最高裁判所の広報ハンドブック

第0 目次

第0の1 最高裁判所の広報ハンドブック
第0の2 判決要旨の取扱い及び刑事上訴審の事件統計(参考)
第0の3 法務省の,訴訟事件の取材対応(参考)
第0の4 最高裁判所の庁舎見学に関する,最高裁判所作成のマニュアル(参考)
1-1 広報活動の種類
1-2 広報活動の性格
1-3 広報活動を行う理由
1-4 中立性,公平性に留意した広報活動
1-5 広報活動を行う上で疑義がある場合の対処
2-1 広報活動のためのツール
2-2 ウェブサイトを活用した広報
2-3 広報テーマを活用した広報
2-4 憲法週間や「法の日」週間における広報企画
2-5 裁判所内で行う広報企画
2-6 裁判所外で行う広報企画,出張講義等
3-1 報道機関についての基礎知識
3-2 「責任者対応の原則」と「窓口一本化の原則」
3-3 報道対応の種類
3-4 記者との接し方
3-5 上級庁への情報提供等の際の留意事項
4-1 報道発表等における一般的な留意事項
4-2 資料提供(資料等の投げ込み)
4-3 記者へのレクチャー
4-4 所長等就任記者会見
4-5 記者会見実施上の一般的な留意事項
4-6 懲戒処分の公表
5-1 取材対応における一般的な留意事項
5-2 取材対応において念頭に置くべきこと
5-3 取材事項について総務課で即答できない場合の対処
5-4 休日等における取材対応
5-5 緊急時における取材対応
5-6 裁判官等の裁判所職員に対する取材への対応
5-7 支部等に対する取材への対応
5-8 検察審査会に対する取材への対応
6-1 裁判報道における一般的な留意事項
6-2 法廷内写真撮影
6-3 庁舎内(敷地内)写真撮影
6-4 判決要旨等
6-5 法廷内記者席
6-6 対象裁判が著名事件等である場合の留意事項
6-7 少年事件についての報道対応の留意事項

* 最高検察庁HPに「「法の日」制定の経緯について」が載っています。

第0の1 最高裁判所の広報ハンドブック

1 最高裁判所事務総局広報課の「広報ハンドブック(平成25年4月版)」を掲載しています。

2 1以下の記載は,図表部分を除き,最高裁判所事務総局広報課の広報ハンドブックの記載を丸写ししたものです。

第0の2 判決要旨の取扱い及び刑事上訴審の事件統計(参考)

1 判決要旨の取扱い
(1) 「6-4 判決要旨等」によれば,「要旨・骨子は,速報性が要求される報道機関の利用のために裁判部に特別に作成してもらったものであり,そのような報道機関以外に提供することは基本的に予定されていない。」とのことです。
(2)   藤井浩人美濃加茂市長の弁護人をしている郷原信郎弁護士ブログ「村山浩昭裁判長は,なぜ「自分の目と耳」を信じようとしないのか」によれば,美濃加茂市長に対する名古屋高裁平成28年11月28日判決の場合,名古屋高裁は,美濃加茂市長及びその弁護人に対し,報道機関に提供した判決要旨の交付を拒んだみたいですが,最高裁判所の広報ハンドブックによれば,判決要旨を報道機関以外に提供することは「基本的に」予定されていないとなっていますが,禁止されているわけではありません。
(3) 35期の村山浩昭裁判官は昭和31年12月21日生です(現職裁判官の期別名簿1/3(49期以上)参照)。
(4) 名古屋高裁の平成29年1月17日付の司法行政文書不開示通知書によれば,名古屋高裁平成28年11月28日判決(被告人は藤井浩人美濃加茂市長)の判決要旨が存在するか否かを答えた場合,名古屋高裁の広報事務の適正な遂行に支障を及ぼす恐れがあるため,文書の存否自体を回答できないそうです。
(5)ア 平成29年2月23日付の最高裁判所事務総長の理由説明書によれば,名古屋高裁平成28年11月28日判決(被告人は藤井浩人美濃加茂市長)の判決要旨が存在するか否かを答えた場合,取材源の秘匿を基本原則とする報道機関と裁判所との信頼関係を大きく損なうおそれがあり,ひいては,裁判報道に係る広報事務の遂行を困難にする可能性が高いから,開示できないそうです。
   ただし,最高裁平成18年10月3日決定が「民事事件において証人となった報道関係者が民訴法197条1項3号に基づいて取材源に係る証言を拒絶することができるかどうかは,当該報道の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該取材の態様,将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該民事事件において当該証言を必要とする程度,代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきである。」と判示していることとの整合性はよく分かりません。
イ 平成29年度(情)答申第4号(平成29年5月25日答申)は,「判決要旨の作成は,報道機関からの申請を受けて対応するのが一般的であるところ,この判決要旨の交付申請は,報道機関の取材活動そのものである。当該申請が個別の記者の独自の取材活動の一環として行われた場合はもとより,幹事社を経由しての司法記者クラブ全体からの申請で行われた場合であっても,判決要旨が作成されたことが公開され,報道機関の取材活動の存在,内容が推知されてしまうことは,取材源の秘匿を基本原則とする報道機関と裁判所との信頼関係を大きく損なうおそれがあり,ひいては,裁判報道に係る広報事務の遂行を困難にする可能性が高い。」ということで存否応答拒否は妥当であるとする答申を出しました。
 
2 刑事上訴審の事件統計
(1) 高等裁判所終局区分別既済事件数の推移表の第9参照)
   平成12年から平成27年までの統計でいえば,高等裁判所に係属した刑事事件12万2012件のうち,破棄自判で有罪となったのが1万5150件(12.42%),破棄自判で無罪となったのが247件(0.20%),破棄差戻し等が185件(0.15%),控訴棄却が8万1733件(66.99%),控訴取下げが2万4192件(19.83%)です。
   平成27年の統計でいえば,高等裁判所に係属した刑事事件6078件のうち,破棄自判で有罪となったのが549件(9.03%),破棄自判で無罪となったのが21件(0.35%),破棄差戻し等が19件(0.31%),控訴棄却が4321件(71.09%),控訴取下げが1144件(18.82%)です。
(2) 最高裁判所終局区分別既済事件数の推移表の第10参照)
ア   平成12年から平成27年までの統計でいえば,最高裁判所に係属した刑事事件3万6788件のうち,破棄自判で有罪となったのが14件,破棄自判で無罪となったのが15件,破棄差し戻し等が31件,上告棄却が2万9419件,上告取下げが317件,その他が9件です。
   平成27年の統計でいえば,最高裁判所に係属した刑事事件1891件のうち,破棄自判で有罪となったものが0件,破棄自判で無罪となったものが0件,破棄差戻し等が0件,上告棄却が1565件,取下げが317件,その他が9件です。
イ 最高裁平成29年3月10日判決は,窃盗事件について,広島高裁平成26年12月11日判決(担当裁判官は31期の高麗邦彦裁判官,51期の辛島明裁判官及び56期の国分進裁判官)を破棄して無罪判決を言い渡しました(事件の詳細につき,煙石博さんの無罪を勝ちとる会HP及び「恐怖!地方の人気アナが窃盗犯にデッチ上げられるまでの一部始終」参照)。 

第0の3 法務省の,訴訟事件の取材対応(参考)

1   平成24年4月当時の,法務省大臣官房訟務企画課訟務広報係の「訴訟事件の取材対応」を掲載しています。
 
2   法務省の場合,訴訟事件の取材対応窓口は訟務広報官及び訟務広報係です。
   また,取材責任者は,本省の場合は所管課長・管理官であり,法務局の場合は訟務部長であり,地方法務局の場合は総括上席訟務官です。
 
3 法務省の場合,面談又は電話による取材に対し,想定問答の範囲内で答えることになっています。
   また,①事件についての所見,②和解について,③判決の見通し及び④判決についてのコメントに関する質問は答えてはいけないことになっています。

第0の4 最高裁判所の庁舎見学に関する,最高裁判所作成のマニュアル(参考)

1 平成26年6月当時の,最高裁判所の庁舎見学に関する,最高裁判所作成のマニュアルを掲載しています。
   見学説明文,大法廷での説明事項,平成に入り大法廷が使用された訴訟,見学者からよく出される質問のQ&A等が載ってあります。

2(1) 国会議員事務所から見学の申し出があった場合,国会係で対応する場合と,広報課で対応する場合に分かれるみたいです。
(2) 衆議院HPに「衆議院議員会館議員事務室一覧表」があり,参議院HPに「参議院議員会館議員事務室一覧表」があります。

3(1) 最高裁判所事務総局広報課による公式の説明が裁判所HPの「最高裁判所の庁舎見学」に載っています。
   また,「司法の窓」第75号(平成22年5月発行)に,裁判所めぐり「最高裁判所見学」が載っています。
(2) 一般社団法人千代田区観光協会HP「社会科見学 最高裁判所」にも,最高裁判所の庁舎見学の様子が書いてあります。

1-1 広報活動の種類

   裁判所の行う広報活動は,大別して「一般広報」と「報道対応」の二つに分けられる (目次末尾の「裁判所の広報活動のイメージ」を参照)。
1 一般広報 
   一般広報は,裁判所の制度や仕組みを国民に正しく理解してもらい,裁判所への信頼を高めるために国民一般を対象にして行う広報活動のことである。ウェブサイトやリーフレットの発行,憲法週間の行事などがこれに当たる。行政官庁や企業の行うP R活動と類似した性質のものといえる。
2 報道対応 
   報道対応は,新聞,テレビ等の報道機関が裁判所に関して報道を行う際に,この報道機関からの取材等に対応する広報活動のことである。裁判所に関する報道には,二つのものがある。
(1)裁判に関する報道 
   裁判に関する報道は, 「本日〇〇地裁で△△事件の判決がありました...」というような,具体的な裁判の手続や判決そのものに関する報道である。これについては, 法廷内カメラ撮影の申請,判決の要旨の提供依頼,同種事件に関する統計数値の提供依頼などといった取材が絡んでくる。
(2) 司法行政に関する報道 
   司法行政に関する報道は,裁判の制度やその運用の在り方,裁判所の組織の在り方,裁判所で発生した事故,懲戒処分などに関する報道である。特に,事故等については,いつどのような形で発生するか,どのような取材が飛び込んでくるか予測がつきにくいことが多いので,その対応に当たっては細心の注意を要する。また, 司法行政に関する報道が,個々の裁判手続などと関連して発生することもある。裁判に関する報道対応と司法行政に関する報道対応は密接に関連しているといえよう。
   なお,報道対応の仕方,場面は,おおむね,裁判所が積極的に報道機関に情報等を発表する報道発表,報道機関からの取材に対応する取材対応,裁判報道に関する裁判所の報道機関への便宜供与の三つに分けることができる(3-3参照)。

1-2 広報活動の性格

   裁判所の行う広報活動は,司法行政上の事務と考えられる。一般広報はもちろん,報道対応も,正確な報道という目的のため,組織体としての裁判所が報道機関に対し,便宜供与等として行うものだからである。
   例えば,報道機関から民事事件記録中の訴状等の閲覧を求められた場合,裁判部の了承の下,訴訟法上の手続によることなく,この閲覧を認めることがある。これは,訴訟法に定められた閲覧ではなく,報道の必要にこたえた便宜供与として行うものである。 言い換えれば,裁判上の事務ではなく,司法行政上の事務ということである。もちろん, 報道機関が訴訟法上の手続にのっとった閲覧を求めることも可能であるから,この場合, これに対応するのは裁判上の事務ということになる。
   このように,広報活動は,司法行政上の事務であるから,これを担当するのは司法行政部門である事務局となり,この事務については,原則として,各庁で統一的な取扱いをする必要がある。また,これについては,他庁に影響を及ぼすことが多いことから, 上級庁に相談等する場面も出てくるといえる。
   もっとも,司法行政上の事務といっても,裁判上の事務に密接に関連している場合があるので,その場合は,裁判部門との連携・協力が必須であり,事案によっては訴訟法の趣旨の観点からの検討も必要となる。例えば,事件記録の閲覧では,訴訟法上第三者による当該記録の閲覧が許されているか否かなどを,報道機関への便宜供与の在り方を判断するに当たっても押さえておく必要があろう。
   なお,広報活動は,司法行政上の事務であるから,このために作成等し,保存に付す文書については,司法行政文書の開示の問題があることを意識しておかなければならない。

