弁護士の懲戒

第0 目次

第1の1 弁護士に対する懲戒制度の概要
第1の2 市民窓口及び紛議調停
第1の3 弁護士に対する懲戒請求をした場合の受け止め方等(平成29年10月28日追加
第2の1 戒告,業務停止,退会命令及び除名
第2の2 業務停止処分に関する取扱い(平成29年10月18日追加
第2の3 懲戒処分の公告,通知,公表及び事前公表(平成29年10月18日追加
第3   弁護士は単位弁護士会及び日弁連の会則等を守る必要があること
第4の1 弁護士の懲戒事由
第4の2 弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文(平成29年10月22日追加
第4の3 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例(平成29年10月22日追加
第4の4 弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義(平成29年10月21日追加
第4の5 弁護士が他の弁護士に懲戒請求をする場合の取扱い等(平成29年11月9日追加
第5   会務活動に関する弁護士の守秘義務
第6の1 非弁護士との提携の禁止
第6の2 非弁護士との提携の取締り
第7   弁護士会の弁護士に対する指導監督権の内容(平成29年10月9日追加
第8   弁護士会の懲戒手続
第9   日弁連の懲戒手続
第10    弁護士の懲戒処分と取消訴訟
第11の1  弁護士に対する不当な懲戒請求をした場合の責任
第11の2  弁護士について期待権侵害のみを理由とする不法行為責任が発生する場合
第12    懲戒手続の除斥期間
第13の1 弁護士法人アディーレ法律事務所(平成29年10月16日追加
第13の2   弁護士法人アディーレ法律事務所に対する懲戒処分等(平成29年10月13日追加
第13の3 金融庁の業務停止処分により中央青山監査法人は解散したこと(平成29年10月14日追加
第13の4 中央青山監査法人に対する業務停止処分とアディーレに対する業務停止処分の比較(平成29年10月14日追加
第14    弁護士法人の懲戒事例(平成29年10月14日追加
第15    各弁護士会の懲戒請求の出し方(平成29年10月9日追加
第16    弁護士の懲戒制度の問題点に関する弁護士の声(平成29年11月25日追加
第17    弁護士の懲戒請求事案集計
第18    他の士業の懲戒(平成29年10月21日追加

*0 「弁護士の守秘義務,弁護士職務基本規程等」及び「受任できない事件,事件処理の方針等」も参照してください。
*1 個別の弁護士の懲戒情報については,①弁護士懲戒処分検索センターHPの「弁護士懲戒情報」,並びに②弁護士自治を考える会HPの「弁護士懲戒処分の要旨」「弁護士懲戒処分・(官報)掲載分」及び「東弁会報「LIBRA」」(ただし,東弁会員に対する懲戒処分だけ。)に載っています。
*2 日弁連HPの「弁護士の懲戒制度とその運用状況」が参考になります。
*3 弁護士ドットコムHP「「弁護士 懲戒事例」の法律相談」が載っています。
*4 平成14年4月当時の弁護士の懲戒手続については,首相官邸HPの「弁護士の綱紀・懲戒制度の概要と日弁連の改革の基本方針について」(2002年4月16日付の日弁連文書)が参考になります。
*5 弁護士懲戒手続の研究と実務(第3版),弁護士懲戒事件議決例集(毎年発行)等は日弁連に問い合わせれば購入することができます日弁連HP「出版物 分類:業務-相談・倫理・研修・事故」参照)。
*6 平成29年4月1日以降,弁護士又は弁護士法人の業務上の横領によって30万円を超える財産を失った依頼者及びこれに準じる人は,弁護士会に申請することにより,500万円を上限とした見舞金を支給してもらうことができます(日弁連HPの「依頼者見舞金制度について」参照)。
*7 裁判官の懲戒については,「分限裁判及び罷免判決の実例」を参照してください。
*8 裁判所職員の懲戒処分の場合,原則として被懲戒者の氏名は公表されません(裁判所HPの「懲戒処分の公表指針」,及び平成28年度(情)答申第6号(平成28年9月1日答申)参照)。
*9   相手方の代理人弁護士に対する懲戒請求又は損害賠償請求については,①確実な証拠があり,かつ,②私と依頼者との間に特に高度の信頼関係がある場合でない限り,受任しないこととしています。
  また,相手方の代理人弁護士が大阪弁護士会所属の弁護士である場合,①及び②の場合であっても,ほぼ例外なく受任しないこととしています。

第1の1 弁護士に対する懲戒制度の概要

1 懲戒手続の流れ
   日弁連HPの「懲戒制度」にある「弁護士の懲戒手続の流れ」を見れば,懲戒手続の流れが分かります。

2   懲戒の種類
(1) 弁護士に対する懲戒は,戒告,2年以内の業務停止,退会命令及び除名の4種類です(弁護士法57条1項)。
(2)ア 弁護士法人に対する懲戒は,戒告,2年以内の業務停止,退会命令及び除名の4種類です(弁護士法57条2項)。
イ   業務停止については,①主たる法律事務所が所在する弁護士会が行う「弁護士法人の業務停止」,及び②従たる法律事務所が所在する弁護士会が行う「弁護士法人の法律事務所の業務停止」の2種類があります。
ウ 従たる法律事務所が所在する弁護士会は退会命令は出せますが,除名できませんのに対し,主たる法律事務所が所在する弁護士会は退会命令は出せませんが,除名できます(弁護士法57条2項3号及び4号)。

3 懲戒請求は誰でもできること等
(1)ア 何人も,弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由(過去3年以内のものに限られることにつき弁護士法63条)があると思料するときは,その事由の説明を添えて,その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会(例えば,大阪弁護士会)にこれを懲戒することを求めることができます(弁護士法58条1項)。
イ 日弁連に対して直接,懲戒請求をすることはできないのであって,最初は所属弁護士会に対して懲戒請求をする必要があります。
(2)   懲戒請求者は,弁護士会の綱紀委員会又は懲戒委員会の決定に対して日弁連綱紀委員会に対して異議の申出をしたり(弁護士法64条),日弁連綱紀委員会の決定に対して日弁連綱紀審査会に対して綱紀審査の申出をしたりすることはできます(弁護士法64条の3)。
   ただし,懲戒請求者は,日弁連懲戒委員会の決定に対して不服申立てをすることはできません。
(3) 弁護士自治を考える会HPに「弁護士懲戒請求の書き方」が載っています。
(4) 弁護士会に対して懲戒請求をする場合,印紙代等の費用は不要です。

4 相続により懲戒請求人の地位は承継されないこと等
(1) 懲戒請求は弁護士会に懲戒権の発動を促すにすぎず,懲戒請求人はその後の手続に当事者として関与するものではないので,相続により懲戒請求人の地位は承継されません(平成16年6月14日付の日弁連懲戒委員会の議決(弁護士懲戒事件議決例集(第8集)173頁))。
(2) 懲戒請求人は関係者として陳述,説明又は資料の提出を求められることがあるに過ぎません(懲戒委員会につき弁護士法67条3項,綱紀審査会につき弁護士法70条の7)。

5 明文化された弁護士会の懲戒処分基準は存在しないかもしれないこと
(1) 行政機関の場合,不利益処分に関する処分基準を定め,かつ,これを公にしておくように努めなければなりませんし(行政手続法12条1項),不利益処分に関する処分基準を定めるに当たっては,不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければなりません(行政手続法12条2項)。
(2) 私は,明文化された弁護士会の懲戒処分基準を見たことがありません。
   そのため,そのような基準は存在しないかもしれません。

第1の2 市民窓口及び紛議調停

0 総論
   弁護士に対して懲戒請求をする前に,市民窓口又は紛議調停を利用した方が無難です(日弁連HPの「弁護士とトラブルになったら」参照)。

1 市民窓口
(1) 依頼した弁護士又は相手方の弁護士の業務遂行の方法等に疑問や不満がある場合,弁護士会の市民窓口を利用した方がいいです。
(2) 大阪弁護士会の市民は土口は原則として,月曜から木曜の午前10時から午前12時まで,及び午後1時から午後3時までやっているところ,予約制ですから事前に電話をする必要があります(予約受付時間は月曜から金曜の午前9時から午後5時までです。)(大阪弁護士会HPの「市民窓口」参照)。
(3) 弁護士懲戒処分検索センターHP「各弁護士会の市民相談窓口リンク」が載っています。

2 紛議調停
(1) 弁護士は,依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じないように努め,紛議が生じたときは,所属弁護士会の紛議調停で解決するように努めます(弁護士職務基本規程26条)。
   また,弁護士は,他の弁護士等との間の紛議については,協議又は弁護士会の紛議調停による円満な解決に努めるものとされています(弁護士職務基本規程73条)。
(2)   紛議調停は,弁護士と依頼者の紛争を弁護士会の調停を通じて解決する手続です。
(3) 東京弁護士会HPに「紛議調停手続きの流れ」が載っています。

第1の3 弁護士に対する懲戒請求をした場合の受け止め方等

1 以前に依頼した弁護士に対する懲戒請求をした場合の受け止め方
(1) 以前に依頼した弁護士に対する懲戒請求をした人の相談を受ける場合,弁護士としては,かなりの警戒感をもって接することが通常であると思います。
   特に,懲戒請求された弁護士がそれほど悪いとは思えないような事案で懲戒請求をした人の相談を受ける場合,弁護士としては,自分が将来,同じように何らかのミスをした場合に懲戒請求される可能性が高いと考えることから,相談対応だけにとどめて,受任しない可能性が高くなります。
(2) 業務上横領その他,懲戒請求された弁護士に業務停止以上の懲戒事由があることが明らかな事案で懲戒請求をした人については,個人的には受任を躊躇する理由にはなりません。
   これに対して,懲戒請求された弁護士に戒告相当の懲戒事由があるにすぎない事案で懲戒請求をした人については,懲戒事由が故意によるもの,又は依頼者に対する不誠実の現れによるものであればそれほど気にならないものの,懲戒事由が過失によるものであれば,個人的には受任を躊躇する理由になります。

2 相手方の弁護士に対する懲戒請求をした場合の受け止め方
(1) 相手方の弁護士に対する懲戒請求をした人の相談を受ける場合,弁護士としては,多少の警戒感をもって接することが通常であると思います。
   しかし,自分が相談者との関係で相手方の弁護士と同じ立場になることはないわけですから,そこまでの警戒感は出てこないと思います。
(2)   合理的理由なく相手方の弁護士に対する懲戒請求をしている人の相談を受ける場合,自分が将来,以下のような懲戒請求を受けかねない事項を依頼される可能性が高いと考えることから,相談対応だけにとどめて受任しない可能性が高くなります。
(相手方との関係)
① 相手方に対する過度に攻撃的な表現を準備書面等に記載すること
・ このような表現は紛争を余計にこじられる可能性が高いですから,書きたくありません。
   また,過度に攻撃的な表現を準備書面等で使用した場合,懲戒請求を受ける原因となります(弁護士自治を考える会HPの「【暴言・心ない言葉】懲戒処分例」参照)。
・ 平成28年6月3日,本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年6月3日法律第68号)が施行されました(法務省HPの「ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動」参照)から,より一層,表現に留意する必要があります。
② 建物明渡事件等における自力救済(例えば,賃料滞納中の賃借人に無断でカギを交換して追い出すこと。)
・ 緊急やむを得ない事由がない限り,自力救済(何らかの権利を侵害された者が,司法手続きによらず実力をもって権利回復を果たすこと)は認められません(最高裁昭和40年12月7日判決参照)。
・ 日弁連は,自力救済禁止の原則に対する例外の要件として「①国家権力による救済をまついとまがないこと。②ただちに私力を行使しないと,訴訟等の法的手段を通じての権利実現が全く不可能となり,または著しく困難となるおそれのあること。③緊急な危険を防止するに必要な限度をこえないこと」(弁護士資格・懲戒事件議決例集第7集648頁)という厳しい判断基準を示しています(東弁リブラ2010年7月号の「綱紀・懲戒」10頁参照)。
③ 住民基本台帳法12条の3第2項に基づく住民票,又は住民基本台帳法20条4項に基づく戸籍の付票の職務上請求に関する不適切な依頼
・ 氏名,性別,生年月日及び住所はプライバシーに係る情報として法的保護の対象となります(最高裁平成29年10月23日判決)から,合理的理由なく世帯全員の住民票を取得することは許されません。
・ 適法に取得した住民票であっても,裁判外において相手方のプライバシー,生活の平穏等を侵害することは許されません。
④ 戸籍法10条の2第2項に基づく戸籍謄本の職務上請求に関する不適切な依頼
・ 戸籍には住民票以上にプライバシー情報(例えば,離婚)が書いてありますから,高度の合理的理由なく他人の戸籍を取得することは許されないのであって,住民票以上に慎重に取り扱う必要があります。
⑤ 違法に収集した証拠(例えば,盗撮した動画)の訴訟での使用
・ 弁護士職務基本規程14条は,「弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。」と定めています。
・ 弁護士職務基本規程74条は,「弁護士は、裁判の公正及び適正手続の実現に努める。」と定めています。
⑥ 虚偽の証拠等の訴訟での使用
・ 弁護士職務基本規程75条は,「弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。」と定めています。
⑦ 相手方の勤務先等への連絡
・ 例えば,不倫相手に対する慰謝料請求の書面を相手の勤務先に郵送したり,離婚請求事件の相手方に子供の面会交流に関する行き過ぎを控えてほしいという連絡文書を相手方の職場にファックスで送信したりした場合,非行であるとして懲戒請求されることがあります(東弁リブラ2010年7月号の「綱紀・懲戒」9頁参照)。
(相手方の弁護士との関係)
⑧ 相手方の弁護士に対する攻撃的な表現を準備書面等に記載すること
・ 一般的に,相手の弁護士に対する攻撃にまで及んだ場合,訴訟上の和解又は調停が余計に成立しにくくなりますから,紛争の解決が遠のくことになりますし,代理人同士の喧嘩に発展する可能性もあります。
⑨ 相手方の弁護士に対する懲戒請求
・ 後述するとおり,弁護士に対する懲戒請求を受任する弁護士は少ないですから,懲戒請求を依頼される可能性があること自体,受任を躊躇する理由になります。

3 弁護士に対する懲戒請求を受任する弁護士は少ないこと等
(1) 弁護士に対する懲戒請求をした場合,弁護士会の会務その他何らかの理由で接触する可能性がある弁護士を不倶戴天の敵にしてしまいます。
   そのため,弁護士に対する懲戒請求を受任する弁護士は少ないです。
(2)ア 中小規模の弁護士会に所属している場合,同じ弁護士会に所属する弁護士に対する懲戒請求を受任する人はまずいないと思います。
イ 大阪弁護士会の場合,同じ会派に所属する弁護士に対する懲戒請求を受任する人はまずいないと思います。
(3) 弁護士職務基本規程は「第9章 他の弁護士との関係における規律」として以下のとおり定めています。
(名誉の尊重)
第七十条 弁護士は他の弁護士、弁護士法人及び外国法事務弁護士(以下弁護士等という)との関係において、相互に名誉と信義を重んじる。
(弁護士に対する不利益行為)
第七十一条 弁護士は、信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れてはならない。
(他の事件への不当介入)
第七十二条 弁護士は、他の弁護士等が受任している事件に不当に介入してはならない。
(弁護士間の紛議)
第七十三条 弁護士は、他の弁護士等との間の紛議については、協議又は弁護士会の紛議調停による円満な解決に努める。

4 まとめ
   合理的理由なく弁護士に対する懲戒請求を出した場合,将来,他の弁護士に依頼することが困難になる可能性がありますから,弁護士に対する懲戒請求を出すことは慎重に考えた方がいいと思います。

第2の1 戒告,業務停止,退会命令及び除名

0 総論
(1) 弁護士に対する懲戒処分は,それが対象弁護士に告知されたときにその効力が生じます(最高裁大法廷昭和42年9月27日判決)。
(2) 憲法39条後段の規定は何人も同じ犯行について二度以上罪の有無に関する裁判を受ける危険にさらされるべきものではないという根本思想に基づく規定です(最高裁大法廷昭和25年9月27日判決)。
   そして,弁護士法に規定する懲戒は刑罰ではありませんから,被告人が弁護士法に規定する懲戒処分を受けた後,さらに同一の事実に基づいて刑事訴追を受けて有罪判決を言い渡されたとしても,二重の危険にさらされたものということはできません(最高裁昭和29年7月2日判決)。
(3) 弁護士会の懲戒処分は,弁護士にとって刑罰にも比すべき重大なものではあるが,弁護士法の定めるところにより,弁護士の使命および職務の特殊性にかんがみ,弁護士会に与えられた公の権能の行使として当該弁護士会が自主的に行うものであって,その性質は,広い意味での行政処分としての懲戒罰であると解されています(東京高裁平成元年4月27日判決)。
(4) 弁護士懲戒処分検索センターHPの「懲戒の種類」に,戒告,業務停止,退会命令及び除名に関する説明が載っています。

1 戒告
(1)ア 戒告とは,対象弁護士に対し,その非行の責任を確認させて反省を求め,再び過ちがないように戒める懲戒処分をいい,懲戒処分の中では最も軽い処分です。
イ 弁護士に対する戒告処分は,それが当該弁護士に告知された時にその効力が生じ,告知によって完結します(最高裁平成15年3月11日決定)。
(2) 戒告を受けた弁護士は,処分の告知を受けた後も従前通り弁護士業務を行うことができますし,弁護士たる身分及び弁護士資格を失うことはありません。
   ただし,戒告を受けた弁護士が所属している法律事務所は1年間,東京三弁護士会主催の司法修習生向け就職説明会に参加できなくなります(「司法修習開始前の日程」参照)などの効果を伴います。
   また,戒告の理由の要旨が「自由と正義」等に掲載されるため,自分の不祥事の内容が弁護士業界に広く知られることとなります。
   そのため,懲戒処分としての戒告は,軽い処分とはいえません。
(3) 弁護士自治を考える会HPの「弁護士懲戒処分〔戒告〕と〔業務停止〕ではどこが違うのか」にも,戒告と業務停止は月とスッポンぐらいに処分の重さに違いがあると書いてあります。

2 業務停止
(1) 業務停止とは,対象弁護士に一定期間,弁護士業務を行うことを禁止する懲戒処分をいいます。
(2)   業務停止を受けた弁護士は,特に効力停止の決定を得ない限り,処分の告知を受けた時から一定期間,弁護士業務を行うことができなくなります。
   ただし,退会命令及び除名と異なり,弁護士たる身分及び弁護士資格を失うわけではありません。
(3)ア 弁護士業務は,その性質上,高い信用の保持と業務の継続性が求められますところ,多数の訴訟案件,交渉案件を受任している弁護士が数か月間にわたる業務停止処分を受けた場合,その間,法廷活動,交渉活動,弁護活動はもちろんのこと,顧問先に係る業務を始めとして一切の法律相談活動はできず,業務停止処分により,従前の依頼者は他の弁護士に法律業務を依頼せざるを得なくなりますところ,進行中の事件の引継ぎは容易ではありません。
  また,懲戒を受けた弁護士の信用は大きく失墜しますし,業務停止期間が終了しても,いったん他の弁護士に依頼した元の依頼者が再度依頼するとは限らず,また,失墜した信用の回復は容易ではありません(最高裁平成19年12月18日決定における裁判官田原睦夫の補足意見参照)。
  そのため,懲戒処分としての業務停止は,非常に重い処分であるといえます。
イ 弁護士法人が業務停止を受けた場合の影響の大きさについては,msnニュースの「アディーレの不適切業務めぐる「処分」の重み 懲戒の段階によって影響は断然変わってくる」が参考になります。
(4) 1か月を超える期間の業務停止処分を受けた弁護士又は弁護士法人は,依頼者が委任契約の継続を求める場合であっても,委任契約を全部解除しなければなりません(被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準(平成4年1月17日日弁連理事会議決)第二の一)。
(5)ア 1か月を超える期間の業務停止処分を受けた弁護士又は弁護士法人は,所属弁護士会に対し,戸籍謄本等請求用紙を返還しなければなりません(弁護士につき戸籍謄本等請求用紙の使用及び管理に関する規則7条1項,弁護士法人につき同規則7条2項)。
イ 戸籍謄本等請求用紙とは,弁護士が,戸籍法及び住民基本台帳法並びにこれらに基づき定められた政省令の規定に基づき弁護士の業務に関する戸籍謄本,住民票の写し等の交付の請求に使用する用紙であって,日弁連が作成したものをいいます(戸籍謄本等請求用紙の使用及び管理に関する規則2条)。

