司法修習生の修習資金貸与制

第0 目次

第1の1 総論
第1の2 司法研修所事務局総務課人事係の事務分掌
第2の1 修習資金の貸与月額及びその合計
第2の2 66期ないし70期司法修習開始時点における,修習資金の貸与申請状況
第3の1 裁判官の推定年収(参考)
第3の2 弁護士登録5年目の平均所得の推移(参考)
第4の1 通勤手当,旅費,健康保険の被扶養者,年金及び災害補償
第4の2 健康保険の被扶養者
第4の3 東京都弁護士国民健康保険の取扱い
第5   修習資金貸与金の,税務上の取扱い
第6の1 連帯保証人及び保証会社
第6の2 司法修習生の修習資金の機関保証の人数及び割合
第6の3 修習資金の保証会社に関する最高裁判所の説明
第7の1 新65期の場合,平成30年7月25日から修習資金の返還が開始すること
第7の2 修習資金の返還の猶予
第7の3 修習資金の返還の免除
第7の4 修習資金貸与制に関する平成24年改正の具体的内容
第8の1 修習資金の据置期間・返還期間中の手続
第8の2 住所等届出書の提出状況等が分かる文書は存在しないこと
第8の3 修習資金貸与金の償還状況
第9   修習資金の貸与制に関する照会先
第10の1 修習資金貸与金の返還を一律に免除するために必要な法的措置,及びこれに関する国会答弁
第10の2 谷間世代(無給修習世代)に対する救済策は予定していない旨の国会答弁等
第11   生活保護と修習資金貸与金との比較等
第12   生活保護に優先して給付される制度
第13   職業訓練受講給付金(求職者支援制度)
第14   事業主のための雇用関係助成金
第15   司法修習における旅費
第16   67期以降の司法修習生に対する移転料
第17   司法修習生の移転料と住民票
第18   司法修習に係る旅費の取扱いを定めた事務連絡
第19   労働時間の意義
第20   OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当すること等
第21   経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)の文言
第22   東大安田講堂事件は,無給のインターン制度に起因していること等
第23   修習資金貸与制に関する最高裁判所の当初の案
第24   原子力損害賠償の状況等(参考)

*1 以下のHPも参照してください。
① 司法修習生の給費制及び修習手当
② 司法修習生の修習給付金及び修習専念資金
③ 司法修習開始前の日程
④ 司法修習の日程
⑤ 二回試験等の日程
*2 日弁連HPの「司法修習生に対する給費の実現と充実した司法修習を」が参考になります。
*3 布施弘幸行政書士事務所HP「生活保護 金額 自動計算」を使えば,都道府県,市町村,世帯構成等を入力することで,生活保護費を計算することができます。
*4 最高裁判所は,修習資金の返還を終えるまでの間において,当該修習資金の返還を受けるために必要があると認める場合には,被貸与者又はその保証人に対し,その業務又は資産の状況に関して,質問し,帳簿書類その他の物件を調査し,又は参考となるべき報告若しくは資料の提出を求めることができます修習資金貸与要綱32条1項)。
*5 第5回 法曹養成制度改革顧問会議(平成25年12月17日開催)の資料であった「司法修習生に対する支給等一覧」及び「司法修習生の修習資金等の状況のあらまし」がよくまとまっています。
*6 修習資金の今後の返還手続等について(平成30年1月)(最高裁判所事務総局経理局主計課)を掲載しています。
*7 修習資金の貸与を受けた司法修習生は被扶養者ではないとする厚生労働省保険局保険課の文書(平成26年8月18日付)を掲載しています。
*8 国立国会図書館HP「調査と情報」に,「諸外国における大学の授業料と奨学金」(平成27年7月9日発行の869号)が載っています。
*9 平成30年6月27日付の弁護士有志の申入れ書(新65期から70期の司法修習生であった者に貸与した修習資金の返還請求の撤回要求)を掲載しています。
修習給付金制度の趣旨は,法曹志望者が大幅に減少している中で,28年6月の骨太の方針で言及された「法曹人材確保の充実・強化の推進」等を図る点にあることから,修習給付金について,今後,新たに司法修習生として採用される者を対象とすれば足り,現行貸与制下の司法修習生をも対象とする必要性に欠けるとのことです。

第1の1 総論

1 裁判所HPの「貸与申請から返還完了までの流れ」によれば,修習地通知は10月中旬となっていますから,修習資金を12月から交付してもらうためには,実務修習地(=司法修習の場所)が決まる前に,司法研修所事務局総務課人事係に対して貸与申請をしなければなりません(70期の場合,平成28年10月3日が締切でした。)。
  そのため,最高裁判所の定める撤回書を提出することにより,いつでも将来に向かって貸与申請の撤回(司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則5条,修習資金貸与要綱12条,70期の「修習資金貸与申請撤回書」参照)ができるわけですから,とりあえず貸与申請を出しておいた方がいいと思われます。

2 弁護士ドットコムニュースに「本を買えずに回し読みする司法修習生たち 「法曹養成」のコストは国が負担すべき?」が載っています。

3 日弁連が平成21年8月20日付で発表した「「司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(案)」に対する意見書」に,修習資金貸与制に関する問題点が一通り記載されています。

4 厚生労働省HPの「青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)について」には,以下のパンフレットが掲載されています。
①   ハローワークでは労働関係法令違反があった事業所の新卒求人は受け付けません!
→ 平成28年3月1日以降の取扱いであり,労働基準法,最低賃金法,男女雇用機会均等法及び育児介護休業法に関する規定が対象です。
②   労働関係法令違反があった事業所を新卒者などに紹介しないでください

5(1) 日弁連は,平成28年3月11日の臨時総会において,「法曹養成制度改革の確実な実現のために力を合わせて取り組む決議」を採択しました。
(2) 日弁連は,平成30年5月25日の定期総会において,「安心して修習に専念するための環境整備を更に進め、いわゆる谷間世代に対する施策を早期に実現することに力を尽くす決議」を採択しました。  
(3) 日弁連は,平成30年7月25日,「新65期の司法修習を経た者の修習貸与金の返還期限を迎えての会長談話」を発表しました。

第1の2 司法研修所事務局総務課人事係の事務分掌

   司法研修所事務局総務課人事係の事務分掌は以下のとおりです。
① 職員の人事に関する事項
② 給与簿に関する事項
③ 諸手当の認定に関する事項
④ 厚生,保健及びレクリエーションに関する事項
⑤ 証明書の発行に関する事項
⑥ 修習資金の貸与申請に関する事項

第2の1 修習資金の貸与月額及びその合計

1 修習資金の交付は,最大で,司法修習生に採用された年の12月から翌年12月までの合計13回です。

2   13ヶ月間貸与される修習資金の貸与月額は,以下のとおりです(司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則3条1項及び2項)。
① 基本額未満の貸与を希望する場合,18万円(貸与額の合計は234万円)
② 基本額の場合,23万円(貸与額の合計は299万円)
③ 配偶者,子等がある場合,25万5000円(貸与額の合計は331万5000円)
④ 家賃を支払っている場合,25万5000円(貸与額の合計は331万5000円)
→ マンスリーマンションであっても住居加算が認められることがあります。
⑤ ③及び④のいずれにも該当する場合,28万円(貸与額の合計は364万円)

第2の2 66期ないし70期司法修習開始時点における,修習資金の貸与申請状況

○66期ないし70期司法修習開始時点における,修習資金の貸与申請状況は以下のとおりです。
○合計数は平成28年7月8日の第4回法曹養成制度改革連絡協議会の最高裁資料5(法務省HPに掲載)に載っています。

1 66期の場合(貸与申請者数の合計は1645人)
① 18万円が15人
② 23万円が1090人
③ 扶養加算による25万5000円が38人
④ 住居加算による25万5000円が422人
⑤ 28万円が44人
・ 元データとして,66期司法修習生の貸与申請関係文書を掲載しています。
・ 66期は2035人ですから,貸与申請率は80.8%となります。

2 67期の場合(貸与申請者数の合計は1449人)
① 18万円が67人
② 23万円が969人
③ 扶養加算による25万5000円が30人
④ 住居加算による25万5000円が358人
⑤ 28万円が25人
・ 元データとして,67期司法修習生の貸与申請関係文書を掲載しています。
・ 67期は1972人ですから,貸与申請率は73.4%となります。

3 68期の場合(貸与申請者数の合計は1181人)
① 18万円が66人
② 23万円が833人
③ 扶養加算による25万5000円が27人
④ 住居加算による25万5000円が229人
⑤ 28万円が26人
・ 元データとして,68期司法修習生の貸与申請関係文書を掲載しています。
・ 68期は1762人ですから,貸与申請率は67.0%となります。

4 69期の場合(貸与申請者数の合計は1205人)
① 18万円が51人
② 23万円が894人
③ 扶養加算による25万5000円が28人
④ 住居加算による25万5000円が207人
⑤ 28万円が25人
・ 元データとして,69期司法修習生の貸与申請関係文書を掲載しています。
・ 69期は1788人ですから,貸与申請率は67.4%となります。

5 70期の場合(貸与申請者数の合計は993人)
① 18万円が33人
② 23万円が847人
③ 扶養加算による25万5000円が27人
④ 住居加算による25万5000円が78人
⑤ 28万円が8人
・ 元データとして,70期司法修習生の貸与申請関係文書を掲載しています。
・ 70期は1533人ですから,貸与申請率は64.8%となります。

第3の1 裁判官の推定年収(参考)

   平成27年12月1日時点の,裁判官の推定年収は以下のとおりです(「裁判官の年収及び退職手当」参照)。
 
1 判事の年収
① 任官34年目(34期)~任官40年目(28期)(判事1号)
      約1984万円(地域手当0%)~約2325万円(地域手当18%)
② 任官29年目(39期)~任官33年目(35期)(判事2号)
      約1747万円(地域手当0%)~約2047万円(地域手当18%)
③ 任官24年目(44期)~任官28年目(38期)(判事3号)
      約1630万円(地域手当0%)~約1909万円(地域手当18%)
④ 任官19年目(49期)~任官23年目(45期)(判事4号)
      約1381万円(地域手当0%)~約1618万円(地域手当18%)
⑤ 任官16年目(53期)~任官18年目(50期)(判事5号
      約1192万円(地域手当0%)~約1397万円(地域手当18%)
⑥ 任官14年目(55期)~任官15年目(54期)(判事6号)
      約1070万円(地域手当0%)~約1253万円(地域手当18%)
⑦ 任官13年目(56期)(判事7号)
      約969万円(地域手当0%)~約1135万円(地域手当18%)
⑧ 任官11年目(57期)~任官12年目(58期)(判事8号)
      約871万円(地域手当0%)~約1020万円(地域手当18%)

2 判事補の年収
① 任官8年目(現行61期)~任官10年目(59期)(判事補1号)
      約774万円(地域手当0%)~約905万円(地域手当18%)
② 任官7年目(現行62期及び新61期)(判事補2号)
      約711万円(地域手当0%)~約832万円(地域手当18%)
③ 任官6年目(現行63期及び新62期)(判事補3号)
      約653万円(地域手当0%)~約767万円(地域手当18%)
④ 任官5年目(現行64期及び新63期)(判事補4号)
      約611万円(地域手当0%)~約717万円(地域手当18%)
⑤ 任官4年目(新64期)(判事補5号)
      約567万円(地域手当0%)~約665万円(地域手当18%)
⑥ 任官3年目(65期)(判事補6号)
      約555万円(地域手当0%)~約648万円(地域手当18%)
⑦ 任官2年目(66期)(判事補7号)
      約541万円(地域手当0%)~約629万円(地域手当18%)
⑧ 任官1年目(67期)(判事補9号)
      約508万円(地域手当0%)~約584万円(地域手当18%)

第3の2 弁護士登録5年目の平均所得の推移(参考)

1 法務省の国会答弁資料によれば,弁護士登録5年目の平均所得の推移は以下のとおりです。
(1) 平成23年の,法曹の要請に関するフォーラムによる調査結果
54期:1386万円
55期:1110万円
56期:1236万円
57期:1204万円
58期:1107万円
(2) 法務省が,平成28年に弁護士を対象に実施したアンケート調査の集計結果
現行61期:648万円
新 61期:697万円
現行62期:643万円
新 62期:690万円
現行63期:697万円
新 63期:686万円

2 平成29年7月25日現在,法科大学院協会HPの「理事長からのメッセージ」には以下の記載があります。
   弁護士の活動領域は着実に拡大しており、活躍の舞台は、法律事務所だけでなく、企業、公務員、国際機関、国会議員政策秘書など実に多様になりました。弁護士の就職難といわれる状況も確実に解消されつつあります。司法試験に合格し司法修習を終えた者の97%が就職でき、しかも、弁護士5年目の年収(中央値-経費等を引く前の数字)は1,081万円と、安定した収入を得ています。
法務省の国会答弁資料

第4の1 通勤手当,旅費,健康保険の被扶養者,年金及び災害補償

1   裁判所HPの「修習資金貸与FAQ」の説明内容
① 通勤手当は支給されません。
② 修習の実施に必要不可欠な旅費は支給されます(国家公務員の旅費等に関する法律3条5項参照)。
③ 修習資金の貸与を受けた場合,健康保険の被扶養者としての認定を取り消されて,国民健康保険への加入が必要となる可能性があります。
④   修習資金の貸与を受けた場合,第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者であり,例えば,専業主婦又は専業主夫)から第1号被保険者(例えば,学生,自営業者)への変更が必要となる可能性があります。
⑤ 司法修習生が修習中又は修習場所へ赴く途中の事故により負傷した場合,国家公務員災害補償法に基づく補償を受けることができます。
 
2 通勤手当の補足説明
(1)   司法修習生は社会人であって,学生ではありません。
   そのため,通勤手当は支給されないものの,通学定期ではなく,通勤定期を購入する必要があります。
(2)   菅野雅之最高裁判所事務総局審議官は,平成23年8月31日の第5回「法曹の養成に関するフォーラム」において,「給費制下で支給されていた通勤手当につきましては,本質的に給与の性質を有するものであるため,貸与制に移行した後は支給することはできません」と説明しています(リンク先の4頁)。

3 旅費の補足説明
(1) 外部ブログの「移転費2」によれば,片道航空券よりも,往復航空券及びホテル代込みのパックツアーの方が安い場合であっても,「片道の」航空券を提出しない限り,旅費を支給してもらうことができないみたいです。
(2)  平成28年10月14日付の「私事旅行について(事務連絡)」によれば,導入修習,実務修習及び集合修習に参加するための旅行日の前後に私事旅行を行おうとする場合,旅行命令権者の承認を受ける必要があります。

4 年金の補足説明
   第3号被保険者から第1号被保険者となるための,市区町村の年金窓口への届出については,政府広報オンラインの「知っておきたい「年金」の手続」が参考になります。

5 公務災害の補足説明
(1)   国家公務員災害補償法に基づく補償を受けられる場合,健康保険の給付はありません(健康保険法55条1項)。
(2) 菅野雅之最高裁判所事務総局審議官は,平成23年8月31日の第5回「法曹の養成に関するフォーラム」において以下の説明をしています(リンク先の5頁)。
   旅費や労務災害につきましては,御承知のとおり,司法修習生は公務員ではありませんが,その制度の建て付け上,給与の支払が要素になっておらず,支給対象者と国ないし国の事務との関連性がその支払を可能にするポイントであると考えられています。
   したがいまして,司法修習が国,すなわち最高裁判所によって運営されており,司法修習生がその監督下で修習を受け,修習に専念する義務を負っていることなどから,修習の実施に当たって必要な移動に要する費用や,修習に起因する災害により被る損失につきましては,国家公務員等の旅費に関する法律や国家公務員災害補償法の趣旨,目的が妥当すると考えられるため,それらの法律により,司法修習生に対し,国家公務員に準じて旅費の支給や災害補償を行うこととしております。