1-3 広報活動を行う理由

1 裁判所の広報活動の必要性 
   裁判所が裁判事務を円滑に行い,司法の機能を果たすためには,裁判所に対する国民の理解と信頼が不可欠である。
もとより,裁判所に対する国民の理解と信頼は,個々の裁判を適正迅速に行うことを通じて培われるべきものであるが,国民の多くは,マスメディアの報道等を通じて裁判所の活動を認識し,理解しているのが通例であり,ここに裁判所の広報活動が必要になってくる理由がある。
2 一般広報の役割 
   一般広報は,ウェブサイト,パンフレットなどの広報ツールを利用して,裁判所の制度や裁判の仕組みを国民に分かりやすく伝え,正しく理解してもらうために行うものである。国民に利用しやすく分かりやすい裁判を実現するために行っているもの,と言い換えることができる。
3 報道対応の役割 
   報道対応は,正確な報道を通して裁判所に対する国民の理解と信頼を深めるために行うものである。公の機関は,その規模や影響の大小に応じた説明責任を負うというのが成熟した民主主義社会のルールであって,裁判所のような公権力の行使に直接関わる組織においては,このことを常に肝に銘じ,裁判,裁判所の実態をきちんと正確に説明していく必要がある。報道機関が正確に裁判の内容や裁判所の司法行政活動を理解しないまま誤った報道がなされると,裁判所の活動に対する国民の正しい理解が妨げられ,ひいては司法に対する信頼が傷つけられることにもなりかねない。また, その誤報等によっていったん傷つけられた信頼を回復するには非常な困難がともなうものといわなければならない。このような事態を防止し,裁判所に関する報道を正確で誤解等に基づかないものとするために,適切な報道対応が必要となるのである。
   社会の情報化が進む中,裁判に関する報道は質,量ともに増加しており,報道対応の重要性は益々増大してきているといわなければならない。

1-4 中立性,公平性に留意した広報活動

   裁判所は,その職務の性質上,中立性,公平性を厳に維持しなければならない。のみならず,裁判所の中立性,公平性について,国民に疑念を抱かれるようなことも避けなければならない。裁判所が広報活動を行う際にも,常にこのことを念頭に置いておく必要がある。
   例えば,裁判所には,種々の機関や団体から広報用ポスターの掲示やパンフレット, リーフレット等の備置きなどを依頼されることがある。このような場合については,これら機関や団体が事件当事者となり得ること,広報しているテーマについても反対の意見を有する人たちが存在し得ることを考慮の上,裁判所の中立性,公平性に反しないかどうかという観点を踏まえた検討が必要となる。
   これは,一般広報であれ,報道対応であれ同様であるが,特に,取材対応,裁判報道における便宜供与の場面では,この問題を慎重に検討する必要がある(5-2及び6-1 を参照)。

1-5 広報活動を行う上で疑義がある場合の対処

   広報活動は,それ自体が裁判所としての公的見解を外部に表明するという性質を持っており,特に報道対応では,事案や状況によってとるべき対応が異なる上,そうした裁判所の対応方針を短時間に決めなければならないことも少なくない。さらに,ある庁でとった報道対応がほかの庁に影響を与える,ということも頻繁に生じ得る。
   このような事情から,裁判所として適切な広報活動をするためには,当該事案の事実関係を最もよく把握している原庁とこれまでの経験例等の情報を豊富に持っている上級庁との間で十分意思疎通を図り,知恵を出し合うことが必要となってくる。したがって, 広報活動に関して疑問に思うことがあれば,必ず上級庁に相談されたい。緊急時など必要があれば,高裁への相談と並行して,直接最高裁広報課に相談しても差し支えない。
   なお,広報活動を行う上で疑問とまでは思わないことであっても,それがほかの庁にもそれなりに影響を与え得るような場合には,上級庁に情報提供されたい。
   おって,事故等緊急事態が発生し,そのことについて何らかの報道対応が予想される場合には,上級庁にまず第ー報することも心がけられたい(5-5参照)。

2-1 広報活動のためのツール

   裁判所の広報に利用されているツールには,現在,次のようなものがある。

1 裁判所ウェブサイト等 
   裁判所では,ウェブサイトを情報発信の重要なツールとして位置づけている。平成 18年3月には,ユーザビリティ(利用者の使い勝手の良さ)及びアクセシビリティ (利用者の環境によらずに利用が可能であること)に配慮した統一的なウェブサイトの運営を目指して,従来の裁判所ホームページの全面的なリニューアルを行い,裁判所ウェブサイトをポータル(入り口)サイトとして,主に裁判所の組織や手続の紹介, 規則集,裁判例情報,司法統計,見学・傍聴案内,採用試験情報,調達・公募情報, 動画配信,オンライン手続など裁判所全体にかかわる情報を発信するとともに,最高裁判所及び各地の裁判所が共通メニューのもと独自情報を掲載するサイト構成とした。 平成23年度には,総務省が発表した「みんなの公共サイト運用モデル」を受けて, 公的機関のウェブサイトとして,高齢者や障害者を含む誰もが利用できるサイトとなることを目指し,日本工業規格であるJ1SX8341-3 :2010に基づいたウェブアクセシビリティを一層意識した改修を行うとともに,職員自身により情報更新を行う運用を確立し,情報更新にかかる時間を短縮する目的でCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を導入した。
   なお,上記リニューアルに先立ち,平成17年4月には知的財産高等裁判所ウェブサイトを開設して知的財産高等裁判所に関する各種情報を(平成25年3月リニュー アル),平成17年11月には裁判員制度ウェブサイトを開設して裁判員制度に関する各種情報を発信している。

2 パンフレット「裁判所ナビ」
   裁判所や裁判の制度全般について一通り説明し,裁判所についての基本的知識を提供することを目的としたパンフレットである。最高裁事務総局で,必要に応じて改訂しながら毎年発行し,見学者数や在庫数に応じて各裁判所に配布している。各裁判所では,見学者や各種行事の参加者に配布するなどして広報活動に活用している。

3 リーフレット「法廷ガイド」
   裁判傍聴に関する基本的事項や裁判手続の概略を説明したリーフレットである。最高裁事務総局が発行し,各裁判所に配布している。各裁判所では,傍聴希望者やー般来庁者が手軽に入手できるよう適宜の場所に備え置くなどしている。

4 広報誌「司法の窓」
   一般国民向けの対外広報誌である。解説記事,資料等により裁判の仕組みや制度を紹介するほか,対談や「海外司法スケッチ」, 「裁判所めぐり」などの随筆等を掲載して,裁判所に関する様々な話題を提供し,裁判所を身近に感じてもらえるよう配慮している。「司法の窓」の主な配布先は,各地の政府刊行物サービスセンター(ステー ション)や全国の大学,短大,高校及び法科大学院である。また,各地の裁判所を通じて地方自治体や公立図書館等にも配布している(最高裁判所50周年記念号裁判員制度特集号のほか,第62号以降は,裁判所ウェブサイトへの掲載を併せて行っている。)。 長年にわたり親しまれてきた広報誌であるが,裁判所ウェブサイトによる広報活動等の活発化に伴い,広報ツールとしての役割を見直す時期に差し掛かっているといえよう。

5 その他の各種リーフレット等 
   上記2ないし4のほかにも,最高裁事務総局はリーフレット等を発行している。これらの多くは,主として事件関係者用に作成されたものであるが,一般国民や記者等からの問い合わせの際に利用することも可能である。
   なお,リーフレット等の転載利用については,おおむね毎年,総務局第二課長事務連絡「最高裁判所事務総局刊行のリーフレット等の転載について」が発出されているので,それを参照されたい。

6 広報用ビデオ 
   最高裁事務総局が制作した広報用ビデオは次の(1)ないし(6)のとおりである。
   各庁に配布した広報用ビデオは,団体見学時や各種行事で上映したり,一般に貸し出したりして利用されている。また,ロビーなどでー般来庁者向けに上映している裁判所もある。
   なお,このほかに裁判員制度広報用に制作された映画等もある。これについては, 上記の利用方法のほか裁判員制度ウェプサイトでの配信も行っている。
(1) 最高裁判所のしくみと働き(約15分・一般向け・高地裁に配布)
   三権分立及び三審制を分かりやすく図解して,最高裁判所が最終の裁判所とされていることを説明したもの。また,小法廷や大法廷が開廷される状況を通して,最高裁判所が「憲法の番人」といわれている意味を説明し,裁判所が国民のための司法機関として重要な働きをしていることを紹介する。
(2) 司法制度と最高裁判所(約25分・一般向け・高地裁に配布)
   上記(1)の内容をやや詳しくしたもの。映像を通して,三権分立の下での司法権の役割,下級裁判所の種類及び三審制について説明する。さらに,最高裁判所における事件受理の状況から判決に至るまでを映像を通して紹介する。これらにより,司法制度と最高裁判所の仕組みや役割を理解してもらう。
(3) 知っていますか?裁判所(13分・ー般向け・高地家裁に配布)
   裁判のしくみや手続,裁判所の種類等について,CGを取り入れたり,法廷シーンを加えて分かりやすく説明したもの。
(4) 私たちの裁判所(約29分・中高生向け・高地家裁に配布)
   裁判所に見学に来た中学生に,レポーターが裁判所の構成,種類,取り扱う事件等をドラマを交えながら解説するという構成を採っている。
(5) みんな知ってる?一裁判の仕組みー(約比分・小学生向け・高地家裁に配布)
   社会生活における法の重要性や裁判所の働きなどを分かりやすく説明したもの。
   ー部にアニメーションを取り入れ,具体的な事例を通じて民事裁判と刑事裁判の概要を紹介する。ドラマ仕立ての法廷シーンもあり,実際の法廷の雰囲気を知ることもできる。
(6) リホちゃんナビスケの裁判所ってどんなとこ?(13分・小学生向け・高地家裁に配布)
   裁判所や裁判の仕組みについて,ドラマ仕立ての法廷シーンやアニメーションを交えて分かりやすく説明したもの。
  
7 その他のビデオ 
   各裁判所には,上記6の広報用ビデオとは別に,主として各種事件の手続を当事者や事件関係者に解説することなどを目的として制作された手続教示用ビデオが配布されているが,制作目的が異なるため,これらのビデオを広報活動に利用する場合には, 利用可能かどうかを最高裁事務総局に確認する必要がある。
   なお,手続教示用ビデオのうち,①あなたが選ぶ少額訴訟,②簡易裁判所民事手続案内,③特定調停手続案内,④家事事件手続案内については,広報活動に利用して差し支えない。
   おって,①成年後見手続説明用ビデオ「成年後見~利用のしかたと後見人の仕事~」, ②ピデオ「後見人になったなら・・・~後見人の仕事と責任~」,③ビデオ「離婚をめぐる争いから子供を守るために」については,裁判所ウェブサイトでの配信も行っている。

2-2 ウェブサイトを活用した広報

   裁判所ウェブサイト等が重要な広報ツールとして位置づけられ,今や裁判所における一般広報の中核をなすといっても過言でなく,今後,よりいっそうの内容の充実とユー ザビリティ・アクセシビリティの向上を図ることが課題となっている。
   各庁においては,サイトポリシーを十分に理解し,裁判所ウェブサイト運用マニュアルに従った自庁サイトの管理・運用を行うとともに,効率的な広報を行うためのツーJレとして積極的に活用されたい。
(参考)主要コンテンツ及びデータベースの概要
→図表につき省略 

2-3 広報テーマを活用した広報

   最高裁事務総局では,裁判所や裁判に関するトピックについてー般国民に分かりやすく解説することを目的として,月間の広報テーマを定めている。毎年11月ころに,翌年4月から翌々年3月までの1年間の広報テーマについて仮計画を立て,予定表を作成して各庁に送付しているので参考にされたい。
   広報テーマについては,確定後に内閣府の政府広報室に政府広報希望テーマとして提出するとともに,当月の2か月半前には,広報課長通知により,イラストや図表等を用いて作成した広報テーマ本文・要旨の電子データを各庁に送付している。また,内容に応じて裁判所時報や裁判所ウェブサイトへの掲載も行っている。
各庁においては,広報テーマが広く周知されるように,印刷したものを来庁者に配布したり,地方自治体の広報誌等に掲載依頼するなどして,各庁の実情に応じた広報活動を行っていただきたい。
(参考)原則的な作業スケジュール
5 月前 広報テーマの確定
3.5月前 政府広報室に概要等を提出
3 月前 原稿確定
2.5月前 広報課長通知発出(各庁へ送付)
1 月前 裁判所時報に掲載 
当 月 裁判所ウェブサイトに掲載

2-4 憲法週間や「法の日」週間における広報企画

1 憲法週間と「法の日」週間 
   憲法週間は,5月1日から7日までである。憲法の精神や司法の機能を国民に理解してもらうため,裁判所が法務省,検察庁及び弁護士会の協力を得るなどして,全国で各種の行事を実施している。
「法の日」週間は, 10月1日(法の日)から7日までである。裁判所,法務省, 検察庁及び弁護士会が協力するなどして,法の支配の重要性を国民に理解してもらうことを目的として,全国で各種の行事を実施している。
   なお,このような週間行事を行う場合にも,裁判所の中立性,公共性を保つ配慮は必要となる。
2 広報企画の例 
   広報企画の例としては,出張講義,法廷傍聴,模擬裁判,ビデオ上映,資料展示などを伴う庁舎見学会などがある。
3 行事を成功させるための効果的なPR
   PRの方法としては,行事のお知らせを裁判所ウェブサイトに掲載するほか,地方自治体の広報誌や新聞などに掲載してもらったり,テレビ,ラジオなどで放送してもらうことが考えられる。
   なお,報道機関に依頼して行事のPRを行う場合には,報道機関からその行事の取材を求められることも考えられ,取材申込みがあった場合の対応についても企画段階から検討しておく必要がある。