3 退会命令
(1) 退会命令とは,対象弁護士をその所属弁護士会から一方的に退会させる懲戒処分をいいます。
(2) 退会命令を受けた弁護士は,特に効力停止の決定を得ない限り,処分の告知を受けた時からその所属弁護士会を当然に退会して弁護士たる身分を失います。
   ただし,除名と異なり,弁護士資格を失うわけではありません。
(3)ア 退会命令を受けた弁護士は,法的には,改めて入会を希望する弁護士会を通じて弁護士登録の請求をすることができます。
   しかし,「弁護士会の秩序若しくは信用を害するおそれがある者」(弁護士法12条1項柱書)に該当するかどうかが特に審査され,当該おそれがあると判断された場合,入会しようとする弁護士会から日弁連への登録請求の進達を拒絶されることがあります。
イ 弁護士会の入会審査については,「弁護士登録制度」を参照してください。
(4) 懲戒処分としての退会命令は,弁護士生命を事実上終わらせる可能性があるぐらい,重い処分です。

4 除名
(1) 除名とは,対象弁護士の弁護士たる身分を一方的に失わせる懲戒処分をいいます。
(2) 除名処分を受けた弁護士は,特に効力停止の決定を得ない限り,処分の告知を受けた時からその所属弁護士会を当然に退会して弁護士たる身分を失い,かつ,処分の告知を受けた日から3年間,弁護士資格を失います(弁護士法7条3号)。
(3) 除名された弁護士は,告知の日から3年が経過するまでの間,弁護士登録の請求をすることができません。
   また,告知の日から3年が経過してから弁護士登録の請求をした場合,「弁護士の職務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者」(弁護士法12条1項柱書)に該当するかどうかが特に審査され,当該おそれがあると判断された場合,入会しようとする弁護士会から日弁連への登録請求の進達を拒絶されることがあります。
(4) 懲戒処分としての退会命令は,弁護士生命を事実上終わらせる可能性が極めて高い,重い処分です。

第2の2 業務停止処分に関する取扱い

1 業務停止処分を受けた場合の取扱い
(1) 業務停止処分を受けた弁護士及び弁護士法人が取るべき措置に関する基準として以下のものがあります。
① 弁護士の場合
   被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準(平成4年1月17日日弁連理事会議決)
→ 弁護士が業務停止の懲戒処分を受けた場合,業務停止の期間中,①依頼者との委任契約を解除したり(業務停止期間が1ヶ月以内の場合であり,依頼者が委任契約の継続を望む場合を除く。),②顧問契約を解除したり,③補助弁護士(=復代理人又は雇傭する等した弁護士)の監督ができなくなったり,④原則として事務所の使用ができなくなったり,⑤法律事務所の表示を除去したり,⑥弁護士の肩書等のある名刺等を使用できなくなったり,⑦弁護士記章及び身分証明書を日弁連に返還したり,⑧会務活動ができなくなったり,⑨公職等を辞任したりする必要があります。
② 弁護士法人の場合
   弁護士法人の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準(平成13年12月20日日弁連理事会議決)
→ 被懲戒弁護士法人の社員等(=被懲戒弁護士法人の社員又は使用人である弁護士(第二のAの5後段。なお,弁護士法30条の6第1項前段参照))は,被懲戒弁護士法人が解除すべき,又は解除した法律事件等を,個人として引き継いで行うことはできません。
   ただし,被懲戒弁護士法人の他の社員の承諾があり,かつ,依頼者が受任を求めるときはこの限りではないものの,当該社員等は,依頼者に対して委任を求める働きかけをしてはならず,受任する場合,依頼者から,業務停止にかかる説明を受けて委任した旨の書面を受領しなければなりません(第二のAの9参照)。
(2) 訴訟代理人の権限の消滅は,本人又は訴訟代理人から相手方に通知しなければ,その効力を生じませんし(民事訴訟法59条・36条1項),訴訟代理権の権限の消滅の通知をした者は,その旨を裁判所に書面で届け出なければなりません(民事訴訟規則23条3項)。
   つまり,被懲戒弁護士は,辞任届を裁判所及び相手方の両方に提出しなければなりません。
(3) 弁護士法人の依頼者が,当該法人に事件を依頼した際,当該法人とは別に,当該法人所属の弁護士に共同で事件を個人受任してもらっている場合,当該弁護士に引き続き事件処理を依頼することができると思いますが,弁護士法人の業務停止の潜脱として許されないかも知れません。
   また,この場合,当該弁護士が,業務停止にかかる説明を受けて委任した旨の書面を依頼者から受領する必要があるかどうかは不明です。
(4) 被懲戒弁護士が処分を受ける前に雇用した弁護士(補助弁護士)は,被懲戒弁護士の事務所を自己の法律事務所として使用することができます( 被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準 第一の九)。
(5) 被懲戒弁護士は,期日変更申請,訴訟書類の授受,保証金の還付,復代理人の選任等もできなくなると最高裁判所は考えています(平成29年10月11日付の,弁護士法人等の懲戒処分(業務停止)について(最高裁判所事務総局民事局第一課長等の事務連絡))。

2 業務停止を受けた弁護士が途中で辞任した場合の依頼者との法律関係
(1) 着手金の全部又は一部を返還し,かつ,みなし成功報酬金は請求できないと思われること等
ア   大阪高裁平成22年5月28日判決は以下の判示をしています。
① 訴訟委任契約に伴う着手金は、弁護士への委任事務処理に対する報酬の一部の前払の性質を有するものであり、この訴訟委任契約が受任者である弁護士の債務不履行によって解除された場合には、原則として、受領した着手金を返還すべきであるところ、その契約の解除に至るまでの間に委任の趣旨に沿った事務処理が一部されたときは、同事務処理費用のほか、その委任契約全体に占めるその事務の重要性及びその事務量等を勘案して、その分に見合う額については返還することを要しないと解するのが相当である。
② 被控訴人は、着手金以外に、みなし成功報酬又は民法六四八条三項に基づき報酬の支払を求めているが、上記説示のとおり、甲・乙事件についての各委任契約は受任者である被控訴人の責めに帰すべき事由による本件解任により終了したのであるから、被控訴人が上記報酬の支払を求めることができないことは明らかである。
イ 訴訟代理人としてなすべき業務が未だ存在していた段階で業務停止により辞任する場合,対象弁護士は着手金の清算義務があります。
   また,着手金返還の協議については,対象弁護士としてできる限りの協議を尽くしたうえで解決ができなかったとすれば,民事調停又は民事訴訟の方法を利用すべきであるという意見も認められることもありますが,十分な努力をせずに元依頼者に訴訟手続き等の負担を強いるのは,適切かつ妥当な対応とはいえません(平成28年4月11日付の日弁連懲戒委員会の議決(平成28年弁護士懲戒事件議決例集(第19集)21頁)参照。なお,事案につき,弁護士自治を考える会HPの「懲戒処分の要旨」参照)。
(2) 概算実費その他の預り金の清算

ア 弁護士は,委任の終了に当たり,委任契約に従い,金銭を清算したうえ,預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければなりません(弁護士職務基本規程45条)。
イ   
債務整理事務の委任を受けた弁護士が委任者から債務整理事務の費用に充てるためにあらかじめ交付を受けた金銭は,民法上は同法649条の規定する前払費用に当たるものと解されます。
   そして,前払費用は,交付の時に,委任者の支配を離れ,受任者がその責任と判断に基づいて支配管理し委任契約の趣旨に従って用いるものとして,受任者に帰属するものとなると解されます。
   受任者は,これと同時に,委任者に対し,受領した前払費用と同額の金銭の返還義務を負うことになりますところ,その後,これを委任事務の処理の費用に充てることにより同義務を免れ,委任終了時に,精算した残金を委任者に返還すべき義務を負うこととなります(最高裁平成15年6月12日判決)。
(3) 訴訟復代理人の代理権は当然には消滅しないこと
   訴訟代理人がその権限に基づいて選任した訴訟復代理人は独立して当事者本人の訴訟代理人となるものですから、選任後継続して本人のために適法に訴訟行為をなし得るものであって,訴訟代理人の死亡によって当然にその代理資格を失なうわけではありません(最高裁昭和36年11月9日判決)。
   そのため,業務停止処分を受けた弁護士法人が外部の弁護士を訴訟復代理人にしている場合,当該復代理人の権限は業務停止処分を受けた弁護士法人の辞任によって当然に消滅するわけではないと思います。
(4) 消費者契約法により無効となる可能性がある条項
ア   業務停止を受けた弁護士の損害賠償責任を免除する条項は消費者契約法8条により,委任者が払う損害賠償の額を予定する条項は消費者契約法9条により無効となることがあります。
イ 消費者庁HPの「逐条解説」に,消費者契約法の逐条解説が載っています。
(5) 依頼者等に対する引継ぎはできること
   被懲戒弁護士は,委任契約及び顧問契約を解除する場合,依頼者及び当該事件を新たに取り扱う弁護士に対し誠実に法律事務の引継ぎをしなければなりません(被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準(平成4年1月17日日弁連理事会議決)第二の五)。

3 業務停止処分中の訴訟行為は有効であること
   弁護士業務を停止され,弁護士活動をすることを禁止されている者の訴訟行為であっても,その事実が公にされていないような事情のもとにおいては,一般の信頼を保護し,裁判の安定を図り,訴訟経済に資するという公共的見地から当該弁護士のした訴訟行為は有効とされています(最高裁大法廷昭和42年9月27日判決)。

4 委任契約終了時の一般的な義務
(1) 弁護士は,委任の終了に当たり,事件処理の状況又はその結果に関し,必要に応じ法的助言を付して,依頼者に説明しなければなりません(弁護士職務基本規程44条)。
(2) 委任契約や準委任契約においては,受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負いますところ(民法645条,656条),これは,委任者にとって,委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに,受任者の事務処理の適切さについて判断するためには,受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解されます(最高裁平成21年1月22日判決)。

5 その他
   東京地裁平成27年9月18日判決(判例時報2294号65頁)は,約20億円の赤字を抱え,代表者からの借入等で資金繰りを回す状態であった弁護士法人(平成23年3月1日設立)による整理解雇について,解雇回避努力義務が不十分であるなどとして,事務員(元裁判所書記官であり,東京高裁から懲戒免職処分を受けたものの,そのことを秘して弁護士法人に採用された人です。)の整理解雇は無効であると判断しました。

第2の3 懲戒処分の公告,通知,公表及び事前公表

1 懲戒処分の公告(日弁連会則68条)
(1) 日弁連による公告
ア 日弁連は,弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒した場合,遅滞なく,懲戒の処分の内容を官報をもって公告しなければなりません(弁護士法64条の6第3項)。
イ 日弁連は,弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒した場合,懲戒の処分の内容等を機関雑誌である「自由と正義」に掲載して公告します(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程3条参照)。
(2) 大阪弁護士会による公告
ア   大阪弁護士会所属の弁護士又は弁護士法人に対する懲戒処分があった場合,懲戒処分の主文及び詳細な理由が大阪弁護士会の機関紙である「月刊大阪弁護士会」(毎月末日発行)(大阪弁護士会HPの「広報誌」参照)に掲載されます。
イ   大阪弁護士会館13階の会員ロビー掲示板にも,懲戒処分の主文及び詳細な理由が掲載されます。

2 懲戒処分の通知(日弁連会則68条の3及び68条の4)
(1) 対象弁護士等に対する通知
   弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒した場合,又は懲戒しない旨を決定した場合,対象弁護士等に対し,懲戒の処分の内容及びその理由を書面により通知しなければなりません(懲戒した場合につき弁護士法64条の6第1項,懲戒しない旨を決定した場合につき弁護士法64条の7第1項2号及び同条第2項2号)。
(2) 日弁連等に対する通知
   弁護士会は,対象弁護士等を懲戒した場合,懲戒の手続に付された弁護士法人のほかの所属弁護士会及び日弁連に対し,懲戒の処分の内容及びその理由を書面により通知しなければなりません(弁護士法64条の6第2項)。
(3) 最高裁判所等に対する通知

   弁護士会又は日弁連が業務停止以上の懲戒処分をした場合,遅滞なく,最高裁判所,検事総長その他の官公署に対し,その旨及びその内容を通知しなければなりません(単位弁護士会による懲戒につき日弁連会則68条の3第1項及び懲戒処分の公告及び公表等に関する規程4条,日弁連による懲戒につき日弁連会則68条の3第2項及び懲戒処分の公告及び公表等に関する規程5条)。
(4) 懲戒請求者に対する通知
   弁護士会が対象弁護士等を懲戒し,又は懲戒した旨の決定をした場合,速やかに,懲戒請求者に対し,その旨及びその理由を書面により通知しなければなりません(日弁連会則68条の4第1項)。
   その際,日弁連に対して異議の申出ができる旨を教示しなければなりません(日弁連会則68条の4第2項)。

3 懲戒処分の公表
(1) 弁護士会の場合
   弁護士会は,懲戒処分の効力発生後,懲戒処分の内容を速やかに公表することがあります(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程6条)ものの,戒告の場合は原則として公表しません。
(2) 日弁連の場合(日弁連会則68条の2第1項参照)
   日弁連は,業務停止,退会命令又は除名の場合,懲戒処分の効力発生後,原則として速やかに公表します(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程7条本文及び懲戒処分の公表等に関する規則)。
   日弁連は,戒告の場合,弁護士,弁護士法人,弁護士会又は日弁連に対する国民の信頼を確保するために必要と認めるときに限り,公表することができます(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程7条ただし書及び懲戒処分の公表等に関する規則)。

4 懲戒処分の事前公表
(1) 弁護士会の場合
ア   弁護士会は,綱紀委員会に事案の調査を求めたとき,又は懲戒委員会に事案の審査を求めたときは,懲戒に関する処分前であっても,会則又は会規に定めるところにより,対象弁護士の氏名等を公表することができます(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程8条参照)。
イ 平成29年10月11日効力発生の,弁護士法人アディーレ法律事務所に対する業務停止2か月の懲戒処分の場合,懲戒処分の事前公表はされませんでした(弁護士自治を考える会HPの「『アディーレ処分から見える 弁護士組織の“悪質”なる定義』」参照)。
(2) 日弁連の場合(日弁連会則68条の2第2項参照)
   日弁連は,綱紀委員会に事案の調査を求めたとき,又は懲戒委員会に事案の審査を求めたときは,懲戒に関する処分前であっても,日弁連又は弁護士及び弁護士法人に対する国民の信頼を確保するために緊急かつ特に必要と認めるときは,対象弁護士の氏名等を公表することができます(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程9条参照)。

第3 弁護士は単位弁護士会及び日弁連の会則等を守る必要があること

1(1) すべての弁護士及び弁護士法人は,いずれかの弁護士会及び日弁連に所属する必要がある(弁護士法36条1項,47条)ため,弁護士会及び日弁連はいわゆる強制加入団体であります。
(2)   弁護士会及び日弁連が強制加入団体であることは,憲法22条に違反しません(最高裁平成4年7月9日判決)。

2 弁護士は,所属弁護士会及び日弁連の会則,会規及び規則を守る必要があります(弁護士法22条,日弁連会則29条1項,弁護士職務基本規程78条)。

3 弁護士法人は,平成13年6月8日法律第41号(平成14年4月1日施行)による改正後の弁護士法30条の2以下に基づき設立されるようになったものです。
   ちなみに,弁護士法人は,破産手続開始の原因との関係では合名会社としての取扱いを受けます(弁護士法30条の30第4項)から,債務超過は破産手続開始の原因とはなりません(破産法16条2項)。

4 弁護士会及び日弁連の会則というのは,社団法人にとっての定款みたいなものです(弁護士法33条,46条参照)。

5(1) ①所属弁護士会の会則及び会規は総会の決議により(会則につき弁護士法39条,会規につき大阪弁護士会会則6条2項及び34条1号),②所属弁護士会の規則は常議員会の決議により定められ,又は変更されます(大阪弁護士会会則6条3項及び57条1号)。
(2) ①日弁連の会則及び会規は総会の決議により(会則につき弁護士法50条・39条,会規につき日弁連会則6条2項及び34条2号),②日弁連の規則は理事会の決議により定められ,又は変更されます(日弁連会則6条2項及び59条3号)。

第4の1 弁護士の懲戒事由

1 総論
(1) 弁護士の懲戒事由は以下のとおりです(弁護士法56条1項)。
① 弁護士法に違反したとき
② 所属弁護士会又は日弁連の会則に違反したとき
③ 所属弁護士会の秩序又は信用を害したとき
④ その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があったとき
(2) 「この規程〔注:弁護士職務基本規程のこと。〕は,弁護士の職務の多様性と個別性にかんがみ,その自由と独立を不当に侵すことのないよう,実質的に解釈し適用しなければならない。」(弁護士職務基本規程82条1項前段)とされています。
   そのため,弁護士職務基本規程の条項に形式的に違反する行為のすべてが直ちに懲戒の事由と判断されるのではなく,「品位を失うべき非行」(弁護士法56条1項)と同等の評価を受けるなどの視点から,事案に即した実質的な判断がなされることとなります。
(3) 「自由と独立」には,①権力からの自由と独立,②依頼者からの自由と独立,及び③他の弁護士との関係における自由と独立の三つの要素を含みます(弁護士職務基本規程2条参照)。
(4)ア 弁護士職務基本規程には,倫理規定・努力義務の規定と,行為規範・義務規定とが混在しており,その区別が必ずしも判然としません。
   そのため,弁護士職務基本規程82条2項で,倫理規定・努力義務の規定に当たる条文が個別に列挙されています。
イ 弁護士は、常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければなりません(弁護士法2条)し,弁護士は,教養を深め,法令及び法律事務に精通するため,研鑽に努めます(弁護士職務基本規程7条)。
   そして,「弁護士は、事件の処理に当たり、必要な法令の調査を怠ってはならない。」と定める弁護士法37条1項は義務規定です(弁護士職務基本規程82条2項参照)から,必要な法令の調査を怠った場合,直ちに懲戒事由となります。
(5) 日弁連HPの「弁護士に対する懲戒」には,懲戒事由の例として以下のものが書いてあります。
① 依頼者からの預り金を横領するなどの犯罪行為がなされた場合
② 自分の事務所で資格のない者に法律事務を取り扱わせた場合
③ 依頼者の利益となるように内容が虚偽の書類を裁判所に提出した場合
④ 弁護士会の会費を正当な理由なく長期にわたって滞納した場合
(6)ア 弁護士は,法令により官公署から委嘱された事項について,職務の公正を保ち得ない事由があるときは,その委嘱を受けてはなりません(弁護士職務基本規程81条)。
イ   破産管財人の場合,個別の破産債権者との間で何らかの利害関係がある場合は就任を辞退することがありますし,成年後見人の場合,推定相続人との間で何らかの利害関係がある場合は就任を辞退することがあります。
   例えば,特定の破産債権者が自分の顧問先であるような場合,破産管財人には就任しませんし,推定相続人間で深刻な対立が発生している事案で特定の推定相続人と親しい関係にある場合,成年後見人には就任しません。

2 弁護士自治を考える会HP
(1)   弁護士自治を考える会HPには,平成29年8月16日現在,以下の類型の懲戒処分例が載っています。
   暴言・心ない言葉事件放置横領・着服痴漢・盗撮他守秘義務違反成年後見人相続事件業務停止中の業務非弁提携医療過誤事件弁護士報酬国選弁護人判決文・証拠・委任状偽造依頼人を裏切った弁護士会費滞納意思確認なし所得隠し自力救済依頼者から借金根拠のない主張職務上請求双方代理接見等もみ消し工作裁判資料等返却せず公設事務所着手金飲酒関係
(2)ア 弁護士の訴訟行為が懲戒事由となるかどうかについては,弁護士自治を考える会ブログの「根拠のない訴訟提起・答弁主張をして弁護士が懲戒処分になった例」が参考になります。
イ 依頼者が求める損害賠償請求が明らかに事実的,法律的根拠を欠いていて,通常の弁護士であれば容易にそのことを知り得たといえるのに,必要かつ可能な事実関係の調査及び必要な法令の調査を行うべき義務を怠ったまま,内容証明郵便をもって,相手方に対して損害賠償請求をした場合,弁護士職務基本規程31条及び37条に違反することがあります(弁護士自治を考える会HPの2017年6月10日の記事参照)。

3 懲戒請求が取り下げられたとしても,弁護士会は対象弁護士を懲戒できること
(1)   懲戒請求の取り下げがあっても,懲戒処分される例は認められ,懲戒請求の取り下げがあったにもかかわらず懲戒処分をしたことが異例であるとか違法であるとかいうことはできません。
(2) 別の事例が被懲戒者の事案より非行の程度が重いとしても,それだけでは,他事例との比較において,懲戒処分が不当であるとまでいうことはできません。
(3) 弁護士の懲戒は,単に懲戒請求者のためにするのではなく,弁護士会は,懲戒制度の趣旨に従って,懲戒事由がある場合に当該弁護士を懲戒することになります。
   そして,懲戒を相当とする事由がある場合には,懲戒請求者の取り下げにかかわらず,懲戒するのが弁護士の懲戒制度の趣旨に合致しています。
(4)   以上の記載は,東京高裁平成24年10月31日判決(最高裁平成23年10月11日決定の本案事件です。)に基づくものです。