第4の2 健康保険の被扶養者等

1(1) 平成28年10月14日付の「司法修習生採用後の健康保険等について」には,健康保険及び国民年金に関する手続の詳細等は,健康保険に関しては各健康保険組合等,国民年金に関しては住居地を管轄する市区町村の各ホームページを参照する等して確認してくださいと書いてあります。
(2) 厚生労働省保険局保険課が日本年金機構に対して回答したと思われる疑義照会回答(厚生年金保険 適用)の20頁には,以下の記載があります。
  健康保険法第3条第7項において、被扶養者は「主としてその被保険者により生計を維持するもの」と規定されており、被扶養者の認定に当たっては、その者の収入及び被保険者との関連における生活の実態により判断されます。
  裁判所法第67条の2に規定される貸与制の修習資金については、定期的に貸与単位期間の1ヵ月ごと23万円(最低18万円)貸与されるため、修習資金の目的と貸与額からも、その貸与を受けている司法修習生がそれ以外の者の収入により生計を維持されているとは言い難く、被保険者との関連における生活の実態からも被扶養者として取り扱うことは妥当ではありません。
   このため、貸与制の修習資金を受けている者については、被扶養者として認定することはできません。
(3) 公立学校共済組合愛媛支部HPの「被扶養者の認定の手続き」には,司法修習生に貸与される修習資金は,被扶養者認定における所得に含まれると書いてあります。
  また,埼玉県市町村職員共済組合の「被扶養者認定基準及び取扱い」(平成27年7月発行)の末尾6頁(PDF7頁)には,「司法修習生に貸与される修習資金は,主として月々の生活費を援助することを目的とした資金の提供と考えられているため,恒常的な収入とする。」と書いてあります。

2(1) 協会けんぽの被保険者の被扶養者に削除,氏名変更等があった場合,被保険者は事業主を経由して,「被保険者(異動)届」を提出する必要があります(日本年金機構HPの「従業員の被扶養者に異動があったときの手続き」参照)。
(2) 被扶養者の年間収入が130万円以上になると見込まれる場合,被扶養者について削除の届出を行う必要がありますところ,年間収入とは,過去における収入のことではなく,被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。

3(1) 資格のない健康保険証を使用して医療機関等で受診した場合,後日,保険給付費(総医療費の7から9割)分を返還しなければならなくなります(協会けんぽ大阪支部HPの「健康保険証はいつまで使用できるの?」参照)。
(2) 協会けんぽの正式名称は,全国健康保険協会です。

3(1) 健康保険の被扶養者の認定及び不認定は,社会保険審査官が行う審査請求(社会保険審査官及び社会保険審査会法)の対象とはなりません(関東信越厚生局HPの「審査請求にあたっての留意事項」参照)。
(2) 社会保険審査官事務取扱要領(平成28年4月)を掲載しています。

4 外部ブログの「信用毀損罪」によれば,司法修習生時代の収入は0円となりますから,弁護士1年目はキャッシング機能付きカードを作りにくいみたいです。

5(1) 平成25年10月1日施行の改正健康保険法により,被保険者が副業として行う請負業務中に負傷した場合や,被扶養者が請負業務やインターンシップ中に負傷した場合,労災保険の給付が受けられないときは健康保険の給付が受けられるようになりました(改正後の健康保険法1条参照)(外部HPの「健康保険が改正されました。」参照)。
(2) 毎年3月下旬及び9月下旬,厚生労働省関係の主な制度変更の内容が,厚生労働省HPの「社会保障全般分野のトピックス」に掲載されています。 

第4の3 東京都弁護士国民健康保険組合の取扱い

1 東京都弁護士国民健康保険組合HPの「追加加入,資格喪失Q&A」には,以下の記載がありますから,貸与制の修習資金を受けたとしても,転居しない限り,引き続き弁護士国保に加入できると思われます。
   ただし,転居したものの,住民票を異動させなかった場合,国民健康保険法116条に該当するものとして継続して加入できるかどうかはよく分かりません。
 
Q8 弁護士の家族として加入している長女が司法修習生となりましたが、弁護士国保の資格はどのようになりますか。
A 引き続き同一世帯で同居されていれば継続して加入することとなります。なお、転居され、住民票を異動し、組合員と別の世帯となった場合、弁護士国保は資格喪失となり、居住地の市町村国保に加入することとなります。転出された方の住民票の除票もしくは転出先の世帯全員の住民票を添付して資格喪失の手続きをおこなってください。弁護士国保から市町村国保加入のための資格喪失証明書を発行します。  

2 東京都弁護士国民健康保険組合には,東京三会,神奈川県弁護士会,埼玉弁護士会,千葉弁護士会等に所属している弁護士が加入できる国民健康保険組合です(東京都弁護士国民健康保険組合HPの「加入資格・手続について」参照)。
  また,弁護士国民健康保険組合は現在,東京都弁護士国民健康保険組合しかありません。

第5 修習資金貸与金の,税務上の取扱い

   平成25年3月15日の衆議院法務委員会における以下の質問及び答弁にあるとおり,修習資金貸与金は所得税の課税対象となりませんし,修習資金貸与金を受けることは所得税の扶養控除の適用に影響を与えるものではありません。
  また,修習資金貸与金を受けることは,所得証明書の記載に影響を及ぼすものではありません。

○宮澤博行衆議院議員(自民党)の質問
   ある若者が大学へ行った、法科大学院へ行った、このときにはやはり保護者のお父さんの扶養に入っていたわけです。ところが、司法試験に通って司法修習生になって、資金の貸与を受けるようになったら、お父さんの会社から、社会保険の扶養から外れてくれ、国民健康保険へ移ってくれ、そういうふうに言われたようなんです。貸与ですからね、所得じゃないんです。それなのにどうして保険の上でこういうふうに扱われなければならないのかというのは、これはもう一度確認した方がいいと思われます。
  さらに、税法上のことについて。今申し上げたのは保険の話なんです。税法上は、これは貸与ですから、所得じゃないわけですから、この貸与された修習資金がまさか所得税の課税対象にはなっていないと思われますけれども、その点について確認させていただきたいですし、所得税の控除対象とされている扶養親族が、修習資金の貸与を受けたときに控除対象の扶養親族に該当しなくなるということはないとは思いますけれども、その点についても確認をさせていただきたいと思います。
○藤田利彦国税庁課税部長の答弁 
   お答え申し上げます。
  一般論として申し上げますけれども、金銭の貸し付けを受けた場合で、その貸し付けを受けた金銭について返済することとされているときは、その金銭につきましては所得税法上の所得には該当しませんことから、所得税の課税対象とはなりません。
   それから、次に御質問がございました扶養控除の関係ですけれども、先ほど申しましたように、金銭の貸し付けを受けた場合で、その貸し付けを受けた金銭について返済することとされております場合には、所得税法上の所得に該当しませんことから、金銭の貸し付けを受けたことをもって所得税法上の扶養控除の適用がなくなることはありません。
   いずれにしても、国税当局としては、個々の事実関係に基づき、法令等に照らして適正に取り扱うこととなります。

第6の1 連帯保証人及び保証会社

1   司法修習生が修習資金の貸与を受けるためには,①年収150万円以上又は資産額300万円以上を有する2人の自然人を連帯保証人として用意するか,又は②最高裁判所が指定する金融機関の保証(機関保証)を受ける必要があります(司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則4条)。

2 保証料は修習資金の貸与額1,000円につき18円であり(保証委託約款3条本文),保証料の支払方法は,司法修習生が貸与を受ける修習資金から所定の保証料の額を最高裁判所が差し引き,これを最高裁判所が保証会社に送金する方法がとられています(保証委託約款5条1項)。

3 司法修習生が修習資金の貸与を受けるために最高裁判所に提出した個人情報は,機関保証に必要な範囲で保証会社に提供される他(保証委託約款7条1項),保証会社は,機関保証に関して,司法修習生の財産,収入,信用等について調査を行うことができます(保証委託約款8条)。

4 平成28年11月7日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「修習資金の貸与を受けた場合,どのような事由が発生すれば,個人信用情報機関に修習資金貸与金に関する情報が登録されることになっているかが分かる文書」は存在しません。

第6の2 司法修習生の修習資金の機関保証の人数及び割合

平成28年11月16日付の司法行政文書不開示通知書によれば,機関保証の審査に落ちた人の数が修習期ごとに分かる文書は存在しません。
司法修習生の機関保証の人数及び割合69期関係データ及び70期関係データによれば,65期ないし69期の場合,指定金融機関による保証を受けている司法修習生の人数は,以下のとおりです。
 
1 65期(平成23年11月28日現在)
   貸与申請者数1688人中295人(17.5%)
2 66期(平成24年11月27日現在)
   貸与申請者数1645人中297人(18.0%)
3 67期(平成25年11月27日現在)
   貸与申請者数1449人中296人(20.4%)
4 68期(平成26年11月27日現在)
   貸与申請者数1181人中279人(23.6%)
5 69期(平成27年11月27日現在)
   貸与申請者数1205人中313人(26.0%)
6 70期(平成28年11月28日現在)
   貸与申請者数 993人中232人(23.4%) 

第6の3 修習資金の保証会社に関する最高裁判所の説明

○菅野雅之最高裁判所事務総局審議官は,平成23年8月31日の第5回「法曹の養成に関するフォーラム」において以下の説明をしています(リンク先の3頁及び4頁)(ナンバリング及び改行を追加しました。)。

1  前回フォーラムにおきまして,私より,貸与制においては,特殊な事例があれば当該金融機関が最終的にどう判断するかという問題があり得るものの,制度設計として,金融機関が保証を拒絶する前提では考えていないと説明させていただいたところですが,その後,更に確認しましたところ,前回の説明を特段修正する必要はないと考えております。
2   具体的に説明いたしますと,第3回フォーラムでも事務局から御説明がありましたが,貸与制の下では修習資金の貸与を受けようとする場合,自然人2人又は最高裁判所の指定する金融機関を連帯保証人として立てることとなっております。
3   一般に,国が修学資金を貸与する制度では保証人を立てることが要求されており,自然人の保証人につきましては父又は母が要求されておりますが,修習資金の貸与制におきましてはその要件が緩和されております。
   すなわち,自然人による保証につきましては,修習生との関係にかかわらず,第三者の債務を保証できるだけの最低限度の資力等の要件を満たす限り,保証人として立てることができることとしており,そのような自然人の保証人を立てることができない方であっても,金融機関による保証を受けることができるように特段の配慮をしております。
4   指定金融機関としましては,公正な企画競争の手続により,保証料が最も低額であることなどから,総合的に最も高い評価を得た株式会社オリエントコーポレーションが選定されております。
   オリエントコーポレーションとしては,保証審査において,原則として全件承認する方針であり,オリエントコーポレーションのクレジット利用等において現在トラブルとなっている方については,その度合いによっては保証を拒絶する場合があると聞いておりますが,審査に当たっては,貸金業法に基づく指定信用情報機関への照会や登録は行わない方針と聞いております。
   個別事案における具体的な審査は最終的にはオリエントコーポレーションが行うことになりますが,オリエントコーポレーションから保証が拒絶されるのは,極めて例外的な場合に限られると認識しております。
5   実際にも,貸与制が実施される予定となっていた昨年11月採用の新64期司法修習生の貸与申請状況をみますと,オリエントコーポレーションによる保証を申し込んだ件数は310件ございましたが,オリエントコーポレーションから保証を拒絶された者は一人もおりませんでした。
6 なお,日弁連御指摘のとおり,最高裁判所とオリエントコーポレーションとの包括保証委託契約書には,オリエントコーポレーションが保証委託契約の締結に承諾しない場合の手続を定めた条項があり,貸与申請者とオリエントコーポレーションとの間の保証委託約款には,貸与申請者がオリエントコーポレーションから信用状況の調査を受けても異議を述べない旨の条項がありますが,他の一般的な保証の場合と同様に,金融機関の保証である以上,特殊な事例に備えてこのような条項を設けること自体は,むしろ当然ではないかと考えております。
7 また,万が一,オリエントコーポレーションの審査により保証が拒絶された場合には,通常のこの種の貸付けの場合の原則に戻りまして,自然人の保証人2人を探していただければよいわけですが,仮に,自然人の保証人をどうしても見つけられない場合でも,貸与希望者が他の金融機関との間で保証委託契約を締結したときには,その金融機関を審査した上で貸与決定することも考えられると思っております。
8 したがいまして,貸与申請をした場合,保証を受けられずに貸与を受けられない場合は制度設計としては想定し難いところでして,貸与申請者については基本的に全員が貸与を受けることができる制度となっております。

第7の1 新65期の場合,平成30年7月25日から修習資金の返還が開始すること

1(1)   修習資金貸与金は,修習期間の終了した月の翌月から起算して5年を経過した後,10年の年賦により返還することになっています(修習資金の貸与等に関する規則7条本文)。
(2)   新65期の場合,修習期間が終了したのは平成24年12月ですから,翌月から起算して5年を経過した月は平成30年1月となります。
   そのため,平成30年7月25日(司法修習生の修習資金の貸与に関する規則7条・修習資金貸与要綱16条)に最初の年賦金を支払うこととなります。
(3) 最高裁判所の歳入徴収官(最高裁判所事務総局経理局長のことであることにつき裁判所会計事務規程3条及び別表第二・1項)は,年賦金等の督促(修習資金貸与要綱23条),保証人に対する請求(修習資金貸与要綱24条)又は返還未済額の全部の返還請求(修習資金貸与要綱25条)をした後,相当の期間を経過してもなお当該督促又は請求を受けた被貸与者又はその保証人が履行しない場合,法務大臣に対し,訴訟手続(非訟事件の手続を含む。)により履行を請求することを求めるものとされています(修習資金貸与要綱26条)。

2(1) 平成28年7月8日開催の第4回法曹養成制度改革連絡協議会資料4-1法曹の収入・所得,奨学金等調査の集計結果(平成28年7月)の末尾33頁(PDF37頁)には,「イ 司法修習終了後5年6月経過時点(修習資金の返還開始時点)での残債務額」という記載があります。
(2) 平成29年6月7日付の司法行政文書不開示通知書によれば,裁判所HPに掲載しているものを除き,修習資金貸与金の管理マニュアルは存在しません。