 【参考1】
憲法週間実施経過 
昭22. 5. 3 日本国憲法施行 
昭24 5. 1 憲法普及月間 
昭25 5. 1 憲法記念週間(以後,毎年1日から7日まで)
(昭和27年までは,衆・参両院,内閣,最高裁など政府関係機関が協議の上,行事内容について打合せをしてきた。昭和28年からは最高裁において憲法記念週間を定め,法務省,検察庁,弁護士会の協力を得て記念行事を実施することになった。)
昭和31.5. 1 憲法週間(この年から名称を改める。以後,毎年I日から7日まで

【参考2】
「法の日」制定経過
(司法記念日制定の経緯)
昭和3.10.1 陪審法施行 
昭和4.10.1 司法記念日(前年に陪審法が施行され,この日に天皇陛下が東京の三裁判所を行幸されたことを記念し,司法省が司法記念日を定めた。)
昭和14.11.1 司法記念日(この日に裁判所構成法施行五十周年記念行事を行い,天皇陛下の行幸を仰いだことから,以後司法省がこの日を司法記念日にすることを決めた。)
(「法の日」制定の経緯) 
昭和22.11.1 司法週間(最高裁が定める。)
昭和32.10.1 最高裁発足十周年記念行事実施(天皇陛下の行幸を仰ぐ。なお,10月1日にした理由は,その日が最高裁発足後,最高裁で初めて法廷が開かれた日に当たるため。)
昭和34.10.3 裁判所,検察庁,弁護士会の三者協議会において,10月I日を「法の日」と定めることを提唱することが決議された。
昭和35.6.24 「法の日」創設について閣議了解
昭和35.8.17 「法の日」週間の広報についての依命通達 
昭和35.10.1 第1回「法の日」
                「法の日」週間(1日から7日まで)

2-5 裁判所内で行う広報企画

   裁判所内で行う広報企画としては,庁舎見学会,団体傍聴,模擬裁判,説明会などがある。学校の社会科見学など法教育の一環として行われるものが多い中,一般市民の見学や傍聴の数も近年増加傾向にある。これは裁判員制度の導入など司法制度改革の推進により裁判所への社会的関心が高まっていることの現れであり,これらの対応は,裁判所に対する国民の理解を得るための重要な機会となる。
   各裁判所では,リーフレット等の配布,広報用ビデオの上映,庁舎見学,法廷傍聴等を各庁の実情に応じて適宜組み合わせて対応している。裁判所見学等は,裁判所が国民に直接的に広報活動を行える数少ない機会のーつであり,広報担当者の応対によって裁判所の印象が大きく変わるといっても過言ではない。誠実な対応を地道に積み重ねることで大きな広報効果も期待できるので,参加者に裁判と裁判所について理解を深めてもらい,良い印象を持ってもらえるような工夫をしたいものである。
   もっとも,広報活動が裁判所の本来の事務に支障を生じさせてはならないので,その面からの調整が必要になる場合があることは当然であり,また,特定の団体等に特別の便宜を与え,裁判所の中立性,公平性に疑いを生じさせる結果とならないように注意しなければならない。
   なお,実際の事件の団体傍聴を行う場合には,傍聴にふさわしい事件を選択すべきである。特に小学生が法廷傍聴をする場合,発育途中にある児童が大きな精神的ショックを受けないよう十分配慮しなくてはならない。事件を選択するに当たっては,広報担当者は裁判部と連絡を取り合うことが必要となるであろう。
   また,裁判所内で広報企画を行う場合には,安全管理の面から,参加者の人数,引率責任者名,時間,見学場所等の情報を早めに庁舎管理事務担当者に連絡しておくなど, 関係部署との連携が求められる。

2-6 裁判所外で行う広報企画,出張講義等

   裁判所外で行う広報企画としては,公共施設を利用した説明会や広報用ビデオの上映会,学校などで行う出張講義等が考えられる。
   こうした活動は,裁判所や裁判というものに殊更関心を持たない層に対しても積極的にアピールできるという利点があるので,裁判員制度実施前の広報期間中は大いに活用された。ただし,一方で,労力や費用の面で負担が大きくなるため,実施する場合には, 広報効果を十分吟味し,合理的な企画内容にしなければならない。
   また,参加者を確保し,十分な広報効果を上げるためには,事前のPRも重要である。 広報企画のお知らせを裁判所ウェブサイトに掲載したり,手製のチラシを配布したりするほか,地方自治体の広報誌などに掲載してもらったり,新聞,テレビ,ラジオなどで取り上げてもらったりすることが考えられる。
   なお,学校や市民団体から出張講義や裁判所外での説明会の要望を受けた際に,第―次的には,団体傍聴とのセットで庁舎見学会や説明会を行うことを勧めるなどして裁判所内での広報企画に誘導する運用をしている庁もあると聞く。先方の事情にもよるが, これには裁判所の現場を直接見ていただくことで,イメージしやすく理解がより深まるというメリットもあると思われる。
   裁判所内外での広報企画を検討するに当たっては,効率的な広報活動となるよう各庁の実情に応じた工夫をされたい。

3-1 報道機関についての基礎知識

1 新聞
(1)全国紙,ブロック紙,県紙 
   日本全域を配布エリアとする新聞を全国紙といい,朝日,毎日,読売,日経,産経の5紙がこれに当たる。これだけで新聞の総発行部数の5割以上を占めている。 ブロック紙は,配布エリアが数県にわたる広いエリアにまたがっている新聞で,北海道新聞,中日新聞,西日本新聞がこれに当たる。県紙は,一つの県を主たる配布エリアとする新聞である。
(2)本社,支局 
   全国紙の場合,東京本社,大阪本社,名古屋本社等の本社があり,東京本社を中心に連携をとりながら,各本社ごとに新聞を発行している。本社には,政治部,社会部等の部署が置かれ,取材や紙面の編集活動が行われている。
   また,おおむね各都道府県の県庁所在地には支局が置かれ,支局に属する記者は, 主に各都道府県内の事件等を取材している。
(3)記者クラプ詰め記者と遊軍記者 
   記者は,記者クラブ詰め記者と遊軍記者に分けられる。前者は,取材対象となる省庁や企業等に置かれた記者クラプを拠点にして取材活動をしている記者であり, 後者は,記者クラブに属さず,平素は自分の得意分野を中心に企画ものの取材等を行い,大事件が発生した場合などには社会部長やデスク等の下でチームを組んで取材に当たる記者である。
2 テレビ
(1)キー局,ネット局,独立局 
   キー局は,東京や大阪などに本社を置き,契約を結んだネット局を通じ,制作した番組等を全国的な放送網に乗せることができる放送局で,東京では日本テレビ, TBS,フジテレビ,テレビ朝日,テレビ東京があり,日本テレビがNNN, TB SがJNN,フジテレビがFNN,テレピ朝日がANN,テレビ東京はTXNというネットワークを持っている。
   ネット局は,おおむね県単位で放送を行っており,基本的に独立した局である。 独自に地方ニュース等の番組を制作したりもするが,全国的なニュース映像等やドラマなどの番組をキー局から受けて放送する。
   NHKは,キー局であるが,ネット局があるわけではなく,NHK自体が独自の全国的な放送網を持っている。
   独立局は,県単位で放送を行っているが,特にネットワークに入っておらず,独自の放送を行っている局である。
(2)制作会社 
   テレビの番組,特に特集番組やドキュメンタリー,ドラマなどをテレビ局の依頼等を受けて制作している会社である。テレビ局の放送記者とは別の角度で裁判所に取材してきたり,撮影の依頼をしてきたりすることがある。
(3)放送記者,プロデューサー,ディレクター
   放送記者も基本的に新聞記者と同様であるが,自分で取材したことを自分でカメラに向かって話すことが多く,レポーターを兼任しているような場合もある。また, 記者クラプ詰め記者と遊軍記者がいるところも新聞と同様である。このほか,特定のテーマで報道番組が作られる場合などの,番組制作の責任者をプロデューサー, 制作の実務担当者をディレクターと呼ぶ。
3 通信社 
   新聞社やテレビ局等に内外のニュースや各種の記事,写真等を供給することを主な業務としている報道機関である。裁判所を日常的に取材している通信社は,共同通信社及び時事通信社の二社である。
4 記者クラブ 
   日本新聞協会は, 「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」 (2002年(平成14年)1月17日第610回編集委員会,2006年(平成18年)3 月9日第658回編集委員会一部改定)の中で, 「記者クラブは,公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される『取材・報道のための自主的な組織』です。・・・・記者クラブは,公権力の行使を監視するとともに,公的機関に真の情報公開を求めていく社会的責任を負っています。・・・・記者クラブ制度には,公的機関などが保有する情報へのアクセスを容易にするという側面もあります。・・・・記者クラブは, 『開かれた存在』であるべきです。日本新聞協会には国内の新聞社・通信社・放送局の多くが加わっています。記者クラブは,こうした日本新聞協会加盟社とこれに準ずる報道機関から派遣された記者などで構成されます。外国報道機関に対しても開かれており,現に外国報道機関の記者が加入するクラブは増えつつあります。」としている。
   なお,詳細については,日本新聞協会のホームページに前記見解が掲載されているので,参照されたい。
   おって,同ホームページ上には,この見解についての解説も掲載され,記者クラブの「目的と役割」, 「組織と構成」, 「記者会見」, 「協定と調整」, 「記者室」及び「紛争処理」が説明されており,参考になる。
 
5 裁判所の記者クラブ 
   裁判所を取材する記者らも記者クラブを組織している。一般的に検察庁も併せて取材するが,地方では,警察を取材する県警の記者クラブが兼ねていたり,県庁を取材する記者クラブが兼ねていたりする所もある。
   裁判所の広報との関係では,常時裁判所関係の取材を行っている記者たちの団体という意味で最も重要な相手方であり,実際上も記者クラブが主体となって裁判所に対して便宜供与を要請したり,裁判所側も記者クラプを相手にして各種申入れや調整を行ったりしており,広報担当者と記者との重要な接点となっている。記者クラブでは, 一定期間ごとの持ち回りで幹事社を決め,この幹事社が,期間中,クラブ各社のまとめ役,連絡役を果たすことが多いようである。
6 新聞記者
(1)社会部記者 
   事件,スキャンダル,苦情などを広範囲に取材し,社会面の記事を中心に書いている。裁判所をはじめ司法関係を担当する記者はおおむね社会部に所属している。
   裁判所の広報担当者が最も頻繁に対応するのが社会部記者である。
(2)経済部記者 
   経済団体,企業,関係官庁等に取材し,経済面の記事を書いている。裁判所へは,経済がらみの事件等について,取材に入ることがある。
(3)論説委員 
   主に時事的な話題をテーマとして取り上げ,社説欄等で新聞社としての見解,意見等を主張する。裁判所関係の論説は司法担当の論説委員が書くが,知識経験豊かな司法担当記者OBが多いようである。論説委員が直接裁判所に取材することもある。
  
7 その他の報道機関の記者
(1)通信社の記者は新聞記者とほぼ同じである。
(2)放送では,報道ニュースは主に報道局の放送記者が取材する。裁判所についても新聞の社会部記者と同様に取材する。また,解説委員といい,ニュース解説等を担当する人たちがいるが,新聞の論説委員と同様に直接裁判所に取材することもある。 そのほか, ドキュメンタリーなどの番組を担当するプロデューサーやディレクター が裁判所に関連取材をしてくることがある。
(3)雑誌記者も,取り上げるテーマによっては裁判所に取材してくることがある。

3-2 「責任者対応の原則」と「窓口一本化の原則」

1 責任者対応の原則
(1)報道機関から取材の申込みがあった場合,報道機関に対する対応は,最終責任者である所長がこれに当たるのが原則である。すなわち,報道機関に対する発言は, 外部,世間一般に対し裁判所の公的見解を述べることだからである。
(2)所長が報道機関と対応するについて,これを補佐して広報事務を担当するのは, 事務局長,次長,総務課長,総務課職員である。
   実際には,総務課の職員が取材申込みを受ける窓口となり,総務課ー事務局長―所長のラインで情報を上げて対応を検討することになる。取材内容に応じて,事実を確認し,必要があれば上級庁に相談の上,どのように対応するかを決め,所長が記者に回答するという手順である。
   なお,具体的な対応においては,所長の指示のもとに,事務局長,総務課長等が所長に代わって回答する場合が多い。例えば,裁判に関する報道対応においては, 定型的に処理できるものも多く,このようなものについては,あらかじめ所長の指示のもと,事案の内容,重要性に応じて,事務局長又は総務課長限りで対応して処理しても差し支えないといえよう。
2 窓口一本化の原則 
   報道機関に対する対応は,責任者である所長ー事務局長ー総務課というラインで対応するのを原則とすることから,取材の申込みを受ける窓口も広報事務担当の総務課に―本化することが必要である。窓口が幾つにも分かれていると,各窓口での対応がまちまちとなり,同一の事柄につき微妙に異なる回答を行ってしまい,その結果誤解や混乱を招く危険があるからである。