4 弁護士及び弁護士会には,懲戒請求者の予断や偏見を解きほぐすように努めることが求められていること
   橋下徹弁護士が第1審被告となった最高裁平成23年7月15日判決の裁判官須藤正彦の補足意見には以下の記載があります(改行を追加しました。)。
   弁護士は裁判手続に関わって司法作用についての業務を行うなど,その職務の多くが公共性を帯有し,また,弁護士会も社会公共的役割を担うことが求められている公的団体であるところ,主権者たる国民が,弁護士,弁護士会を信認して弁護士自治を負託し,その業務の独占を認め(弁護士法72条),自律的懲戒権限を付与しているものである以上,弁護士,弁護士会は,その活動について不断に批判を受け,それに対し説明をし続けなければならない立場にあるともいえよう。
   懲戒制度の運用に関連していえば,前記のとおり,弁護士会による懲戒権限の適正な行使のために広く何人にも懲戒請求が認められ,そのことでそれは国民の監視を受けるのだから,弁護士,弁護士会は,時に感情的,あるいは,無理解と思われる弁護活動批判ないしはその延長としての懲戒請求ないしはその勧奨行為があった場合でも,それに対して,一つ一つ丹念に説得し,予断や偏見を解きほぐすように努めることが求められているといえよう。
   あるいは,著名事件であるほどにその説明負担が大きくなることはやむを得ないところもあろう。

5 名誉毀損の違法性が阻却される場合等
(1)ア   薬害エイズ関係の報道による名誉毀損事件に関する最高裁平成17年6月16日判決によれば,以下のとおりです。
① 事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,上記行為には違法性がなく,仮に上記証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される(最高裁昭和41年6月23日判決最高裁昭和58年10月20日判決参照)。
② ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,上記行為は違法性を欠くものというべきであり,仮に上記証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される(最高裁平成元年12月21日判決最高裁平成9年9月9日判決参照)。
イ 同じ日付で出された上告棄却決定としての最高裁平成17年6月16日決定(原判決は別です。)には,名誉毀損の成立を否定すべきとする裁判官島田仁郎の詳細な反対意見が付されています。
(2) 個人的には,客観的事実の摘示よりも,意見ないし論評の表明の方が懲戒原因になる気がしています。
(3) 立命館大学HPに「謝罪広告請求の内容とその実現」が載っています。

6 名誉毀損の成立が否定される場合であっても,弁護士会の懲戒対象となる場合があること(最高裁平成23年7月15日判決)
(1)ア 大阪弁護士会に所属し,タレント活動もしていた橋下徹弁護士が,平成19年5月27日に放送された読売テレビ放送株式会社制作に係る「たかじんのそこまで言って委員会」(平成27年4月以降は「そこまで言って委員会NP」)と題する娯楽性の高いテレビのトーク番組において,光市母子殺害事件の弁護団を構成する弁護人に対する懲戒請求を呼びかけた行為について,
   大阪弁護士会は,平成22年9月17日,意見論評の域を逸脱すること,刑事事件及び弁護士会の懲戒請求について誤った認識を与えたこと等を理由に,2ヶ月間の業務停止処分としました。
   しかし,最高裁平成23年7月15日判決は,原審である広島高裁平成21年7月2日判決(最高裁平成18年6月20日判決により差戻しされた後の第2次控訴審判決)を破棄した上で,橋下徹弁護士の発言は不法行為法上違法とはいえないと判断しました(第1審被告である橋下徹弁護士が最高裁で逆転勝訴しました。)。
   このように弁護士会の判断と最高裁判所の判断が一致しない事例は存在します。
イ 平成11年4月14日に山口県光市で発生した光市母子殺害事件については,最高裁平成24年2月20日決定が,死刑判決を下した広島高裁平成20年4月22日判決を支持しました。
(2) 最高裁平成23年7月15日判決は,一般論として以下のとおり判示しています。
   刑事事件における弁護人の弁護活動は,被告人の言い分を無視して行うことができないことをその本質とするものであって,被告人の言い分や弁護人との接見内容等を知ることができない場合には,憶測等により当該弁護活動を論難することには十分に慎重でなければならない。

7 その他
(1) 刑裁サイ太のゴ3ネタブログ「平成26年中に公表された弁護士懲戒事例の分析」が載っています。
(2)   外部HPの「交通事故の悪徳弁護士事務所リスト一覧【2017最新ランキング】」に,交通事故事件に関する弁護士の懲戒事例が載っています。 
(3) 弁護士懲戒処分検索センターHPの「弁護士懲戒情報」には以下の記載があります。
   弁護士に懲戒処分がある場合でも必ずしもすべてが悪徳とは限りません、懲戒内容にもよります。 
   懲戒請求者の方が無茶をいった場合や弁護士会のお気入りでない弁護士に対する意図的な懲戒もあります。また、依頼者のために懸命に仕事をした結果、懲戒になってしまった場合、争いの相手方にとっては悪徳弁護士かも知れませんが、味方として考えれば心強い弁護士と考えることができるかもしれません。内容をよく確かめてからご自身で判断してください。
(4) ビジネスジャーナルの「「目立ちすぎた」大渕愛子、不当報酬受領で「重すぎる処分」の怪…弁護士会を逆なでか」には以下の記載があります
   実は、懲戒委員会が懲戒処分を判断する前には、とある方から「こうしたほうがいいよ」というアドバイスがなされることがあります。通称、「天の声」というようですが、弁護士会としては、身内の恥を公表することになる懲戒処分はなるべく下したがらない傾向にありますので、「天の声」によってすでに改悛したということになれば、「業務停止→戒告」や「戒告→懲戒しない」という軽減もあり得るわけです。
(5) 浦部孝法の法廷日記ブログ「弁護士が教える避けた方がいい法律事務所4選」には,①委任契約書を作らない法律事務所,②還暦オーバーの一人事務所,③やたらと広告を打っている事務所及び④懲戒歴がある弁護士は避けた方がいいと書いてあります。
(6) 行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為であっても,これを処罰することは憲法39条に違反しません(最高裁平成8年11月18日判決。なお,先例として,最高裁大法廷昭和25年4月26日判決最高裁大法廷昭和33年5月28日判決最高裁大法廷昭和49年5月29日判決参照)。
(7) 弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会に問題があったとしても,その責任は,その行為を行った弁護士会にあり,その申出をした弁護士には,故意に虚偽の事実を記載するなど弁護士会の判断を誤らせたというような事実が認められない限り,その照会申出行為は懲戒の対象とはならないと解されています(平成23年2月1日付の日弁連の懲戒処分の公告(ただし,日弁連懲戒委員会委員15名中7名の反対意見あり)参照)。

第4の2 弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文

○弁護士職務基本規程82条2項は「第一章並びに第二十条から第二十二条まで、第二十六条、第三十三条、第三十七条第二項、第四十六条から 第四十八条まで、第五十条、第五十五条、第五十九条、第六十一条、第六十八条、第七十条、第七十三条及び 第七十四条の規定は、弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければならない。」と定めています。
   そのため,これらの条文に形式的に違反する行為があったとしても,それによって直ちに懲戒の事由と判断されるものではなく,弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行があったとき」として評価されるかどうかの判断の一要素となるに過ぎません。
○該当する条文の中身は以下のとおりです。

第一章 基本倫理
(使命の自覚) 第一条 弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に努める。
(自由と独立)
 第二条 弁護士は、職務の自由と独立を重んじる。
 (弁護士自治)
 第三条 弁護士は、弁護士自治の意義を自覚し、その維持発展に努める。
 (司法独立の擁護)
 第四条 弁護士は司法の独立を擁護し司法制度の健全な発展に寄与するように努める
(信義誠実)
 第五条 弁護士は、真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行うものとする。
 (名誉と信用)
 第六条 弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める。
 (研鑽)
 第七条 弁護士は、教養を深め、法令及び法律事務に精通するため、研鑽に努める。
 (公益活動の実践)
 第八条 弁護士は、その使命にふさわしい公益活動に参加し、実践するように努める。
(依頼者との関係における自由と独立)
第二十条 弁護士は、事件の受任及び処理に当たり、自由かつ独立の立場を保持するように努める。
(正当な利益の実現)
第二十一条 弁護士は、良心に従い、依頼者の権利及び正当な利益を実現するように 努める。
(依頼者の意思の尊重)
第二十二条 弁護士は、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うも のとする。
2 弁護士は、依頼者が疾病その他の事情のためその意思を十分に表明できないときは、適切な方法を講じて依頼者の意思の 確認に努める。
(依頼者との紛議)
 第二十六条 弁護士は、依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じないように努め、紛議が生じたときは、所属弁護士会の 紛議調停で解決するように努める。
(法律扶助制度等の説明)
 第三十三条 弁護士は、依頼者に対し、事案に応じ、法律扶助制度、訴訟救助制度 その他の資力の乏しい者の権利保護のための制度を説明し、裁判を受ける権利が 保障されるように努める。
(法令等の調査)
 第三十七条 (1項は対象外)
 2 弁護士は事件の処理に当たり必要かつ可能な事実関係の調査を行うように努める。
(刑事弁護の心構え)
 第四十六条 弁護士は、被疑者及び被告人の防御権が保障されていることにかんがみ、その権利及び利益を擁護するため、最善の弁護活動に努める。
 (接見の確保と身体拘束からの解放)
 第四十七条 弁護士は、身体の拘束を受けている被疑者及び被告人について、必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努める。
 (防御権の説明等)
 第四十八条 弁護士は、被疑者及び被告人に対し、黙秘権その他の防御権について適切な説明及び助言を行い、防御権及び弁護権に対する違法又は不当な制限に対し、 必要な対抗措置をとるように努める。
(自由と独立)
 第五十条 官公署又は公私の団体(弁護士法人を除く。以下これらを合わせて「組織」という)において職員若しくは使用人となり、 又は取締役、理事その他の役員となっている弁護士(以下「組織内弁護士」という)は、弁護士の使命及び弁護士の本質である自由と 独立を自覚し、良心に従って職務を行うように努める。
(遵守のための措置)
 第五十五条 複数の弁護士が法律事務所(弁護士法人の法律事務所である場合を除く)を共にする場合(以下この法律事務所を「共同 事務所」という)において、その共同事務所に所属する弁護士(以下「所属弁護士」という)を監督する権限のある弁護士は、所属 弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるように努める。
(事件情報の記録等)
 第五十九条 所属弁護士は、職務を行い得ない事件の受任を防止するため、他の所属弁護士と共同して、取扱い事件の依頼者、相手方及 び事件名の記録その他の措置をとるように努める。
(遵守のための措置)
 第六十一条 弁護士法人の社員である弁護士は、その弁護士法人の社員又は使用人である弁護士(以下「社員等」という)及び使用人で ある外国法事務弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるように努める。
(事件情報の記録等)
 第六十八条 弁護士法人は、その業務が制限されている事件を受任すること及びその社員等若しくは使用人である外国法事務弁護士が 職務を行い得ない事件を受任することを防止するため、その弁護士法人、社員等及び使用人である外国法事務弁護士の取扱い事件の 依頼者、相手方及び事件名の記録その他の措置をとるように努める。
(名誉の尊重)
 第七十条 弁護士は他の弁護士、弁護士法人及び外国法事務弁護士(以下弁護士等という)との関係において、相互に名誉と信義を重んじる。
(弁護士間の紛議)
 第七十三条 弁護士は、他の弁護士等との間の紛議については、協議又は弁護士会の紛議調停による円満な解決に努める。
(裁判の公正と適正手続)
 第七十四条 弁護士は、裁判の公正及び適正手続の実現に努める。

第4の3 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例

○日弁連調査室が作成した,弁護士業務ハンドブック(平成24年)45頁ないし48頁には,弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例として以下のものが記載されています。
1 母が差入営業を営む店舗の奥に法律事務所を置いたもの
2 酩酊して過激粗野な行為をしたもの
3 借金の手段方法を誤れば品位を失うべき非行となるとするもの
4 国選弁護人が任意的報酬を受領すること
5 実質的に同一事件ともいえる2つの事件について,同一事実につき相反する証明内容を有する2個の疎明資料を裁判所に提出したもの
6 被告人の利益のため内容虚偽の示談書を提出したこと
7 委任事項の範囲を超えて示談すること
8 訴訟代理人として,依頼者の意思に明らかに反する裁判上の和解を成立させたこと
9 依頼者が立替費用を弁償しないので預り中の書類を利用して不動産の登記名義を無断で変更したもの
10 あらかじめ報酬契約が締結されていない場合,報酬額について依頼者と何ら交渉することなく預り金品を抑留すること
11 弁済供託をしてこれを理由に請求異議の訴えを提起するとともに強制競売開始決定の取消しを得ておきながら,依頼者が供託金を取り戻すのに協力的処理をしたもの
12 依頼者から預託を受けた保証代用証券の横領,訴訟費用等の費消
13 委任の目的である債権の回収金を受領しながら,種々虚偽の事実を告げて依頼者に受領金の引渡しをしなかったこと
14 相続財産管理人としてなすべき義務の懈怠
15 弁護士である債務者会社の代表者が,他の債権者があるにもかかわらず,妻である一債権者を厚遇して他の債権者を無視する行為
16 相手方からの取立金及び還付を受けた保証金を依頼者に返還しなかったので,紛議調停の申立てがなされ,和解が成立したがその義務を履行しなかったもの
17 被冒用者から委任を受けないのに,他人から名義冒用の委任状を受領し,被冒用者の意思を確認せず,また被冒用者から委任状の追認を拒否された後もその委任状を用いて訴訟行為をなしたもの
18 受任している事件につき依頼者から事件処理に対する不満の表明とともに着手金の返還請求をうかがわせる内容の手紙を受け取っていながら,依頼者の真意を確認せず依頼者の代理人として新訴を提起したこと
19 報酬契約のない事件について,依頼者の方針に反する事件処理をしたり,その信頼を失うような不十分な事務処理をしたことを理由に委任契約を解除された後,話し合いをすることなく報酬請求の訴えを提起する行為
20 破産管財人に選任された後,破産財団に属する動産について無断搬出を放置したり,監査委員の同意を得ないで任意売却をなす行為
21 仮処分の保証金等として預かった金員につき,本来の趣旨に使用せずその全部又は一部を本人に返還しない行為
22 自己名義の法律事務所において非弁活動を行うことを放置した行為
23 相手方申請の証人に対して,証明妨害となる郵便を発送した行為
24 公判廷内へ写真機を携行する行為及び公判廷内で許可を受けずに写真を撮影する行為
25 破産管財人に選任された後,破産事件の担当裁判官に対して背広等を贈与した行為及び破産会社経営のゴルフ場を買い取るため会社を設立した行為
26 酒気帯びの疑いの濃い状態での信号無視,免許証の提示拒否,呼気検査拒否等の行為
27 相手方代理人の了解なく直接相手方本人と交渉した上,相手方代理人を誹謗,中傷して懲戒に陥れようとする行為
28 相手方当事者に対する訴状の送達につき,十分な調査をしないまま公示送達の申立てをして,相手方当事者欠席のまま勝訴判決を得た行為
29 会社の監査役の地位にありながら,当該会社の債権者の代理人として,当該会社所有の不動産に対して仮差押えを申し立てる行為
30 和解成立後,和解の依頼者を相手方とする事件を和解の相手方から受け,元依頼者に対する和解上の債務をなしくずし的に消滅させる弁護活動をする行為
31 刑事告訴手続を受任しながら放置し,依頼者に虚偽の報告をし続けた行為
32 契約解除時における室内遺留品を随意処分できる旨の自力救済をあらかじめ認める内容の賃貸借契約条項は公序良俗に反し無効であるのに,これを安易に有効であると考え,室内を一度も見ず,遺留品目録も作成せず,遺留品一切を処分した行為
33 民事事件の解決方を受任しながら長期にわたり処理を怠り,提訴していないにもかかわらず,虚偽の口頭弁論期日を報告するなど,約11か月にわたり依頼者を欺いた行為
34 代理人として株式の売却事務を処理する際,対向的当事者に対して仲介料を要求し,多額の金員を受領等した行為
35 弁護士が自己の顧問先を相手方として債権の取立てを行う行為
36 証拠が変造されたことを知りつつ,これを書証として提出する等した行為
37 法律家でない者に対して「審判」,「出頭命令」と題する書面を送付し,何ら法的根拠がないのに,あたかも法的手続きによるかの如く装った行為
38 接見禁止等がなされている被疑者に対し,接見の際,虚偽の供述をそそのかすような手紙を仕切り版越しに閲読させ,接見室において2度にわたり被疑者の母親と携帯電話で会話をさせた行為
39 養子縁組の証人となった弁護士が養親双方の意思の確認を怠った行為及び遺言執行者への就任を承諾し,任務遂行中でありながら,遺留分減殺請求事件において相続人の一部の代理人となる行為
40 訴訟提起していないのに依頼者に対し訴訟提起したと偽り,偽造した裁判所受付印が押捺してある訴状のコピーを送付した行為
41 テレビ番組制作者から依頼を受け,職務上の請求として,戸籍謄本,住民票等を交付請求して取得し,番組制作者に交付し,対価を得た行為
42 遺言執行者が,遺言執行終了後,遺言無効確認請求訴訟において特定の相続人の訴訟代理人として訴訟活動をする行為
43 民事再生法施行後約9か月経過した時期において,同法の調査を怠り,法定の期間内に受継の申立てをしなかった行為
44 国選弁護人である弁護士が,勾留中の被疑者への差し入れの手数料として10万円を受領した行為
45 マンションの一室の占有回復を依頼された事案で,期限までに明渡しのないときは鍵を変更する旨の内容証明郵便を出し,入口等に立入禁止の張り紙を張った上,玄関の鍵を取り換えた行為
46 株主構成に争いのある株式会社の代表取締役の職務執行者が,任務終了後,当該会社の株主権確認請求訴訟の当事者の一方の代理人に就任する行為
47 訴訟上の証拠として提出する目的で行った弁護士会照会の回答書を,目的外使用が禁止されていることを看過してシンポジウムで資料として配布し,目的外使用が禁止されていることを注意喚起された後も回収しなかった行為
48 共犯者の弁護人が,弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者に該当しないにもかかわらず,身体の拘束を受けている他の共犯者と立会人なくして接見した行為
49 成年後見人が,被後見人の死亡後,残余財産の引渡し未了のまま,一部相続人の代理人として遺産分割事件を担当した行為
50 法律相談等を通じて損害賠償請求訴訟の依頼を受けたが,速やかにその諾否を依頼者に通知しなかった行為