3 修習資金の今後の返還手続等について(平成30年1月)(最高裁判所事務総局経理局主計課)を掲載しています。

第7の2 修習資金の返還の猶予

1 総論
(1) 修習資金の返還猶予事由

ア 以下の場合,修習資金の返還を猶予してもらえます(裁判所法67条の2第3項前段)。
① 災害,傷病その他やむを得ない理由により返還が困難となったとき
② 修習資金を返還することが経済的に困難であるとき
イ ②につき,具体的には,返還期限前1年間(修習資金貸与要綱20条1項)について,(a)奨学金等の返済を控除した後の給与収入が300万円以下である場合,又は(b)奨学金等の返済を控除した後の事業所得が200万円以下である場合をいいます(司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則7条の2)。
(2) 修習資金の返還猶予の手続等
ア 修習資金の返還猶予のための申請は毎年行う必要があります(修習資金貸与要綱28条3項及び4項)。
イ 修習資金の返還猶予は最大で5年間です(修習資金貸与要綱28条5項)。
ウ 修習資金の返還猶予基準を事後的に満たさなくなった場合(例えば,学金の返済を控除した後の事業所得が200万円を超えた場合),それまでの猶予分とあわせて修習資金を返還しなければならないと思います。
(3) 返還期限の猶予申請における添付資料の例
   裁判所HPの「ガイド~据置期間・返還期間中の手続について~」の「第6 返還期限の猶予について」には,以下の記載があります。
※ 添付資料の例は次のとおりです。
ア 災害の場合
被災証明書等,所得証明書等,申述書
イ 傷病の場合
診断書等,所得証明書等,申述書
ウ 事故の場合
事故証明等,所得証明書等,申述書
エ 経済的に困難な場合
・ 給与所得者
給与証明書(又は所得証明書),申述書
借入金の返還がある場合には,借入れの目的や返還の事実が分かる契約書,領収書等
・ 給与所得者以外の者
確定申告書(控え)(又は所得証明書),申述書
借入金の返還がある場合には,借入れの目的や返還の事実がわかる契約書,領収書等
(4) その他
ア 修習資金の返還を猶予してもらう場合,国の債権の管理等に関する法律26条の例外として,担保を提供したり,利息を支払ったりする必要はありません(裁判所法67条の2第3項後段)。
イ 修習資金貸与要綱は,司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則12条に基づくものと思います。

2 平成24年の裁判所法改正
(1)ア   平成24年8月3日法律第54号による改正前の裁判所法67条の2第3項は以下のとおりです。
   最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたときは、その返還の期限を猶予することができる。この場合においては、国の債権の管理等に関する法律 (昭和三十一年法律第百十四号)第二十六条 の規定は、適用しない。
イ 平成24年8月3日法律第54号による改正前の裁判所法67条の2第3項は以下のとおりであり,赤字部分が追加されました。
   最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたとき、又は修習資金の貸与を受けた者について修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるときは、その返還の期限を猶予することができる。この場合においては、国の債権の管理等に関する法律 (昭和三十一年法律第百十四号)第二十六条 の規定は、適用しない。
(2) 平成24年8月3日法律第54号は,裁判所法附則5項として以下の条文を追加しました。
第六十七条の二第一項の修習資金の貸与については、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(平成十四年法律第百三十九号)附則第二条の規定による法曹の養成に関する制度についての検討において、司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の修習の位置付けを踏まえつつ、検討が行われるべきものとする。

3 関係条文
(1)   司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(平成21年10月30日最高裁判所規則第10号)
(法第六十七条の二第三項に規定する最高裁判所の定める事由) 
第七条の二 法第六十七条の二第三項に規定する最高裁判所の定める事由は、次に掲げるものとする。
一 修習資金の貸与を受けた者が給与所得(俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。)以外の所得を有しない者(次号において「給与所得者」という。)である場合において、当該者の最高裁判所の定める期間における収入金額(法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門職大学院であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。)における修学のための借入金(最高裁判所の定めるものを除く。次号において単に「借入金」という。)を当該期間中に返還したときは、その返還額を控除した残額)が三百万円以下であること(当該者について次条第二項第二号から第五号までに掲げる事由のいずれかが生じたときを除く。)。
二 修習資金の貸与を受けた者が給与所得者以外の者である場合において、当該者の前号に規定する期間における総収入金額(借入金を当該期間中に返還したときは、その返還額を控除した残額)から必要経費を控除した残額が二百万円以下であること(当該者について次条第二項第二号から第五号までに掲げる事由のいずれかが生じたときを除く。)。 
(2) 修習資金貸与要綱
(規則第7条の2に規定する最高裁判所の定める期間等) 
第20条 規則第7条の2第1号に規定する最高裁判所の定める期間は,猶予を受けようとする修習資金の返還の期限前1年間とする。
2 規則第7条の2第1号に規定する最高裁判所の定めるものは,配偶者又は3親等内の親族からの借入金とする。 
(返還期限の猶予の手続)
第28条 法第67条の2第3項の規定による修習資金の返還の期限の猶予の申請は,別紙様式第8による返還期限猶予申請書を最高裁判所に提出してするものとする。
2 前項の返還期限猶予申請書には,災害,傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となったことを証する資料又は規則第7条の2各号に掲げる事由のいずれかがあることを証する資料を添付しなければならない。
第1項に規定する猶予の期間は,1年以内で当該猶予に係る事由(当該事由が規則第7条の2各号に掲げる事由である場合には,同条各号に掲げる事由に相当する事由。以下この条において同じ。)が継続すると見込まれる期間とする。
前項の猶予の期間が終了するときに当該猶予に係る事由が継続していると認められる場合には,再度第1項の規定による申請をすることにより,当該猶予の期間の延長をすることができるものとし,当該延長をすることができる期間は,1年以内で当該猶予に係る事由が継続すると見込まれる期間とする。
前2項の規定による猶予の期間は,通じて5年を超えることができない。
6 最高裁判所の歳入徴収官は,第1項に規定する猶予をする場合には,当該猶予を申請した者,被貸与者及びその保証人に対し,その旨及び当該猶予後の返還の期限を通知するものとする。
7 第1項に規定する猶予をされた被貸与者は,その者について次に掲げる事由のいずれかが生じた場合には,第3項から第5項までの規定にかかわらず,最高裁判所の歳入徴収官の請求に基づき,その指定する日までに,返還未済額の全部を返還しなければならない。
一 規則第6条第4号に掲げる事由が生じたとき。
二 規則第8条第1項第4号又は第2項各号に掲げる事由が生じたとき。
三 最高裁判所に提出した書類に虚偽の事実を記載したことにより第1項に規定する猶予を受けたことが判明したとき。
四 国の不利益にその財産を隠し,損ない,若しくは処分したとき,又はこれらのおそれがあると認められたとき。
五 虚偽に債務を負担する行為をしたとき。
六 次項の規定による求めに応じなかったとき。
8 最高裁判所は,第1項に規定する猶予をした被貸与者に対し,当該猶予の期間中,当該猶予に係る事由が継続していることを確認するために必要な資料の提出を求めることができる。 

第7の3 修習資金の返還の免除

1 総論
(1) 死亡又は精神若しくは身体の障害により修習資金を返還することができなくなった場合,その修習資金の全部又は一部の返還を免除してもらえます(裁判所法67条の2第4項)。
(2) 修習資金の返還の免除を申請する場合,最高裁に対し,被貸与者が死亡又は精神若しくは身体の障害により修習資金を返還することができなくなったことを証する資料を添付して,返還免除申請書を提出します(修習資金貸与要綱29条1項及び2項)。
(3)    裁判所HPの「ガイド~据置期間・返還期間中の手続について~」の「第6 返還期限の猶予について」によれば,提出書類は以下のとおりです。
① 返還免除申請書(PDF:225KB)
② 障害者手帳等(障害の有無及び程度を証明する書類)
③ 所得証明書,課税証明書,収入額を証明する書類,資産に関する申述書等

2 修習資金貸与要綱29条の条文
(返還の免除の手続)
第29条 法第67条の2第4項の規定による修習資金の全部又は一部の返還の免除の申請は,別紙様式第9による返還免除申請書を最高裁判所に提出してするものとする。
2 前項の返還免除申請書には,被貸与者が死亡又は精神若しくは身体の障害により修習資金を返還することができなくなったことを証する資料を添付しなければならない。
3 最高裁判所の歳入徴収官が第1項に規定する申請の審査に際し必要と認める場合には,被貸与者は,医師による診断を受けなければならない。この場合において,最高裁判所の歳入徴収官は,当該医師を指定することができる。
4 最高裁判所の歳入徴収官は,第1項に規定する免除をする場合には,当該免除を申請した者,被貸与者及びその保証人に対し,その旨を通知するものとする。

第7の4 修習資金貸与制に関する平成24年改正の具体的内容

〇笠井之彦司法研修所事務局長は,平成24年9月5日の第22回司法修習委員会において以下の説明をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
1 司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則の一部改正について御説明する。資料44は,司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則の一部を改正する規則(案)である。
   フォーラムの第一次取りまとめを受けて,裁判所法第67条の2第3項の一部が改正され,修習資金の返還の期限を猶予することができる事由として,「修習資金の貸与を受けた者について修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるとき」が加えられた。
   今回の規則改正は,それに伴い,「修習資金を返還することが経済的に困難である事由」を定めるものである。
2(1) 規則改正案は,フォーラムの第一次取りまとめの内容に沿ったものとなっているので,まず初めに,フォーラムの第一次取りまとめの内容について,あらためて簡単に御説明する。
(2) フォーラムでは,弁護士等を対象に収入及び奨学金等の経済状況調査を実施するとともに,5回にわたり協議を重ねた結果,昨年8月31日,貸与制を基本とする一方,経済的な理由により修習資金を返還することが困難であると認められる者を対象として,貸与された修習資金の返還期限について猶予措置を講ずるべきであるとの第一次取りまとめが行われた。
   第一次取りまとめでは,講ずべき措置の具体的内容について,貸与制が公的な貸付制度の一つであることに鑑み,①他の公的な貸付制度である独立行政法人日本学生支援機構の奨学金制度において,経済困難を理由とする返還猶予事由について,給与所得者については年間収入金額が300万円以下,給与所得者以外については年間所得金額が200万円以下とし,猶予期間は最長5年間とされていることから,これを基本とすることとし,②収入・所得基準の適用に当たり,法科大学院在学中の奨学金や教育ローンなど,法科大学院在学中の修学資金であることが明確なものについては,その年間返還額を,年間収入・所得金額から控除することとされている。
   なお,法科大学院以外の大学院・学部等に在学中の奨学金等や親族からの借入れは,法科大学院在学中の修学資金であることが明確なものには含まれないこととされている。
(3) この第一次取りまとめを受けて,必要な措置を講ずるために,平成23年11月4日,裁判所法の一部を改正する法律案が国会に提出され,一部修正の上,平成24年7月27日参議院本会議において可決・成立し,8月3日に公布された。
   なお,法案審議の過程で行われた一部修正は,今回の措置を講ずるための改正内容に影響するものではない。
3(1) 裁判所法改正の具体的内容は,裁判所法第67条の2第3項に,従前から規定されている「災害,傷病その他やむを得ない理由」に起因する修習資金の返還猶予事由に,「修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるとき」を追加するものである。
   修習資金を返還することが経済的に困難である事由の具体的内容は,最高裁判所において定めることとされているが,ここまで説明した法改正に至る経緯等を踏まえれば,最高裁判所規則では,フォーラムの第一次取りまとめの内容に沿って具体的事由を定めることが想定されているものと考えられる。
(2)   そこで,資料44の改正規則案では,修習資金を返還することが経済的に困難である事由として「最高裁判所の定める事由」は,先ほど御説明したフォーラムの第一次取りまとめのとおり,給与所得者については年間収入金額が300万円以下であること,給与所得者以外の者については年間所得金額,すなわち年間収入金額から必要経費を控除した残額が200万円以下であることとし,給与所得者についてもそれ以外の者についてもいずれも収入・所得金額の算定に当たっては,法科大学院における修学のための借入金の返還額を控除することとしている。
4(1) 規則案文に沿って説明すると,今回追加する規則第7条の2の1号が給与所得以外の所得を有しない者に関する規定,2号が給与所得以外の所得を有する者に関する規定ということになる。
   なお,給与所得と事業所得等の他の所得を有する場合には,2号が適用されることになるが,この場合には年間所得金額の算定は,給与収入とその他の収入を合算した金額から,給与その他の各収入に係る必要経費を控除して行うことを考えており,給与収入に係る必要経費については,所得税法上の給与所得控除の金額とすることを考えている。
(2)   また,年間収入金額・年間所得金額が基準額以下であるかどうかは,「最高裁判所の定める期間」における収入・所得金額により判断することになるが,猶予の可否は返還期限において修習資金の返還が経済的に困難であるといえるか否かで判断するのが相当であると考えられること,返還すべき年賦金には過去の収入金額が充てられると考えられること等を踏まえ,「最高裁判所の定める期間」は,猶予を受けようとする返還の期限前1年間とすることを考えている。
   この点に関しては,返還期限が毎年7月25日とされていることもあり,返還期限前1年間の収入・所得をどのような資料に基づいて算定するかも問題となるが,この点は,給与所得者については,所得証明書又は給与証明書等のほか申述書に基づき,給与所得者以外の者については,所得証明書又は確定申告書の本人控え等のほか申述書に基づき,行うことを考えている。
(3)   次に,収入・所得金額の算定に当たって控除される法科大学院における修学のための借入金に関しては,法科大学院在学中の奨学金のほか,教育ローン等は,法科大学院における修学のための借入金に該当し,控除の対象となるが,自動車ローンや住宅ローンは,法科大学院における修学のための借入金とはいえないことから控除の対象にはならないと考えている。
   なお,配偶者及び3親等内の親族からの借入金については,それが法科大学院の費用に充てられたとしても,「最高裁判所の定めるもの」として控除の対象にならないとすることを考えている。
(4)   また,1号及び2号のいずれについても,「次条第二項第二号から第五号までに掲げる事由のいずれかが生じたときを除く」こととしている。
   これは,「次条第二項第二号から第五号までに掲げる事由のいずれかが生じたとき」,すなわち,強制執行を受けたとき(2号),租税その他の公課について滞納処分を受けたとき(3号),財産について競売の開始があったとき(4号)及び破産手続開始等の決定を受けたとき(5号)は,直ちに債権の保全・回収を図ることを目的として当然に期限の利益を喪失するものとされていることをも考慮し,経済困難を理由とする猶予を認めることはできないとするものである。
(5)   その他,第1条第1項及び第8条の改正は,第7条の2を追加することに伴う形式的改正である。
5 なお,フォーラムの第一次取りまとめでは,猶予期間についても,日本学生支援機構の奨学金制度において,最長5年間とされていることからこれを基本とすることとされたところであるが,既存の猶予事由の猶予期間について,下位規範である要綱で「通じて5年を超えることができない。」と定められているところ,経済困難を理由とする猶予の期間についてもこの規定によることを考えている。
6 最後に施行期日について,御説明させていただく。
   一部改正規則の施行期日は,平成24年11月3日としているが,これは裁判所法第67条の2第3項の改正規定が,公布の日,すなわち,8月3日から起算して三月を経過した日である11月3日から施行されることとなっていることから,同法で委任を受けた最高裁判所規則についても同日を施行期日とするものである。
7 司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則の一部改正の概要等についての説明は,以上のとおりである。

第8の1 修習資金の据置期間・返還期間中の手続

1(1) 被貸与者は,司法修習生でなくなったときから修習資金の返還を終えるまでの間,①毎年4月30日までに,最高裁判所に対し,住所等届出書を提出しなければなりませんし,②連絡先等の変更があった場合,変更が生じた日から2週間以内に,最高裁判所に対し,変更事項届出書を提出しなければなりません。
   被貸与者がこれらの手続を怠った場合,最高裁判所の請求によって期限の利益を喪失し,返還未済額の全部を返還することとなります。
(2) 平成28年8月31日付で修習資金貸与要綱(平成24年11月3日施行)が改正された結果,変更事項の届出を電子メールで行えるようになりました(裁判所HPの「修習資金要綱の一部改正について」)。