3-3 報道対応の種類

   裁判所での報道対応は,おおむね,報道発表(情報提供),取材対応及び裁判報道における便宜供与の三つに分けられる。
1 報道発表(情報提供)(以下「報道発表等」という。)
   国民に広く知ってもらう価値のある情報を裁判所が積極的に報道機関に提供することである。一般民間企業や行政省庁では,新製品や新たな施策を報道してもらうために頻繁に報道発表等をしているようであるが,裁判所の広報では,報道発表等を行う場面はあまり多くはない(4-1~6を参照)。
2 取材対応 
   報道機関からの取材の申込みに対応することである。裁判所はいわゆる政策官庁ではないため,受け身の「取材対応」が圧倒的に多くなる。これは,裁判に関するものにおいても,司法行政に関するものにおいてもあまり変わりはない(5-1~8を参照)。
3 裁判報道における便宜供与 
   裁判所の本体業務である裁判の報道に当たって,報道機関に便宜を供与することである。法廷内の記者席申請への対応,庁舎内・法廷内の写真撮影申請への対応,判決要旨・判決書写しの交付等がその内容となる(6-1~7を参照)。

3-4 記者との接し方

   普段接することの多い記者クラブの記者との接し方においても,次のことに留意する必要がある。
1 雑談がコメントとなる危険 
   日ごろから記者と顔を合わせていると,事件に関することなどについて,様々な質問を受けることがある。しかし,これに不用意に応答すると思わぬ結果を招くので注意を要する。時に不正確な雑談が裁判所の担当者のコメントとして記事になってしまうことがある。
   事務局は,具体的事件について聞かれても,答えられる立場にない。このような場合,記者は往々にして一般論として尋ねてくることもあるが,具体的事件についての手掛かりを得ようという意図で尋ねていることが多く,一般論として説明しても,その事件についての説明と受け取られかねないことに注意が必要である。したがって, 一般論としても説明は差し控えるべきである。さらに,個人的見解を聞かれることもあるが,明確に「個人的見解を述べる立場にない」と断る必要がある。
2 法律知識の提供が必要な場合 
   記者は,裁判の手続や法律的用語など一般的法律知識についての理解が必ずしも十分とはいえないことが多い。そのため,これらについて質問をしてくることがある。 この質問に対して適切な対応を怠ると,理解が不十分なまま記事になる可能性が高く, 誤報に結びつくことがある。この場合には,責任者である所長に相談して,一般に公刊されている法律書で分かりやすいものを紹介する,場合によっては事件を担当していない所長等から記者に説明する,ということが必要になることもある。紹介する法律書は,外部に向けて刊行されているものであれば,裁判所の発行したものでも構わない。
3 「オフレコ」は原則用いない
   「オフレコ」とは, 「オフザレコード(掲載禁止)」の略であり,発言を記録せず,公表もしないという意味であるが,記者との相当強い信頼関係があることが前提であり,報道対応としては原則用いるべきではない。
4 個別対応の原則 
   記者は同じ会社内であっても独自に問題意識を持って取材活動をしている。記者からの取材については,個別に対応することを原則とし,同じ社であっても,他の記者に対して取材内容等を軽々に伝えてはならない。

3-5 上級庁への情報提供等の際の留意事項

   報道対応は,飽くまでも当該庁が責任をもって行うべきものであるが,上級庁に情報提供等が必要と思われるものも少なくない。そのようなときには,次のことに留意されたい。 
1 相談等の必要性 
   記者からの取材事項等に応じて,遠慮なく上級庁に連絡や相談をすることを心掛けてもらいたい。 
   相談等の必要性の有無等については,案件の重要性,複雑さや他庁への影響の可能性など様々な事情を考慮して判断することになる。相談等の必要性について判断をしかねるような場合には,相談等の必要性も含めて上級庁に相談されたい。 
2 緊急の際の第一報
   ー般の国民の注目を集める事件や事故が発生するなどして,緊急の報道対応を要する場合には,まず「第一報」を入れておくことが重要である。まずは電話での一報ということだけで構わない。また,詳しい事情が正確に判明していない段階での断片情報でも差し支えない。第一報を受けると,上級庁は緊急事態への対応態勢をとることができる。第一報の意義はここにある。後でさほどの事態ではなかったと分かれば, その態勢を解除し,良しとすべきである。もちろん,第ー報が無意味であったことになるものではない(5-5参照)。
3 相談等の際の注意 
   一般的に報道対応の相談に当たっては,次の点を押さえておく必要がある。
   なお,事実関係の把握や対応方針の決定に時間を要するような場合には,作業が終わり次第,逐次連絡するようにする。
(1) まず,どのような取材を受けているのか,報道機関からの取材申込内容を正確に伝える。取材申込みを聴取したメモ等を活用する。
(2)次に,その裁判所が把握した事実関係を正確に伝える。何が,いつ,どこで,なぜ発生したのか,今どうなっているのか,加えて,それはどのような意味を持っているのか,同種のことは従来あったのか,これからどのように措置する予定であるかなどを伝える。また,説明していない事実関係がある場合には,その点を明確に伝えることも必要である。
(3) さらに,その裁判所で考えている報道機関への対応案を伝える。正確な情報のやり取りなしには相談に対して的確に応じることはできない。下級裁として上級庁に言いにくい事柄や時には何らかの失敗があったとしても,情報伝達する必要がある。
4 結果の報告 
   報道対応の結果いかんによっては,他庁や上級庁に取材がされることもある。また,事前に検討した報道対応案と実際の対応結果とを分析することは,上級庁にとっても有益でもある。したがって,事案によっては,上級庁に対し,適宜対応結果について報告してもらいたい。

4-1 報道発表等における一般的な留意事項

   報道発表等は,おおむね,記者への資料の投げ込み,記者へのレクチャー,記者会見の方法で行われる。報道発表等を行うに当たっては,次のとおり,相手方(報道機関) があることを常に意識することが必要である。
1 報道発表等の内容 
   具体的にどのような内容の報道発表等を行うか,明確に整理した上で対応する必要がある。裁判所にとって報道に値するものであると考えても,報道機関にとってはそれほど重要と思われないものもある。    また,報道機関は,必ずしも裁判所の業務内容等をこと細かく知っているものでもない。裁判所として国民への説明責任をどのような形で果たすべきか,報道機関がどのようなことに関心を持っているのかなどを普段から意識しておく必要がある。
2 報道発表等の時期・タイミング 
   報道機関(記者)は,日々様々な取材活動等を行っている。報道発表等を行う際には,このことも意識する必要がある。著名事件の裁判が行われている中で報道発表等を行う,記者が記事原稿を社に送るまでの時間がほとんどない時刻に報道発表等を行うなどということは可能な限り避けるべきである。このような時期・タイミングで報道発表等を行うと,記者は時間に追われて記事をまとめることになるが,その結果, 十分に報道発表等の内容が理解されないままに記事(誤報)になるおそれがあるからである。
3 報道発表等の準備 
   報道発表等の内容によっては,記者に交付する簡潔な説明資料を準備する,さらに問われた場合の補足説明事項等を用意する,ということが必要である。
   報道発表等は,各社への情報伝達に漏れがないようにする必要がある。記者クラプの幹事社を通じて行うのが一般的であろう。
4 他庁等への影響等 
   ある庁の報道発表等が他庁,関係機関等に影響を及ぼすことがある。報道発表等を行うに当たっては,他庁等にどのような影響,波及が生じるかについても考える必要がある。その上で必要に応じて,上級庁を含め,他庁等に情報提供等することも必要となろう。

4-2 資料提供(資料等の投げ込み)

   資料等を報道機関に投げ込む方法での報道発表である。報道発表内容を簡潔に記載したペーパー(プレスリリースペーパー)を投げ込むことが多い。例えば,次のようなものがある。
① 人事の報道発表・・・人事異動についての情報提供である。報道の解禁日時を設定して発表することもある(「シバリ付きの報道発表」ともいう。)。
② 死亡の報道発表・・・例えば,元所長が亡くなった場合についての情報提供である。
③ 懲戒処分の公表・・・懲戒処分を行った場合の情報提供である。
④ 庁舎建て替え,庁舎移転,新庁舎完成等の報道発表・・・報道を通じて広く利用者や一般の国民に知らせる必要がある場合の情報提供である。新庁舎が完成した場合等には,投げ込みだけでなく,新庁舎のお披露目を兼ねた見学会を開くこともある。
⑤ その他,広報活動のPR等を含む司法行政情報一般についての報道発表・・・記者へのレクチャーや記者会見を行うまでの必要はないが,報道機関に知らせ,何らかの形で取り上げてもらうことを意図する場合の情報提供である。記者クラブの求めに応じて,一般的定型的な裁判関係情報の提供を行う場合にも,この投げ込みが用いられることがある。

4-3 記者へのレクチャー

   資料等の投げ込みだけでは十分な説明ができないと思われるような場合等に,記者を集めて説明等する方法での報道発表である(一般に「記者レク」という。)。通常は資料等を投げ込むだけで対応できる場合がほとんどであると思われるが,特に次のように, 記者を集め,直接説明等した方カはり良いと思われる場合に用いられる。短時間に多くの報道機関に簡潔かつ的確に説明する場合には,この記者レクの方法は優れているといえよう。記者レクでは,記者の事案に対する理解の状況等が確認できるというメリットもある。
   また,記者クラブから「記者レク」を求められることもあるが,その状況等に応じて可能な範囲で対応するというスタンスで差し支えない。
① 緊急を要する場合・・・例えば,裁判所内で事故等が発生した場合等である。
② 補足説明を加えないと誤解が生じるおそれがある場合・・・事案が複雑,あるいは記者に前提情報が足りないと思われるような場合等である。
③ 検察庁,弁護士会,捜査機関,地方自治体等の外部機関に何らかの影響が生じるような場合・・・結果や影響の重要性等から,十分な説明を行うことが求められるような場合等である。例えば,裁判所が告発を行う場合,裁判所が中心となって法曹三者で取決めなどを行った場合等が考えられる。
④ 資料の投げ込みでは,その後の取材対応が必須になると思われる場合・・・投げ込みで報道発表した後に多くの記者から取材が入ることが予想される場合等である。
⑤ その他,裁判所の説明責任を明確に果たす必要がある場合・・・事案の重要性,影響の大きさなどを勘案して判断することになる。
   なお,裁判手続等について,記者を集めて勉強会のような説明会を開くことがある。このような記者を集めての勉強会,説明会等を行う場合を含めて, 「記者レク」と総称することもある。特に,記者に馴染みのない家庭裁判所の手続等を「記者レク」の場で説明等することは有用であると思われる。

4-4 所長等就任記者会見

   長官や所長が新たに就任した際に,地元報道機関が「人物欄」等に取り上げることがある。これは,地元の人々に裁判所を身近に感じてもらう良い機会でもある。就任記者会見の要請があった場合には,特段の事情のない限り応じるようにすべきである。その準備等において,特に留意すべきと思われる事項等については,次のとおりである。
1 人事の報道発表後,記者クラブの幹事社等と事前に連絡調整をして,できるだけ各社の記者が出席しやすい日時に会見を設定する。場合によっては,所長等がまだ着任しないうちに調整しなければならないこともあることから,所長等ともよく連絡し合う必要がある。
2 所長等の参考にするため,これまでの就任記事を準備したり,直近の話題事項等, 予想される質問事項を用意する。必要に応じて,記者から質問事項を出してもらう。
3 会見のカメラ取材の在り方について,取材要領を作成する。カメラ撮影と録音の要領は,従来の例を参考に検討することになるが,最初の1ないし2問,就任の感想や抱負等に関する応答の間に限る扱いもある。
4 所長の略歴等についての簡潔な資料を用意して,会見開始までに記者に配布する。