第4の4 弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義

1 橋下徹弁護士が第1審被告となった最高裁平成23年7月15日判決の裁判官竹内行夫の補足意見は,「懲戒請求権が何人にも認められていることの意義」として以下のとおり述べています(ナンバリング及び改行を行いました。)。なお,本件発言④は,④「懲戒請求ってのは誰でも彼でも簡単に弁護士会に行って懲戒請求を立てれますんで,何万何十万っていう形であの21人の弁護士の懲戒請求を立ててもらいたいんですよ」というものでした。
(1) 第1審被告は,本件発言④において,懲戒請求は「誰でも彼でも簡単に」行うことができる旨述べた。
   弁護士法58条1項は,「何人も」懲戒の事由があると思料するときはその事由を添えて懲戒請求ができるとして,広く一般の人に対して懲戒請求権を認めている。
   これは,弁護士に対する懲戒については,その権限を自治団体である弁護士会及び日本弁護士連合会に付与し国家機関の関与を排除していることとの関連で,そのような自治的な制度の下において,懲戒権の適正な発動と公正な運用を確保するために,懲戒権発動の端緒となる申立てとして公益上重要な機能を有する懲戒請求を,資格等を問わず広く一般の人に認めているものであると解される。
   これは自治的な公共的制度である弁護士懲戒制度の根幹に関わることであり,安易に制限されるようなことがあってはならないことはいうまでもない。
   日本弁護士連合会のインターネット上のホームページにおいても,「懲戒の請求は,事件の依頼者や相手方などの関係者に限らず誰でもでき,その弁護士等の所属弁護士会に請求します(同法58条)」と紹介されているところである。
   懲戒請求の方式について,弁護士法は,「その事由の説明を添えて」と定めているだけであり,その他に格別の方式を要求していることはない。
   仮に,懲戒請求を実質的に制限するような手続や方式を要求するようなことがあれば,それは何人でも懲戒請求ができるとしたことの趣旨に反することとなろう。
(2) また,「懲戒の事由があると思料するとき」とはいかなる場合かという点については,懲戒請求が何人にも認められていることの趣旨及び懲戒請求は懲戒審査手続の端緒にすぎないこと,並びに,綱紀委員会による調査が前置されていること(後記)及び綱紀委員会と懲戒委員会では職権により関係資料が収集されることに鑑みると,懲戒請求者においては,懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠なく懲戒請求をすることは許されないとしても,一般の懲戒請求者に対して上記の相当な根拠につき高度の調査,検討を求めるようなことは,懲戒請求を萎縮させるものであり,懲戒請求が広く一般の人に認められていることを基盤とする弁護士懲戒制度の目的に合致しないものと考える。
   制度の趣旨からみて,このように懲戒請求の「間口」を制約することには特に慎重でなければならず,特段の制約が認められるべきではない。
   この点については,例えば本件のような刑事弁護に関する問題であるからとの理由で例外が設けられるものではない。
(3) 第1審被告は,本件発言④で懲戒請求は「誰でも彼でも簡単に」行うことができると述べて本件呼び掛け行為を行ったが,その措辞の問題は格別,その趣旨は,懲戒請求権を広く何人にも認めている弁護士法58条1項の上記のような解釈をおおむね踏まえたものと解することができると思われる。
(4) ところで,広く何人に対しても懲戒請求をすることが認められたことから,現実には根拠のない懲戒請求や嫌がらせの懲戒請求がなされることが予想される。
   そして,そうしたものの中には,民法709条による不法行為責任を問われるものも存在するであろう。
   そこで,弁護士法においては,懲戒請求権の濫用により惹起される不利益や弊害を防ぐことを目的として,懲戒委員会の審査に先立っての綱紀委員会による調査を前置する制度が設けられているのである。
   現に,本件懲戒請求についても,広島弁護士会の綱紀委員会は,一括調査の結果,懲戒委員会に審査を求めないことを相当とする議決を行ったところである。
   綱紀委員会の調査であっても,対象弁護士にとっては,社会的名誉や業務上の信用低下がもたらされる可能性があり,また,陳述や資料の提出等の負担を負うこともあるだろうが,これらは弁護士懲戒制度が自治的制度として機能するためには甘受することがやむを得ないとの側面があろう。

2 橋下徹弁護士が第1審被告となった最高裁平成23年7月15日判決の裁判官須藤正彦の補足意見には以下の記載があります。
(1)   弁護士法上,「何人も」懲戒請求の申出が認められる(弁護士法58条1項)。その趣旨は,弁護士にあっては,主権者たる国民によりいわゆる「弁護士自治」が負託され,弁護士の懲戒権限が,弁護士会に固有の自律的権能として与えられているところ,その権限の行使が適正になされるためには,それについて国民の監視を受けて広く何人にも懲戒請求が認められることが必要であるからということにある。
   言うまでもなく,弁護士自治ないしは自律的懲戒制度の存立基盤をなすのは,主権者たる国民の信認であるから(「信なくば立たず」である。),この面からも懲戒請求が認められる者の範囲は広くかつ柔軟に解されるべきであって,厳格な調査,検討を求めて,一般国民による懲戒請求の門戸を狭めるようなことがあってはならないし,また,弁護士会によっても,懲戒事由がある場合について,懲戒請求が広く推奨されたりするところである。
   しかしながら,同時に,「何人も」とされていることは,懲戒請求者に,恣意的な懲戒請求を許容したり,広く免責を与えることを意味するわけではない。
   懲戒請求者は,懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査,検討をすべき義務を負うものであり(なお,弁護士法58条1項は,「その事由の説明を添えて」懲戒請求の申出をすることができる旨規定する。),その調査検討義務は上記のとおり厳格に要求されるものではないとしても,安易に懲戒請求がなされてよいということではないのである。
   けだし,懲戒請求は,それがなされると,弁護士会は必ず綱紀委員会の調査に付すから(弁護士法58条2項),対象弁護士は,陳述や資料の提出等を求められ(同法70条の7),また,「懲戒の手続に付された」ことによって,弁護士会の登録換えや登録取消しができなくなる(同法58条2項,62条1項)から,別の地にての開業や公務員への転職もできなくなるという制約も受け,また,事実上,懲戒請求がなされたということが第三者に知られるだけで,対象弁護士自身の社会的名誉や業務上の信用の低下を生じさせるおそれを生じさせ得,軽視し得ない結果が生ずるからである(なお,最高裁平成19年4月24日第三小法廷判決・民集61巻3号1102頁参照)。
(2) 肝腎なことは,懲戒請求が広く認められるのは,弁護士に「品位を失うべき非行」等の懲戒事由がある場合に,弁護士会により懲戒権限が,いわば「疎にして漏らす」ことなく行使されるようにするためであるということである(綱紀審査会制度(弁護士法71条)もほぼ同様の考え方に基づく。)。
   懲戒請求は,弁護士活動に対する批判のための手段として設けられた制度ではないし,弁護士活動に対する苦情申立制度でもない(弁護士会の苦情相談窓口などで責任をもって対処されるべきものである。)。
   特に,前者についていえば,もとより不当な弁護士活動が批判の対象となると同時に懲戒事由に該当することはあり得,その場合は懲戒請求は当然妨げられることはないが,しかし,そのことは,懲戒請求が弁護士活動を批判するための制度であるということを意味するものではないのである。
   更に,ある弁護士につき品位を失うべき非行などの懲戒事由が認められるのに弁護士会が懲戒権限を正しく行使しないというような場合,弁護士会の懲戒制度の運用は不当であり,これについても世論などによって厳しく批判されてしかるべきであろう(所属弁護士会の懲戒しないとの結論に不服な懲戒請求者は,日弁連綱紀委員会に異議を申し出て,その審査を受けることができ(弁護士法64条),更にそこでその結論が維持されたことで不服な場合は,非法曹のみによって構成される綱紀審査会に審査請求をすることができる(同法64条の3)。)。
   だがそのことと懲戒請求を行うこととは別であって,懲戒事由の存否は冷静かつ客観的に判定されるべき性質のものである以上,弁護士会の懲戒制度の運用や結論に不満があるからといって,衆を恃んで懲戒請求を行って数の圧力を手段として弁護士会の姿勢を改めさせようとするのであれば,それはやはり制度の利用として正しくないというべきである。

第4の5 弁護士が他の弁護士に懲戒請求をする場合の取扱い等

1 合理的理由がある場合,弁護士に対する懲戒請求を出すこと自体は問題ないこと等
(1)   依頼者の相手方が,弁護士として依頼者の権利,信用等を不当に侵害する行為をなし,それが弁護士としての品位を害する行為であるという理由で,依頼者が相手方に対する弁護士会懲戒の申立をしたいとして,同手続代理を対象弁護士に依頼してきた場合に,依頼者の主張どおりであれば相手方の当該行為は弁護士としての品位を害する行為として弁護士懲戒の対象になりうると判断されうる場合に,これを受任してその代理人として懲戒申立手続に関与することも,特に問題とされることではありません(平成23年10月18日付の日弁連綱紀審査会の議決が是認するところの,宮崎県弁護士会綱紀委員会の議決参照)。
   そのため,合理的理由がある場合,弁護士に対する懲戒請求を出すこと自体は問題ありません。
(2) 合理的理由がある場合に弁護士に対する懲戒請求を出すことに関する,それぞれの弁護士の事実上の受け止め方には大きな幅がある気がしています。

2 弁護士が作成した懲戒請求書の記載が弁護士としての品位を失うべき非行に当たる場合
平成24年10月9日付の日弁連懲戒委員会の議決には以下の記載があります(弁護士懲戒事件議決例集(第15集)91頁のほか,自由と正義2012年12月号111頁参照))(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
(1)   弁護士法58条1項は,「何人も,弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは,その事由の説明を添えて,その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。」と定めている。「懲戒の事由」とは,弁護士法又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し,所属弁護士会の秩序又は信用を害し,その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行(同法56条1項)であるから,懲戒請求書には,弁護士としての品位を失うべき非行等があったことを具体的に記載しなければならない。
   したがって,その記載は,対象弁護士の名誉を毀損するおそれを有するものであるところ,懲戒請求書は,公開が予定されていないのであるから,その記載自体をもって対象弁護士に対する名誉毀損の成否を論じるのは相当ではない。
   この点で,懲戒請求書は,公開の法廷で陳述される民事訴訟の訴状や準備書面とは異なるものである。
(2)   しかし,弁護士が懲戒請求書を作成した場合,その記載内容がいかなる場合であっても,弁護士としての品位を失うべき非行に当たらないとは解されないのであって,弁護士職務基本規程70条において,他の弁護士等との関係において,相互に名誉と信義を重んじることとされていることから,対象弁護士を侮辱する表現やその人格に対する誹謗中傷等については,弁護士としての品位を失うべき非行にあたる場合があるものと解すべきである。

3 弁護士に対する懲戒請求が弁護士としての品位を失うべき非行に該当する場合等
(1)   弁護士が,弁護士会に対し,懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠に関する調査及び検討をすることなく,特定の弁護士について懲戒請求をした場合,弁護士としての品位を失うべき非行に該当します(自由と正義2013年2月号96頁参照)。
(2) 平成25年9月9日付の日弁連懲戒委員会の議決書(弁護士懲戒事件議決例集(第16集)69頁以下)には,「弁護士が自ら懲戒請求者となって懲戒請求する場合にあっては,根拠のない懲戒請求は被請求者たる弁護士に多大な負担を課することになるのであり,懲戒請求権の濫用は個々の弁護士自らの拠って立つ基盤そのものを傷つけることになりかねないのであるから,より慎重な対応が求められるというべきである。」と書いてあります。
   そのため,弁護士が代理人として懲戒請求をした場合の方が,懲戒請求に関わる弁護士のリスクは小さくなると思われます。

4 弁護士が他の弁護士の悪評を記載した場合,不正競争に該当する場合があること
   弁護士が相手方の代理人弁護士の悪評をブログ等に記載した場合において,ブログ等の記載が事実でなかったときは,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」(不正競争防止法2条1項14号)という意味での不正競争に該当するものとして,差止請求(不正競争防止法3条)及び損害賠償請求(不正競争防止法4条)の対象となります(東京地裁平成24年12月6日判決参照)。

第5 会務活動に関する弁護士の守秘義務

1 弁護士法23条及び弁護士職務基本規程23条の「職務上知り得た」とは,弁護士がその職務を行うについて知り得たという意味であり,弁護士が弁護士法3条の依頼者から依頼を受け,訴訟事件等その他一般的法律事務を処理する上で知り得た事項についての守秘義務が課せられ,また,将来依頼を受ける予定で知り得た事項にも及びます。
   しかし,他方,そのような弁護士としての一般的法律事務を行うものではない,例えば,弁護士会の会務を行う際に知り得た事実については弁護士としての守秘義務は及びません(大阪高裁平成19年2月28日判決)。
   ただし,会務を行う際に知り得た事実であっても,当該委員会にかかる会規等に秘密保持義務が定められていれば,当該会規等の違反となり,それが弁護士の非行に当たる場合,懲戒処分の対象となります。

2 大阪弁護士会の会務活動に関する守秘義務を定める条文としては,以下のものがあります。
① 大阪弁護士会資格審査手続規程24条
→ 資格審査会の会長,委員,予備委員並びに大阪弁護士会の役員及び職員は,審査会の審査に関し職務上知ることのできた秘密を漏らしてはなりません。
② 大阪弁護士会綱紀調査手続規程10条
→ 綱紀委員会の委員,予備委員,鑑定人及び調査員並びに大阪弁護士会の会長,副会長及び職員は,綱紀委員会の調査及び議決に関し,職務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。
③ 大阪弁護士会懲戒手続規程8条
→ 懲戒委員会の委員,予備委員,鑑定人及び調査員並びに大阪弁護士会の会長,副会長及び職員は,綱紀委員会の調査及び議決に関し,職務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。
④ 大阪弁護士会紛議調停手続規程21条
→ 紛議調停委員会の委員長・副委員長又は委員並びに大阪弁護士会の会長・副会長及び職員は調停又は議事について,職務上知ることができた秘密を漏らしてはなりません。
⑤ 弁護士法第二十三条の二に基づく照会に係る嘱託に関する規則6条
→ 23条嘱託は,関与した案件その他について職務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。
⑥ 大阪弁護士会企画調査室規則7条
→ 企画調査室嘱託は,調査に関して知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。
⑦ 大阪弁護士会法規室規則6条
→ 法規室嘱託は,調査に関して知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。
⑧ 大阪弁護士会人権救済調査室規則7条
→ 人権救済調査室嘱託は,調査に関して知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。
⑨ 大阪弁護士会広報室規則7条
→ 広報室嘱託は,職務上知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。

3 ①大阪弁護士会委員会規程及び②大阪弁護士会特別委嘱委員に関する規程には,委員会活動に関する守秘義務を定めた条文はありません。
  ただし,人権擁護委員会規則19条2項は,委員としての職務上知ることのできた秘密を漏らすことを禁じています。

4 日弁連の特別委員会の場合,日弁連会長の承認を経なければ,委員会の議事の内容に関して外部に発表,その他情報を漏らしてはなりません(特別委員会規則12条)。

5(1) 弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は通常,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当しますから,文書提出命令によって提出を求めることもできません(最高裁平成23年10月11日決定参照)。
(2) 「文書提出命令」も参照してください。

第6の1 非弁護士との提携の禁止

1 総論
(1) 「弁護士は,弁護士法第72条から第74条までの規定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当な理由のある者から依頼者の紹介を受け,これらの者を利用し,又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。」(弁護士職務基本規程11条。なお,同趣旨の規定につき大阪弁護士会会則108条2項)とされています。
   そして,禁止される提携の対象は,弁護士法27条と異なり,①弁護士法72条ないし74条の規定に違反する者に限らず,「違反すると疑うに足りる相当な理由のある者」にまで広げられていますし,②「事件の周旋」に限らず,「依頼者の紹介」にまで広げられています。
(2) 自己の名義を利用させるとは,「弁護士某」という名義の他,氏名だけの利用も含まれますし,「○○法律事務所」という標示についても名義の利用に当たる場合があります。
   例としては,大量に処理する報告書,内容証明郵便等に,弁護士の氏名を記載し,更に弁護士の印鑑を弁護士でない者に預けて押捺させる場合があります。
(3)ア 二弁フロンティア2017年10月号「本当に怖い非弁提携」が載っています。
イ   非弁提携業者からの勧誘としては,開口一番,電話口で「~の問題を抱えている方がいらっしゃるのですが」「先生で,~ということは対応可能ですか?」「~事件が増えたら困りますか?(対応できますか?)」と尋ね,事件(それも複数)の依頼を装うものであるとのことです。
   また,非弁提携業者としては,「仕事に困っていそうな弁護士」をターゲットに選びますから,話に乗れば仕事がもらえる,そういう風に弁護士の心をくすぐろうとしますし,弁護士の警戒心を解こうとしてか,株式会社ではなくNPO法人を名乗るケースも少ないとのことです。

2 弁護士法72条から74条までの規定に違反している者の内容
(1) 弁護士法72条から74条までの規定に違反している者の内容は以下のとおりであり,①ないし③に該当する場合,2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられ(弁護士法77条),④ないし⑥に該当する場合,100万円以下の罰金に処せられます(弁護士法77条の2)。
① 弁護士又は弁護士法人でないのに,報酬を得る目的で,業として,訴訟事件その他一般の法律事件に関して,鑑定,代理,和解等の法律事務を取り扱う者(弁護士法72条本文前段違反)
② 弁護士又は弁護士法人でないのに,報酬を得る目的で,業として,法律事件に関する法律事務の取扱いを周旋する者(弁護士法72条本文後段違反)
③ 他人の権利を譲り受けて,訴訟等の手段によって,その権利を実行することを業とする者(弁護士法73条違反)
④ 弁護士又は弁護士法人でないのに,弁護士又は法律事務所の標示又は記載をする者(弁護士法74条1項違反)
⑤ 弁護士又は弁護士法人でないのに,利益を得る目的で,法律相談その他法律事務を取り扱うことを標示又は記載した者(弁護士法74条2項違反)
⑥ 弁護士法人でないのに,その名称中に弁護士法人又はこれに類似する名称を用いた者(弁護士法74条3項違反)
(2) 平成13年6月8日法律第41号(平成14年4月1日施行)に基づき弁護士法人の制度が導入されたことに伴い,弁護士法人を主体とする犯罪(弁護士法30条の21において準用される弁護士法27条及び28条に違反した場合)についても弁護士法77条の適用があることを明確にするとともに,罰金刑の最高額が100万円から300万円に引き上げられました。
(3) 弁護士でない者に,自己の法律事件の示談解決を依頼し,これに,報酬を与えもしくは与えることを約束した者を,弁護士法72条,77条違反の罪の教唆犯として処罰することはできません(最高裁昭和43年12月24日判決)。
(4) 自己の法律事件の解決を弁護士でない者に依頼した者については,弁護士法72条違反の罪の共同正犯にもならないこととなります。
  なぜなら,最高裁昭和43年12月24日判決は,弁護士法は,自己の法律事件を自ら取り扱うことまで禁止しているものとは解されないとしているので,自己の法律事件を弁護士でない者に依頼した者が,弁護士法72条違反の罪の正犯となることはあり得ず,共同正犯にもならないからです。
(5) 以下の士業から依頼者の紹介を受けたり,以下の士業を利用したりした場合,弁護士職務基本規程11条に違反することとなります。
① 紛争の目的の価額が140万円を超える事件に関する相談,和解の交渉,和解契約の締結(例えば,140万円を超える過払金の返還請求)を事実上行っていると疑うに足りる相当な理由のある司法書士
② 権利義務又は事実証明に関する書面の作成(行政書士法1条の2第1項参照)にかこつけて,交通事故・相続紛争等の示談交渉を事実上行っていると疑うに足りる相当な理由のある行政書士
③ 以下の権限外行為を事実上行っていると疑うに足りる相当な理由のある社会保険労務士
(a) ADR手続の利用を前提とする,紛争の価額が60万円を超える労使紛争に関して,弁護士と共同受任することなく行う,相談,和解の交渉,和解契約の締結
(b) ADR手続の利用を前提とする,解雇,退職,雇い止め等の効力を争う労使紛争に関して,弁護士と共同受任することなく行う,相談,和解の交渉,和解契約の締結
(c) ADR手続の利用を前提としない労使紛争(紛争の価額は問わない。)に関して行う,相談,和解の交渉,和解契約の締結


3 弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
(1) 総論
ア 弁護士法72条は以下のとおりです。
   弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
イ 最高裁大法廷昭和46年7月14日判決は,弁護士法72条の趣旨について以下のとおり判示しています。
  同条制定の趣旨について考えると、弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、ひろく法律事務を行なうことをその職務とするものであつて、そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされるなど、諸般の措置が講ぜられているのであるが、世上には、このような資格もなく、なんらの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、同条は、かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられるのである。
ウ 弁護士法72条違反の罪が成立するためには,前段についても,後段についても,①報酬を得る目的があること,及び②業として行うことが必要とされています(最高裁大法廷昭和46年7月14日判決)。
    そのため,例えば,大学の法学部等で教授,学生が継続的に無料法律相談を実施する場合,報酬を得る目的がないことから,本条に違反しません。