2 修習資金の据置期間・返還期間中の窓口は,最高裁判所事務総局経理局主計課出納係となりますところ,出納係の事務分掌は以下のとおりです。
(1) 出納第一係
① 最高裁判所に係る歳出金の支出並びに前渡資金の出納保管及び計算証明に関する事項
② 最高裁判所の保管金の出納保管及び計算証明に関する事項
③ 最高裁判所の歳入金の収納に関する事項
④ 司法修習生の修習資金の貸与決定に関する事項
(2) 出納第二係
① 最高裁判所の歳入徴収及び債権管理に関する事項
② 最高裁判所の債権及び歳入の計算証明に関する事項
③ 最高裁判所の支出に係る旅費に関する事項
(3) 出納第三係
① 最高裁判所に係る歳出金の計算証明に関する事項
② 最高裁判所の支出負担行為差引簿に関する事
③ 最高裁判所の支出決定簿に関する事項

第8の2 住所等届出書の提出状況等が分かる文書は存在しないこと

1   新65期から68期までの,期ごとの以下の文書は存在しません(平成28年度(最情)答申第32号(平成28年10月24日答申))。
  なお,→以下の記載は,平成28年7月22日付の最高裁判所事務総長の理由説明書における説明内容です。

① 年度ごとに,住所等届出書の提出状況が分かる文書(文書1)が存在しない理由
→ 住所等届出書は,修習資金貸与要綱(以下「貸与要綱」という。)31条により,修習資金貸与金全額の返還を終えるまで毎年4月30日を期限として,その年の4月1日における住所及び職業を最高裁判所に届け出るものであり,返還が始まった際,被貸与者宛てに確実に納入告知書を送付するために必要な情報を記載したものである。そこで,その提出を促すため,期限までに提出しない者に対して,督促を行っているが,この督促を行うために,その時点での未提出者の情報のみを把握すれば足り,年度ごと,期ごとに住所等届出書の提出状況を把握する必要はないから,申出に係る文書は作成又は取得していない。
② 年度ごとに,住所等届出書の提出を怠った結果,期限の利益を喪失した人の数が分かる文書(文書2)が存在しない理由
→ 住所等届出書の提出を相当期間怠ったときは,貸与要綱21条2項1号,司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(以下「貸与規則」という。)8条1項の規定により期限の利益を喪失し,返還未済額の全部を返還しなければならないこととなるが,期限の利益の喪失から未返還額の請求までの手続は,該当する被貸与者ごとに個別に行うものであり,年度ごと,期ごとに期限の利益を喪失した人数を把握する必要はないから,申出に係る文書は作成又は取得していない。
③ 年度ごとに,変更事項届出書の提出状況が分かる文書(文書3)が存在しない理由
→ 変更事項届出書は,住所の変更等,貸与要綱30条1項1号又は2号に定める事由が生じた場合に最高裁判所に届け出るものである。この変更事項届出書は,被貸与者の届出事項に変更が生じない限り,提出する必要はなく,また,同届出書が提出された場合には,個別に当該被貸与者の情報を変更し管理すれば足り,年度ごと,期ごとに変更事項届出書の提出状況を把握する必要はないから,申出に係る文書は作成又は取得していない。
④ 年度ごとに,繰上返還申請をした人の数が分かる文書(文書4)が存在しない理由
→ 繰上返還は,貸与規則7条ただし書により,年賦金の返還期限前に修習資金の返還を行うことができる制度であり,被貸与者から,繰上返還申請書が提出された場合,返還期限や返還額を当初の予定から変更するなどの処理を行い,繰上返還分の納入告知書を送付するものである。これらの事務処理は,申請者ごとに個別に行うものである。年賦金の返還開始までは,繰上返還の申請に基づいた返還のみであるため,収納済等一覧表(法定帳簿)で月別に収納された人数を数えることは可能であるが,年度ごと,期ごとに整理されたものではないことから,申出に係る文書には該当しない。
⑤ 年度ごとに,返還期限の猶予を受けた人の数が分かる文書(文書5)が存在しない理由
→ 返還期限の猶予は,裁判所法67条の2第3項に規定され,被貸与者からの申請に基づき,猶予が認められれば一定期間修習資金の返還が猶予されるが,猶予申請があった場合,申請者ごとに個別に事務処理を進めるものであり,年度ごと,期ごとに申請者の人数を把握した上で事務処理を進める必要がないから,申出に係る文書は作成又は取得していない。
⑥ 年度ごとに,返還免除を受けた人の数が分かる文書(文書6)が存在しない理由
→ 返還免除は,裁判所法67条の2第4項に規定され,被貸与者等からの申請に基づき,免除が認められれば修習資金の返還が免除されるが,免除申請があった場合,申請者ごとに個別に事務処理を進めるものであり,年度ごと,期ごとに申請者の人数を把握した上で事務処理を進める必要がないから,申出に係る文書は作成又は取得していない。
⑦ 年度ごとに,修習資金貸与金の回収状況が分かる文書(文書7)が存在しない理由
→ 修習資金の年賦金の返還は,平成30年から65期の年賦金の返還が開始されることから,現在は繰上返還を申請した者からの返還のみとなっている。繰上返還された金額の総額については,徴収簿総括表(法定帳簿)に年度末現在の記載はあるが,期ごとに整理されたものではないことから,申出に係る文書には該当しない。

2 平成28年度(最情)答申第32号(平成28年10月24日答申)には以下の記載があります。

  本件各開示申出文書は,修習資金の貸与に関し,裁判所法,貸与規則又は貸与要綱に基づく届出書等の提出やその懈怠その他の手続上の行為があった者の数等を,期ごと,年度ごとに記載した文書であるところ,修習資金の貸与や修習資金貸与金の回収は,その性質上,いずれも,被貸与者ごとに個別に行われるものであると考えられるから,修習資金の貸与に関する事務処理上,上記のような者の数を,期ごと,年度ごとに把握する必要性があるとする事情はうかがわれず,苦情申出人もそのような事情を何ら主張しない。
  したがって,本件各開示申出文書をいずれも作成し,又は取得していないとする最高裁判所事務総長の説明は合理的であり,最高裁判所においては,本件各開示申出文書を作成し,又は取得をしていないと認められる。

第8の3 修習資金貸与金の返還状況

「修習資金貸与金の返還状況」に移転させました。

第9 修習資金の貸与制に関する照会先

   裁判所HPの修習資金交付日一覧(第70期司法修習生向け)によれば,修習資金の貸与制に関する照会先は以下のとおりです。
 
1 貸与期間中
(1) 修習資金交付日に関すること
   最高裁判所事務総局経理局主計課出納係
   03-3264-8504(ダイヤルイン) 
(2) 修習資金交付日に関すること以外
  司法研修所事務局総務課人事係
   048-233-0025(ダイヤルイン)
 
2 貸与終了後の返還に関すること
   最高裁判所事務総局経理局主計課出納係
   03-3264-8504(ダイヤルイン)

第10の1 修習資金貸与金の返還を一律に免除するために必要な法的措置

1(1)ア   新65期から貸与制に移行したため,国が修習資金貸与金の返還義務を遡及的に免除する場合,国の債権の管理等に関する法律32条1項(歳入徴収官等による免除を定めた規定)に関する特例法が必要になります。
    そして,裁判所主管の歳入予算概算見積書(裁判所の予算参照)によれば,修習資金貸与金償還金は政府資産整理収入(租税印紙収入と同様に,歳入予算の「部」の一つ)に含まれますから,修習資金貸与金の返還義務を免除した場合,将来の政府資産整理収入が減少することとなります。
イ 最高裁判所の場合,歳入徴収官は最高裁判所事務総局経理局長です(裁判所会計事務規程別表第二の一)。
(2) 国の債権の管理等に関する法律32条1項の特例法としては,カネミ油症事件関係仮払金返還債権の免除についての特例に関する法律(平成19年6月8日法律第81号)があります。
   これは,「昭和四十三年に九州地方を中心に発生したカネミ油症事件をめぐる損害賠償請求訴訟に係る判決の仮執行の宣言に基づき国が支払った仮払金の返還に係る債権の債務者が当該事件による被害の発生から現在までの間に置かれてきた状況及び当該債権の債務者の多くが高齢者となっていることを踏まえ」(同法1条),国が,一定の収入基準及び資産基準を満たすカネミ油症被害者について債権免除を認めたものです。
(3) 国の債権の管理等に関する法律32条1項によれば,歳入徴収官が債権を免除できるのは,債務者が無資力又はこれに近い状態にあるため履行延期の特約等をした債権について,当初の履行期限から十年を経過した後において、なお債務者が無資力又はこれに近い状態にあり,かつ,弁済することができることとなる見込みがないと認められる場合に限られます。

2 71期以降について修習給付金制度が創設されたものの,新65期ないし70期の修習資金の返還義務を免除するためには特例法が必要になります。
  また,カネミ油症被害者と異なり,新65期ないし70期の修習生は何らかの損害を被った被害者ではありませんし,高齢者でもありません。
  さらに,仮に修習資金返還義務の免除を認めた場合,修習資金の貸与を受けなかった同期の元修習生との間で発生する著しい不公平を解決する必要があります。
  そのため,修習資金貸与金の返還義務の一律免除を実現するのは,修習給付金制度の創設以上に難しいと思われます。

3(1) 平成30年6月現在,司法修習ナビゲーションHPの「貸与金制度は利用するべきでしょうか?」には,以下の記載があります。
   弁護士になって、売れっ子になれば、300万円や400万円というお金は、場合によっては、一か月の仕事で稼いでしまえるお金です。
   そう、実際、吉田は今年、一か月単位の売上は300万円よりは多いです。
   そういう、「それなりの弁護士」になることができたのは、やはり、司法修習という人生経験で弁護士としての基盤をしっかりとつくったからだと思います。
   貸与制の借金を払い終えるころというのは、弁護士15年目ということになると思います。
弁護士経験15年目の弁護士が「返済に悩むレベル」というのは、3千万から3億円というレベルです。 
   貸与制の300万円というのは、悩みというには少額すぎる金額です。 
   ゴーマンをかますというわけでもありませんが,15年目の弁護士にとっては,300万というのは鼻クソです。
   鼻クソのことで悩む必要は,普通は,ないと思います。
   そういうわけで、悩むことなく、堂々と借金して、精一杯に修習を経験して、楽々と借金を返済してください。 
(2) シュルジーブログ「15年目の弁護士にとっては,300万というのは鼻くそです。」(2017年9月29日付)には以下の記載があります。
   借金の条件が破格だということと、給費が貸与と同じかどうかは、別のことでしょう。
   返済しなければならない債務としての負担の重さは、利息の有無や返済期間とは関係なく、人によるとしか言いようがありません。
   同じく、15年目の弁護士にとって300万が鼻クソかどうかも、人によるとしか言えません。
   気安く貸与を推奨して、もしその人の人生が狂ったりした場合に、この先生は責任を取れるんでしょうか。
   本当の論点は、「貸与を受けるかどうか」などということでは、もはやないのですよ。
   我々に突きつけられる問題とは、「法曹は目指すべき職業なのかどうか」です。

4(1) 『気になるあの人のウラ側一挙ご開帳SP』(平成30年6月15日,テレビ東京放送分)には以下の記載があります。
   弁護士の通帳を見せてもらう。弁護士の平均年収は1000万円でテレビに出演している弁護士先生は5000万円から1億円になるそうだ。今回、通帳を見せてくれるのは福永活也弁護士。通帳には1週間で6億円の賠償金が入金されていた。独身の福永弁護士は旅行が趣味で今まで旅先は130ヵ国だそうで、登山も趣味で780万円でエベレスト山頂を行っていた。
(2) Youtube動画「通帳見たらスゴかった 2018年6月15日 【~気になるあの人のウラ側一挙ご開帳SP~】 」には,新62期の福永活也弁護士に関して,「6億円のうち報酬金は?」→「1億円いかないくらい」(36分23秒の字幕)とか,「被災者への賠償金は140億円 その内の一部を報酬金として受け取る」(37分5秒の字幕)と書いてあります。

法務省が国会で説明した弁護士登録5年目の平均所得は,新61期が697万円,新62期が690万円,新63期が686万円です。
無給修習世代に対する救済措置は予定していないこと1/2
無給修習世代に対する救済措置は予定していないこと2/2

第10の2 谷間世代(無給修習世代)に対する救済策は予定していない旨の国会答弁等

0 平成29年11月14日付の司法行政文書不開示通知書によれば,司法修習資金貸与制の対象となった新65期ないし70期に対して,どのような救済措置を講ずべきかについて最高裁が検討した際に作成した文書は存在しません。

1 小山太士法務省大臣官房司法法制部長は,平成29年3月31日の衆議院法務委員会において,以下の答弁をしています。
① 委員から御指摘がございました、修習給付金制度の創設に伴いまして、現行の貸与制下の司法修習生、これは新六十五期から第七十期まででございますけれども、これに対しましても何らかの救済措置を講ずべきとの御意見があることは我々としても承知しております。
   ただ、修習給付金制度の趣旨でございますが、これは、先ほど御答弁申し上げましたとおり、法曹志望者が大幅に減少している中で、昨年六月の骨太の方針で言及されました、法曹人材確保の充実強化の推進等を図る点にあるわけでございまして、この趣旨に鑑みますと、修習給付金につきましては、今後新たに司法修習生として採用される者を対象とすれば足りるのではないかと考えられたところでございます。
   それからまた、加えて、仮に既に貸与で修習を終えられたような方に何らかの措置を実施するといたしましても、現行貸与制下において貸与を受けていらっしゃらない方もいらっしゃいまして、この取り扱いをどうするかといった制度設計上の困難な問題がございます。また、そもそも、既に修習を終えている人に対して事後的な救済措置を実施することにつき、国民的な理解が得られないのではないかという懸念もあるところでございます。
   ということで、本制度につきましては、救済措置を設けることは予定していないわけでございます。
② 本法案が可決、成立いたしますと、本年十一月に修習が開始される第七十一期の司法修習生から修習給付金を支給することになります。まずは新たな制度を導入していただきまして、その後はこの制度について継続的、安定的に運用していくことが重要であろうと考えております。御理解を賜りたいと考えております。

2 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成29年3月22日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① まず、修習給付金の金額の点の御質問がございました。
   この具体的な金額につきましては最終的に最高裁判所規則において定めることになりますが、基本給付金として全ての修習生に対して一律十三万五千円、そのほか、住宅を借り受け、家賃を支払っている場合には住居給付金、あるいは移転に必要な移転給付金といったものを支給するということを予定しているところでございます。
   これらの修習給付金の額は、制度設計の過程の中で、法曹人材の確保、充実強化の推進等を図るという制度の導入理由のほか、修習中に要する生活費や学資金等の司法修習生の生活実態その他の諸般の事情を総合考慮するなどして決定されたというふうに承知しているところでございます。
   最高裁といたしましては、この新たな給付金制度の円滑な実施及び継続的かつ安定的な運用に努めてまいりたいというふうに考えておりますが、今後、制度のいろいろな問題点等は運用の中で出てくるかもしれません。そのようなところはまた法務省等とも御相談申し上げて、運用については万全を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
② それから、制度間の不公平の問題も御指摘ありました。
   修習給付金制度の創設に伴いまして、現行貸与制下の修習生、新六十五期から七十期までということですが、これらに対しても何らかの経済的措置や救済措置を講ずべきという意見があることは承知しているところでございます。
   しかしながら、給付金の制度の導入に伴い、現行貸与制下の修習生に対して救済措置を設けるか否かにつきましては、立法政策というところにもかかわるところでございますので、最高裁として、今の段階で意見を述べることは差し控えたいというふうに考えているところでございます。