4-5 記者会見実施上の一般的な留意事項

   所長等の就任記者会見(4-4参照)を除き,裁判所においては,一般に記者会見を行うことは多くない。報道機関への情報提供は,資料等の投げ込み,記者レクでほとんどまかなうことができるからである。それだけに記者会見を行うに際しては,その必要性を含め,十分な検討,準備等が必要である。その準備等において,特に留意すべきと思われる事項等については,次のとおりである。また,会見は,裁判所の公式見解等を示す場であることから,所長が行うのが原則であり,必要に応じて,局長,次長等が陪席し,司会進行は,総務課長等が行うのが通常であろう(裁判所内では,裁判所主催で記者会見を行うことが一般的である。)。
   なお,会見の在り方等によっては,大きく報道されることがあり得るので,会見実施に当たっては,上級庁に事前に情報提供等されたい。
1 記者会見の心得 
   一般的に記者会見の心得と言われているものを参考に挙げる。これは,広報事務担当者の日常の報道対応の心得にも通じる。
(1) 明確な表現をとる。どちらとも取れるような不明確な表現をとらない。表現が不適切なことから誤報を招くことがある。
(2) 感情的な対応は避ける。感情を害するような質間をされても,これに呼応して感情的な応答をしない。
(3) 責任があることが明らかになった場合には,率直に陳謝するべきである。ただし,責任がない場合やー部しか責任がない場合には,責任回避と受け取られないように注意する必要はあるが,その点を明確に伝えるべきでもある。なお,事実関係の調査中で,裁判所側に責任があるか否かが明らかでない段階で, 「事実であるならば」 といった仮定を前提として,陳謝するようなことは,慎むべきである。
(4) 関係者の人権,プライバシーを念頭に置く。特に会見の中で関係者のプライバシー に不用意に触れたりすることのないように注意する。
(5) オフレコは難しい。オフレコは発言を記録せず,公表もしないことである。記者との合意によって成立するが,相当の信頼関係がないと困難である。内容によっては,オフレコにしてほしいと言うこと自体が報道の自由に対する圧力ではないかと受け取られることもある。
(6) 記者会見を行うタイミングを計る。責任者が会見を避けているという印象を与えてはならない。また,記者側の締切時間にも配慮が必要である。
2 記者会見の準備
(1) 多数の記者が参加することやカメラ機材の搬入もあることから,記者会見場所は, 会議室等,裁判事務その他の事務に影響を与えない場所に設定する必要がある。
(2) カメラ取材の在り方について,取材要領を作成し,事前に会見参加記者等に周知するようにする。
(3) 会見の趣旨に見合った基本説明を用意し,会見参加記者にそのペーパーを配布することも検討する。
(4) その他,ー般的に会見では,記者から,①全体的な事実経過(時系列),②問題点(原因や背景)についての分析,③過去の同種事例,④裁判所としての対応(改善策や関係者の処分等),⑤所長コメント等を求められることが多いので,これに対する必要な準備を行う。

4-6 懲戒処分の公表

   裁判所の懲戒処分の公表指針については,平成15年12月22日付けで人事局長通知が発出されている。この指針は,同年11月10日付けで人事院が発出した「懲戒処分の公表指針について」と基本的に同じ内容である。現在,これに基づいて,懲戒処分が公表されている。
   当然のことながら,国家公務員の不祥事については,国民から厳しい目で見られている。これに伴って,報道機関の関心も高く,懲戒処分の公表時における対応も厳しいものになってきている。裁判所としては,懲戒処分を行った場合には,この公表指針に基づいて公表していくとともに,報道機関からの取材に対しても適時適切に対応する必要がある。具体的には,懲戒処分を行った後,記者クラブに対して,懲戒処分を行った旨 (処分日,事案の概要,処分量定等)及びこれに対する所長のコメントを記載したペー パーを投げ込みの方法で交付した上,総務課長等が必要に応じて記者に個別に補足説明を行う,というのが一般的な対応例であり,必ずしも記者レクを行わなければならないものではない。また,事案にもよるが,懲戒処分の公表のためだけに記者会見を行うことは,原則ないといってよいであろう。
   なお,報道機関等から懲戒処分に関する文書の開示を求められた場合は,司法行政文書の開示申出によって対応するのが相当である。

5-1 取材対応における一般的な留意事項

   言うまでもなく,個別具体的な事件について,報道機関から総務課に取材があった場合に,当該事件情報について,総務課が裁判部に照会すること自体が裁判の独立に触れるおそれがあり得る,ということに注意する必要がある。また,総務課が裁判事項について報道機関に回答する際には,それが裁判体の判断であるかのように誤解されないように注意する必要もある。その他,一般的な留意事項は,次のとおりである。
1 心構え
(1)誠実な対応 
   記者の取材事項をよく聴き,当方の伝えたいことを確実に伝えることが必要である。形式的な対応ではうまくいかない。
   誠実な対応とは,結局,相手の問題意識等を理解した上で,裁判所側として可能な限りの対応を行うこと,といえる。当然,言えないことについては「言えない」 と毅然と対応すべきである。また,知ったかぶりなど,その場限りのいい加減な対応は慎む。裁判部における当事者対応と基本的に同じであるといえよう。
(2)取材拒否は禁物 
   記者から取材申込みがあった場合,仮に「回答できない」 「ノーコメント」の対応になるとしても,取材自体は原則として受けるべきである。取材拒否は禁物である
   例えば,記者から会議に参加中の所長に取材申入れがあった場合には, 「所長は会議中で取材を受けられない」などと対応するのではなく,会議の場にメモを差し入れ,所長の指示を得た上で対応すべきである。
(3)記事への介入は禁物 
   記事につき記者に圧力をかけていると受け取られるような対応をしてはいけない。 また,記事は記者が書くものであり,取材を受けた裁判所の思いどおりの論調になるとは限らない。裁判所のコメント部分が言ったとおり正確に書かれなくてはならないのは当然であるが,裁判所側が記事内容等を指定したり,記事が出ないように止めたりすることはできない。このようなことを要求していると受け取られないよう,言動には注意しなければならない。信頼関係ができている記者から,記事の正確性を確実にするため,記事原稿のチェックを頼まれることもあるが,それを取材を受ける条件として要求することは,差し控えるべきである。
(4)記者に正しく理解してもらえる努力を 
   取材対応の結果,誤報等がされては何の意味もない。記者が正しく理解するよう, 分かりやすい説明等が求められる。このような対応を的確に行うためには,記者とのコミュニケーションをよく取り,その認識内容や問題関心等をよく理解することが必要である。
(5)広報感覚を磨く 
   取材対応は,一見定型的に思えても,一件一件違っているといえる。急いで上級庁とも相談して対応すべき事案もあれば,数日かけて検討して対応できる事案もある。前例に従えばよいというものでもない。事案の特性を見極める感覚を磨く必要がある。
2 取材申込みを受ける際の留意事項
(1)取材申込み 
   記者からの取材申込みは様々な形でされる。広報の窓口である総務課に電話で聞いてくる場合が最も多い。そのほか,総務課長を訪ねてくる場合,直接所長に面談を求めてくる場合などがある。訟廷や裁判部に聞いてくる場合もあ.り得る。
   いずれの場合も,ー番最初に取材申込みを受ける際の対応が肝心である。ここで記者の取材の趣旨等を的確に把握できないと,十分な対応が検討できず,行き違いによるトラプルや,ひいては誤報等を招いてしまう原因にもなる。
   なお,総務課以外に取材申込みがあった場合には, 「報道機関からの取材は,総務課が窓口として担当することになっていますので,総務課にお願いします。」と言って,総務課を案内するのが相当である(3-2参照)。
(2)聴取事項 
   記者から電話等で取材の申込みがあったときは,次の点を確認して,その場でメモを取るようにする。
① 会社名(所属),記者の氏名,連絡先 
② 取材内容,取材目的ないし取材動機や背景事情 
③ どのような取材希望か 
   取材希望日時ないし回答期限 
④ 報道予定(掲載日,放送日,番組名等)
   ②及び③については,次のとおりである。
ア 取材内容(②)
   記者が何を取材しているのかよく聴く。取材申込みの窓口担当が,取材内容をよく理解しないまま形式的に記者の言うことを聴き取っても的確な取材対応はできない。また,中には,誤った法律知識を前提に,事実関係や統計数値を尋ねてくる記者もいないわけではない。前提が誤っていないかなど,注意して取材内容を聴取しなければならない。
イ 取材目的ないし取材動機や背景事情(②)
   これを知ることは的確な応答のために大切であるが,不用意に記者に質問すると,取材に不当に干渉していると受け取られるおそれがある。要は,取材の趣旨等をよく了解して対応したいので,どういう趣旨の取材なのか,よく分かるように教えてもらえないか,という姿勢で尋ねてみることである。
ウ どのような取材希望か(③)
   記者が,所長との面談を求めているのか,所長のコメントを求めているのか, 単なる事実関係等の照会・問い合わせ,資料提供の依頼なのかなどを聴取することが必要である。
エ 取材希望日時ないし回答期限(③)
   必ず取材希望日時ないし回答期限を聴取する。この際,記者の希望日時までに, 事実の確認や資料等を整える時間の余裕がないと思われる場合などには,回答期限をあいまいにせず,裁判所側で回答できそうな期限を明確に伝えることが必要であり,いったん回答期限を約東した以上は,それを守るよう努力すべきである。
   なお,回答期限を定めた場合には,当該時刻に記者から回答を求める電話等をもらうようにしておけば,行き違いなどがなくなる(回答期限を設定できなかったとき,あるいは回答期限に電話をもらったが回答が準備できていなかったときなどは, 「準備でき次第,裁判所から連絡します。」と対応する必要がある。)。
3 回答の際の留意事項
(1)必ず発表するコメント等を紙に書いて用意した上で記者に伝える。記憶して話すというのは不正確になるので絶対にしない。
(2)原則,口頭で,記者に正確に書き取ってもらえるように紙を見ながら文章を読み上げて伝える。漢字で同音異義語がある場合や固有名詞の場合,どの漢字か口頭で説明する気配りも必要である。
(3) コメントや質問事項を回答した後,別に質問を受けることもある。あらかじめ所長から質問に答えてよいと指示を受けている回答の範囲を超えて質問された場合には,その場で答えることなく,答えられるかどうかも含めて引き取り,改めて所長の指示を受けて対応する。
(4)対応後は,速やかに,対応の際の状況を所長に報告する必要がある。コメントや回答の趣旨等が誤解されているおそれが見て取れる場合には,これに直ちに対処する必要があるからである。
なお,取材への対応は,記者と面接して行うことが望ましい。記者の表情や態度を見ることによって,思わぬ誤解や行き違いを防止することができるとともに,対面して丁寧に対応することによって,記者との間により深い信頼関係を築くことができるからである。もとより,取材内容が定型的な事実の確認に過ぎないとき,来庁を求めることが記者の負担になるときなどには,電話対応で済ませる場合も多いであろう。 また,既に記者との間に十分な信頼関係があるという場合にも,あえて面接を求めるまでのことはないと思われる。しかし,例えば,必ずしも十分な信頼関係が築かれていないような記者に対応するときや,対応に神経を要するような重要,微妙な案件については,電話対応で済ませるのではなく,面接により対応するのを原則とすべきである。

5-2 取材対応において念頭に置くべきこと

   裁判所には,司法機関として,維持し,あるいは守らなければならない原理,原則がある。この点は,広報対応においても常に念頭に置かなければならない。以下に,主なものを掲げる。
1 裁判所の独立,裁判運営の適正 
   裁判所の主な職責は,様々な法的紛争を,法律の定めた手続に従って,適正かつ迅速に処理することである。こうした裁判事務は,裁判所にとってのいわば本体的業務であり,事務局の行う司法行政事務は,この裁判事務が円滑適正に行われることを側面からサポートするためにある。
   ところで,裁判事務は,司法行政事務と異なり,受訴裁判所を中心とする裁判部が, その権限に基づき独立に判断・処理することを原則としている。したがって,広報担当者においては,裁判部の行うこのような権限行使にいささかでも支障となるおそれのある言動は厳に慎む必要がある。例えば,ある判決について,広報担当者が,その当否に触れたと受け取られるコメントをすることは,その者の意図のいかんを問わず, 事務局による裁判への干渉(すなわち裁判の独立の侵害)と誤解されかねない。また, そうしたコメントが原因となって訴訟が紛糾すれば,その後の訴訟の適正な運営の障害ともなる。
広報事務は,前述したとおり,司法行政事務の一種であり,裁判事務をサポートすべきものである。広報担当者による不用意な言動が裁判事務の支障となるというようなことは,本末転倒であり,決してあってはならない。
2 裁判所の中立性,公平性の確保 
   裁判所は,その職務の性質上,中立性,公平性を厳に維持しなければならない。実際に中立性,公平性を維持すると共に,この点で国民に疑念を抱かれることも避けねばならない。裁判所は,取材対応を含め,広報対応全般にわたって,裁判所の中立性, 公平性と矛盾しないかどうかという観点から配慮しなくてはならないのである。
   例えば,事件の担当裁判官や書記官等が特定の事件について,法廷外,判決外で説明したり,論議したりすることは,手続の公正や判決の信頼性を傷つけ,ひいては裁判の中立性,公平性に疑念を抱かせることなる。司法行政部門であっても同様であり, 裁判所にとって良かれと思ったとしても,このようなことは絶対にしてはならない(法廷内の裁判官の発言内容や判決内容についてコメントを出すなど。そもそも司法行政部門が裁判の内容等について発言することは,それだけで中立性,公平性に疑念を抱かせるおそれがある。)。
   そのほか,次のような例がある。
(1)裁判所内で事故やトラブルが発生したような場合に,裁判所が当事者的立場に立たされることが起こり得る。裁判所は,今後,その事故等の関係者を裁判しなければならなくなる可能性があることを前提に,報道対応に当たっては,裁判所の中立性,公平性について誤解を与えないような配慮が必要である。
(2)事件当事者が裁判所内で一方的にデモンストレーション的な活動をし,これを報道させて宣伝効果を高めようと意図するような場合がある。このような場合に,裁判所が一方当事者の宣伝活動に協力するようなことをすると,裁判所の中立性,公平性を損なう。報道機関から取材の申込みがあった場合(原告の訴状提出場面や要請行動場面について,庁舎内でのカメラ撮影を含む取材を認めるなど)には,このような視点からその当否について検討しなければならず,報道機関に対して裁判所の立場をよく説明し,理解を求めなければならないこともあろう。
3 関係者のプライバシーの保護等 
   訴訟においては,訴訟当事者はもちろんのこと,証人や鑑定人,刑事被告事件の被害者,あるいは訴訟代理人,弁護人,検察官等様々な人々が関与する。裁判所の広報対応によって,こうした人々のプライバシーが害されることがあってはならない。したがって,広報対応のなかで,こうした人々の氏名や住所,事件との関係を明らかにしてよいかどうかについては,細心の注意をもって検討することを要する。
   また,裁判所の扱う情報には,捜査の秘密に属する事項や企業秘密,少年事件における少年法61条にかかる事項等,本来公開してはならない情報がある。非公開にすべき情報か否かは,法の趣旨や関係者の利害等様々な事情を慎重に検討しなければ判断できないことも少なくない。また,事項によっては,裁判事務への影響も考えなければならないので,広報対応を検討するに当たっては裁判部の意見を聴く必要がある。