(2) 弁護士法72条のそれぞれの文言の意義
ア 「訴訟事件」とは,訴訟として裁判所に係属する民事,刑事及び行政の各事件をいい,人事訴訟事件(例えば,離婚訴訟事件)も含まれます。
  ちなみに,憲法32条にいう裁判とは,同法82条にいう裁判と同様に、現行法が裁判所の権限に属せしめている一切の事件につき,裁判所が裁判の形式をもってするすべての判断作用ないし法律行為を意味するものではなく,そのうち固有の司法権の作用に属するもの,すなわち,裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判だけをいいます(最高裁大法廷昭和45年12月16日判決)。
イ 「非訟事件」とは,裁判所が裁量によって一定の法律関係を形成する裁判をする事件をいい,例としては以下のものがあります。
① 地方裁判所が担当する借地非訟事件(借地借家法41条以下参照)
→ (a)借地条件の変更及び増改築の許可(借地借家法17条),(b)借地契約の更新後の建物の再築の許可(借地借家法18条1項),(c)土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可(借地借家法19条),(d)建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可(借地借家法20条1項)のことです。
   ちなみに,借地非訟事件における裁判に対しては,即時抗告をすることができます(借地借家法48条1項)。
② 家庭裁判所が担当する家事審判事件(家事事件手続法別表第一及び別表第二参照)
ウ 「行政庁に対する不服申立事件」とは,例示列挙されている審査請求,異議申立て及び再審査請求(行政不服審査法参照)のほか,例えば,弁護士会が行った,対象弁護士等(懲戒の手続に付された弁護士又は弁護士法人をいいます。以下同じ。)を懲戒しない旨の決定等に対する異議の申出(弁護士法64条)があります。
エ 「その他一般の法律事件」には,以下のものが含まれます。
① 債権者の委任により請求・弁済受領・債務免除等を行うこと(最高裁昭和37年10月4日決定
② 自賠責保険金の請求・受領に関するもの(東京高裁昭和39年9月29日判決)
③ 交通事故の相手方との間で示談交渉をすること(札幌高裁昭和46年11月30日判決)
④ 建物賃貸借契約の解除,及び賃借人の立退交渉をすること(広島高裁平成4年3月6日決定)
⑤ 真正な登記名義を回復する登記手続をすること(東京地裁平成6年4月20日判決)
⑥ 登記・登録に関する各種申請(日弁連調査室の見解)
⑦ 税務に関する各種申請(日弁連調査室の見解)
⑧ 特許等に関する各種申請(日弁連調査室の見解)
⑨ 裁判所以外の紛争処理機関に対する各種の申立て(日弁連調査室の見解)
オ 弁護士法72条の「法律事件」といえるためには,事件性のある案件,つまり,事件といわれる案件及びこれと同視できる程度に法律関係に争いがあって事件といいうる案件である必要があるかどうかについては,争いがあります。
  なお,日弁連調査室の見解のほか,東京高裁平成7年11月29日判決(埼玉司法書士会職域訴訟控訴審判決)は,事件性は不要であるとしています。
カ 弁護士資格等がない者らが,ビルの所有者から委託を受けて,そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為については,その業務が,立ち退き合意の成否等をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであって,弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものというべきであり,その際,賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いをしていたなどといった事情の下では,弁護士法72条違反の罪が成立します(最高裁平成22年7月20日決定)。
キ 「鑑定」とは,法律上の専門的知識に基づいて法律事件について法律的見解を述べることをいいます。
   「代理」とは,当事者に代わり当事者の名において法律事件に関与することをいいます。
   「仲裁」とは,当事者間の紛争を仲裁判断に基づき解決することをいいます。
   「和解」とは,争っている当事者に互いに譲歩することを求めて争いを止めさせることをいいます。
   なお,これらは,「法律事務」の例示と考えられますから,上記の定義に入らないものはすべて「その他の法律事務」に含まれるとされています。
ク 「業として」とは,反復的に又は反復の意思をもって法律事務の取扱い等をし,それが業務性を帯びるに至った場合をいいます(最高裁昭和50年4月4日判決)。
ケ 「周旋」とは,訴訟事件の当事者等と弁護士との間に介在し,両者間における委任関係その他の関係成立のための便宜を図り,その成立を容易ならしめる行為をいい(名古屋高裁金沢支部昭和34年2月19日判決),現実に,委任契約等の契約関係が成立している必要はありません。
   周旋を「受け」とは,受諾する意思表示をすることであり,明示であると黙示であるとを問いません。
コ 弁護士法72条本文前段に抵触する委任契約は,民法90条に照して無効です(最高裁昭和38年6月13日判決)。
カ 昭和30年8月10日法律第155号(同日施行)による改正前の弁護士法7条は,外国の弁護士となる資格を有する者であって,最高裁判所の承認を受けて法律事務を行うことが認められていた者は,弁護士法72条ただし書所定の「この法律に別段の定めがある場合」に基づいて法律事務を取り扱っていました。
   しかし,昭和30年8月10日法律第155号による改正後は,該当する規定が弁護士法からなくなりました。

4 弁護士法73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
(1) 総論
ア 弁護士法73条は以下のとおりです。
   何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。
イ 「他人」とは,不特定の者を対象に権利を譲り受ける場合のみならず,特定の者の債権の取立て,整理のために権利を譲り受ける場合を含みます。
   「権利」とは,債権だけでなく,物権その他いかなる権利をも含みます。
   「譲り受け」とは,売買,贈与その他法形式のいかんを問わず,他人の権利の移転を受け,自らに帰属させる行為をいい,有償であると無償であるとを問いませんし,権利実行により利益を得る目的の有無も問いません。
ウ 弁護士法73条の趣旨は,主として弁護士でない者が,権利の譲渡を受けることによって,みだりに訴訟を誘発したり,紛議を助長したりするほか,同法72条本文の禁止を潜脱する行為をして,国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずることを防止するところにあります。
  このような立法趣旨に照らすと,形式的には,他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても,上記の弊害が生ずるおそれがなく,社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には,同法73条に違反するものではありません(最高裁平成14年1月22日判決)。
エ ゴルフ会員権の売買には,ゴルフ会員権市場ともいうべき市場が存在し,その市場において多数の会員権の売買が日常的に行われていることは公知の事実です。
  そして,ゴルフ会員権の売買等を業とする者が,業として,上記市場から,会員権取引における通常の方法と価格で会員権を購入した上,ゴルフ場経営会社に対して社会通念上相当な方法で預託金の返還を求めたものであれば,利益を得る目的で会員権を購入していたとしても,弁護士法73条に違反するものではないと解されることがあります。
  そのため,ゴルフ会員権の譲受けの方法・態様,権利実行の方法・態様,譲受人の業務内容やその実態等を審理して,譲受人の行為が濫訴を招いたり紛議を助長したりするおそれがないかどうかや弁護士法72条本文が禁止する預託金の取立て代行業務等の潜脱行為に当たらないかどうかなどを含め,社会的経済的に正当な業務の範囲内の行為であるかどうかが判断されることとなります(最高裁平成14年1月22日判決参照)。
オ 弁護士法72条違反の委任行為は非弁行為の禁止の趣旨から無効と解すべきであって(最高裁昭和38年6月13日判決),同法73条も,同法72条と同趣旨の規定です。
   そのため,弁護士法73条の違反行為は,民法90条にも違反するものとして無効であると解されています(東京地裁平成16年11月26日判決等。なお,先例として,東京高裁平成3年6月27日判決)。

(2) サービサー法の位置づけ等
ア 債権管理回収業に関する特別措置法(平成10年10月16日法律第126号。平成11年2月1日施行)(=サービサー法)に基づき,法務大臣の許可(サービサー法3条)を受けた会社である債権回収会社(サービサー)は,弁護士法72条及び73条の特例として(サービサー法1条参照),業として,特定金銭債権(サービサー法2条参照)の管理及び回収をすることができます。
イ 債権管理回収業とは,弁護士又は弁護士法人以外の者が,①委託を受けて法律事件に関する法律事務である特定金銭債権の管理及び回収を行う営業,又は②他人から譲り受けて訴訟,調停,和解その他の手段によって特定金銭債権の管理及び回収を行う営業をいいます(サービサー法2条2項)。
ウ 「弁護士は,係争の目的物を譲り受けてはならない。」(弁護士職務基本規程17条)とされています(弁護士法28条も同趣旨の規定です。)。
  そのため,取立てを目的とする債権譲受行為は,債権を譲り受けなければ,当該権利の実行に当たり支障が存在するなど,行為を正当化する特段の事情がない限り,弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」に該当します(最高裁平成21年8月12日決定における裁判官宮川光治の補足意見参照)。
  よって,①サービサーの場合,他人から債権を譲り受けることができるのに対し,②弁護士の場合,他人から債権を譲り受けることができないという違いがあります。
エ 債権譲渡は,その原因行為(その要件事実)が要件事実と考えられるから,原因行為を売買とするときには,債権移転の対価として金銭支払が約されているという抽象的事実が要件事実になります。
   この抽象的事実が主張されれば,原因行為が売買であるとの法性決定が可能になり,相手方において,基本的に,抗弁(債権譲渡が請求原因である場合)主張が可能になると考えられるものの,相手方の訴訟上の攻撃防御の観点からは,当該抽象的事実に当たる具体的事実(主要事実)が主張されるべきと考えられます。
   ただし,どの程度の具体化した事実主張を要するかは,各事案における具体化の困難性や相手方が攻撃防御上被る不利益の程度によって決定されることとなると解されています(東京地裁平成22年6月25日判決)。
オ サービサー法及び弁護士法73条により譲受けが禁止されている債権とは,いわゆる事件性のある債権,すなわち,債務者において支払を遅延し回収困難の状態にあったものなど,債権が通常の状態ではその満足を受けられないものをいうと解されています(東京地裁平成23年6月27日判決。なお,先例として,福岡高裁昭和36年11月17日判決参照)。
カ 法務大臣の許可を受けないで,消費者金融会社から,通常の状態では満足を得るのが困難な貸付債権を譲り受け,同債権に関し,取立てのための請求をし,弁済を受けるなどしてその管理回収業を営んだ行為は,債権管理回収業に関する特別措置法33条1号,3条に該当します(最高裁平成24年2月6日決定)。

第6の2 非弁護士との提携の取締り

1(1) 日弁連の,①多重債務処理事件にかかる非弁提携行為の防止に関する規程(平成14年2月28日会規第48号。平成14年4月1日施行),及び②多重債務処理事件にかかる非弁提携行為の防止に関する規則(平成14年3月15日規則第81号。平成14年4月1日施行),並びに③これらに関する運用指針に基づき,単位弁護士会が,非弁提携行為の取締りを行っています。
(2)   「多重債務処理事件にかかる非弁提携行為」とは,金融業者に対して多重に債務を負担する者から受任する任意整理事件,破産申立事件,民事再生申立事件,特定調停申立事件及びこれに類する事件について,弁護士又は弁護士法人が,弁護士法に違反して法律事務を取扱い,又は事件を周旋することを業とする者から,事件の紹介を受ける行為,これらの者を利用する行為,又はこれらの者に自己の名義を利用させる行為をいいます。
(3) 日弁連HPに「隣接士業・非弁活動・非弁提携対策(業際・非弁・非弁提携問題等対策本部)」が載っています。

2 大阪弁護士会の場合,法七十二条等問題委員会規則(平成17年2月15日規則第163号。平成17年4月1日施行)に基づき,法七十二条等問題委員会が,非弁提携行為対策業務として,非弁提携行為の取締りを実施しています。

第7 弁護士会の弁護士に対する指導監督権の内容

〇大阪高裁平成21年7月30日判決(弁護士懲戒手続の研究と実務(第3版)113頁及び114頁)は以下のとおり判示しています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
1 個々の弁護士(なお,弁護士法の平成13年法律第41号に基づく改正により,その適用対象には弁護士法人も含まれるが,ここでは,弁護士法人も含めて単に『弁護士』と表記する。)が弁護士法1条1項の使命に基づいて行う基本的人権を擁護し,社会正義を実現するための活動は,ときとして国家機関に対する批判者の立場に立つべき場面も想定されなければならないから,それらの活動の適正な遂行を保障するときには,弁護士の活動を国家機関の監督から独立させる必要がある。
   他方,弁護士法その他の法律によって弁護士に認められた諸権能は,国民の権利義務に直結することもあり,その諸権能に基づく弁護士の職責の適正な遂行が確保される必要がある。
2 そこで,弁護士法は,弁護士会は,弁護士の使命及び職務にかんがみ,その品位を保持し,弁護士の事務の改善進歩を図るため,弁護士の指導,連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とするものと定めて(31条1項),弁護士会に対し,その所属する弁護士に対し,その職責を適正に遂行するよう指導,監督する権限を与えるとともに,弁護士会の指導,監督権限を全弁護士に及ぼすべく,弁護士は各単位弁護士会に加入しなければ,弁護士として活動することができないとする強制加入制度を定めている(36条,36条の2)。
3 もっとも,弁護士法31条1項に言う『指導』,『監督』の意味については,①弁護士の基本的人権を擁護し,社会正義を実現するための活動の適正な遂行を保障するためには,弁護士の活動について高度の独立性を認める必要があること,②弁護士には,職務上知り得た事実についての守秘義務が認められていること(弁護士法23条,刑法134条1項),③弁護士法は,弁護士会に対し,所属弁護士に対する監督を全うさせるための特別な権能として,懲戒権を与えているが,懲戒権の行使は,弁護士会内の独立委員会である綱紀委員会及び懲戒委員会の判断に基づいて,弁護士会の恣意に流されることなく,適正かつ公正に行われることが厳格に規定されていることを総合して考慮すると,弁護士会は,所属弁護士の受任事件の処理に関して,違法又は不当な点が存在する疑いがあり,その点が懲戒事由に該当すると思料するときは,原則として,懲戒手続によって指導監督を行うべきであって,それ以外には,専ら,所属弁護士の具体的な業務執行や事件処理にわたらない範囲での研修や研究等の一般的な指導監督をすることができるにとどまるというべきであり,所属弁護士の受任事件の処理に関して懲戒手続以外に個別具体的に指導監督権を行使することは,例えば,明らかに違法な弁護活動,実質的に弁護権を放棄したと認められる行為,あるいは職業的専門家である弁護士としての良識を著しく逸脱した行為などが存在し,懲戒手続を待っていたのでは回復し難い損害の発生が見込まれるとか,あるいは,懲戒手続によるのみでは回復し難い損害の発生を防止することができないなど,特段の事情が存在する場合に限って,しかも当該違法又は不当な行為を阻止し,又はこれを是正するために必要な限度でしか許されないと解するのが相当である。

第8 弁護士会の懲戒手続

1 弁護士会の綱紀委員会
(1) 懲戒の請求をした場合,弁護士会は対象弁護士を懲戒の手続に付し,綱紀委員会において事案の調査を行います(弁護士法58条2項)。
(2)ア 弁護士会は自ら,所属弁護士について懲戒手続の開始を求めることができます(弁護士法58条2項)ところ,実務上,「会請求」とか「会立件」といわれています。
イ   「条解弁護士法」(第3版)457頁には以下の記載があります。
   弁護士会が所属弁護士(弁護士法人)について,懲戒事由があるか否かを判断する機関としては,会の執行機関としての会長,会の議決機関としての総会又は常議員会(これに準ずる機関を含む),法70条2項により「所属の弁護士及び弁護士法人の綱紀保持に関する事項をつかさどる」とされる綱紀委員会が考えられるが,懲戒手続の開始を求めるか否かの意思決定であるから,原則として意思決定機関たる総会又は常議員会が上記の判断をする機関と考えるのが相当である。会長は,重要な会務について総会又は常議員会の意思決定に基づいて執行するほか,日常の会務の範囲では自ら意思決定する権限を有しているが,懲戒手続の開始を求めるか否かの判断は,所属弁護士(弁護士法人)の権利身分に重大な影響を与える事項であるとともに,懲戒権の行使が弁護士会の根本的な権能である以上,日常の会務とみなすことはできないであろう。更に,綱紀委員会については,本条2項において,弁護士会を綱紀委員会と別個な存在として対置させていることから見て,綱紀委員会に調査を命ずるか否かの実質的判断を綱紀委員会自らにさせるとするのは妥当ではない。
(3)ア   弁護士会の綱紀委員会は,調査対象の弁護士(「被調査人」といいます。),懲戒請求をした人(「懲戒請求者」といいます。)から資料の提出を求めたり,調査期日に事情を聴取したりして,非行が認められるかどうかを調査します。
   綱紀委員会は,調査の結果に基づき,以下のいずれかの議決をします(弁護士法58条4項参照)。
① 懲戒相当(弁護士法58条3項)
   懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする旨の議決です。
② 懲戒不相当(弁護士法58条4項)
   以下の場合に行われる,懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当としない旨の議決です。
(a) 除斥期間の経過等により懲戒請求(弁護士法58条1項)が不適法である場合
(b) 除斥期間の経過等により会請求(弁護士58条2項)が不適法である場合
(c) 被調査人に懲戒の事由がない場合
(d) 事案の軽重その他情状を考慮して被調査人を懲戒すべきでないことが明らかであると認める場
③ 調査終了
   調査開始後に被調査人が死亡したり,除名,破産手続開始等の事由により会員資格を喪失した場合に行われる議決です。
イ 綱紀委員会が「懲戒相当」の議決をした場合,弁護士会は懲戒委員会の事案の審査を求ます。
   ただし,平成15年7月25日法律第128号による改正前の弁護士法58条3項は「弁護士会は、綱紀委員会が前項の調査により弁護士又は弁護士法人を懲戒することを相当と認めたときは、懲戒委員会にその審査を求めなければならない。」と定めていたのに対し,改正後の弁護士法58条3項は「綱紀委員会は、前項の調査により対象弁護士等(懲戒の手続に付された弁護士又は弁護士法人をいう。以下同じ。)につき懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と認めるときは、その旨の議決をする。この場合において、弁護士会は、当該議決に基づき、懲戒委員会に事案の審査を求めなければならない。」と定めていますから,「懲戒相当」という表現はやや不正確ではあります。
(4) 綱紀委員会は,数多の懲戒事案の中から懲戒委員会の判断を仰がなければならない事案を選別して,濫請求事案については早急に被調査人を懲戒手続から解放するとともに,懲戒委員会の判断が必要となる事案では,事実関係の調査を遂げて証拠の散逸を防ぎ,かつ,懲戒委員会の事実調査に要する負担を極力軽減させるという機能を有しています(東弁リブラ2010年7月号「綱紀・懲戒-綱紀委員会から7つのメッセージ- 総論:綱紀・懲戒制度の概要」参照)。
(5)ア 懲戒請求者は,弁護士会の綱紀委員会が相当の期間内に懲戒の手続を終えない場合,日弁連綱紀委員会に対して異議の申出をできます(弁護士法64条1項前段)。
   日弁連白書2016年の「懲戒事案の調査・審査期間」によれば,懲戒請求から綱紀委員会による議決までの期間は,過去5年間,約70%から約90%の案件について1年以内となっています。
イ 日弁連HPの「懲戒請求事案に関する異議申出の方法について(相当期間異議の場合)」が参考になります。
   異議申出をする場合,正本1通及び副本2通の合計3通の異義申出書を日弁連に提出します。
エ 半年以内に懲戒請求を棄却する旨の議決が出ることは通常ありません(弁護士自治を考える会HPの「『弁護士懲戒請求の研究』 懲戒請求が棄却されるまでに要する期間」参照)。
(6) 弁護士会の懲戒手続については,①途中経過について知らせてもらうことはできませんし,②どのような調査をしたかを知らせてもらうこともできませんし,③いつ終わるかを知らせてもらうこともできないみたいです(ガジェット通信HPの「弁護士は弁護士を裏切らない!?役立たずの懲戒請求制度」参照)。

2 弁護士会の懲戒委員会
(1) 弁護士会の懲戒委員会は,事案の審査を求められた場合,対象弁護士等を懲戒するかどうかを決定します(弁護士法58条5項及び6項)。
(2)ア 懲戒委員会は,事案の審査の結果,対象弁護士等につき懲戒することを相当と認めるときは、懲戒の処分の内容を明示して、その旨の議決をします。
   この場合,弁護士会は,当該議決に基づき,対象弁護士等を懲戒しなければなりません(弁護士法58条5項)。
イ 懲戒委員会は,事案の審査の結果,対象弁護士等につき懲戒しないことを相当と認めるときは,その旨の議決をします。
   この場合,弁護士会は,当該議決に基づき,対象弁護士等を懲戒しない旨の決定をしなければなりません(弁護士法58条6項)。
(3)ア 懲戒委員会は,議決をしたときは,速やかに理由を付した議決書を作成しなければなりません(弁護士法67条の2)。
イ 対象弁護士等を懲戒する場合,議決書の主文は以下のようなものになります。
① 「対象弁護士等を除名することを相当とする」
② 「対象弁護士等に対し,退会を命ずることを相当とする」
③ 「対象弁護士等に対し,業務を○年○月停止することを相当とする」
④ 「対象弁護士等を戒告することを相当とする」
ウ 対象弁護士等を懲戒しない場合,議決書の主文は以下のとおりとなります。
⑤   「対象弁護士等を懲戒しないことを相当とする」
エ 対象弁護士等が死亡したり,資格を喪失したりした場合,議決書の主文は以下のようなものになります。
⑥   「本件懲戒請求手続は対象弁護士等の死亡(資格喪失)により終了した」
オ 弁護士法は,弁護士及び弁護士法人の懲戒について特に適正・公正を期するため,懲戒委員会を設置したわけですから,懲戒委員会の議決は,弁護士会を拘束し,議決と異なる処分をすることはできません。
(4) 懲戒請求者は,弁護士会の懲戒委員会が相当の期間内に懲戒の手続を終えない場合,日弁連懲戒委員会に対して異議の申出をできます(弁護士法64条1項前段)。
(5)   日弁連白書2016年の「懲戒事案の調査・審査期間」によれば,懲戒委員会への付議から議決までの期間別件数は,過去5年間,約80%の案件で1年以内となっていますものの,2年を超える案件が約2%あります。