42期の笠井之彦最高裁判所経理局長は,平成29年12月5日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 新六十五期につきましては、採用者数二千一人に対して貸与人数は千六百八十八人、この数字を前提といたしますと、貸与割合は約八四%、平均貸与額は約三百十五万円でございます。
以下同様に、六十六期は、採用者数二千三十五人に対して貸与人数は千六百四十五人、貸与割合は八一%、平均貸与額は三百十三万円でございます。
六十七期は、採用者数千九百六十九人に対して貸与人数は千四百四十九人、貸与割合は七四%、平均貸与額は三百十五万円でございます。
六十八期は、採用者数千七百六十一人に対して貸与人数は千百八十一人、貸与割合は六七%、平均貸与額は三百十九万円でございます。
六十九期は、採用者数千七百八十七人に対して貸与人数は千二百五人、貸与割合は六七%、平均貸与額は三百二十三万円でございます。
七十期は、採用者数千五百三十人に対して貸与人数は九百九十三人、貸与割合は六五%でございます。なお、七十期につきましては、修習期間中でございまして、貸与が終了しておりませんので、平均貸与額は算出しておりません。
② 新六十五期から七十期までの司法修習生のうち、貸与金を借り受けた修習生は約八千人でございまして、借り受けた修習生に対して月額十三万五千円を免除する場合の総額は約百四十三億円余りとなります。

4 山下貴司法務大臣は,
平成30年11月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 弁護士のいわゆる谷間世代問題ということでございますけれども、いわゆる谷間世代の司法修習生に対して救済措置が必要だということでございますが、これはそもそも、要するに、経済的支援制度を導入する際に、相当、超党派で委員の皆様がお集まりになってやられたということはあります。
   ただ、それより先に進んで、既に修習を終えている者に対して国の財政負担を伴う事後的な救済措置を実施することについて国民的理解が得られるのかということになると、若干困難ではないかというふうな指摘もございます。そしてまた、既に貸与制のもとにおいて貸与を受けていない者の取扱いをどうするか。要するに、貸与を受けていない、じゃ、その人には払うのか払わないのかとか、そういった制度設計上の困難な問題もあるということでございます。
そうしたことは先ほど司法法制部長も答弁したと思いますが、ただ、若い世代の法律家が存分に活躍できる、そういう若い法曹にとって魅力ある社会を我々はつくりたいというふうに考えております。
   そういった中で、今、さまざまな制度変更、例えば相続法制の変更であるとかあるいは民法の債権法の変更であるとか、こういったことも含めて、新しい分野に若い法曹にチャレンジしていただいて、しっかりと頑張っていただきたいというふうに思っております。
② といったことで、谷間世代の問題につきましては、なかなか難しいということを御理解賜ればというふうに思っております。

第11 生活保護と修習資金貸与金との比較等

1 生活保護受給者の権利及び義務
   大阪府門真市HPの「生活保護受給者の権利と義務」によれば,以下のとおりです。
(1) 生活保護受給者の権利
① 不利益変更の禁止(生活保護法56条)
   正当な理由なく、保護費を減らされたり保護を受けられなくなったりするなどの不利益を受けることはありません。
② 公課及び差押えの禁止(生活保護法57条及び58条)
   保護により支給された金品には、税金をかけられたり、差し押さえられたりすることはありません。
(2) 生活保護受給者の義務
① 譲渡禁止(生活保護法59条)
   保護を受ける権利を他人に譲り渡すことはできません。
② 生活上の義務(生活保護法60条)
   常に能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めなければなりません。
③ 届出の義務(生活保護法61条)
   世帯に収入があったときや世帯員の状況に変化があったときは、福祉事務所へすみやかに、正しく届け出なければなりません。
④ 指示等に従う義務(生活保護法62条)
   福祉事務所が最低生活の保障と生活の向上や自立のために必要な指導・指示をしたときは、これに従わなければなりません。
 
2 生活保護に基づく支給の種類
(1) 生活保護受給者の場合,以下のように,生活を営む上で必要な各種費用に対応して扶助が支給されます(厚生労働省HPの「生活保護制度」参照)。
① 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等)
② 住宅扶助:アパート等の家賃
③ 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
④ 医療扶助:医療サービスの費用
⑤ 介護扶助:介護サービスの費用
⑥ 出産扶助:出産費用
⑦ 生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
⑧ 葬祭扶助:葬祭費用
(2) 生活保護受給者の場合,居住移転の自由に対する制約はありませんし,働いて得た収入のうち,必要経費及び基礎控除額等を差し引いた分は手元に残ります。
(3) 平成26年7月1日施行の改正生活保護法については,厚生労働省社会・援護局保護課が作成した「生活保護法改正の概要」を参照してください。
 
3 生活保護で支給される金額の例
(1)   生活保護で支給される金額は,1級地1,1級地2,2級地1,2級地2,3級地1,3級地2の6段階となりますところ,例えば, 東京都特別区,横浜市,さいたま市,大阪市,京都市,神戸市及び名古屋市は1級地1に該当します。
   そして,平成28年4月現在, 1級地1に居住する3人世帯(夫婦子1人)(33歳,29歳,4歳)の場合,生活扶助として16万110円が支給され,住宅扶助として最大6万9800円が支給されますから,合計22万9910円となります(厚生労働省社会・援護局保護課の,平成28年5月27日付の「生活保護制度の概要等について」参照)。 
(2) 外部HPの「生活保護 金額 自動計算」を使えば,都道府県,市町村,世帯構成等を入力することで,生活保護費を計算することができます。
 
4  司法修習生の修習資金貸与金との比較
(1) 33歳の司法修習生,29歳の専業主婦及び4歳の子供という家族構成の場合,住居加算及び扶養加算の両方を利用すれば,毎月28万円の修習資金の貸与を受けることができます。
   ただし,生活保護受給者の場合,国民年金保険料(日本年金機構HPの「国民年金保険料」によれば,平成28年度は毎月1万6260円ですから,夫婦で3万2520円です。)を支払う必要がありませんし,自分で医療費を支払う必要がありませんから,手取額で言えば,大差がないかもしれません。
(2) 生活保護受給者の場合,支給された生活保護費を返還する必要はないのに対し,司法修習生の場合,貸与された修習資金を返還する必要があります。

第12 生活保護に優先して給付される制度

例えば,以下の制度があります。
 
① 雇用保険制度による給付(基本手当、傷病手当などの失業等手当):ハローワーク
 
② 求職者支援法による職業訓練受講給付金:ハローワーク
 
③ 公的年金(老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金など):年金事務所
 
④ 児童手当児童扶養手当など:市区町村役場
 
⑤ 特別障害者手当障害児福祉手当など:市区町村役場
 
⑥ 自立支援医療制度(医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度):市区町村役場
 
⑦ 介護保険法に基づく介護サービスによる給付:市区町村役場
 
⑧ 生活困窮者自立支援制度(住宅確保給付金,一時生活支援事業):市区町村役場

第13 職業訓練受講給付金(求職者支援制度)

1 厚生労働省HPの職業訓練受講給付金(求職者支援制度)からの抜粋
(1) 「職業訓練受講給付金(求職者支援制度)」は、雇用保険を受給できない求職者の方(受給を終了した方を含む)が,ハローワークの支援指示により職業訓練を受講する場合,職業訓練期間中の生活を支援するための給付を受けることができる制度です。
(2)ア 職業訓練を受講している間,「職業訓練受講手当」(月額10万円)と「通所手当」(通所経路に応じた所定の金額(上限額あり))が支給されます。
   ただし,一度でも訓練を欠席したり(やむを得ない理由を除く。)ハローワークの就職支援(訓練終了後の就職支援を含む)を拒否すると,給付金が不支給となるばかりではなく,これを繰り返すと訓練期間の初日に遡って給付金の返還命令等の対象となります。
イ 職業訓練受講給付金に加えて,希望する方は,労働金庫から「求職者支援資金融資(同居又は生計を一にする別居の配偶者等がいる方:上限月額10万円、それ以外の方:上限月額5万円)の貸付を受けることもできます。
 
2(1) 外部HPの「職業訓練受講給付金とは」によれば,職業訓練には求職者支援訓練及び公共職業訓練があります。
   そして,求職者支援訓練の訓練機関は3~6ヶ月間であり,公共職業訓練のうち,独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)(リンク先では,「雇用・能力開発機構」)の訓練機関は標準6ヶ月間であり,都道府県の訓練機関は標準6ヶ月間から1年間であるみたいです。
(2) 求職者支援資金融資については,就職しても返済免除とならないのであって,全額を返済する必要があります。
   また,就職支援拒否,不正受給処分等により職業訓練受講給付金の支給を停止された場合,直ちに債務残高を一括返済しなければなりません。
 
3 平成23年10月1日施行の「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」(=求職者支援法)に基づく求職者支援制度の場合,月額10万円の職業訓練受講給付金及び交通費(=通所手当)を支給してもらえます。
   しかし,司法修習生の場合,実務修習地における交通費(=通勤手当)も支給してもらえません。

第14 事業主のための雇用関係助成金

厚生労働省HPの「事業主の方のための雇用関係助成金」によれば,平成28年10月現在の内容は以下のとおりです。
 
1 従業員の雇用維持を図る場合の助成金
   雇用調整助成金
 
2 離職者の円滑な労働移動を図る場合の助成金
   労働移動支援助成金
 
3 従業員を新たに雇い入れる場合の助成金
   特定求職者雇用開発助成金,障害者トライアル雇用奨励金,障害者初回雇用奨励金等
 
4 従業員の処遇や職場環境の改善を図る場合の助成金
   職場定着支援助成金,キャリアアップ助成金,高年齢者雇用安定助成金,65歳超雇用推進助成金,建設労働者確保育成助成金,通年雇用奨励金
 
5 障害者が働き続けられるように支援する場合の助成金
   障害者作業施設設置等助成金,障害者福祉施設設置等助成金,障害者介助等助成金,障害者雇用安定奨励金,重度障害者等通勤対策助成金,重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金,障害者職場復帰支援助成金
 
6 仕事と家庭の両立に取り組む場合の助成金
   両立支援等助成金,出生児両立支援助成金,介護離職防止支援助成金,女性活躍加速化助成金
 
7 従業員等の職業能力の向上を図る場合の助成金
   キャリア形成促進助成金,キャリアアップ助成金,キャリア形成促進助成金,建設労働者確保育成助成金,障害者職業能力開発助成金
 
8 労働時間・賃金・健康確保・勤労者福祉関係の助成金
   職場意識改善助成金,中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金,受動喫煙防止対策助成金,退職金共済制度に係る新規加入等掛金助成,キャリアアップ助成金

第15 司法修習における旅費

1 平成27年10月16日付の「司法修習における旅費について」を掲載しています。
 
2 司法修習生に対しては以下の旅費が支給されます。
① 導入修習及び分野別実務修習参加のための交通費及び日当
② 移転料
→ 分野別実務修習開始に際して支払われるだけですから,1度だけの支給です。
③ 分野別実務修習中における交通費及び日当
→ 現場検証や証人の所在尋問等の出張に関して支払われるものであって,通勤手当とは異なります。
④ 集合修習参加のための交通費及び日当
⑤ 集合修習後の選択型実務修習参加のための交通費及び日当
⑥ 選択型実務修習中における交通費及び日当
 
3 国家公務員等の旅費に関する法律(=旅費法)によれば,旅費の種類は,鉄道賃,船賃,航空賃,車賃,日当,宿泊料,食卓料,移転料,着後手当,扶養親族移転料,支度料,旅行雑費及び死亡手当となっています(旅費法6条1項)。
   このうち,司法修習生に対して支給される旅費は,鉄道賃,船賃,航空賃,日当及び移転料だけみたいです。

4 旅費支給事務のQ&A(平成24年4月作成)を掲載しています。

第16 67期以降の司法修習生に対する移転料

1   平成26年11月20日開催の第13回法曹養成制度改革顧問会議の資料6-1「司法修習の充実等に向けた検討の状況について」にあるとおり,67期以降,実務修習地への移転料(転居費用)が支給されるようになりました。
 
2   平成25年12月17日開催の第5回法曹養成制度改革顧問会議の資料3-2「司法修習生の修習資金等の状況のあらまし」にあるとおり,分野別実務修習開始に際して自宅の引越をした場合に限り,移転料が支給されるだけです。
   つまり,①導入修習のための司法研修所への引越,②集合修習のための司法研修所への引越及び③選択型実務修習のための実務修習地への引越については,旅費は支給されるものの,移転料は支給されません。
 
3(1) 移転料の具体的な額は以下のとおりです。
鉄道50km未満の引越:           4万6500円
鉄道50km以上100km未満の引越:    5万3500円
鉄道100km以上300km未満の引越:   6万6000円
鉄道300km以上500km未満の引越:   8万1500円
鉄道500km以上1000km未満の引越: 10万8000円
鉄道1000km以上1500km未満の引越:11万3500円
鉄道1500km以上2000km未満の引越:12万1500円
鉄道2000km以上の引越:                        14万1000円
(2) 司法修習生に対する移転料は,旅費法別表第一・2項の「三級以下の職務にある者」のうち,「赴任の際扶養親族を移転しない場合」(旅費法23条1項2号)に該当するものとしての金額が支給されます。

4 国家公務員一般の取扱いについては,外部HPの「国家公務員の赴任旅費・着後手当 カンタン計算フォーム」が参考になります。

第17 司法修習生の移転料と住民票

1 分野別実務修習に参加するために住所又は居所を移転した司法修習生が旅費及び移転料の支給を受ける場合,新住所地の住民票を提出するように求められます(平成27年10月16日付の「司法修習における旅費について」参照)。
  ただし,分野別実務修習に参加するために住所又は居所を移転した司法修習生が移転料の支給を受けるためには,新住所地の住民票を必ず提出しなければならないとする法令上の根拠が分かる文書は存在しません(平成26年4月30日付の司法行政文書不開示通知書参照)。

2 「住民基本台帳法に関する質疑応答集について」(昭和43年3月26日付の自治省行政局振興課長の通知)には以下の記載があります。
  そのため,住民基本台帳法に関する総務省の解釈からしても,司法修習の場合,転出届(住民基本台帳法24条)及び転入届(住民基本台帳法22条)(大阪市HP「住所についての届出(転入届,転出届など)」参照)を市区町村役場に提出することで住民票を移動させる法的義務はないと思われます。
問2 職業訓練法に定める職業訓練所に入所し,家族と離れて寄宿舎に居住しながら職業訓練をうけている訓練生の住所はどこにあると認められるか。
答 特段の事情のない限り,訓練期間が1年未満の者については入所前の居住地,訓練期間が1年以上の者については寄宿舎にあると認められる。
問3 会社の研修所で合宿しながら1年以上の研修をうけている場合,その者の住所はどこにあると認められるか。
答 家族と密接な生活関係がある等特段の事情のない限り,研修所にあると認められる。