5-3 取材事項について総務課で即答できない場合の対処

   法廷内での出来事等,取材を受けた時点で総務課ではその事実関係が分からず,即答できないという場合には,次のとおり対処する必要があろう。
   なお,即答できないことがあったとしても,それ自体を負い目に感じることはない。 記者が強く即答を求めてきた場合には,事実関係をきちんと把握しなければ回答できないことを明確に記者に伝えるようにする。
1 裁判部との連携 
   総務課では取材の対象となる事件等に関する事実関係は分からないから,当然,裁判部から情報提供をしてもらう必要がある。的確な報道対応のためには,裁判部から広報担当者への迅速かつ正確な情報提供が不可欠となる。そのためにも,平素から総務課と裁判部との連携を密にしておくことが大切である。
2 正確な事実関係把握 
   例えば,法廷内で事故やトラブルがあったという場合,法廷に入っていた記者は, 直ちに事実の確認や所長のコメント等を求めて,総務課に取材してくる。この場合, 総務課は,まず,裁判部に事実関係について尋ねることから始めなければならない。記者から回答を急がされても,記者が持ち込んだ情報を前提にしてコメントを出すような対応は絶対にしてはならない。記者が正確に法廷内の事実や訴訟手続内での位置付けを認識しているとは限らないからである。裁判部から,正確な事実関係について適切に情報収集を行い,これをもとに所長以下の広報担当で対応案を検討し,必要があれば上級庁に相談するなどして対応することになる。
   なお,以上のことは,裁判所内で事故等が生じたときにも同様である。記者と対応した際にこちらの事実関係の把握があやふやでは事態を紛糾させるだけである。事実関係の正確な把握は,あらゆる場面の報道対応の基本中の基本である。

5-4 休日等における取材対応

   休日や所長不在時に取材があった場合の取材対応について,特に留意すべきと思われる事項は,次のとおりである。
1 即時対応の必要 
   休日・夜間でも,責任者である所長の不在時でも,報道機関から取材が入ることはある。報道機関は休みなく取材活動を続けて新聞やニュース番組を提供しており,可能な限り,取材を受ける側もこれに対応しなくてはならない。さもないと,こちらの話を聞かずに記事を書いてしまい,誤報や一方的な記事となってしまうおそれがあるからである。特に,休日・夜間,とりわけ深夜の取材は,それだけ報道機関としてのニューニス価値が高く,取材の必要性が高いとみてよいと思われる。
   報道機関からの取材には,原則として,いつでも,直ちに対応する必要がある(直ちに回答する,という意味ではない。)。
2 休日・夜間の連絡態勢の確立 
   そこで,休日や夜間に取材があった場合にも,広報事務担当の総務課職員から総務課長,事務局長,所長と連絡し,責任者である所長が対応できるように平素から連絡態勢を準備しておく必要がある。そのためには,休日・夜間の当直が記者対応をしないように,当直に取材があった場合のルール作りをしておかなければならない。
   休日・夜間の取材についても,上級庁に相談の必要があるときには,直ちに連絡することが重要になる。そのための連絡態勢も平素から考慮しておくべきである。
3 責任者不在時の態勢 
   責任者である所長が不在の場合,まず,所長の出先に連絡できるときには連絡をとることになる。連絡不能の場合には,事務局長,次いで総務課長が,上級庁と相談しながら,所長に代わって対応することになる。
   事案にもよるが,所長が不在であるからといって,締切時間に追われている記者をいたずらに待たせることは相当でない。

5-5 緊急時における取材対応

   突発的な事故やトラブルが起こった場合をはじめ,緊急時における取材対応(報道対応)は難しいものである。緊急時の取材対応について,特に留意すべきと思われる事項は,次のとおりである。
1 事実関係の迅速かつ正確な把握 
   まず,速やかに事実関係を調査することが必要である。迅速かつ正確な事実把握が報道対応の出発点である。緊急時には情報が錯綜したり,混乱していることもあるから,確かな情報と不確かな情報とをより分けながら,事実関係を把握する。
2 取材内容等の正確な聴取 
   報道機関から取材申込みがあった場合,相手方記者の特定,取材内容,回答期限等の必要事項を正確に聴き取ることが必要である。また,可能な範囲で取材の趣旨目的, 取材の動機,背景等も教えてもらうようにする。
3 緊急の対応を要するかどうかの判別 
   事実関係の第一報が入ったり,記者からの取材を受けた時点で,その事案が緊急の報道対応を必要とするものかどうか,今後の広がりはどの程度か,の見極めをしなければならない。物事の先を読むというセンスが必要である。
4 所長への的確な情報集中 
   責任者である所長が的確な判断を行えるように,事実関係の第ー報を所長に報告するとともに,記者からの取材についても報告することが必要である。緊急の対応を要すると判断した場合には,所長がほかの執務中であっても,迅速に報告しなければならない。その際,緊急の対応が必要と考える旨進言する。
   その後,事実関係の調査が進めば,その都度,判明した事実を所長に報告する。新たな取材等があった場合も報告する。総務課一事務局長ー所長に情報を集中させなければならない。
5 窓口の一本化 
   緊急の報道対応の場合も,対応は総務課ー事務局長ー所長のラインで行う。緊急の際には,情報の錯綜や混乱が起こりやすく,取材に対応する窓口は,絶対にこのラインに一本化しなければならない。総務課においても,当該情報の取扱いを総務課長, 課長補佐等,特定の職員に集中させる必要がある。
 
6 上級庁への連絡,相談 
   緊急の報道対応について上級庁に相談する場合には,まず,第一報し,さらに詳細が判明し次第,又は取材があり次第,順次連絡を入れるという形で相談するのが適切である。
7 報道対応案の作成 
   記者からの質問が予想される事項を念頭におきながら,報道対応案を作成する。具体的には,事実関係,問題点についての裁判所の見方,裁判所の対応などについて, 検討していくことになる。
8 所長による対応 
   記者の取材に対し,事実関係を説明するなり,裁判所のコメントを出すなりの対応は,原則として,責任者である所長が行う。又は所長の命を受けた事務局長,総務課長等が行う。
   また,実際に対応を行うに当たっては,報道機関の締切時間に配慮しなければならない。緊急の場合にこそ,この配慮は重要である。かつ,緊急の場合には,誤りが起こりやすく,また,訂正の時間もないことから,普段以上に正確な説明等に留意する必要がある。
9 平素の心がけ 
   緊急の場合の対応は,その場で急にうまくやろうと思っても難しいものがある。平素から緊急時のための準備を行っておくこと,通常時の取材対応(報道対応)を適切に行うこと,また,平素から記者たちとの間に信頼関係を醸成すること,といったことが緊急時に適切な対応をするために大切になってくる。

5-6 裁判官等の裁判所職員に対する取材への対応

1 裁判官の場合 
   報道機関が,何らかの報道目的をもって,特定の事件を担当した裁判官,特定の地域の裁判所や特定の部署に勤務した経験のある裁判官,外国に長期留学研修した経験を有する裁判官等に対して,取材を申し入れてくることがある。取材の態様も,コメント依頼,質問事項への回答依頼,インタピュー依頼,テレビ,ラジオへの出演依頼, 雑誌等の対談企画への出演依頼等,様々である。こうした裁判官に対する取材については,次のことに留意すべきと思われる。
   なお,当然のことながら,裁判官に対する取材への対応場面でも,裁判所の中立性, 公平性に留意する必要がある。
(1) 企画内容等の確認 
   どのような企画内容であるか,企画の趣旨,目的はどのようなところにあるのかをよく確認する必要がある。特に,特定の裁判官を名指ししての取材申入れには注意が必要である。なぜその裁判官である必要があるのか,よく確認する必要がある。
(2)所長への報告等 
   企画内容等の確認ができたら,まずはそれを所長に報告し,指示を受ける。そのような取材を受けることの当否は,裁判官が公的な立場にあること,その言動が裁判と裁判所の信頼に影響を及ぼす可能性があることなどを考慮すると,単に当該裁判官個人の意向のみで決められるべきものではなく,裁判所として慎重に判断することが求められるからである。その上で,所長の指示に従い,必要に応じ当該裁判官に知らせる(場合によって,その意向も聴取する。)という手順を踏むべきである。所長の指示を受けることなく,当該裁判官に取材依頼があったことなどを説明し,話を進めることは不相当である。
(3)直接裁判官に取材の申入れがあった場合 
   記者が直接,裁判官に取材を申し入れることがある。自宅への押し掛け取材,帰宅途上での取材等の場合もある。このような場合に備え,普段から裁判官には,記者から取材があった場合には, 「取材の申入れは総務課が窓口になっているので, 総務課に話をしてもらいたい。」と明確に対応してもらうよう伝えておく必要がある。記者から, 「裁判官という立場を離れた〇〇さん個人への取材です。」と言われても,裁判官である以上,同じ対応をする必要がある。
   なお,裁判官から,記者から取材等の申入れがあった旨の通報がなされた場合には,当該記者に対して,「取材の窓口は総務課になっているので,直接裁判官に取材を試みることは差し控えていただきたい。」と,裁判所の考え方を説明する必要がある。
(4)取材への対応等 
   裁判所の中立性,公平性の観点からの検討を踏まえた上,取材を受けることを相当と判断した場合,例えば,それがインタビュー取材であれば,事前に,インタビュー 内容を確認し,どのような回答等をするのが相当であるかなどをよく検討しておく必要がある。
   なお,最近では,テレビの生放送番組への出演依頼等がなされることもあるが,生放送番組は予期しない出来事が起きることなどもあり,依頼に応じるか否かについては,特に慎重な検討が必要である。
(5)個別事件を前提とした取材依頼への対応等 
   個別事件を前提とした取材依頼に当該担当裁判官が応じることは相当ではない。 「裁判官は弁明せず」の法格言(法諺)があるとおり,個別事件に関する裁判所の判断及び理由は,すべて判決や決定の理由の中で示されるもので,これら以外の場面で判決等について弁明したり,コメントしたりすることは不適切であるとされている。また,これを疑わせるような可能性のある取材に応じることも同様であろう。 番組に出演すること自体で,裁判所の中立性,公平性に疑いを持たれることもあり得る。いずれにしても,個別事件を前提とした,あるいはそうとられてもやむを得ないような取材には応じることができない,と肝に銘じておく必要がある。
2 一般職の場合 
   裁判官以外の裁判所職員に対する取材への対応については,基本的には,裁判官に対する取材への対応と同様の検討等を要する。
   ただし,裁判官以外の裁判所職員に対する取材への対応については, 「裁判官は弁明せず」の法格言(法諺)のある裁判官とは異なるが,守秘義務(国公法100条) が課せられていることには十分に留意する必要がある。特に,書記官,家庭裁判所調査官,執行官等,裁判事件を担当し,裁判官に極めて近いところで仕事をしている職員については,慎重な検討が必要である。
   これまでに取材依頼で応じたことがあるものとしては,次のようなものがある。
   なお,当然のことながら,裁判官以外の裁判所職員に対する取材への対応場面でも, 裁判所の中立性,公平性に留意する必要がある。
① 書記官,家庭裁判所調査官の仕事内容や仕事の魅力,やりがいなどを紹介するもの
② 裁判所事務官,書記官,家庭裁判所調査官を目指した動機,試験への準備などを紹介するもの 
③ その他,地域の行事や個人的な趣味,活動などを紹介するもの(裁判所の職務とは直接関係のないもの)

5-7 支部等に対する取材への対応

   報道対応は責任者である所長が行うという原則は,支部における報道対応でも同様である。直接支部に取材申込みがあった場合には,庶務課(長)が窓口となり用件等を確認し,これを本庁の広報担当に連絡をした上,対応は,本庁で引き取って行うのが通常である。
   しかし,支部所在地の報道機関等が支部に取材に来ており,本庁まで取材に行ってもらうことが難しいような場合には,所長の指示のもとに,支部において回答することもあるであろう。支部で対応することとなった場合,支部長が対応するのが相当であるが,支部長が裁判に立ち会っていて記者への対応ができないとき,支部長が取材対象の事件に関与しているようなときなどは,支部長の命を受けた庶務課長が対応することになろう。
   なお,本庁で対応するとしても支部で対応するとしても,本庁と支部との緊密な連絡,連携に留意する必要がある。