3 大阪弁護士会の綱紀員会及び懲戒委員会の委員
(1) 大阪弁護士会の綱紀委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から,それぞれ大阪弁護士会会長が委嘱します(弁護士法70条の3第1項前段)。
   この場合,①裁判官又は検察官である委員はその地の高等裁判所若しくは地方裁判所又は高等検察庁検事長若しくは地方検察庁検事正の推薦に基づき,②その他の委員は大阪弁護士会の総会の決議に基づき,委嘱する必要があります(弁護士法70条の3第1項後段・弁護士法66条の2第1項後段)。
   ただし,任期が2年であること(弁護士法70条の3第3項)とあいまって,予備委員の選任(弁護士法70条の5)も含めて,毎年5月の定時総会決議(大阪弁護士会会則34条4号)において,選任に関する事項は常議員会に白紙委任されています(大阪弁護士会会則57条2号参照)。
(2) 大阪弁護士会の懲戒委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から,それぞれ大阪弁護士会会長が委嘱します(弁護士法66条の2第1項前段)。
   この場合,①裁判官又は検察官である委員はその地の高等裁判所若しくは地方裁判所又は高等検察庁検事長若しくは地方検察庁検事正の推薦に基づき,②その他の委員は大阪弁護士会の総会の決議に基づき,委嘱する必要があります(弁護士法66条の2第1項後段)。
   ただし,任期が2年であること(弁護士法66条の2第3項)とあいまって,予備委員の選任(弁護士法66条の4)も含めて,毎年5月の定時総会決議(大阪弁護士会会則34条4号)において,選任に関する事項は常議員会に白紙委任されています(大阪弁護士会会則57条2号参照)。

4 懲戒手続に関する大阪弁護士会の規程等
(1) 大阪弁護士会の場合,以下の規程があります。
① 大阪弁護士会会則(平成14年3月6日全部改正)(平成14年4月1日施行)116条ないし124条
② 大阪弁護士会綱紀調査手続規程(平成16年2月2日会規第44号)(平成16年4月1日施行)
③ 大阪弁護士会懲戒手続規程(平成16年2月2日会規第45号)(平成16年4月1日施行)
(2) 大阪弁護士会所属の弁護士に対して懲戒処分があった場合,以下のとおり,懲戒処分を受けた弁護士の氏名等が以下のとおり公告されます(大阪弁護士会懲戒手続規程58条)。
   ただし,以下の「公告」は,マスコミ発表を伴う「公表」とは異なります(大阪弁護士会会則121条1項参照)。
① 月刊大阪弁護士会の「告示」欄への掲載
→ 月刊大阪弁護士会というのは大阪弁護士会の機関誌であり,毎月末日ぐらいに発行されています(大阪弁護士会HPの「広報誌」参照)。
② 大阪弁護士会館13階の会員ロビー掲示板への掲載
→ (a)除名又は退会命令の場合は1年間,(b)業務停止の場合はその期間,(c)戒告の場合は2週間,掲載されます。


5 弁護士会に損害賠償責任が発生する場合等
(1) 弁護士会が行った懲戒が弁護士会の裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる違法なものである場合において,当該弁護士会において当該懲戒が違法なものではないと信じたことにつき相当の理由もない場合,損害賠償責任が発生すると思います(東京地裁平成23年9月29日判決参照)。
(2) 弁護士会の会長及び弁護士会の資格審査会の会長として弁護士名簿登録請求の進達拒絶に関与する行為は,国家賠償法1条1項にいう「公共団体の公権力の行使にあたる公務員」としての行為に該当すると解されています(大阪高裁平成22年5月12日判決)。
   そのため,弁護士会の懲戒委員会が弁護士又は弁護士法人の懲戒をする行為は,国家賠償法1条1項にいう「公共団体の公権力の行使にあたる公務員」としての行為に該当すると思います。
   よって,弁護士会の懲戒委員会の委員は個人として不法行為責任を負うことはないと思います(公務員個人が不法行為責任を負わないことに関する最高裁昭和30年4月19日判決最高裁昭和53年10月20日判決参照)。

6 自由と正義の懲戒公告等に関する裁判例
(1) 最高裁平成15年3月11日決定は以下のとおり判示しました(ナンバリングをしています。)から,弁護士に対する戒告処分が日本弁護士連合会会則97条の3第1項に基づく公告を介して第三者の知るところとなり弁護士としての社会的信用が低下するなどの事態は,行政事件訴訟法25条2項にいう「処分により生ずる回復の困難な損害」に当たりません。
① 弁護士に対する戒告処分は,それが当該弁護士に告知された時にその効力が生じ,告知によって完結する。その後会則97条の3第1項に基づいて行われる公告は,処分があった事実を一般に周知させるための手続であって,処分の効力として行われるものでも,処分の続行手続として行われるものでもないというべきである。
② そうすると,本件処分の効力又はその手続の続行を停止することによって本件公告が行われることを法的に阻止することはできないし,本件処分が本件公告を介して第三者の知るところとなり,相手方の弁護士としての社会的信用等が低下するなどの事態を生ずるとしても,それは本件処分によるものではないから,これをもって本件処分により生ずる回復困難な損害に当たるものということはできない。
(2)   東京地裁平成23年9月29日判決は,自由と正義の懲戒公告等について,以下のとおり判示しています(ナンバリング及び改行は私が行ったものです。)。
① 弁護士会は,弁護士法の規定に基づいて委託を受けた公権力の行使として弁護士に対する懲戒を行うものであり,弁護士会が被告日本弁護士連合会に対し弁護士に対する懲戒をした旨の報告をする行為は,弁護士に対する懲戒の一環を成すものとして弁護士会の所掌事務の範囲に含まれるということができるところ,この報告行為は,それによって直接国民の権利を制限し又は国民に義務を課すなどするものではないから,特別な法令上の根拠なくして適法にすることができるというべきである。
   そして,弁論の全趣旨によれば,被告日本弁護士連合会が弁護士会から弁護士に対する懲戒をした旨の報告を受けたことを同被告の機関雑誌「自由と正義」に掲載して公告をする行為は,依頼者その他の者が弁護士の身分を失った者又は弁護士の業務を行うことができない者に対して法律事務を委任することがないようにし,併せて他の弁護士が同種の非行に及ぶことを予防することを目的とするものであると認めることができるのであって,弁護士の使命の重要性,職務の社会性等に鑑みると,その公表目的の正当性及び公表の必要性が認められ,それにつながるものである弁護士会が被告日本弁護士連合会に対し弁護士に対する懲戒をした旨の報告をする行為についても,その報告目的の正当性及び報告の必要性を肯定することができる。
   また,被告日本弁護士連合会の上記公告行為は,法曹関係者等をその主要な閲読者とする同被告の機関雑誌「自由と正義」を媒体として,懲戒を受けた弁護士の氏名,登録番号,事務所,住所,懲戒の種別,処分の理由の要旨,処分の効力の生じた日を公表するものであって,公表手段及びその態様の相当性を肯定することができるというべきである。
② もっとも,上記弁護士会の報告行為が弁護士に対する懲戒をした事実を不特定多数の者に摘示するものにほかならないことは上記のとおりであって,一たび懲戒を受けた事実が不特定多数の者に摘示されれば当該弁護士の社会的評価が著しく低下することとなることを考慮すると,当該懲戒が弁護士会の裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる違法なものである場合において,当該報告行為をした弁護士会において当該懲戒が違法なものではないと信じたことにつき相当の理由もないようなときには,弁護士会は,弁護士の名誉を毀損する違法な報告行為をしたものとして,それにより当該弁護士に生じた損害を賠償し又は当該弁護士の名誉を回復するのに適当な措置を執る義務を負うと解するのが相当である。

第9 日弁連の懲戒手続

1 日弁連の綱紀委員会
(1) 弁護士会の「綱紀」委員会が対象弁護士を懲戒しない旨の決定をした場合,懲戒請求者は日弁連に対し異議の申出ができ(弁護士法64条1項前段),異議の申出があった場合,日弁連は,綱紀委員会において異議の審査を行います(弁護士法64条の2第1項)。
   そして,日弁連の綱紀委員会は,①弁護士会の懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする旨の議決をしたり(弁護士法64条の2第2項),②異議の申出を却下又は棄却する旨の議決をしたりします(弁護士法64条の2第5項)。
(2) 日弁連の綱紀委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から,それぞれ日弁連の会長が委嘱します(弁護士法70条の3第2項前段)。
   この場合,①裁判官又は検察官である委員はその地の高等裁判所若しくは地方裁判所又は高等検察庁検事長若しくは地方検察庁検事正の推薦に基づき,②その他の委員は日弁連の総会の決議に基づき,委嘱する必要があります(弁護士法70条の3第2項後段・弁護士法66条の2第2項後段)。
   ただし,任期が2年であること(弁護士法70条の3第3項)とあいまって,予備委員の選任(弁護士法70条の5)も含めて,毎年5月の定時総会決議(日弁連会則34条3号)において,選任に関する事項は理事会に白紙委任されています(日弁連会則59条6号参照)。
(3) 日弁連HPの「懲戒請求事案に関する異議の申出の方法について」が参考になります。
   異議申出をする場合,正本1通及び副本2通の合計3通の異義申出書を日弁連に提出します。

2 日弁連の綱紀審査会
(1) 異議の申出の却下又は棄却に対して不服がある場合,懲戒請求者は,日弁連に対し,綱紀審査会による綱紀審査の申出ができます(弁護士法64条の3)。
   そして,日弁連の綱紀審査会は,①弁護士会の懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする旨の議決をしたり(弁護士法64条の4第1項),②綱紀審査の申出を却下又は棄却する旨の議決をしたりします(弁護士法64条の4第4項及び第5項)。
(2)ア 綱紀審査会は平成15年7月25日法律第128号(平成16年4月1日施行)による弁護士法改正により日弁連に設置された機関であり,法曹三者(=裁判官,検事及び弁護士)以外の11人の学識経験者で構成されています(弁護士法71条の2及び71条の3)。
イ 平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書では,「懲戒請求者が綱紀委員会の議決に対する異議申出を棄却・却下された場合に、国民が参加して構成される機関に更なる不服申立ができる制度の導入」が求められていました(首相官邸HPの司法制度改革審議会意見書(抜粋)第3.6(2)「弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備」)。
(3) 日弁連の綱紀審査会の委員は,日弁連の会長が日弁連の総会の決議に基づき,委嘱します(弁護士法71条の3第1項)。
   ただし,任期が2年であること(弁護士法71条の3第2項)とあいまって,予備委員の選任(弁護士法71条の5)も含めて,毎年5月の定時総会決議(日弁連会則34条3号)において,選任に関する事項は理事会に白紙委任されています(日弁連会則59条6号参照)。

3 日弁連の懲戒委員会
(1) 懲戒請求人からの「異議の申出」(弁護士法64条の5)
ア   ①弁護士会の「懲戒」委員会が対象弁護士を懲戒しない旨の決定をした場合,又は②弁護士会がした懲戒の処分が不当に軽い場合,懲戒請求者は,日弁連に対し,異議の申出ができ(弁護士法64条1項後段),異議の申出があった場合,日弁連は,懲戒委員会において異議の審査を行います(弁護士法64条の5第1項)。
   そして,日弁連の懲戒委員会は,①弁護士会の懲戒しない旨の決定を取り消して対象弁護士を懲戒したり(弁護士法64条の5第2項),②弁護士会の懲戒の処分を取り消してより重い処分に変更したり(弁護士法64条の5第4項),③異議の申出を却下又は棄却したりします(弁護士法64条の5第5項)。
イ 日弁連HPの「懲戒請求事案に関する異議の申出の方法について」が参考になります。
   異議申出をする場合,正本1通及び副本2通の合計3通の異義申出書を日弁連に提出します。
(2) 対象弁護士等からの「審査請求」(弁護士法59条)
ア   弁護士会の懲戒委員会が対象弁護士等を懲戒する旨の決定をした場合,対象弁護士は,日弁連に対し,審査請求ができ(弁護士法59条),審査請求があった場合,日弁連は,懲戒委員会において弁護士会の懲戒処分の当否を審査した上で,審査請求を却下したり,棄却したり,弁護士会の懲戒処分を取り消したり,変更したりします(行政不服審査法46条1項本文参照)。
   また,日弁連は,必要があると認めるときは,審査請求人からの申立てにより,又は職権で,懲戒処分の効力を停止することができます懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程46条1項)。
イ 対象弁護士等は,弁護士会の懲戒処分に対して直接,取消訴訟を提起することはできません(弁護士法61条2項参照)から,不服がある場合,必ず審査請求により争う必要があります。
ウ 日弁連は,審査請求人に不利益に単位弁護士会の懲戒処分を変更することはできません(行政不服審査法48条)。
(3) 日弁連の懲戒委員会の委員
ア   日弁連の懲戒委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から,それぞれ日弁連の会長が委嘱します(弁護士法66条の2第2項前段)。
   この場合,①裁判官又は検察官である委員はその地の高等裁判所若しくは地方裁判所又は高等検察庁検事長若しくは地方検察庁検事正の推薦に基づき,②その他の委員は日弁連の総会の決議に基づき,委嘱する必要があります(弁護士法66条の2第2項後段)。
   ただし,任期が2年であること(弁護士法66条の2第3項)とあいまって,予備委員の選任(弁護士法66条の4)も含めて,毎年5月の定時総会決議(日弁連会則34条3号)において,選任に関する事項は理事会に白紙委任されています(日弁連会則59条6号参照)。
イ 平成29年10月31日付の司法行政文書不開示通知書によれば,最高裁は,平成29年度日弁連懲戒委員会の名簿を保有していません。


4 懲戒手続に関する日弁連の規程
   日弁連の場合,以下の規程があります。
① 日弁連会則(昭和24年7月9日制定)(昭和24年9月1日施行)68条ないし73条
② 綱紀委員会及び綱紀手続に関する規程(平成15年11月12日会規第57号)(平成16年4月1日施行)
③ 綱紀審査会及び綱紀審査手続に関する規程(平成15年11月12日会規第58号)(平成16年4月1日施行)
④ 懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程(平成15年11月12日会規第59号)(平成16年4月1日施行)
⑤ 懲戒処分の公告及び公表等に関する規程(平成15年11月12日会規第60号)(平成16年4月1日施行)
→ 弁護士の懲戒処分は,官報をもって公告される(弁護士法64条の6第3項)ほか,日弁連の機関雑誌(日弁連会則7条参照)で公告されています(日弁連会則68条)。
   なお,日弁連の機関雑誌は「自由と正義」というタイトルの月刊誌であり,一般の人にも販売されています。
⑥ 弁護士会の懲戒の通知に関する規程(平成15年11月12日会規第61号)(平成16年4月1日施行)
→ 弁護士法64条の6第2項及び64条の7第1項に基づく,弁護士会の懲戒の処分及び手続に関する日弁連への通知に関する事項を定めた規程です。

第10 弁護士の懲戒処分と取消訴訟

1 懲戒処分を受けた対象弁護士は東京高裁に取消訴訟を提起できること
(1) 日弁連の懲戒委員会が審査請求を却下又は棄却した場合,対象弁護士は,東京高裁に対し,日弁連の裁決の取消しの訴えを提起することができます(弁護士法61条1項)。
  そして,東京高裁の事務分配において,日弁連の裁決の取消しの訴えについては,東京高裁第4特別部が担当しています。
(2)ア 行政処分の取消又は変更を求める訴えにおいて,裁判所が行政処分を取り消すのは,行政処分が違法であることを確認してその効力を失わせるものであって,弁論終結時において,裁判所が行政庁の立場に立って,いかなる処分が正当であるかを判断するものではありません(最高裁昭和28年10月30日判決)。
イ 弁護士を懲戒する権限は所属弁護士会及び日弁連に属し,弁護士法61条1項の訴訟で東京高等裁判所が判断するのは弁護士を懲戒するかどうかではなく,弁護士会又は日弁連がした懲戒処分の当否であります。
   そのため,懲戒処分があった後に懲戒請求者と被請求弁護士との間に示談が成立したとしても,このような事実は懲戒処分の当否とは関係がありませんから,裁判に際し斟酌されるべき事実ではありません(最高裁昭和34年12月4日判決)。
(3) 業務停止処分を受けた弁護士は,業務停止の期間を経過した後においても,右処分を受けたことにより日本弁護士連合会会長の被選挙権を有しない場合には,右処分にかかる裁決の取消しを求める訴えの利益を有します(最高裁昭和58年4月5日判決)。
(4) 弁護士が業務停止3月の懲戒処分を受けた場合において,当該弁護士が当該業務停止期間中に期日が指定されているものだけで31件の訴訟案件を受任していたなどの事実関係の下では,上記処分によって当該弁護士に生ずる社会的信用の低下,業務上の信頼関係の毀損等の損害は,行政事件訴訟法25条2項にいう「重大な損害」に当たります(最高裁平成19年12月18日決定)。
   そのため,業務停止処分の取消訴訟を提起した場合,執行停止の決定を得られることがあります。
(5) 取消訴訟の判決が確定した場合,日弁連は,官報及び機関雑誌(自由と正義)にこれを公告しなければならず(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程3条7号・8号),処分が戒告である場合を除き,裁判所,検察庁及び法テラスにその旨を通知しなければなりません(同規程5条)。

2 懲戒請求者は取消訴訟を提起できないこと
(1) 弁護士法は,弁護士を懲戒するかどうかは単位弁護士会又は日弁連の自主的な判断に委せ,懲戒しないとした場合でも,裁判所への懲戒の訴求までは許されないと解されています(最高裁昭和38年10月18日判決参照)。
(2)   
弁護士の懲戒制度は,弁護士会又は日弁連の自主的な判断に基づいて,弁護士の綱紀,信用,品位等の保持をはかることを目的とするものでありますものの,弁護士法58条所定の懲戒請求権及び同法64条所定の異議申出権は,懲戒制度の目的の適正な達成という公益的見地から特に認められたものであり,懲戒請求者個人の利益保護のためのものではありません。
  それゆえ,懲戒請求者が日弁連の異議申出を棄却する旨の裁決に不服があるとしても,法律に特に出訴を認める規定がないかぎり,裁判所に出訴することは許されないところ,右につき出訴を認めた法律の規定がありませんから,日弁連のした裁決の取消しを求めて東京高等裁判所(弁護士法61条1項参照)に訴えを提起しても,不適法なものとして却下されます(最高裁昭和49年11月8日判決)。

3 弁護士会の懲戒処分が違法となる場合
(1)   弁護士に対する所属弁護士会及び日弁連による懲戒の制度は,弁護士会の自主性や自律性を重んじ,弁護士会の弁護士に対する指導監督作用の一環として設けられたものであります。
    また,懲戒の可否,程度等の判断においては,懲戒事由の内容,被害の有無や程度,これに対する社会的評価,被処分者に与える影響,弁護士の使命の重要性,職務の社会性等の諸般の事情を総合的に考慮することが必要です。
   そのため,ある事実関係が「品位を失うべき非行」といった弁護士に対する懲戒事由に該当するかどうか,また,該当するとした場合に懲戒するか否か,懲戒するとしてどのような処分を選択するかについては,弁護士会の合理的な裁量にゆだねられているものと解され,弁護士会の裁量権の行使としての懲戒処分は,全く事実の基礎を欠くか,又は社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り,違法となります(最高裁平成18年9月14日判決)。
(2) 東京高裁平成24年11月29日判決は,第二東京弁護士会による業務停止1月の懲戒処分に対する審査請求を棄却した日弁連の裁決について,重要な事実関係についての基礎を欠いているとして取り消しました。

第11の1 弁護士に対する不当な懲戒請求をした場合の責任

1 弁護士法58条1項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において,請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに,あえて懲戒を請求するなど,懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには,違法な懲戒請求として不法行為を構成します(最高裁平成19年4月24日判決)。
   これに対して,訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られます(最高裁平成21年10月23日判決及び最高裁平成22年7月9日判決。なお,先例として,最高裁昭和63年1月26日判決及び最高裁平成11年4月22日判決参照)。
   つまり,弁護士に対する懲戒請求は,民事訴訟の提起と異なり,相当性を欠くと認められる限り不法行為を構成するということです。
 
2(1) 弁護士に懲戒の処分を受けさせる目的で,虚偽の申告をした場合,虚偽告訴罪として3月以上10年以下の懲役に処せられます(刑法172条)。
(2)   虚偽の申告とは,申告の内容をなすところの刑事・懲戒の処分の原因となる事実が客観的真実に反することをいいます(最高裁昭和33年7月31日決定)。

3 河原崎法律事務所HP「弁護士に対する懲戒請求が不法行為になるか」に,弁護士に対する懲戒請求が不法行為を構成するとした東京地裁平成19年6月25日判決,東京地裁平成19年10月30日判決及び大阪地裁平成20年10月23日判決が抜粋されています。