3(1) ちなみに,平成28年7月当時,安部首相は東京都内に住んでいるものの,住民票上の住所は山口県下関市にありますし,同市での不在者投票が認められていました(The Vote.jp「なぜ,安倍首相はゆるされて学生はゆるされない。不平等な不在者投票」参照)。
(2) 国会議員,都道府県知事及び市区町村長の場合,選挙区内に住んでいなくても被選挙権があるのに対し,都道府県議会議員及び市区町村議会議員の場合,選挙区に住んでいないと被選挙権がありません(公職選挙法10条1項・9条。なお,総務省HPの「選挙権と被選挙権」参照)。

第18の1 司法修習に係る旅費の取扱いを定めた事務連絡1/3

○以下の文書を掲載しています。
① 「第69期(平成27年度)司法修習に係る旅費の取扱いについて」(平成27年12月2日付の司法研修所事務局経理課長事務連絡) 
② 導入修習及び分野別実務修習に伴う招集旅費・移転料支給の留意点
③ 司法修習生に対する分野別実務修習参加のための移転料支給事務Q&A
○②及び③の文書は,①の事務連絡に添付されていた文書です。
○①の事務連絡の本文は以下のとおりです。
1 支給する旅費について
(1) 採用内定時の住所又は居所から司法研修所までの旅行にかかる鉄道賃,船賃,航空賃,車賃(以下「交通費」という。)及び日当
(2) 司法研修所から分野別実務修習のために配属された修習地(以下「配属修習地」という。)の地方裁判所(以下「実務修習庁」という。)までの旅行にかかる交通費及び日当(配属修習地が東京,立川,横浜,さいたま及び千葉の者を除く。)
(3) 採用内定時の住所又は居所から実務修習庁までの移転料
2 旅費支給庁 
   司法修習生が配属された地方裁判所
3 旅費の支給について 
   交通費及び日当については,本事務連絡に定めるほか,国家公務員等の旅費に関する法律等に準じて支給する。
4 移転料について 
   司法修習生が分野別実務修習に参加するために住所又は居所を移転したときには,採用内定時の住所又は居所から配属修習地までの路程に応じた移転料を別表の定額により支給する。ただし,旅費法上の同一地域内で住所又は居所を移転した者に対しては支給しない。
5 その他 
   旅費の支給方法等については,別添の「導入修習及び分野別実務修習に伴う招集旅費・移転料支給の留意点」及び「司法修習生に対する分野別実務修習参加のための移転料支給事務Q&A」のとおり

第18の2 司法修習に係る旅費の取扱いを定めた事務連絡2/3

導入修習及び分野別実務修習に伴う招集旅費・移転料支給の留意点の本文は以下のとおりです。
 
1 招集旅費・移転料の支給方法について
(1) 導入修習参加のための旅費及び分野別実務修習参加のための旅費(採用内定時の住所又は居所→司研→実務修習配属庁)については,その性質上,招集旅費として扱う。
(2) 旅行命令権者は,司法修習生が属する地方裁判所長とする。
(3) 具体的な支給方法,考え方については,別紙1のとおりである。
   採用内定時の住所又は居所から司研までの交通費については,従前,採用内定時に東京都,神奈川県,埼玉県又は千葉県(以下「東京近郊」という。)を住所又は居所とする司法修習生についても実務修習配属庁までの招集旅費を支給していたことに鑑み,東京近郊を住所又は居所とする司法修習生にも司法研修所までの招集旅費を支給するが,導入修習後の司研から東京近郊の裁判所までの交通費(日当を含む。)については,通勤と同一視されるべき移動として支給しない(減額調整の対象となる。)。 他方,東京近郊以外の裁判所に配属される司法修習生については,導入修習後の交通費(日当を含む。)も支給の対象となる。

2 招集旅費(交通費)について
 
   導入修習参加のための旅費(採用内定時の住所又は居所→司研)及び分野別実務修習参加のための旅費(司研→実務修習配属庁)については,それぞれ出発地から目的地までの最も経済的な通常の経路による旅費を支給する。また,導入修習終了後,修習生が転居等の準備のため採用内定時の住所又は居所に戻った場合や実家へ帰省した場合であっても,旅費については司研から実務修習配属庁までの最も経済的な通常の経路による認定額を限度として支給する。なお,この導入修習終了後に実家等へ帰省する場合については,私事旅行許可申請を提出させる必要はない。
(1) ICカードの利用
   「現金運賃」と「ICカード1円単位の運賃」の2種類の運賃体系となっている鉄道等の交通機関については,本人の申告に従い,現に支払った運賃の金額を支給する。
(2) 航空賃 
ア 航空機の利用を認める司法修習生の地域は次のとおりとする。
   なお,同地域以外の司法修習生においても,特割等で搭乗券を購入し,鉄道等の最も経済的な通常の経路による認定額よりも安価に旅行した司法修習生については,航空機利用を認め,その航空賃を支給する。
(ア) 導入修習参加のための旅行(採用内定時の住所又は居所から司研まで)
   採用内定時に福岡高等裁判所管内又は札幌高等裁判所管内に住所又は居所を有する司法修習生
(ィ) 分野別実務修習に参加するための旅行(司研から実務修習配属庁まで)
   実務修習配属庁が,福岡高等裁判所管内又は札幌高等裁判所管内の地方裁判所となる司法修習生 
イ 航空機利用が認められていない地域の司法修習生が,実際に航空機を利用し,航空賃を支給しないことが,実務修習配属庁における航空機利用の実情と比較し,バランスを失し,相当でないと判断した場合には,その支給の可否について個別に司法研修所に照会する。
(3) 航空賃支払を証明するに足る資料の取扱い 
ア 導入修習参加のための旅行(採用内定時の住所又は居所から司研まで)における, 航空賃の支払を証明するに足る資料(搭乗半券,搭乗レシート等及び領収書)については,司研において徴取し,実務修習配属庁に送付する。
イ 分野別実務修習参加のための旅行(司研から実務修習配属庁まで)における航空賃の支払を証明するに足る資料(搭乗半券,搭乗レシート等及び領収書)については,実務修習配属庁において徴取する。

3 招集旅費(日当)について 
   導入修習参加のための旅行及び分野別実務修習参加のための旅行においては,国家公務員等の旅費に関する法律別表第一に定める日当の定額の2分の1を支給する。
   なお,導入修習後の司研から東京近郊の裁判所までの旅行,在勤地内の旅行においては,4のとおり,日当は支給しない。

4 在勤地内の旅費支給について 
   採用内定時に司研の在勤地内を住所又は居所とする司法修習生については,導入修習参加のための旅費支給は次のとおりとする。
(1) 住所又は居所から司研までの行程が8キロメートル未満の司法修習生については,交通費及び日当は支給しない。
(2) 住所又は居所から司研までの行程が8キロメートル以上の司法修習生については,住所又は居所から司研までの交通費の実費のみを支給する。
   なお,司研の在勤地の地域は,別紙2のとおりである。

5 招集旅費額試算について 
   招集旅費の試算については,原則として「導入修習・分野別実務修習参加のための旅費,移転料申告書」に添付される住民票写しに基づいて行うが,分野別実務修習に参加するために住所又は居所を移転する者については,新住所地の住民票写しが追完される扱いとなっており,試算を行う時には住民票が提出されていないことから「導入修習・分野別実務修習参加のための旅費,移転料申告書」に記載されている住所に基づいて行うこととする。

6 移転料の支給における移転した事実を証明する資料について
(1) 旅費支給担当者は,分野別実務修習参加のために住所又は居所を移転した司怯修習生に対して,移転料を支給する際には,移転先の住所地に移転したことを認定するための証明力を持つ公的資料として,新住所地の住民票写しを提出させる。
(2) 住民票を新住所地に移動していないことにより,住民票写しの提出ができない場合には,住民票写しに代えて,現時点では住民票写しを提出できないこと及び申告した新住所地に間違いなく居住している旨を記載した上申書並びに分野別実務修習に参加するために新住所地に移転したことを疎明する資料(居住するアパート等の賃貸借契約書,新住所地の公共料金領収書等)を提出させた上,移転料を支給する。
   ただし,その場合においても,旅費支給事務担当者は,司法修習生に対して,速やかに新住所地に住民票を移動し,新住所地の住民票写しを提出するように指示する。
(3) (2)の方法により移転料を支給した場合には,実務修習配属庁の司法修習生事務担当者(以下「司法修習事務担当者」という。)は,住民票を新住所地に移動しないことについて,少なくとも集合修習に参加する前に一度,当該司法修習生に対して,住民票写しの提出を促すとともに,メモ等を作成して当該催告の状況について記録化する。
(4) 上申書及び住民票写し以外の疎明資料により移転料を支給した後,司法修習生が,住民票写しを提出しない場合には,司法修習事務担当者は,集合修習開始後,速やかに別紙様式により,司法研修所にその司法修習生の氏名等を報告する。
(5) 司法修習生が,住民票写しを提出できないやむを得ない事情がある場合には,(2)の上申書に,その事情を記載させる。
   なお,同事情がある場合には,(2)のただし書,(3)及び(4)に定めた指示等をする必要はない。

7 旅行命令簿等の記載方法について
(1) 発令日について 
   旅行命令発令日は,司研が,司法修習生に対して,司法修習開始日を通知した日とする。
   第69期司法修習生の旅行命令発令日は,10月16日とする。
(2) 旅行日について 
   旅行日は,司法修習生が,実際に旅行を行った日(導入修習地及び分野別実務修習配属地到着日)とする。
   なお,実際に旅行を行った日については,航空機を利用した場合には,搭乗半券等に記載された搭乗日となり,それ以外の場合は,本人の申告によるものとする。
(3) 旅行命令簿の記載例 
   別紙3のとおり
(4) 旅費請求書の記載例 
   別紙4のとおり

第18の3 司法修習に係る旅費の取扱いを定めた事務連絡3/3

司法修習生に対する分野別実務修習参加のための移転料支給事務Q&Aは以下のとおりです。
○11①及び13において,「住居移転に当たり住民票を移動させることは法律上の義務である」と書いてありますが,分野別実務修習に参加するために住所又は居所を移転した司法修習生が移転料の支給を受けるためには,新住所地の住民票を必ず提出しなければならないとする法令上の根拠が分かる文書は存在しません(平成26年4月30日付の司法行政文書不開示通知書参照)。
 
1 導入修習実施に伴い,分野別実務修習参加のための移転料について,昨年度の取扱いと何か変更はありますか。
   特に変更はありません。従前の住所又は居所から実務修習配属庁(裁判所)までの路程に応じた定額を支給することとなります。

2 着後手当や扶養親族移転料は,支給されないのですか。
   支給されません。

3 移転前の住所等から実務修習配属庁までの路程と新住所地までの路程を比較して少額となる方の移転料を支給することになるのですか。
   移転料の支給に当たっては,従前の住所又は居所から実務修習配属庁までの路程に応じた定額を支給することになりますが,従前の住所又は居所から新住所地までの路程に応じた定額が,実務修習配属庁までの定額よりも少額となる場合には,従前の住所又は居所から新住所地までの路程に応じた定額を支給することになります。

4 導入修習参加のため,住所又は居所を移転した司法修習生には,移転料は支給されないのですか。
   移転料は,分野別実務修習に参加するため,住所又は居所を移転した司法修習生に支給するもので,たとえば,大阪市に在住している司法修習生が,入寮するため,司研いずみ寮等に移動した場合には,移転料は支給されません。

5 移転料を支給するために提出させる書類はどのようなものですか。
   原則として,司法修習生から新住所地の住民票の写しを提出させることが必要です。

6 司法修習生から住民票を移動しないため,住民票の写しの提出ができないと言われた場合,どのようにするのですか。
   現時点で住民票の写しを提出できないこと及び申告した新たな住所地に間違いなく居住していることを記載した実務修習地の地方裁判所所長あての上申書並びに新住所地の疎明資料(アパートの賃貸借契約書の写し,新住所地の公共料金の請求書等。 以下「疎明資料」という。)を提出させてください。
   上申書及び疎明資料が提出された場合,取りあえず移転料の支給をしていただいて差し支えありません。
   ただし,この場合,司法修習生に対して,住民票を新住所地に移動させ,新住所地の住民票の写しを提出するように指示してください。

7 住民票の写しを提出してこない司法修習生に対して,どの程度の頻度で提出を促せばよいのですか。
   上申書及び住民票の写しに代わる疎明資料の提出があった際に,住民票を移動させ, 新住所地の住民票の写しの提出を促すほか,少なくとも,集合修習に参加する前に一度,9のとおり住民票の写しの提出を促してください。

8 追加提出された新住所地の住民票の転入の日付が,分野別実務修習開始の日付と離れていても移転料の支給手続に問題はありませんか。
   住民票上の転入の日付が遅くなっているのは届出が遅れたことによるものであり, 実際の転居の日が実務修習地の内示の後で,かつ,分野別実務修習開始日に近接していることが疎明資料により明らかであれば,新住所地の住民票の転入の日付が分野別実務修習開始の日付と離れていても問題はありません。

9 上申書及び疎明資料により移転料を支給した後も,司法修習生が,新住所地の住民票の写しを提出しない場合は,どうすればよいのですか。
   集合修習に参加する前に,改めて,当該司法修習生に対して次の点を伝達してください。
① 速やかに,新住所地の住民票の写しを提出すること。
② 新住所地の住民票の写しが提出されない場合には,司法研修所にその旨を報告すること。
③ 今後,新住所地の住民票の写しの提出に関して,司法研修所から連絡が入ることもありうること。
   また,以上の伝達の事実については,適宜メモを作成するなどして記録化してください。

10 司法修習生から,新住所地の住民票の写しを提出しない場合,移転料を返還する必要があるかと聞かれた場合,どのように回答すればよいですか。
   「新住所地の住民票を提出しないことにより移転料の返還を求められることはないが,認定のための証明カをもつ公的資料とされていることから,住民票の写しは提出してほしい。」旨回答してください。

11 住民票を移動しないと主張している場合には,どのようにすればよいのですか。
① 住民票を移動しない理由が「市役所等に行く時間がない」,「疎明資料によっても移転料が支給されるのであれば住民票を移動させる必要はない」等の場合 
   住居移転に当たり住民票を移動させることは法律上の義務であることを説明し,住民票を移転するまでの間,差し当たって上申書及び疎明資料を提出するように促してください。
   司法修習生から上申書及び疎明資料が提出されれば,移転料を支給して差し支えありません。
   ただし,司法修習生が,上申書等を提出する際に,改めて,速やかに,新住所地に住民票を移動し,新住所の住民票の写しを提出するように促してください。
② 住民票を移動しない理由が「家庭の事情や住宅ローンの申請の関係により住民票を移動できない」等の場合 
   住民票を移動できない事情がやむを得ないものであれば,その事情を記載した上申書及び疎明資料を提出するよう促してください。
   司法修習生から上申書及び疎明資料が提出されれば,移転料を支給して差し支えありません。
この場合,9②の司法研修所への報告も必要ありません。
③ 住民票を移動しない理由が「もともと実家所在地に住民登録があり,法科大学院在学中は学校所在地に居住していたが,住民票は移動していなかった。実務修習開始に当たり,実家に戻ったが,形式的に新住所と住民票上の住所は一致している」等の場合
   住民票上の転入日が実際の転入日と一致しないことについての上申書及び旧住所の疎明資料並びに実家所在地の住民票の写しを提出するよう促してください(招集旅費の支給のため既に実家所在地の住民票の写しを提出している場合は再度提出させる必要はありません。)。
   司法修習生から上申書及び旧住所の疎明資料並びに実家所在地の住民票の写しが提出されれば,移転料を支給して差し支えありません。
   この場合, 9②の司法研修所への報告も必要ありません。