5-8 検察審査会に対する取材への対応

1 原則的対応 
   検察審査会は,裁判所から独立した機関であるから,検察審査会に対する取材については,検察審査会事務局が報道対応することになる。裁判所の広報担当である総務課は,当然には検察審査会に関する事務について権限を有していないことに留意する必要がある。
   ただ,総務課に取材申込みがあったり,検察審査会事務局に直ちに引き継ぐことができない事情等がある場合には,総務課が記者と検察審査会との間の取次役をすることは差し支えない。その場合にも対応の主体が検察審査会であることを十分留意し, 記者にもその理解を求める必要がある。
   もっとも,報道対応に不慣れな検察審査会事務局から,その経験の豊富な総務課に支援,協力を求めることはあり得ることであり,それに応えて総務課が適切な助言をするなどの支援を行うことは望ましいことである。
2 検察審査会事務局における具体的な報道対応 
   報道機関からの取材に当たっては,捜査の秘密,審査会議の非公開,関係者のプライバシー保護等の事情に十分配慮した上で対応する必要がある。当然,議決前の段階では,回答できることは申立ての有無等ごく一部の事項に限られる。議決の要旨の掲示後は,掲示した日等の外形的な事実の外,同要旨に記載された事項の範囲内で回答することになろう。

6-1 裁判報道における一般的な留意事項

   裁判報道は,正しく裁判所の本体業務である「裁判」を報道するものである。それだけに,裁判報道が適切になされることは,裁判所の広報担当者として,最も重要視すべき事柄であるといえよう。いかにして報道機関に「裁判」をきちんと理解し,正確に報道してもらうか,ここに裁判報道における裁判所の便宜供与の意義がある。
   ―般に司法行政として便宜供与をすべきか否かについては,おおむね次の観点からの検討が必要であると言われている。また,他に容易に便宜が得ちれる手段があるか,過大な事務負担を強いるものではないかといったことも考慮要素となろう。
① 主体の公共性 
② 目的の公益性 
③ 関係者のプライバシー保護等の必要性 
   これまで裁判所が裁判報道のために報道機関に対して行ってきている法廷内写真撮影, 記者席の確保,判決要旨の交付等の便宜供与も,これらの観点から許否が判断されてきたものであるといえよう。
   もっとも,裁判所が報道機関に対して,具体的な場面において,どのような便宜供与を行うのが相当かについては,先の便宜供与の各要件に加えて,報道の対象となっている事件の社会的影響の大きさ,裁判体の意向,報道機関側の関心の度合いや要望の大きさなどを踏まえた検討が必要になろう。また,便宜供与をすることによって,裁判の適正,円滑な運営に影響を与えたり,裁判の独立を害したりするおそれはないか,裁判所の中立性,公平性に疑いが持たれるようなことにはならないかとの観点からの検討も必要になろう。
   なお,裁判報道における便宜供与は,飽くまでも便宜供与であって,報道機関に特別の権利や利益を約束するものでないことは,言うまでもない。状況等に応じて,裁判所は,報道機関に対して,毅然とした対応をすべきである。
   おって,これまで行ってきていた便宜供与の範囲を変更する際には,他庁への影響を含めた波及も考えられることから,上級庁に相談するとよいであろう。

6-2 法廷内写真撮影

   法廷内カメラ取材については,平成3年1月1日から, 「法廷内カメラ取材の標準的な運用基準」をもとに,各庁において運用要領が作成され,これに従って実施されており,全国的に運用が定着しているといえよう。
   ところで,法廷内カメラ取材の申請への対応は,裁判所又は裁判長の法廷警察権の行使の範瞬に属するものであり,事件の性質・内容,その他諸般の事情を考慮して許可等の判断がされる。したがって,法廷内カメラ取材の申請がなされたとしても,裁判の適正な運営に支障を生じるなど特別の事情がある場合には,裁判所等の判断により不許可とすることがある。これまでの運用でも,要警備事件であって,法廷の秩序維持のため,法廷内カメラ取材を認めることが困難な場合に,不許可とした例がある。
   なお,具体的に,特定の事案において不許可とすべきか,運用要領と異なった扱いをすべきかなどを検討するに当たっては,他庁の実情も参考にすべく,上級庁に照会することもーつの方法であろう。
   おって,法廷内カメラ取材の当日のカメラマン等への対応において,広報担当者として留意すべきと思われる事項は,次のとおりである。
1 法廷に誘導する前に,カメラマンに対して,改めてカメラ取材の際の注意点について説明することが必要である。腕章の着用,撮影時間,撮影場所,撮影方法,撮影対象,撮影中止の合図があれば中止すること,中止の合図の前後を問わず当事者や傍聴人が法廷の秩序を乱す行為に出たところは撮影できないことなどを確認する。
2 撮影中止の合図に従わないカメラマンを規制するような場合でも,カメラを手でふさぐなどの実力行使はしない。そのこと自体が二次的トラプルの種となる危険があるからである。
3 違反撮影をされてしまったような場合には,撮影後カメラマンを法廷外へ誘導してから,その写真を使用しないよう申し入れ,さらに記者に対しても同様の申し入れをして,違反撮影の写真が報道されないようにする。

 法廷内カメラ取材の標準的な運用基準
(平成3年1月1日)
1 法廷内カメラ取材の許可 
   法廷内カメラ取材は,裁判所又は裁判長が,事件の性質・内容,その他諸般の事情 
を考慮して,許可するものとする。
2 代表取材 
   撮影は,新聞・通信・放送各社間で話し合い,代表取材する。
3 撮影機材 
   撮影機材は,1人で操作できる携帯用小型スチールカメラ1台,予備用スチールカ 
メラ1台及びビデオカメラ1台とし,照明機材・録音機材・中継機材は使用しない。
4 撮影要員
(1)入廷できる撮影要員は,スチールカメラにつき1人,ビデオカメラにつき1人とする。
(2)スチールカメラにつき1人,ビデオカメラにつき1人の撮影補助要員の入廷を認める。
5 撮影時期・時間 
   撮影は,裁判官の入廷開始時からとし,裁判官全員の着席後開廷宣告前の間の2分以内とする。
6 被告人の在廷 
   撮影は,刑事事件においては,被告人の在廷しない状態で行う。
7 撮影位置 
   撮影位置は,傍聴席後部の裁判長(裁判官)が指定する区域内とする。同区域内に 
おいては,撮影位置を移動することができる。
8 撮影対象 
   撮影対象は,入廷中の裁判官並びに裁判官席及び当事者席とし(傍聴席が付随的に 
入ることは可),次に掲げる撮影は許されない。
(1) 特定の人物(裁判官を除く。)の拡張・拡大写真を撮影すること。
(2) 傍聴席にいる特定の者を個別的に撮影すること。
(3) 当事者・傍聴人が宣伝的行為や法廷の秩序を乱す行為に出た場合,これを撮影対象とすること。
9 撮影中止 
   撮影要員は,裁判長(裁判官)又はその命を受けた裁判所職員の中止の指示があったときは,直ちに撮影を中止し,退廷しなければならない。
10 条件違反の取材が行われた場合の措置 
   取材条件又は裁判長(裁判官)の命じた事項に違反する取材が行われたときは,裁判長(裁判官)の権限に基づく処置,ー定期間の取材停止その他必要な措置を執ることがある。
11 付記 
   法廷内カメラ取材の許否は,各裁判体の決定に係る事柄であり,法廷内カメラ取材 (又はビデオカメラによる取材)を原則的に認めない裁判体,あるいはこの運用基準を制限的に運用する裁判体もあり得る。

6-3 庁舎内(敷地内)写真撮影

   法廷内カメラ取材のほかにも,裁判所構内における様々なカメラ取材の申込みを受けることがある。具体的な取材申込みごとに,庁舎管理権者であり,広報の責任者である所長がその許否を決めることになる。その際には,裁判所の執務に支障を生じないかどうか,一般来庁者のプライバシーを害さないかどうか,裁判所の中立性,公平性に反しないかどうか,さらに,取材した映像の使用目的,これまでのその庁の取材慣行などを考慮することになろう。また,状況に応じて,上級庁に相談することが必要な場合もあろう。
   なお,庁舎内(敷地内)写真撮影の対応場面例としては,次のようなものがある。
1 著名事件の裁判期日におけるカメラ取材 
   著名事件の判決や公判の場合,法廷内カメラ取材以外にもカメラ取材が申し込まれる。事件当事者の登庁場面等は,撮影される側の承諾を条件にして,門から庁舎に入るまでの場面につき許可する例がある。また,庁によっては,玄関先に一定のスぺー スがあり,一般来庁者等への影響がないと見込まれる場合などには,放送記者の立ちレポを許可する例もある(立ちレポ=立ちレポートの略。テレビ報道で記者が裁判所庁舎等を背景に立ち,裁判の内容や審理の様子を報告するもの。大事件の判決があったときなど,広報担当に立ちレポの許可申請が出てくる。玄関先や裁判所のプレート前あたりで許可される例がある。記者によるレポートのみを認めるのが通常で,スタジオ等との掛け合いや,その場でパネル等を使用してのレポートは認めていない。)。
   これに対し,例えば,裁判所構内で事件関係者や一般来庁者に対するインタビュー 取材をすることや,一方当事者等が裁判所構内で報告集会のような活動を行うのをカメラ取材することは許可していないのが通常である(そもそも構内でー方当事者等による集会等を行わせること自体が,裁判所の中立性,公平性に反するもので不適当である。)。
2 裁判期日以外のカメラの取材 
   事件関係者,事件とは関係のない各種団体や個人が,裁判所に対して何らかの要望や申入れのため,あるいは抗議のために来庁することがあり,このような場面をカメラ取材させてくれと申込みがあることもある。この場合,裁判のための報道ではないことから,便宜供与の必要性は低く,また,撮影される人たちの宣伝にもなることから,その許否については慎重に検討する必要がある。
   同様に,原告が訴えを提起する場面のカメラ取材を求められることもある。一方当事者の行為であること,被告はこの訴え提起について知り得る立場にない状況にあることを考えると,裁判所の中立性,公平性の観点からは,このカメラ取材を認めることは相当でないというべきであろう。
3 事故現場等のカメラ取材 
   裁判所構内で事故やトラブル等が発生したような場合,その現場のカメラ取材を求められることがあるが,捜査への影響や関係者のプライバシーへの配慮を踏まえた対応が必要となる(現場では突発的な出来事等に対処する必要があり,カメラ撮影を許可することは多くないものと思われる。)。
4 テレビ報道番組等のためのカメラ取材 
   一口にテレビ番組と言っても報道特集番組から教養番組,娯楽番組まで様々であり, また,申し込まれる撮影対象も裁判所建物の外観から執務室内までいろいろであるから,個々の取材ごとに検討しなくてはならない。
5 空き法廷のカメラ取材 
   報道機関等から資料映像等として,空き法廷のカメラ取材を求められることがあるが,このような場合,取材目的等を考慮した上,許否を検討することになる。
   なお,撮影を許可する場合でも,裁判所の事務に支障のない時間帯に行うほか,使用目的以外に使用しないこと及び職員が立ち会う等の条件を付する必要がある。教育目的で人物の入らない状態を撮影するなど一定の場合には,撮影の許否等について, 上級庁に相談する必要はないであろう。
(注) カメラ取材については,庁舎内におけるほか,執行官の執行現場等においても求められることがある。民事執行法上,執行官の取り扱う事務は非公開であることから,一般的に,執行場所で執行行為中の場面のカメラ取材には応じるべきではないであろうが,個別の取材依頼ごとに,前記の観点等も踏まえ,執行裁判所ともよく調整して対応する必要がある。

6-4 判決要旨等

1 判決要旨等の提供の理由等 
   言渡し前に,記者クラブから広報担当に対して,判決言渡しの際,判決文の写しに加えて,判決要旨・骨子を配布してほしい旨の要望が出されることがある。
   記者は,言渡し後ごく短期間のうちに記事を作成しなくてはならない。記事の予定稿を用意することもあるようであるが,それでも記事をまとめるまでには,非常に慌ただしい作業となる。そのような中で短時間に判決文を読みこなす,あるいは判決理由の朗読を聴いて正確に要点を抽出するということは極めて難しいといえよう。このような状況から,正確な報道のためには,裁判所の方で要旨・骨子を提供するのが有効であるとして,これまでも便宜供与してきたところである。