4 BLOGOSに「弁護士が懲戒請求されるときの気分とは?」が載っています。

第11の2 弁護士の弁護活動について不法行為責任が発生する場合等

1 勾留されている患者の診療に当たった拘置所の職員である医師が,過失により患者を適時に外部の適切な医療機関へ転送すべき義務を怠った場合において,適時に適切な医療機関への転送が行われ,同病院において適切な医療行為を受けていたならば,患者に重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性の存在が証明されるときは,国は,患者が上記可能性を侵害されたことによって被った損害について国家賠償責任を負います最高裁平成17年12月8日判決)。
   そのため,依頼者が適切な弁護活動を受けていたならば,正当な権利を実現できた相当程度の可能性の存在が証明された場合,弁護士は,依頼者の上記可能性を侵害されたことによって被った損害について損害賠償責任を負うと思われます。

2(1) 患者が適切な医療行為を受けることができなかった場合に,医師が,患者に対して,適切な医療行為を受ける期待権の侵害のみを理由とする不法行為責任を負うことがあるか否かは,当該医療行為が著しく不適切なものである事案について検討し得るにとどまります(最高裁平成28年7月19日判決(判例秘書のほか,判例時報2342号7頁)。なお,先例として,最高裁平成17年12月8日判決最高裁平成23年2月25日判決参照)。
   そのため,依頼者が適切な弁護活動を受けることができなかった場合に,弁護士が,依頼者に対して適切な弁護活動を受ける期待権の侵害のみを理由とする不法行為責任を負うことがあるか否かは,当該弁護活動が著しく不適切なものである事案について検討し得るにとどまると思われます。
(2) 古賀克重法律事務所ブログの「最高裁裁判官から見た弁護活動のポイントとは、大橋正春元最高裁判事講演会」には,最高裁平成28年7月19日判決は,病院の代理人弁護士が書いた上告理由ではなく,職権による検討に基づいて原判決を破棄したものであるため,「裁判所としてもあまり表に出したくない判決なんだと思う」と書いてあります。

3 最高裁平成17年12月8日判決の裁判官才口千晴の補足意見には,「医師について「患者が適時に適切な医療機関へ転送され,同医療機関において適切な検査,治療等の医療行為を受ける利益を侵害されたこと」を理由として損害賠償を認めることは,医療全般のみならず,専門的かつ独占的な職種である教師,捜査官,弁護士などについても,適切な教育,捜査,弁護を受ける利益の侵害などを理由として損害賠償責任を認めることにつながり,責任が認められる範囲が限りなく広がるおそれがある。」と書いてあります。

第12 懲戒手続の除斥期間

1 総論
(1) 懲戒の事由があったときから3年を経過した場合,弁護士会が「懲戒の手続」を開始することはできない(弁護士法63条)ところ,3年の期間は除斥期間ですから,停止事由等はありません。
(2) ①長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪の公訴時効は3年ですし,②弁護士の預かり書類の消滅時効は3年である(民法171条)。
   そのため,事件終了の時から3年を経過した場合,非行行為に関する書類がない場合がありうることは,3年という除斥期間を定めた理由の一つとされています。

2 除斥期間の始期
(1) 除斥期間の始期は,「懲戒の事由があったとき」,つまり,懲戒事由に当たる行為が終了したときであり,継続する非行についてはその行為が終了した時です。
(2)ア   弁護士が依頼者から又は依頼者のために預かった金品を返還すべき時期に依頼者に返還しないという行為は,それ自体,依頼者の弁護士に対する信頼,ひいては国民一般の弁護士全体に対する信頼を破壊するものとしてその品位を失うべき非行に当たりますから,返還するまでの間,非行は継続していると解されています(東京高裁平成13年11月28日判決参照)。
イ 依頼者と弁護士の委任関係が終了した場合,その終了時に預かった金品等の清算がなされるのが通常であることや委任事務に係る資料の保存にも限度があること,委任関係が終了した後もいつまでも懲戒しうるというのでは弁護士は極めて不安定な立場に置かれることとなり,除斥期間を設けた法の趣旨に反することにもなることから,弁護士から依頼者から又は依頼者のために預かった金品を横領するなどしてこれを返還しない場合であっても,委任関係が終了したときは,その終了の時点から除斥期間が開始すると解されています(東京高裁平成13年11月28日判決参照)。
(3) 数個の非行事実が連続して存在する場合,それぞれの行為について除斥期間が進行するのか,それとも連続した一連の行為として包括的な一つの行為とみなし,これら数個の行為全部の終了時をもって除斥期間の始期とみるべきかは,具体的事案によって判断されます。

3 「懲戒の手続」の意義
(1)ア 日弁連は従前,「懲戒の手続」は懲戒委員会の審査手続だけをいうのであって,綱紀委員会の調査手続はこれに含まれないという解釈(現定説)を採用していました。
   しかし,平成11年3月19日付の理事会決定により,「懲戒の手続」には綱紀委員会の調査手続が含まれるという解釈(非限定説)に変更しました。
   そして,同年6月9日付で,日弁連会長から各弁護士会会長宛の「弁護士法第63条及び第64条の解釈について(通知)」と題する文書において,各弁護士会においてもこの解釈に従うように通知しました。
イ 当時の弁護士法63条及び64条は現在,弁護士法62条及び63条です。
(2) 平成16年4月1日施行の,司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律(平成15年7月25日法律第128号)は,弁護士法58条2項において,懲戒請求があった場合に弁護士会が「懲戒の手続」に付して,綱紀委員会に事案の調査をさせる旨を規定していますところ,これは非限定説を前提としたものと解されています。
(3) 懲戒事由があった日から3年を経過する前に綱紀委員会の調査手続に付されていた場合,除斥期間は問題とならなくなります。
(4) 懲戒請求先の弁護士会がいつ,綱紀委員会の調査手続に付したかどうかについては,懲戒請求者が懲戒請求先の弁護士会に対し,綱紀委員会の事件番号(例えば,平成29年(綱)第1234号)及び対象弁護士の氏名を告知すれば,電話で教えてくれることがあります。
(5) 弁護士自治を考える会HPの「懲戒請求申立を2年半放置した弁護士会に対し日弁連がやっと異議を認めた」では,第一東京弁護士会は,懲戒請求書を受領した当日に,綱紀委員会に調査を請求したみたいです。

4 司法書士の懲戒の場合,除斥期間がないこと等
(1) 司法書士の場合,懲戒権者は法務局又は地方法務局の長でありますところ,司法書士の懲戒の場合,除斥期間がありません。
(2) 平成24年11月6日付の,衆議院議員秋葉賢也君提出司法書士に対する懲戒に関する質問に対する答弁書には以下の記載があります。
   御指摘の「除斥期間」の規定が弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)に設けられているのは、弁護士が、司法書士と異なり、事件が終了した時から三年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れることとされていることなどに鑑みたものであると解されており、また、司法書士に対する懲戒に当たっては、当該非違行為による関係者及び社会に与える影響の大きさ等の個別具体的な事情をしん酌した上、公正かつ適正にこれを行っているところであることから、「除斥期間」の規定を司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)に設ける必要はないと考える。

第13の1 弁護士法人アディーレ法律事務所

1 弁護士法人アディーレ法律事務所
(1) 弁護士法人アディーレ法律事務所(以下「アディーレ」といいます。)は平成17年4月1日に設立登記がされ,平成29年10月11日現在,本店のほか,85の支店があります。
(2) 法人登記簿によれば,アディーレの主たる事務所は,東京都豊島区東池袋3丁目1-1 サンシャイン60にあります。
(3)ア 法人登記簿によれば,平成24年7月17日,代表社員であった石丸幸人弁護士が社員となり,同年8月1日に資格変更の登記がなされています。
   そのため,同日以降,弁護士法人アディーレ法律事務所には代表社員がいないみたいです。
イ インターネットアーカイブに保存されているアディーレHPの「当事務所の弁護士・司法書士の紹介」(平成29年8月6日時点のもの)には,石丸幸人弁護士が代表弁護士になっています。
(4) 代表社員の定めがない場合,業務を執行する社員が各自弁護士法人を代表します(弁護士法30条の13第1項)。
   そのため,石丸幸人弁護士その他の幹部弁護士はアディーレの定款で業務を執行する社員とされている(弁護士法30条の12参照)から,代表権を持っているのかも知れません。
(5) 平成29年10月11日現在,アディーレの弁護士数は185人であり,そのうちの92人が社員でありますところ,修習期別は以下のとおりです。
55期:社員 1人
56期:社員 1人
59期:使用人1人
60期:社員 1人,使用人 2人
61期:社員 1人,使用人 4人
62期:社員 3人,使用人 3人
63期:社員11人,使用人 4人
64期:社員 9人,使用人 7人
65期:社員11人,使用人 9人
66期:社員11人,使用人 3人
67期:社員16人,使用人14人
68期:社員14人,使用人21人
69期:社員13人,使用人25人

2 アディーレの池袋本店及び支店における修習期の分布及び社員の配置状況
   平成29年10月11日時点における,アディーレの池袋本店及び支店における修習期の構成及び社員の配置状況は以下のとおりです(弁護士法人は原則として,すべての支店に社員を常駐させる必要があります(弁護士法30条の17)。)。
(1) 関東弁護士会連合会
東京弁護士会
池袋本店(68人)
56期(社員),59期,60期,61期(社員),61期3人,62期2人,63期2人,64期3人,65期5人,66期2人,67期(社員)2人,67期8人,68期(社員)1人,68期14人,69期21人
丸の内支店:65期(社員)
新宿支店:63期(社員)
町田支店:68期(社員)
北千住支店:66期(社員)
立川支店:63期(社員)
第一東京弁護士会
池袋本店:期外1人
神奈川県弁護士会
横浜支店:63期(社員),68期
川崎支店:65期(社員),64期,65期
横須賀支店:63期(社員)
埼玉弁護士会
川越支店:64期(社員)
大宮支店:65期(社員)
千葉県弁護士会
千葉支店:67期(社員)
船橋支店:66期(社員)
柏支店:67期(社員)
茨城県弁護士会
水戸支店:67期(社員),68期
栃木県弁護士会
宇都宮支店:66期(社員)
群馬弁護士会
高崎支店:67期(社員)
静岡県弁護士会
静岡支店:63期(社員)
沼津支店:62期(社員)
浜松支店:65期(社員)
山梨県弁護士会
甲府支店:68期(社員)
長野県弁護士会
長野支店:66期(社員)
松本支店:68期(社員)
新潟県弁護士会
新潟支店:62期(社員)
上越支店:67期(社員)
長岡支店:68期(社員)

(2) 近畿弁護士会連合会 
大阪弁護士会
大阪支店:55期(社員),61期,65期,67期,69期
なんば支店:62期(社員)
堺支店:66期(社員)
豊中中央支店:69期(社員)
枚方支店:68期(社員)
京都弁護士会
京都支店:64期(社員),60期,62期,68期
兵庫県弁護士会
神戸支店:66期(社員)
姫路支店:69期(社員)
奈良弁護士会
奈良支店:63期(社員)
滋賀弁護士会
滋賀草津支店:69期(社員)
和歌山弁護士会
和歌山支店:63期(社員)

(3) 中部弁護士会連合会 
愛知県弁護士会
名古屋支店:60期(社員),63期(社員),63期2人,64期,67期2人,68期2人,69期
一宮支店:68期(社員)
岡崎支店:66期(社員)
豊橋支店:67期(社員)
三重弁護士会
津支店:67期(社員)
四日市支店:67期(社員)
岐阜県弁護士会
岐阜支店:69期(社員)
福井弁護士会
福井支店:69期(社員)
金沢弁護士会
金沢支店:67期(社員)
富山県弁護士会
富山支店:66期(社員)

(4) 中国地方弁護士会連合会 
広島弁護士会
広島支店:63期(社員)
福山支店:65期(社員)
山口県弁護士会
下関支店:69期(社員)
岡山弁護士会
岡山支店:66期(社員)
倉敷支店:64期(社員)
鳥取県弁護士会
鳥取支店:68期(社員)
島根県弁護士会
松江支店:65期(社員)

(5) 九州弁護士会連合会 
福岡県弁護士会
福岡支店:63期(社員),65期(社員),64期,68期2人
小倉支店:69期(社員)
久留米支店:68期(社員)
佐賀県弁護士会
佐賀支店:66期(社員)
長崎県弁護士会
長崎支店:65期(社員)
佐世保支店:65期(社員)
大分県弁護士会
大分支店:67期(社員)
熊本県弁護士会
熊本支店:65期(社員)
鹿児島県弁護士会
鹿児島支店:67期(社員),69期
宮崎県弁護士会
宮崎支店:68期(社員)
都城支店:68期(社員)
沖縄弁護士会
那覇支店:64期(社員)
沖縄胡屋支店:69期(社員)

(6) 東北弁護士会連合会
仙台弁護士会
仙台支店:64期(社員)
福島県弁護士会
福島支店:69期(社員),65期
郡山支店:68期(社員)
山形県弁護士会
山形支店:67期(社員)
酒田支店:68期(社員)
岩手弁護士会
盛岡支店:65期(社員)
秋田弁護士会
秋田支店:69期(社員)
青森県弁護士会
青森支店:67期(社員)
八戸支店:69期(社員),67期

(7) 北海道弁護士会連合会  
札幌弁護士会
札幌支店:64期(社員),65期,66期,67期2人
苫小牧支店:66期(社員)
函館弁護士会
函館支店:63期(社員)
旭川弁護士会
旭川支店:64期(社員)
釧路弁護士会
釧路支店:64期(社員)
帯広支店:68期(社員)

(8) 四国弁護士会連合会 
香川県弁護士会
高松支店:64期(社員),64期
徳島弁護士会
徳島支店:67期(社員)
高知弁護士会
高知支店:69期(社員)
愛媛弁護士会
松山支店:69期(社員)

3 アディーレの支店設置時期
→ 履歴事項証明書に設立日が出てこない(1),更正登記があった(8),(40)及び(42)を除き,法人登記簿に基づいて記載しています。
   また,平成29年9月1日の福井支店設置をもって,全都道府県への出店を達成しました。
(平成19年設置分:1個)
(1) 平成19年 5月16日:立川支店(平成21年8月8日移転)
(平成20年設置分:1個)
(2) 平成20年 6月23日:那覇支店
(平成21年設置分:2個)
(3) 平成21年 2月20日:名古屋支店
(4) 平成21年11月 1日:札幌支店
(平成22年設置分:3個)
(5) 平成22年 5月31日:仙台支店
(6) 平成22年 8月 6日:大阪支店
(7) 平成22年10月13日:高松支店
(平成23年設置分:10個)
(8)   平成23年 1月24日:福岡支店
(9)   平成23年 2月17日:横浜支店
(10) 平成23年 3月 9日:新潟支店
(11) 平成23年 4月 5日:静岡支店
(12) 平成23年 7月 1日:神戸支店
(13) 平成23年 8月18日:広島支店
(14) 平成23年 9月 9日:金沢支店
(15) 平成23年10月 5日:青森支店(平成29年3月1日移転)
(16) 平成23年11月15日:千葉支店
(17) 平成23年11月30日:宇都宮支店
(平成24年設置分:19個)
(18) 平成24年 1月 6日:京都支店
(19) 平成24年 2月29日:富山支店
(20)ないし(22)
         平成24年 3月14日:町田支店(平成28年10月5日移転),千住支店及び鹿児島支店
(23)及び(24)
         平成24年 4月 2日:浜松支店及び小倉支店
(25) 平成24年 5月 1日:丸の内支店
(26) 平成24年 6月 5日:新宿支店
(27) 平成24年 8月 1日:和歌山支店
(28) 平成24年 9月20日:奈良支店
(29) 平成24年10月10日:水戸支店
(30) 平成24年10月23日:福山支店
(31)及び(32)
         平成24年11月 7日:岐阜支店及び大宮支店
(33)及び(34)
         平成24年11月13日:岡山支店及び長岡支店
(35) 平成24年12月 1日:姫路支店
(36) 平成24年12月20日:四日市支店
(平成25年設置分:22個)
(37)ないし(39)
         平成25年 1月 7日:函館支店,釧路支店及び旭川支店
(40) 平成25年 1月28日:岡崎支店
(41) 平成25年 1月24日:佐賀支店
(42)ないし(44)
         平成25年 2月 4日:堺支店,徳島支店及び草津支店
(45) 平成25年 4月22日:静岡支店
(46) 平成25年 5月23日:熊本支店
(47) 平成25年 6月18日:沖縄胡屋支店
(48)及び(49)
         平成25年 7月 1日:長崎支店及び佐世保支店
(50) 平成25年 7月30日:八戸支店
(51) 平成25年 8月12日:松山支店
(52)及び(53)
         平成25年 9月26日:福島支店及び郡山支店
(54) 平成25年 9月26日:盛岡支店
(55)ないし(58)
         平成25年10月18日:長野支店,松本支店,川崎支店及び高崎支店
(平成26年設置分:0個)
(平成27年設置分:13個)
(59) 平成27年 4月10日:苫小牧支店
(60) 平成27年 5月 1日:久留米支店
(61) 平成27年 6月 1日:なんば支店
(62)及び(63)
         平成27年 7月22日:横須賀支店及び船橋支店
(64) 平成27年 8月11日:柏支店(平成29年2月1日移転)
(65)ないし(67)
         平成27年 9月18日:三重支店,豊橋支店及び都城支店
(68)ないし(70) 
         平成27年10月 8日:上越支店,川越支店及び大分支店
(71) 平成27年12月15日:倉敷支店
(平成28年設置分:4個)
(72)及び(73)
         平成28年 3月22日:山形支店及び酒田支店
(74) 平成28年 5月13日:帯広支店
(75) 平成28年 6月 1日:一宮支店
(平成29年設置分:10個)
(76)及び(77)
         平成29年 2月10日:甲府支店及び宮崎支店 
(78) 平成29年 6月 1日:秋田支店
(79) 平成29年 6月13日:高知支店
(80)及び(81)
         平成29年 7月 1日:松江支店及び鳥取支店 
(82) 平成29年 7月18日:下関支店
(83)ないし(85)
         平成29年 9月 1日:枚方支店,豊中支店及び福井支店

5 アディーレ及びそのグループ法人
   国税庁法人番号公表サイトで「アディーレ」と検索すれば,以下の4法人が出てきます。
① 弁護士法人アディーレ法律事務所(法人番号は9013305001034)
   東京都豊島区東池袋3丁目1番1号サンシャイン60  
② 税理士法人アディーレ会計事務所(法人番号は6013305002282)
   東京都豊島区東池袋3丁目1番1号サンシャイン60 
③ 株式会社アディーレ不動産事務所(法人番号は1021001054437)
   東京都港区虎ノ門1丁目11番5号 
④ 株式会社アディーレ・リーガルサポート(法人番号は3012801009083)
   東京都立川市曙町2丁目8番3号

第13の2 弁護士法人アディーレ法律事務所に対する懲戒処分等

1 東京弁護士会の綱紀・懲戒の手続
(1)ア   東京弁護士会の綱紀・懲戒の手続については,東弁リブラ2010年7月号「綱紀・懲戒-綱紀委員会から7つのメッセージ- 総論:綱紀・懲戒制度の概要」が非常に参考になります。
イ 7つのメッセージは以下のとおりです。
① 委任契約書の作成など-形で伝え合うことの大切さ
② 預り金に関して
③ 準備書面等を書くにあたって
④ 「自力救済」-意識してますか
⑤ 利益相反・中立義務違反について
⑥ 債務整理事件の処理について
⑦ 刑事弁護を巡るトラブルについて
(2)   平成22年7月現在,東京弁護士会の綱紀委員会は弁護士委員が100人,外部委員が9人の合計109人であり,懲戒委員会は弁護士委員8人,外部委員7人の合計15人です。
   綱紀委員会では,弁護士委員は原則として3名1組の調査部を構成していますし,弁護士委員には若手も多数います。
   懲戒委員会の弁護士委員はベテランがほとんどです。
(3) 東弁リブラ2010年7月号「綱紀・懲戒-綱紀委員会から7つのメッセージ- 総論:綱紀・懲戒制度の概要」1頁目には以下の記載があります。
   「弁護士を懲戒することができるのは,当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会のみです。
   弁護士の懲戒制度における大きな特長であり,いわゆる弁護士自治の中核をなすものです。このように他に類例のない制度であるだけに,しばしば「かばいあい」「なれあい」などのいわれのない非難が寄せられますが,実際には厳正に運用されており,この点は綱紀委員会(以下,東京弁護士会綱紀委員会のことを「当委員会」といいます。一般に綱紀委員会を指すときは「綱紀委員会」といいます。)や懲戒委員会の外部委員(裁判官,検察官,学識経験者から選出された委員)からも評価されているところです。」

2 アディーレと東京弁護士会との関係等
(1) アディーレの代表弁護士であった石丸幸人弁護士(56期)は,平成21年度東京弁護士会会長選挙に立候補したものの,落選しました。
(2) 東京弁護士会は,アディーレに対し,平成22年10月5日,破産手続の申立て遅滞等を理由に戒告の懲戒処分を出しました(弁護士自治を考える会HPの「弁護士法人アデーレ法律事務所の懲戒処分の要旨」参照)。
(3)ア アディーレ所属の弁護士であった赤瀬康明弁護士(新64期)は,平成27年度東京弁護士会副会長選挙,及び平成28年度東京弁護士会副会長選挙に立候補したものの,落選しました(外部HPの「「任意加入制」提案,東弁副会長候補出馬という「始まり」」,及び外部ブログの「東京弁護士会会長選挙における「理念なき立候補者」へ」参照)。
イ 赤瀬康明弁護士は,平成28年度副会長選挙の選挙公報で以下のとおり記載していたみたいです(外部ブログの「東京弁護士会会長選挙における「理念なき立候補者」へ」参照)。
 
昨年度の副会長選挙では私が掲げたマニフェスト以前に、私の立候補には「理念がない」とのお声をいただきました。
その声がいう「理念」とはなんでしょうか?
「理念」という言葉をひとり歩きさせ、何も動かないことでしょうか?
その声がいう「理念」が、東京弁護士会の会員の方を満足させたのでしょうか?
私に「理念」があるとしたら、ただひとつ。それは、「実際に決断・実行し、東京弁護士会の会員にとって東京弁護士会をより魅力的な会にすること」です。
東京弁護士会にとってお客様はだれでしょうか?
誰のお金によって運営できているのでしょうか?
いうまでもなく、東京弁護士会に所属する会員こそが「お客様」であるはずです。
他の誰でもなく、会員の方こそが会費を支払っているのです。
もう一度、皆様にお尋ねします。
今の弁護士会のあり方や活動に本当に満足していますか?
今の弁護士会の活動はあなたの意志を本当に反映していますか?
 