12 集合修習参加前に,新住所地の住民票の写しの提出を促しても当該住民票の写しを提出しない場合,移転料の戻入手続を執る必要はありますか。
   特に,戻入手続を執る必要はありません。

13 住民票を移動させる意思がないため,移転料を放棄したいと述ぺた司法修習生に対しては,どのように対応すべきですか。
   放棄の理由が住民票を移動させる意思がないことによるのであれば,司法修習生に対して,住居移転に当たり住民票を移動させることは法律上の義務であることを説明した上で,取りあえず上申書及び疎明資料の提出により,移転料の支給は可能である旨連絡し,移転料を放棄するか再度,意思を確認し,記録化してください。
   再確認の結果,移転料の支給を受ける意思がある場合は,上申書及び疎明資料を提出させた上で移転料を支給し,おって住民票を移動した上で新住所地の住民票を追完するよう促してください。
   再確認の結果,移転料を放棄するのであれば,後日のトラブルを防ぐため,本人から,放棄書を提出させてください。

第19 労働時間の意義

1   厚生労働省労働基準局監督課が平成29年1月20日に作成した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」には,労働時間の意義に関して以下の記載があります。
   労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。
   そのため、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければならないこと。
   ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱うこと。
   なお、労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価す
ることができるか否かにより客観的に定まるものであること。また、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用
者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものであること。
ア 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
イ 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、
労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
ウ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
 
2 司法修習は,法曹三者となるために参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講に当たると思いますが,労働時間とはされていません。

第20 OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当すること等

1   国立国会図書館HPの「調査と情報」に掲載されている「諸外国における大学の授業料と奨学金」(「調査と情報」2015年7月9日号)の1頁目には,以下の記載があります。
① OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当する。
② 日本以外のOECD加盟国には,授業料が有償で高額,かつ給付制奨学金がない国は見られない。

2 経済産業省HPの「不安な個人,立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」(平成29年5月 次官・若手プロジェクト)30頁には,「日本は,少子高齢化の影響を考慮したとしても高齢者向け支出に比べて現役世代向け支出が低い」と書いてあります。

第21 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)の文言

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)13条は,以下のとおりです。

 1 この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。

2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
(d) 基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化されること。
(e) すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。

3 この規約の締約国は、父母及び場合により法定保護者が、公の機関によって設置される学校以外の学校であって国によって定められ又は承認される最低限度の教育上の基準に適合するものを児童のために選択する自由並びに自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。

4 この条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行なわれる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。 

第22 東大安田講堂事件は,無給のインターン制度に起因していること等

1(1) 昭和44年1月18日から同月19日にかけて発生した東大安田講堂事件は,昭和43年1月下旬以降,東大医学部の医学部生らが,東大及び附属病院に対し,実地修練制度(いわゆるインターン制度)の廃止等を求めた運動に起因しています。
(2) 大正14年に創建された東大安田講堂は,平成25年6月から平成26年12月にかけて,創建以来の大掛かりな改修が実施されました(東大の「学内広報」1464号(2015年2月23日)参照)。

2 インターン制度は,大学医学部卒業後,1年間の実地修練をした後に医師国家試験の受験資格を得られるというものでした。
   実地修練の期間中,学生でも医師でもなく,不安定な身分での診察を強いられましたし,医学部を卒業しているにもかかわらず全くの無給でした(Wikipediaの「インターン制度」参照)。

3(1)ア 1年間のインターン制度は,昭和21年8月30日勅令第402号による改正後の国民医療法施行令に基づき,昭和22年3月卒業の医学部生等を対象に開始し,昭和23年,医師法に基づく制度となりました。
   昭和43年,努力義務にすぎない臨床研修制度(期間は2年以上)となり,平成16年,必修化された新医師臨床研修制度(期間は2年以上)となりました。
イ 臨床研修制度及び新医師臨床研修制度は,医師免許を取得した後に行われています。
(2) 臨床研修制度における医師は,労働基準法9条所定の労働者に該当しました(最高裁平成17年6月3日判決)。
(3) 医師の臨床研修の必修化に当たっては,以下の事項を基本的な考え方として制度が構築されました(厚生労働省HPの「医師臨床研修制度の変遷」参照)。
① 医師としての人格を涵養すること
② プライマリ・ケアの基本的な診療能力を修得すること
③ アルバイトせずに研修に専念できる環境を整備すること
(4) 外部HPの「臨床研修医制度の発足で勤務病院の選択が可能となり,就職の流れが大きく変化」が参考になります。

第23 修習資金貸与制に関する最高裁判所の当初の案

〇修習資金貸与制に関する最高裁判所の当初の案(修習資金貸与制の施行に伴う整備の概要(案)(資料41))と,実際に施行された制度とでは,①父又は母のいずれか1人を必ず連帯保証人とする必要はなくなったこと,及び②据置期間が3年から5年になったことの2点が異なります。
34期の林道晴司法研修所事務局長は,平成21年3月5日の司法修習委員会において以下の説明をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
1(1) まず,資料41の前注に,今回このような議論をお願いする背景事情が書いてある。
   平成16年の裁判所法の一部改正によって,司法修習生に対し国から給与を支給する制度に代えて,平成22年,来年の11月1日から,司法修習生が修習に専念することを確保するための資金,これは裁判所法で「修習資金」と呼んでいるが,その修習資金を貸与する制度が導入される。
   この修習資金は,修習生からの貸与申請によって,修習期間中,無利息で貸与するというものであり,具体的な貸与金額や返還期限等については最高裁が定めることになっている。
(2)   災害,けが,病気等の事情により返還が困難となったときには,返還期限を猶予する制度が設けられており,被貸与者が死亡又は精神・身体の障害によって返還できなくなったときには,返還の一部又は全部を免除するという制度も用意されている。
(3)   それ以外の細目的事項についても最高裁が定めることになっており,私どもとしては,改正された裁判所法の委任を受けて,来年の実施に向けて,裁判所法の改正に対応する形での最高裁規則を制定する必要がある。
2 最高裁判所規則自体も当委員会にお諮りしたいと思っているが,その規則を作成する前提となる重要事項について,本日,審議をお願いするところである。
   平成16年12月3日に一部改正された裁判所法の立法過程においては,一定の方向性が示されており,後ほど関係する項目のところで説明したいと思うが,かなり具体的な事項が立法段階で議論されている。その後,特段事情変更は認められないことから,貸与制の制度を作るに当たって,この方向性を尊重するのが相当であると考えている。
3 また,国が修学資金として貸与する制度には,類似のものとして,矯正医官修学資金貸与制度(法務省),自衛隊貸費学生制度(防衛省),公衆衛生修学資金貸与制度(厚生労働省)がある。
   さらに,密接に関連するものとして,独立行政法人日本学生支援機構の奨学金があり,法科大学院生が奨学金として受け取っているものの大多数は,この学生支援機構の奨学金である。
4(1) 修習資金は国の債権になるので,回収という点については会計法上のスキームが適用され,納入告知書を被貸与者に渡して,被貸与者が納入告知書に現金を添えて,日本銀行の本店又は支店に納付する必要がある。
   したがって,民間の融資のような銀行口座等からの引き落としの方法では回収できないという制約がある。
(2)   具体的には,国が,返済金額・返済期限を,納入告知書に納入金額・納入期限として記入し,被貸与者にその納入告知書を送付して返還を請求する。
   納入告知書を受け取った元修習生は,その納入告知書に納入金額分の現金を添えて日銀の本店又は支店に提出し,納入(返済)の手続をとる。通常は,日銀の歳入代理店である市中銀行に赴くことが想定される。
   日銀ないしその代理店が現金を受け入れると,これを国に通知して,これによって回収が完了する。
5(1) 資料41に戻って,まず,一番重要な貸与金額の点について,平成16年の裁判所法改正当時の国会審議では,給費制における支給基準を参考に,1の(1)の23万円程度を基本額にして,(2)の18万円程度,(4)の28万円程度と,三段階の貸与額を設けることが想定されていた。これは当時の政府参考人の答弁の中で明確になっている。
(2)   (1)の23万円と(2)の18万円については,特段の要件を課すことなく,貸与を希望した者にそのまま貸与することがイメージされ,一方,(4)の28万円については,扶養親族がおり,住居を賃借しているといった要件を審査した上で貸与することがイメージされていた。
(3)   資料41は,そのような議論を踏まえ,23万円を基本金額とし,少ない金額は18万円,一番多い金額は28万円という三類型は維持した上で,23万円と28万円の中間的な類型として,(3)の25万5000円というオプションを追加している。
   これは,扶養家族がいるか,あるいは住居を賃借しているか,どちらかの要件を満たしている場合を対象としており,(4)の28万円は,扶養親族がいて,かつ住居を賃借している場合を対象にしている。
   現在の給費制の下で,扶養親族を有している修習生は約1割程度にとどまっているが,住居を賃借している修習生は約7割程度いることから,この中間的なオプションを用意したところである。
(4)   なお,司法修習生本人の資力要件については,特段の要件を設けない方向で考えている。
(5)   また,扶養加算の点について,現在の給費制の下での司法修習生の年齢構成を見ると,扶養家族として配偶者だけ,あるいは配偶者と子といった核家族の最小構成が最も多くなっているので,貸与制においてもニーズは同様と考え,まず,配偶者と子を扶養親族として掲げることにした。
(6)   配偶者と子以外の扶養親族については,(3)のアの(イ)にあるように,給与法に規定する人的範囲と同じものにする方向で考えている。
(7)   修習期間中に加算要件が生じることも想定されるので,これに対応できるように,1ページの最後の2行にあるように,修習開始後の修習資金の増額又は減額ができるようにするというスキームにしたいと考えている。
6(1) 次に,2ページの2,修習資金の返還期限等については,修習期間終了後,すなわち原則として貸与の終了後に,例えば3年間程度の据置期間を置いた上で,その後10年間の年賦均等返還の方法で返還することを基本にした上で,繰上返還も認める案になっている。
(2)   平成16年の裁判所法改正当時の国会審議では,3年から5年の据置期間を経過した後,10年間の年賦とするということが,政府参考人から示されていたところである。
   これは,法科大学院在学中に奨学金の貸与を受けていた者が,さらに修習生となって修習資金の貸与を受けることが十分考えられる,返済の負担が過重となってしまう可能性があることから,その負担を考慮したものと承知しており,資料41はそれを尊重した形になっている。
(3)   また,年賦が提案されている背景として,国会審議における議論からは必ずしも明確ではないが,国庫金の納入スキームからすると,返還のたびに納入告知書が発行され,それを日銀の代理店に持参して現金で納付することになり,これは返還をする人にとってかなりの負担になることが推察されるので,その負担感を緩和するためであろうと考えられる。
(4)   2ページの2のアスタリスクのところでは,返還が遅れた場合には,他の制度と同様に延滞利息がかかり,期限の利益を失うことがあるということを注意的に記載している。
7(1) 次に,3の保証人の関係であるが,類似の修学資金の貸与制度と学生支援機構の奨学金では,いずれも二人の人的保証,つまり保証人が貸与の要件となっている。
   したがって,修習資金についても,国の資金を扱う形になる以上,やはり二人の保証人を立てることを要件にせざるを得ないと考えており,3の(1)のような形になっている。保証人の要件については,父又は母があるときは,その保証人二人のうち一人は父又は母にしなければならないという仕切りになるかと思う。
(2)   資料には明示していないが,保証人の要件は民法の規定によるので,弁済の資力を有することが要件になる。
(3)   ただ,自然人の保証人を絶えず二人用意しなければならないということになると,被貸与者としては保証人が用意できない,用意しにくいということも考えられるので,日本学生支援機構の奨学金のように,機関保証というものを用意して,これを人的保証とは別に選択ができる形を提案している。
(4)   機関保証が導入された場合には,父母等に負担をかけずに貸与を受けられるメリットがある。実際に機関保証を受けてもらうのは民間の会社を考えているところであるが,用意できるかどうかは事務局の宿題ということで,正直申し上げて交渉はかなり難航しているが,何とか用意して,少しでも借りやすくすることを考えたいと思う。
8(1) 最後に,資料には記載していないが,修習生に対しては,この貸与制への移行に伴って国から給与が支給されなくなるので,国から給与が支給されていることを基本にする共済組合への加入ができなくなる。
   したがって,国民健康保険,国民年金に加入することになると考えられる。
(2)   ただし,公務災害や,第三者に修習生が損害を与えた場合の国家賠償については,従前どおりになると考えられる。

〇大橋正春弁護士(後の最高裁判所判事)は,平成21年9月3日の第15回司法修習委員会において以下の発言をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
1(1) 据置期間については,ぜひ5年にしていただきたい。また,自然人の保証人につき,父母を保証人としなくてはならないとする要件は削除していただきたい。
(2)   まず,据置期間であるが,修習生の中には法科大学院修了時に奨学金等の債務を負っている者がかなりの数含まれており,現在の経済状況の中で,新人弁護士をめぐる状況はかなり悪くなっている。
   この2つを考え,据置期間は5年にしていただきたい。
(3)   以前の委員会で今申し上げた点を具体的なデータを示して説明してほしいという指摘もあったが,なかなかそういうデータはなく,また弁護士をめぐる状況の悪化はごく最近のことである。
   もっとも,例えば,法科大学院生が日本学生支援機構から借りることができる奨学金の上限額は,無利子・有利子を含めて月額約30万円であり,単純に計算すると3年間で1000万円を超える額の債務を負担することになる。
   最高限度額まで奨学金を借りる者はそう多くはないと思うが,奨学金を借りている者は多いので,かなりの修習生は債務を負っていると考えてよいのではないか。
(4)   新人弁護士の初任給については,日弁連でアンケート調査をしている。
   これによると,例えば,平成18年度に修習終了した旧59期の新人弁護士で,年収が500万円以下と答えた人の割合は7.6パーセントだったが,昨年修習終了した新61期の新人弁護士では,この割合が20.8パーセントと増加している。
   また,年収が400万円以下と答えた人の割合も0.3パーセントから3パーセントに増加している状況である。
(5)   これは,一面では新人弁護士が事務所を探すことが難しくなっている状況の反映でもあり,アンケートによれば,昨年の同時期に事務所が決まっていない人の割合は約17パーセントであったが,今年は24パーセントを超えており,修習生の就職状況が悪化しているのが分かる。
   このような就職状況が,新人弁護士の初任給を引き下げる方向に働いているのではないか。この傾向は,2,3年のうちに改善する望みは薄いと考えられ,少なくともしばらくの間は続くと思われる。
(6)   以上のようなことを考えると,すべての修習生が難しい状況にあるわけではないが,中にはそういう修習生も含まれており,据置期間は3年ではなく5年にしていただきたい。
(7)   修習資金は,国の資金であり,回収の面から言えば,据置期間を3年から5年にすることで回収が困難になる可能性が高くなるのではないかという懸念もある。
   しかし,多くの者は弁護士になるので,所在が不明になることは少ないといえる。そういった意味で,通常の奨学金等に比べれば回収リスクは低いのではないか。
2(1) 2点目は,前回,鎌田委員からも御指摘があったが,父母を保証人とすることを修習資金を貸与する要件とする必要があるのかという問題である。
(2) 修習生は,法科大学院を出ているので,ほかの奨学金等の貸与制度の被貸与者より年齢が少し高いと考えられるし,何らかの事情で父母に保証人になってもらえないということを理由に修習資金を貸与してもらえないということは,不合理ではないか。
(3) 父母を保証人にすることを修習資金を貸与する要件としていることについては,ぜひ削除していただきたい。

