教師,金融機関,元公務員,専業主婦等)が3割余りです。
(4) 民事調停委員及び家事調停委員は,民事調停委員及び家事調停委員規則に基づき,原則として40歳以上の人が任命され(規則1条),その任期は2年です(規則3条)。
(5) 「民事調停委員及び家事調停委員の任免手続等について」(平成16年7月22日付の最高裁判所人事局長通達)を掲載しています。

第8 法曹一元に関する国会答弁

平成28年11月24日の山口和之参議院議員(無所属)の質問に対する国会答弁資料に以下の記載があります。
(法曹一元とは)
・ 「法曹一元」とは,多義的であるものの,一般的には,裁判官及び検察官を主として弁護士の中から任命する制度をいうものと認識。
(法曹一元をめぐる議論)
・ 裁判官及び検察官の任用制度については,国民の求める質の高い裁判官及び検察考えられるようにすることが重要。
・ 司法制度改革審議会において,法曹一元について議論がされたものの,同審議会は,司法を担う高い質の裁判官を安定的に確保する観点から
① 判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませる制度の整備
② 弁護士任官の推進
等,給源の多様化・多元化のための措置等を提言するとともに,検察官についても,検察の厳正・公平性に対する国民の信頼を確保する等の観点から,同様の措置を提言したところ。
・ その後の司法制度改革推進計画においても,①判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませる制度や,検事が一定期間,国民の意識・感覚を学ぶことのできる場所で執務する制度を整備すること,②弁護士任官等を推進すること等が内容とされた。
(制度の整備状況)
・ これを受けて,平成16年には,判事補及び検事の能力及び資質の一層の向上等を図るため,判事補及び検事が一定期間その官を離れ,弁護士となってその職務をする弁護士職務経験制度(注)を創設したところ。
(注)平成16年通常国会(第159回国会)において成立した「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」(平成16年法律第121号)による。平成17年4月1日施行。
(所見)
・ 最高裁判所においては,裁判官についてこれら弁護士職務経験制度や弁護士任官制度を適切に運用されているものと承知。
・ 法務省としても,検察官に関するこれらの制度を適切に運用するとともに,司法制度を所管する省庁として,今後も,国民の期待する広くかつ高い識見を備えた裁判官及び検察官を確保する等の観点から,必要とされる方策を講じてまいりたい。
1(1) 交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
 
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。