2 要旨の作成依頼 
   要旨・骨子の作成は広報事務であるが,言渡し前に作成しなくてはならないものであることから,裁判官に作成してもらうしかない。言渡し前で忙しい時期ではあるが, 判決を正確に報道してもらうためであり,記者クラブから要望があった場合には,広報担当者から速やかに裁判部(裁判官)に依頼することになる。
   裁判部に作成を依頼する際には,次の点にも配慮を願うとよい。
(1)長文にならないよう配慮 
   紙面のスペースには限りがあるため,要旨が長文であると,一部がカットされて掲載されることになる。事件にもよるが,新聞に掲載される分量は,長くても3000字程度,骨子は300字程度とされている。これが要旨等の長さの目安になる。
(2)分かりやすいよう配慮 
   例えば,当事者複数の民事事件の場合,記者は主文を見て認容総額を把握できないこともある。要旨中に認容総額を盛り込むと誤報が防げる。当事者多数の損害賠償事件などでは,認容総額(連帯して支払が命じられたときは,全体で支払うべき額),判決時の原告数と認容した原告数,認容最高・最低額等が分かるような一覧表を用意するなどの工夫が求められる。また,要旨の各項目ごとに見出しなどを付けると要旨の全体像が分かりやすい。要旨は,報道のためのもので,判例集に載せるものではない。重要な法律論であっても,記者が関心を示さないようなものは省き,判決要旨等は,一般読者を想定した,分かりやすいものを作成すべきであろう。
(3)要旨・骨子の部数への配慮 
   著名事件では,記者から要旨・骨子を複数部数求められることがある。複数の記者が手分けをして記事を書くことがあるためと思われる。可能な範囲で配慮すべきであろう。
(4) 要旨を作成できないときの配慮 
   言渡し直前の要望で,要旨作成の時間的余裕がないような場合には,判決写しの要旨に当たる部分に傍線を引くだけでも,記者にとっては理解の助けになる。

3 要旨・骨子の配布 
   要旨・骨子は,言渡しがなされた後,広報担当から記者に配布される例が多いようである。この扱いは,総務課が報道機関への窓口であることから適切といえる。
   なお,要旨・骨子は,速報性が要求される報道機関の利用のために裁判部に特別に作成してもらったものであり,そのような報道機関以外に提供することは基本的に予定されていない。
   
しかし,裁判所の広報業務のー環として作成された司法行政文書であることに変わりはなく,司法行政文書の開示の対象になり得るものとして扱う必要がある。

4 決定等要旨 
   仮処分や少年審判等については,公開手続でない以上,原則として,その決定等の写しを報道機関に便宜供与として交付することはないが,社会的に大きな注目を集める著名事件等である場合には,報道機関から決定要旨の提供が求められ,例外的に, 決定等の主文を知らせるだけでなく,決定等要旨を作成し,報道機関に交付することがある。特に著名な少年事件では,社会に対する説明責任を果たし,家庭裁判所に対する社会の信頼を損なわないために,ある程度詳細な決定要旨を作成して,迅速に報道機関に交付する必要がある場合もある。
なお,決定等については,関係者への裁判結果の告知等がどの時点でなされたのか明確に分かりにくいところがあるなど,公開手続とは異なる場面が多いことから,報道機関に決定等要旨を交付する際には,裁判部等とよく連携をとる必要がある。
   おって,少年事件の被害者等からは,自分たちが結果を知る前に報道されることへの不満が述べられることがある。このような不満への対応の実例として,被害者等(あるいはその代理人弁護士)に審判終了直後に決定要旨を持参又は取りに来てもらったものや,報道機関用より詳しい決定要旨を別途作成して被害者等に渡したものなどがあるので,参考とされたい。

6-5 法廷内記者席

   記者クラブから法廷内に記者席を確保してもらいたいという要望がなされることがある。傍聴希望者が多く,傍聴席が一杯になるような著名な事件の場合,この要望が出されることが多いようである。
   法廷内に記者席を設けるか否かは,裁判所(長)の法廷警察権に基づく判断にかかわることである。したがって,まず,要望が出たことを裁判部に伝えた上,裁判体の判断を仰ぐことになる。裁判体の了解が得られた場合には,その旨,記者クラブに伝え,出席予定記者を確認する。法廷の規模にもよるが,一般傍聴人の傍聴席を確保する必要があることから,通常は,1社1席というのが原則であろう。裁判当日は,当該傍聴席が記者席であることが分かるように,傍聴席に「記者席」等と書かれたカバーをかける等の措置をとることが相当である。記者は,法廷に出たり入ったりすることがあるので, 記者席は,通路側の出入口に近い傍聴席に設けるのが一般的である。
   要警備事件である場合,傍聴券を交付する事件である場合等においては,事前に,裁判部との間で,開廷中の記者の出入りをどの程度認めるか,記者の交代を認めるかなど, よく調整しておく必要がある。
   要望に基づいて記者席を確保したにもかかわらず,何らかの理由で記者が法廷に来ない,ということもある。このようなときは,記者席カバーを外し,一般の傍聴席に戻すとともに,傍聴席確保を申し出た記者には,ー般傍聴席を減らして記者席を確保しているのであるから,申し出た以上は,必ず法廷に来るように,今後,このようなことがあれば,記者席の確保はできなくなる旨伝えるなど,注意を促すことも必要となろう。
   記者クラプに所属していない報道機関から記者席の申出がされた場合には,記者クラブ所属記者からの申出の状況等を踏まえて対応を検討する必要がある。
   なお,記者席を確保するために,折りたたみ椅子等を法廷内に持ち込むことは相当でない。飽くまでも既存の設備の範囲内で可能な対応をとるというのが,便宜供与をする際の原則である。

6-6 対象裁判が著名事件等である場合の留意事項

   全国的に注目を集めている著名事件の初公判や判決言渡しの際には,各報道機関とも大きく取り上げるため,様々な取材の申込み,便宜供与の依頼が予想される。そのような公判や判決言渡しが予定されているときには,広報担当は,あらかじめ報道対応等のやり方を検討し,必要があれば記者クラブと打ち合わせるなどして,当日混乱が生じないように準備する必要がある。
   著名事件等における主な検討項目は,次のとおりである。
1 法廷内記者席 
   一般の傍聴人も多数来訪することが予想される。記者席を多く取ると一般傍聴席が減って,抽選に列を作った傍聴希望者から苦情が出ることもある。逆に記者席が少ないと,十分に報道できないと記者側から苦情が出る。記者席と一般傍聴席とをいかに調整するかはなかなか難しいが,事前に記者クラプと打ち合わせして調整し,バランスを取る必要がある。
   記者席について,検討,調整する場合には,当然,裁判部と緊密に連絡し合わねばならない。その場合,広報担当者が得ている情報や予想される記者クラブの反応などを裁判部に十分伝えることが必要となる。
2 法廷内カメラ取材 
   取材要領を作成の上,代表取材の担当となった社と,集合時間,集合場所等について打合せを行っておく必要がある。また,法廷以外でもカメラ取材が予定されることがあり,それぞれの場所でのカメラ取材に混乱が生じないよう,事前に裁判所からの指示を徹底させる必要がある。広報事務担当者を適切に配置するなど,混乱回避の手段を講じることも大切である。
3 要旨・骨子 
   通常,要旨・骨子を用意し,記者に配布することになる。事前に記者クラブと部数について打合せをし,裁判部に依頼して部数を用意してもらい,当日混乱なく配布できるように準備する。
   要旨・骨子は,原則,判決言渡しの終了後速やかに,広報事務担当者が記者クラブに配布する。判決言渡しに長時間を要する刑事事件の場合などに,記者クラブから, 要旨・骨子を主文言渡し後速やかに配布してもらいたい旨の要望が出ることがある。 言渡し終了まで待っていたのでは締切時間に間に合わず,かといって要旨・骨子なしには正確な報道をするのが困難であるという理由からのものである。裁判体と協議の上,具体的事情に応じた対応策を検討する必要がある。判決要旨等を分割して,段階的に交付する,ということもその対応のーつの方法といえよう。
4 臨時記者室 
   通常使用している記者室があまり広くない庁では,著名事件の取材報道に当たって,記者クラプから,臨時の記者室として使うための会議室等を提供してもらいたい旨の要望が出ることがある。
   臨時に会議室等を提供するかどうかは,庁舎管理権の問題であり,庁舎管理権者である所長等が決めることになるが,そのためには,その事件ではどのくらいの規模の取材等が予想されるのか,既存の記者室で対処できそうなのかどうかといった点について,事前に広報事務担当から所長等に報告することが求められる。
   なお,臨時記者室を提供する場合,臨時の電話回線やファクシミリ回線の設置要望が出ることもあり,事前によく記者クラブ側と打ち合わせる必要がある。
   おって,臨時記者室は報道のために便宜供与するものであり,当事者が報告集会を行うというような使い方ができないのは当然である。
5 中継車,中継テント 
   極めて著名な事件の場合には,特に放送関係の記者から,裁判所構内の駐車場等に中継車を置かせてもらいたい,生中継をするためのテントを張らせてもらいたい旨の要望が出ることがある。臨時記者室と同様に,所長が許否を決めることになる。
   中継車や中継テントを許可する場合にも,一般来庁者の邪魔にならず,混乱発生の危険のない場所で,かつ,電波の発信等に不都合のない場所を探した上,各社平等に取材ができるよう,記者クラブと調整する必要がある。
6 事件当事者等の入庁場面のカメラ取材 
   事件当事者等の入庁場面のカメラ取材を求められることがある。この許否も庁舎管理権の問題である。これら入庁場面のカメラ取材を許可した場合には,広報事務担当者が撮影に立ち会い,一般来庁者等が写らないよう注意する。
   なお,撮影を許可する場合は,記者クラブ側が被写体となる事件当事者等の同意を得ることが前提となる。
7 立ちレポ 
   テレビ報道で記者が裁判所庁舎等を背景に立ち,裁判の内容や審理の様子をレポー トするものである。放送記者から広報担当に許可申請が出される。これも庁舎管理権の問題である。許可した場合,広報事務担当者が撮影に立ち会って,一般来庁者等が写らないよう,また,できるだけ執務時間内に終えるよう注意する。
 
8  宣伝的行為の撮影
   裁判所構内でー方当事者が宣伝的行為に及ぶことが予想された場合,裁判所の中立性,公平性の観点から,裁判所がその撮影のために便宜供与することは適当ではない。 構内での宣伝的行為は,関係者の入構時,法廷内及び判決言渡し後(例えば,裁判結果を知らせる垂れ幕など)の各段階で起こることが多く,このようなおそれがある場合には,混乱しないような形で撮影を未然に防止するよう,事前に十分検討しておく必要がある。
9 普段と異なる扱いをする場合 
   要警備事件では,構内でのカメラ撮影等について普段と異なる制限が必要となる場合もある。このような場合,単に結論を告げるだけでは記者クラブの反発を招くおそれがあるため,その結論を採らざるを得ない理由とともに,裁判所の立場や考え方を丁寧に説明するなど十分に配慮する必要がある。

6-7 少年事件についての報道対応の留意事項

1 少年事件の非公開性 
   少年法は少年事件を非公開手続とし,少年の情操を保護し,少年の更生及び社会復帰を期するため,秘密の保持に配慮している。報道対応の場面でも少年事件の非公開性には特に配慮しなくてはならない。
   少年法61条には, 「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については,氏名,年齢,職業,住居,容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」と規定されている。
   この少年事件の特殊性については,折りに触れ記者にも説明し,理解してもらうことが求められる。
2 少年事件の報道対応 
   ―方,少年事件であっても,裁判所が全く報道対応をしないでいると,かえって不正確な報道を招く危険もある。少年事件の非公開性に十分な配慮をした上で,家庭裁判所の社会に対する説明責任を果たし,家庭裁判所に対する社会の信頼を確保することにも留意しながら報道対応を行う必要がある。
   捜査段階など,これまでの報道振りから,取材が予想されるような事件が係属している場合には,所長に報告して,あらかじめ今後の報道対応について検討をしておく。 具体的な対応は,担当裁判官の了解を得た上,事案ごとに判断することになるが,事件によっては,少年の特定に結びつかず,少年の情操保護,更生を妨げない限度で一定の情報を公表することが相当な場合もある。その際,事件受理時や審理途中においては,外形的ないし客観的事実についてのみ公表するなど,調査や審判等に影響を及ぼさないよう配慮する必要がある。また,被害者等に関する取材についても,二次的被害を与えないように,その心情に十分配慮した対応が必要である。
   なお,少年の身柄に関する事項について報道対応する際には,その情報に基づき取材されることもあるので,観護措置決定の執行終了後に対応したり,関係機関と調整したりするなどの配慮が必要である。決定要旨の作成は,担当裁判官に依頼することになるが,記載をどの程度詳細にするかは,審判が非公開とされる趣旨及び少年や関係者のプライバシーに配慮しつつ,家庭裁判所の社会に対する説明責任が果たされているかという観点から判断することとなる。重大事件等においては,ある程度詳細な要旨が必要となる場合もあろう。
   おって,記者は少年事件の手続等について知識を持たないこともあるので,正確な報道をしてもらうために,記者に手続の流れなどの一般的知識を提供する等,適宜な措置を講じることも検討されたい。
1(1) 交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
 
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。