第24 原子力損害賠償の状況等

1 原子力損害賠償の状況(被災地域によって支給額は異なります。)
(1) 原子力損害賠償紛争審査会(第47回)「資料4-1 原子力損害賠償のお支払い状況等」によれば,平成30年1月17日現在,本賠償の金額が約7兆4960億円であり,仮払補償金が約1529億円みたいです。
(2) 東京電力ホールディングスHP「賠償金のお支払い状況」に,最新の「原子力損害賠償のご請求・お支払い等」が載っています。
(3) 金融庁HPの「東日本大震災に係る保険金・共済金の支払い見込み額、支払い実績等について」(平成23年7月19日付)によれば,保険金の見込み合計が約2兆7000億円,保険金の実績合計が約1兆8000億円です。
(4) zakzak HP「【震災から3年 福島のリアル】賠償の差が生み出した被災生活格差 被害大きくても対象地区外れると…」には以下の記載があります。
   文部科学省によれば、原発事故の賠償金は、原子力損害賠償紛争審査会の指針に基づき、東京電力が負担し、帰還困難区域は故郷喪失慰謝料が上乗せされる。
   同省の試算では、30代の夫、妻、子供2人の持ち家4人世帯が福島県内の都市部へ移住した場合、(1)帰還困難区域で1億675万円(2)居住制限区域で7197万円(3)避難指示解除準備区域で5681万円(いずれも総額)-に分かれる。

2 帰還困難区域の住民に対する賠償の金額
(1)ア 日経新聞HPの「原発事故の賠償、4人世帯で9000万円 東電が実績公表」(平成25年10月26日付)には,「文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は25日、東京電力福島第1原子力発電所の事故の賠償実績を公表した。東電が帰還困難区域の住民に支払った額は4人世帯で平均9000万円だった。」とか,「1人あたり月10万円を支払っている避難指示区域の住民への慰謝料は、避難指示を解除してから1年間払い続ける方向で大筋合意した。」と書いてあります。
   また,リンク先の表によれば,東電の賠償実績として,4人世帯の平均値は,財物が4910万円,就労不能損害が1090万円,精神的損害が3000万円であり,合計9000万円とのことですし,単身世帯の平均値は,財物が3210万円,就労不能損害が550万円,精神的損害が750万円であり,合計4510万円とのことです。
イ 日経新聞HPの「原発事故5年、賠償巡り住民分断 同じ町で異なる救済  」(平成28年3月2日付)には,「避難指示区域に指定され、人影のない同県富岡町に商店を構える60歳代男性は店舗の土地・建物への賠償などで「1億5000万円を受け取り、4000万円の借金を返済できた」と打ち明ける。」と書いてあります。
(2) 帰還困難区域の住民に対する慰謝料は,平成26年3月26日付で700万円増えました(東電HPの「移住を余儀なくされたことによる精神的損害に係る賠償のお取り扱いについて」参照)から,合計1450万円です。
(3) 日本エネルギー会議HP「いわき市四倉町が全国3位」(平成28年11月12日付)には,「福島第一原発の事故で浜通りの住民が県内外に避難したが、賠償金支払いを契機に県内、特にいわき市に新たに家を求める動きが強まった。このため、いわき市の土地が高騰、地元市民からは「避難者が地価を吊り上げた、いわき市内に家を持つことが出来なくなった」と嘆く声があがった。」などと書いてあります。
(4) 福島地裁いわき支部平成30年3月22日判決は,帰還困難区域,居住制限区域及び避難指示解除準備区域の原告について一人当たり追加で150万円の慰謝料を認めました。
   なお,原告らの請求額は,1人当たり古里喪失の慰謝料2000万円と避難に伴う精神的苦痛に対する慰謝料として月額50万円だったみたいです(河北新報HP「<原発事故避難者集団訴訟>古里喪失の損害認定、東電に賠償命令 福島地裁いわき支部」(平成30年3月23日付))。
(5)ア 『気になるあの人のウラ側一挙ご開帳SP』(平成30年6月15日,テレビ東京放送分)には以下の記載があります。
   弁護士の通帳を見せてもらう。弁護士の平均年収は1000万円でテレビに出演している弁護士先生は5000万円から1億円になるそうだ。今回、通帳を見せてくれるのは福永活也弁護士。通帳には1週間で6億円の賠償金が入金されていた。独身の福永弁護士は旅行が趣味で今まで旅先は130ヵ国だそうで、登山も趣味で780万円でエベレスト山頂を行っていた。
イ Youtube動画「通帳見たらスゴかった 2018年6月15日 【~気になるあの人のウラ側一挙ご開帳SP~】 」には,新62期の福永活也弁護士に関して,「6億円のうち報酬金は?」→「1億円いかないくらい」(36分23秒の字幕)とか,「被災者への賠償金は140億円 その内の一部を報酬金として受け取る」(37分5秒の字幕)と書いてあります。
(6) 南相馬市で暮らしていますブログ「東電から賠償金をもらっている人と、そうでない人と」には「誰がどれだけもらっているとか、全然わからないんですよね。そりゃ誰も言わないですからね、いくらもらってるかなんて。特に(よっぽどの馬鹿じゃなければ)多くもらっている人は言わないでしょうね。」と書いてあります。

3 福島の原子力発電所と地域社会
   Wikipediaの「福島の原子力発電所と地域社会」が非常に参考になります。
   例えば,「2002年の東京電力原発トラブル隠し事件の余波は、立地町村にも降りかかった。トラブル隠し対策のため県が態度を硬化させたことで再稼働が進まない中、検査による収入が見通せないため本発電所の地元8町村で就労していた協力企業の社員(当時約7300名)の消費もまた低迷し、飲食店などには打撃となったという。」などと書いてあります。

4 在外財産補償問題
(1) 在外財産補償問題とは,第二次世界大戦の敗戦によって失われた引揚者などの日本人の在外資産の補償を巡る問題をいいます。
(2)ア 引揚者に対する金銭給付は,昭和32年制定の「引揚者給付金等支給法」に基づき464億円が支給され,昭和42年制定の「引揚者に対する特別交付金支給法」に基づき,全国に350万人いる引揚者に対し,2100億円余りが支給されたみたいです(Wikipediaの「在外財産補償問題」参照)。
イ 東京都福祉保健局HP「引揚者給付金・引揚者特別交付金」によれば,引揚者給付金(厚生労働省所管)は終戦時の年齢に応じて1人当たり2万8000円から7000円であり,引揚者特別交付金(総務省所管)は終戦時の年齢に応じて1人当たり16万円から2万円です。
(3) 平和祈念展示資料館(総務省委託)HP「海外からの引揚者」には,「海外からの引揚者とは、さきの大戦の終結に伴い、生活の本拠としていた海外から故国日本への引揚げを余儀なくされた方々をいいます。身の危険が迫る中、すべてを捨て、大変な労苦を体験しながら故国を目指しましたが、引揚げ途中で亡くなった方も多くいました。」などと書いてあります。

5 日本の戦後賠償の金額等
(1) 日本の戦後賠償については,外務省HPの「歴史問題Q&A 関連資料 日本の具体的戦後処理(賠償,財産・請求権問題)」が詳しいです。
(2)ア 外務省HPの「賠償並びに戦後処理の一環としてなされた経済協力及び支払い等」によれば,日本の戦後賠償の支払総額は264億2864万8268ドル(1兆3525億2789万8145円)みたいです。
イ 主なものは,賠償額10億1208万ドル(3643億4880万円)及び在外財産の放棄236億8100万ドル(3794億9900万円)です。
ウ フィリピンに対する賠償は5億5000万ドル,ベトナムに対する賠償は3900万ドル,ビルマに対する賠償は2億ドル,インドネシアに対する賠償は2億2308万ドルです。
エ 在外財産の放棄のうち,朝鮮が702億5600万円,台湾(中華民国)が425億4200万円,中国(東北)が1465億3200万円,中国(華北)が554億3700万円,中国(華中・華南)が367億1800万円,その他の地域(樺太,南洋,その他丹法地域,欧米諸国等)が280億1400万円です。
(3) NAVERまとめの「日本はドイツのように戦後補償をしていないと主張する人がいますが、本当はどうなんでしょう 」には以下の趣旨の記載があります(②及び③の現在換算の計算方法はよく分かりません。)。
① ドイツの連邦補償法制定以来,同法に基づく給付申請約450万件中220万件が認定され、これまでにおよそ710.5億万マルク(3兆5951.3億円)を給付、現在は約14万人に年間15億マルク(759億円 1人平均月額900マルク(1マルク50.6円換算で45540円))を支払っている。
② 例えばフィリピンには賠償約1980億円、借款約900億円、インドネシアには賠償約803億円、借款約1440億円を支払っています。この他、別表にあるように、賠償、補償の総額は約3565億5千万円、借款約2687億8千万円で併せて6253億円(現在換算20兆971.42億円)にのぼります。
③ これ以外にも事実上の賠償として、当時日本が海外に保有していた財産はすべて没収されました。
   それは日本政府が海外にもっていた預金のほか鉄道、工場、建築物、はては国民個人の預金、住宅までを含み、当時の計算で約1兆1千億円(現在換算35兆3540億円)に達しています。
④ 現在の経済大国、日本ではなく、戦後のまだ貧しい時代に、時には国家予算の3割近くの賠償金を約束し、きちんと実行してきていたのです。
⑤ ドイツは個人補償が中心で、国に対する賠償金は支払っていません。
   一方、日本は国に対する賠償、および経済協力という形で、ドイツの数倍の金額を支払っています。
(4) Wikipediaに「日本の戦争賠償と戦後補償」が載っています。

6 中国残留邦人等への支援
(1)   中国残留邦人等には,中国残留邦人及び樺太残留邦人がいます。
(2) 中国残留邦人等に対する援護の概要は,①従前の支援として,一時帰国援護,永住帰国援護,定着・自立援護のほか,②平成20年から開始された支援として,老齢基礎年金等の満額支給,老齢基礎年金等を補完する支援給付,地域社会における生活支援があり,③平成26年10月から開始された支援として,配偶者に対する支援策があります(外務省HPの「中国残留邦人等への支援」参照)。
(3) 中国帰国者支援・交流センターHP「ご存じですか中国残留邦人問題 中国からの帰国者に温かい支援を!」が載っています。

7 被災者生活再建支援制度に基づく給付金等

(1) 被災者生活再建支援制度の場合,①基礎支援金(住宅の被害程度に応じて支給する支援金)が100万円(全壊,解体又は長期避難)又は50万円(大規模半壊)であり,②加算支援金(住宅の再建方法に応じて支給する支援金)は200万円(建設又は購入),100万円(補修)又は賃借(50万円)です(内閣府防災情報のページ「被災者生活再建支援法」参照)。
(2) 世界のニュース トトメス5世HP「福島の被災貴族 一世帯1億円貰って優雅な生活」に以下の記載があります。
   原発の避難家族が1億円もらった一方で、津波の被害にあった家族は国からの直接補償金と生活費の援助など合計しても数百万円だった筈でした。
   倒壊した家を再建するための支援なども後で実施されたかも知れませんが、支給された金額は福島の原発避難家族の1割以下です。
   金の出所は両者とも要するに日本政府で、違いは原発避難は東電の補償金という名目で出されたという点でした。
(3) 編集者かさこブログ「津波被災者の心の叫び「原発避難者ばかりがなぜ優遇・・・」」が載っています。

8 犯罪被害者等給付金制度等
(1) 犯罪被害者等給付金制度は,犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(昭和55年5月1日法律第36号)に基づく制度です。
(2) 犯罪被害者等給付金制度における障害給付金の場合,犯罪被害者の収入と残った障害の程度に応じて算出した額が支払われますところ,重度の障害が残った場合(障害等級1級から3級までに該当する場合),3974万4000円(最高額)から1056万円(最低額)までの間となります(警察庁HPの「犯罪被害給付制度」参照)。
(3) 平成7年3月20日発生の地下鉄サリン事件を始めとするオウム真理教の犯罪行為による被害者の場合,死亡した人の遺族に対しては2000万円が,後遺障害が残った人に対しては最高で3000万円が支給されています(オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律5条1項)。

9 交通事故における政府保障事業

(1) 国土交通省自動車局保障制度参事官室が運営している政府保障事業は,自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険(共済)の対象とならない「ひき逃げ事故」や「無保険(共済)事故」にあわれた被害者に対し、健康保険や労災保険等の他の社会保険の給付(他法令給付)や本来の損害賠償責任者の支払によっても、なお被害者に損害が残る場合に、最終的な救済措置として、法定限度額の範囲内で、政府(国土交通省)がその損害をてん補する制度です(国土交通省HPの「政府保障事業について(ひき逃げ・無保険事故の被害者の救済)」参照)。
(2) 法定限度額は,傷害の場合が120万円,死亡の場合が3000万円,後遺障害の場合が障害の程度に応じて75万円から4000万円です。
(3) 自動車損害賠償保障事業委託業務実施の手引1/32/3及び3/3を掲載しています。

10 拉致被害者等への支援
(1) 北朝鮮による日本人拉致問題HP「拉致被害者・家族に対する総合的な支援策について」に拉致被害者等への支援が一通り書いてありますし,「帰国被害者等が本邦に永住する場合には、拉致被害者等給付金を、永住の意思決定の時から10年を限度として、毎月、支給する。なお、北朝鮮での生活が非常に長期間に及んでいるため10年間では生活基盤再建に至らない可能性があること等を踏まえ、被害者及び被害者の配偶者については、例外的に5年を限度として支給期限を延長することができる。」とのことです。
(2) 内閣府HPに載ってある「施策名:拉致被害者等への支援」には以下の記載があります。
○拉致被害者等給付金
   帰国した被害者等が1人の世帯で17万円、2人いる世帯で24万円を基本とし、以降1人増えるごとに3万円を加算し、所得により調整を行う(支給期間10年)。また、大都市居住の場合の地域間の調整や子の配偶者等への扶養加算などを行う。
○老齢給付金等の給付
   帰国拉致被害者等の老齢時における良好かつ平穏な生活を保障するための老齢給付金、65歳以上で帰国した拉致被害者に65歳から帰国した時点までの国民年金相当額の特別給付金の支給、子供の国民年金保険料の追納支援等を行う。
○委託費
   派遣形式による指導業務(社会適応・日本語指導、生活自立指導)や社会体験研修、地域交流事業などを被害者等が居住する地方公共団体(県・市町村)に委託する。また、日本語の不自由な高齢者を想定した生活相談といった委託事業も行う。

11 関弁連理事長及び東京三会会長の声明
   関弁連理事長及び東京三会会長が出した「東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から7年を迎えるにあたっての声明」(平成30年3月9日付)には,「原子力発電所事故の被害者に対する救済・賠償は依然として不十分である。いくつかの集団訴訟で国や東京電力の責任を認める画期的判決が出ているが、残念ながら被害者救済に資する十分な賠償を命じたと言える内容ではない。」と書いてあります。
1(1) 被害者側の交通事故(検察審査会を含む。)の初回の面談相談は無料であり,債務整理,相続,情報公開請求その他の面談相談は30分3000円(税込み)ですし,交通事故については,無料の電話相談もやっています(事件受任の可能性があるものに限ります。)
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。

2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。