(4) アディーレは,司法修習生向けの合同就職説明会への参加を拒否されたことを理由に,東京弁護士会に対して損害賠償請求訴訟を提起していましたが,東京地裁平成29年2月10日判決で敗訴しました(弁護士自治を考える会HPの「アディーレ法律事務所が敗訴 東京地裁,就職説明会拒否は「合理的」」参照)。
(5) 東京弁護士会綱紀委員会は,平成29年4月3日までに,アディーレについて懲戒審査相当とする議決を出しました(産経ニュースHPの「「今だけ無料」処分…アディーレ法律事務所、代表弁護士ら「懲戒審査相当」 東京弁護士会などの綱紀委議決」参照)。

3 アディーレの景品表示法違反(有利誤認)
(1)   アディーレは,平成27年10月22日,新聞の広告欄及び自社のHPに掲載した「お詫びとお知らせ」において,「平成27年9月1日から返金保証キャンペーンを廃止し、着手金の返金保証などの上記各サービスを、期間を限定しないで実施する恒常的なサービスへと改めました。期間限定であると誤認されて返金保証キャンペーンにお申し込みをされた方で、ご依頼の解除を希望される場合には、契約を解除させていただいたうえで、無条件に着手金全額をお返しさせていただきます。」と表明しました(国民生活センターHPの「弁護士法人アディーレ法律事務所「債務整理に係る事務【誇大表示・広告に関するお知らせ・返金】」参照」)。
(2) 消費者庁は,アディーレに対し,平成28年2月16日,債務整理・過払い金返還請求に係る役務について,景品表示法に違反する行為(有利誤認)を行わないように命じる措置命令を出しました(消費者庁HPの「弁護士法人アディーレ法律事務所に対する景品表示法に基づく措置命令について」参照)。
(3)ア 消費者庁HPの「景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?」には以下の記載があります。
   景品表示法に違反する不当な表示や、過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合、消費者庁は、関連資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を実施します。調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は、当該行為を行っている事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行います。違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合は指導の措置が採られます。
   また、事業者が不当表示をする行為をした場合、景品表示法第5条第3号に係るものを除き、消費者庁は、その他の要件を満たす限り、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じます(課徴金納付命令)。
イ アディーレに対する懲戒処分からすれば,弁護士法人の場合,消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けることは,弁護士法人の存亡に直結する大問題になる可能性がある気がします。
(4) 消費者庁HPの「景品表示法」「景品表示法に基づく法的措置件数の推移及び措置事件の概要の公表」(平成29年10月18日掲載)が載っています。
   これによれば,景品表示法7条に基づく措置命令(平成21年8月末日までは公正取引委員会による排除命令)の件数の推移は以下のとおりです。
平成19年度:56件,平成20年度:52件,平成21年度:12件
平成22年度:20件,平成23年度:28件,平成24年度:37件
平成25年度:45件,平成26年度:30件,平成27年度:13件
平成28年度:27件
(5) アディーレは,平成28年4月施行の改正景表法が定める課徴金相当額の約6億6500万円を公益財団法人に寄付しました(産経ニュースHPの「アディーレ「手段の悪質性際立つ」と認定 東京弁護士会の懲戒委員会 処分理由の詳細判明」参照)。
(6) 平成29年10月26日付の消費者庁の行政文書不開示通知書によれば,「消費者庁が景品表示法違反を理由に措置命令を出した結果,対象となった事業所が倒産した事例に関して消費者庁が作成し,又は取得した文書(直近のもの)」は存在しません。
 
4 アディーレに対する懲戒処分
(1)ア 東京弁護士会は,アディーレに対し,平成29年10月11日,景品表示法の有利誤認表示に該当する業務広告を約4年10か月間出していたことを理由に,業務停止2ヶ月の懲戒処分を出しました(NAVERまとめの「アディーレ法律事務所が懲戒処分&業務停止に 原因をまとめてみた ブラマヨのCMは中止か?」参照)。
イ 景品表示法に違反する業務広告を出すことは,弁護士の業務広告に関する規程3条6号の「法令又は本会若しくは所属弁護士会の会則及び会規に違反する広告」に該当する結果,懲戒理由となります(東弁リブラ2017年3月号「若手セミナー 効果的な広告戦略と落とし穴」12頁(PDF11頁))。
(2) 弁護士自治を考える会HPの「弁護士法人アデーレ法律事務所 業務停止2月混乱する裁判所・東弁が事件を引き継ぎ、一弁、二弁、神奈川指くわえて見てるだけ! 」には以下の記載があります(業務停止1月の場合でも,顧問契約は解除する必要があります。)。
① 懲戒請求者はアデーレの支店がある全国の弁護士会に懲戒申し立てをしました。各弁護士会の綱紀委員会の多くは懲戒請求を棄却をしています。棄却の理由は地方ではテレビCMがあまり放送されていないから影響はないという理由です。
② 綱紀委員会が「懲戒相当」と議決したのは、「東京」「神奈川」「札幌」「兵庫」「愛知」です。東京弁護士会以外は現在、懲戒委員会で懲戒処分の審議をしています。
③ 業務停止1月と業務停止2月以上ではまったく違います。業務停止1月では、受任中の事件は辞任することはありません。
④ 神奈川県弁護士会は綱紀委員会で「懲戒相当」と議決しましたが懲戒委員会で「処分なし」にしました。
(3) アディーレは,「依頼者の皆さまに多大なご迷惑をおかけし深くおわび申し上げます。もっとも、事務所の存亡にかかわる業務停止処分を受けることは、行為と処分の均衡を欠くものと考えています」というコメントを出し,日本弁護士連合会に処分についての審査などを求めるとしています(NHK NEWS WEBの「アディーレ法律事務所に東京弁護士会が業務停止処分」(2017年10月11日20時53分)参照)。
(4)ア 寺林智栄弁護士のブログの「実はけっこう奥深い,弁護士業務広告の世界。」には以下の記載があります。
① 東弁での実情からすると、広告規程違反(いわゆる形式犯)の情報提供自体はあまりなくて、実質的な非行が伴っているケースの情報提供がほとんどとのことです(**センターの表示が、実際に非弁提携を伴うケースもあるようです)。
② いわゆる「形式犯」についての多くは、会の方から「ここまずいよ、直しなさい」という指示が飛んで来た場合にきちんと対応していれば、大事にはならないようで、そういう意味でいうと、広告規制について、あまり過度に恐怖心を感じる必要もないのかな、と思っています。
イ 私は,弁護士法人又は法律事務所のHPが広告規程に違反することだけを理由として,戒告等の懲戒処分がなされた前例は知りません。
   ただし,HPの広告記載が一因となった事例として,平成20年10月6日付で大阪弁護士会が戒告を行った事例(自由と正義2009年2月号135頁及び136頁)はあります。
(6) アディーレに対する懲戒請求は,弁護士自治を考える会が行ったみたいですが,懲戒請求者は,「大半が門前払いだったし、もともと戒告が出れば上出来だと思っていたのに、東京弁護士会が突然重い処分を下したのでびっくりした」と話しているそうです(東洋経済オンラインの「誰がアディーレを業務停止に追い込んだのか 懲戒請求者も驚愕,重すぎる「業務停止2ヶ月」」参照)。
(7) アディーレは,景表法違反の広告を中止した後の平成28年に山形支店,酒田支店,帯広支店及び一宮支店を開設し,平成29年に甲府支店,宮崎支店,秋田支店,高知支店,鳥取支店,松江支店,下関支店,豊中千里中央支店,枚方支店及び福井支店を開設しました。
   そのため,これらの支店は,アディーレの景表法違反とは何ら関係がないと思いますが,それにもかかわらず,これらの支店も含めて東京弁護士会によって業務停止処分が下されました。

5 東京弁護士会の会長談話及び懲戒処分の公表
(1) 会長談話
   東京弁護士会HPに掲載されている「弁護士法人アディーレ法律事務所らに対する懲戒処分についての会長談話」(2017年10月11日付)は以下のとおりです。
   ただし,「消費者庁より広告禁止の措置命令を受けました」と書いてあるものの,消費者庁は,アディーレに対し,景表法に違反する広告を出すことを禁止したにすぎず,広告を出すこと自体は禁止していないと思います。
 2017年10月11日
東京弁護士会 会長 渕上 玲子
本日、東京弁護士会は、弁護士法第56条に基づき、弁護士法人アディーレ法律事務所に対し業務停止2月、元代表社員の弁護士石丸幸人会員に対し業務停止3月の懲戒処分をそれぞれ言い渡しました。
同弁護士法人は、広告表示が改正前不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます。)の有利誤認表示に該当したとの理由で、消費者庁より広告禁止の措置命令を受けましたところ、この度、当会は、同弁護士法人の広告行為が景表法に違反し、かつ日本弁護士連合会の弁護士等の業務広告に関する規程等にも抵触するものであり、弁護士法人として品位を失うべき非行であると判断し、上記のとおりの懲戒処分を申し渡しました。
同弁護士法人の広告表示は、債務整理・過払金返還請求に係る役務を一般消費者に提供するにあたり、実際の取引条件よりも有利であると一般消費者を誤認させ、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある極めて悪質な行為であり、しかも、長期間にわたって多数回反復継続されている組織的な非行と言わざるを得ません。
当会は、このような事態が生じたことを重く受け止め、今後も、市民の弁護士会に対する信頼を確保するために、弁護士や弁護士法人の非行の防止に努めるとともに、非行に対しては厳正に対処して参ります。
なお、同弁護士法人の依頼者の方が多数おられることから、下記のとおり臨時電話相談窓口を設け、依頼者からのご相談に応じております。


臨時電話相談窓口 電話 03-6257-1007
(受付時間は午前9時から午後5時まで、土日祝日を除く)
(2) 懲戒処分の公表
   東京弁護士会HPに掲載されている「懲戒処分の公表」は以下のとおりです。   
   本会は下記会員に対して,弁護士法第57条に定める懲戒処分をしたので,お知らせします。
被 懲 戒 者  石丸幸人(登録番号30934)
                        弁護士法人アディーレ法律事務所(届出番号167)
登録上の事務所   東京都豊島区東池袋3-1-1サンシャイン60
懲戒の種類   石丸 幸人                         業務停止3月
                        弁護士法人アディーレ法律事務所   業務停止2月
効力の生じた日   2017年10月11日
懲 戒 理 由 の 要 旨
   被懲戒者石丸幸人(以下「被懲戒者石丸」という。)は,被懲戒者弁護士法人アディーレ法律事務所(以下「被懲戒者法人」という。)の元代表社員である。
   被懲戒者法人は,被懲戒者石丸の指示を受けて,被懲戒者法人ウェブサイトにおいて,債務整理,過払金返還請求について,それぞれ,約1か月ごとの期間を限定して,
(1)平成22年10月6日から同25年7月31日まで,過払金返還請求の着手金を無料又は値引きする,
(2)平成25年8月1日から同26年11月3日まで,借入金の返済中は過払金診断を無料とする,過払金返還請求の着手金を無料又は値引きする,
(3)平成26年11月4日から同27年8月12日まで,契約から90日以内に契約の解除をした場合に着手金全額を返還する,借入金の返済中は過払金診断を無料とする,過払金返還請求の着手金を無料又は値引きする,との広告を継続して行い,改正前不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)第4条第1項第2号の有利誤認表示をした。
   これは,景表法,日本弁護士連合会の弁護士等の業務広告に関する規程等に違反するものであり,弁護士法第56条第1項の品位を失う非行に該当する。
2017年10月11日
東 京 弁 護 士 会
会 長 渕 上 玲 子
(3) その他
ア   東京弁護士会が最高裁判所に対して送付した,平成29年10月11日付の「懲戒処分の通知及び懲戒処分の公表について」を掲載しています。
イ 最高裁判所が,平成29年10月11日付で全国の高等裁判所事務局長に対して送付した,弁護士法人等の懲戒処分(業務停止)について(事務連絡)を掲載しています。

6 アディーレの説明書面
(1) アディーレは,依頼者に対し,平成29年10月13日付で以下の文面の書面を発送したみたいです(外部HPの「アディーレ法律事務所より書面が届きました!契約解除上等!委任契約解除上等!」及びツイッター画像参照)。
(以下引用)
 
弁護士会からの業務停止処分についてのお詫びと契約解除のお知らせ
謹啓
皆様におかれましては,時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り,厚く御礼申し上げます。

   さて,既に報道等でご承知のことと存じますが,平成29年10月11日に,東京弁護士会より,当事務所および当事務所社員弁護士石丸幸人が,業務停止処分を受けております。折角ご依頼頂いたにもかかわらず,ご迷惑,ご心配をお掛けし,深くお詫び申し上げます。
   このたびの処分につきましては,平成28年2月16日に消費者庁より受けた,景品表示法違反による措置命令と同様の理由での処分となります。
   今回の業務停止により,平成29年10月11日から同年12月10日までの間,弁護士法人としての業務を停止しなければならなくなっています。
   そのため,大変申し訳ございませんが,本書面をもって,当事務所(契約書上に記入のある共同受任の個人受任弁護士,司法書士を含む)との委任契約を解除させていただきます。
   ご依頼者様には,順次,事件の内容及び進捗状況に応じたご案内書面を送付致しますので,今しばらくお待ちいただきますよう,お願い申し上げます。

   なお,当事務所との委任契約を解除した後のご来社様の委任事件に関するご対応については,下記のいずれかから選択して頂くこととなります。
   ① ご依頼者様ご本人で対応していただく。
   ② 他の事務所の弁護士の先生に新たに委任いただく。
   ③ 弊事務所の弁護士(弊事務所所属の弁護士のうち,責任のある弁護士とご契約いただくことを予定しております。)に個人として委任契約を締結していただく。
 
   上記①,②の場合には,当事務所より,ご依頼者様ないし新規受任の先生に案件及び資料等を引継がせていただきます。
   上記の③の場合には,ご依頼者様が個人の弁護士に依頼されるという意思を明らかにした書面をいただくことになりますので,予めご承知おきください。
   順次行わせて頂く個別のご連絡の際に,上記について詳細をご案内させていただき,意思確認をさせていただきたいと存じますので,何卒宜しくお願い致します。

   このたびは,ご依頼者様の皆さまに多大なるご迷惑をお掛けしますことを重ねてお詫び申し上げます。
謹白
(2)ア アディーレの平成29年10月13日付の書面には委任契約を解除すると書いてあるものの,支払済みの着手金,預り金及び概算実費の清算方法については言及されていません。
   そもそも,弁護士は,委任の終了に当たり,委任契約に従い,金銭を清算したうえ,預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければなりません(弁護士職務基本規程45条)。   
イ   受任者であるアディーレは委任事務を履行しない限り報酬を請求できませんし(民法648条2項),委任契約の終了に帰責事由があるため履行の割合に応じた報酬請求権を有しないかもしれません(民法648条3項反対解釈)。
   そのため,アディーレが途中まで担当していた訴訟を別の弁護士が引き継いだ場合,アディーレは元依頼者に対し,履行の割合に応じた成功報酬金を請求することもできないかも知れません。

7 参考となる外部HP
(1) アディーレHP
・   アディーレは,平成29年10月19日,「弁護士会からの業務停止処分についての
お詫びと契約解除の状況に関してのご案内」を自社HPに掲載しました。
(2) 東京弁護士会HP
   「弁護士法人アディーレ法律事務所に関してお寄せいただくご質問とその回答について」(平成29年10月20日付)が載っています。
(3) ネットメディア
・   ライブドアニュースの「アディーレ法律事務所が業務停止処分 数万人の依頼者はどうなる?」には,「依頼者はのべ5万人超、最大で10万人前後になる可能性」と書いてあります。
・ exciteニュースに「「アディーレ法律事務所」が大ピンチ 業務停止処分は妥当なのか?」が載っています。
・ ダイヤモンドオンラインに「「アディーレは弁護士ムラの掟を踏みにじった」懲戒処分の舞台裏」(平成29年12月7日)が載っています。
(4) 弁護士のHP
・ 福岡の家電弁護士のブログに「アディーレ法律事務所の法人が業務停止処分→依頼者が注意すべきこと」が載っています。
・   法律事務所ホームワンHPに「アディーレ法律事務所の業務停止についてのよくある質問」が載っています。
・ 古賀克重法律事務所ブログ(福岡県弁護士会所属)に「弁護士法人アディーレに関する無料電話相談を担当した雑感」が載っています。
・ 弁護士法人岩田法律事務所HPに「アディーレショック」が載っています。
(5) その他のHP
・ 弁護士自治を考える会HPは,平成29年10月15日,なかなか対応しなかった東京弁護士会等を批判する趣旨で,「弁護士法人アディーレ懲戒処分における当会声明」を発表しました。

第13の3 金融庁の業務停止処分により中央青山監査法人は解散するに至ったこと等

1 中央青山監査法人に関する従前の経緯等
(1) 中央青山監査法人は,平成12年4月1日,中央監査法人及び青山監査法人が合併して成立しました。
(2)ア 合併前の中央監査法人は,以下のような,粉飾決算をしていた破たん会社の監査を担当していました。
① 山一證券株式会社
・ 平成9年11月24日,自主廃業の記者会見をしました。
・ 平成10年3月4日,元社長2人が証券取引法違反及び粉飾決算の疑いで,元財務本部長が証券取引法違反の疑いで東京地検に逮捕されました。
・ 平成11年6月2日,東京地裁で破産宣告を受けました。
② 株式会社ヤオハン・ジャパン
・   平成9年12月18日,会社更生法に基づき更生手続開始の申立てをしました。
・ 平成10年11月9日,元社長ら3人が粉飾決算の疑いで静岡県警察に逮捕されました。
・ 平成12年3月2日,更生計画認可決定が出て,株式会社ヤオハンに商号変更しました。
・ 平成14年3月1日,マックスバリュ東海に商号変更しました。
③ 株式会社足利銀行
・ 平成15年3月期決算に関して,金融庁の立ち入り検査が同年9月2日から11月11日まで実施されました。
・   平成15年11月29日に一時国有化(預金保険法102条1項3号に基づく特別危機管理)され,会社更生法に基づき更生手続開始の申立てをしました。
・ 刑事事件としての立件は見送られましたから,逮捕された人は出ませんでした。
・ 平成20年7月1日,足利ホールディングスの傘下に入り,特別危機管理体制から解放されました。
イ 金融庁は,中央青山監査法人に対し,平成17年1月25日,足利銀行の会計監査に関して戒告処分を出しました。

2 中央青山監査法人はカネボウ粉飾事件に関して業務停止処分を受けたこと等
(1) カネボウは平成14年度決算で約1900億円の債務超過を9億2600万円の資産超過に粉飾した有価証券報告書を提出しました。
(2) 平成16年10月28日,カネボウは旧経営陣による粉飾決算の疑いが浮上したことを公表しました。
   ただし,平成13年度及び平成14年度に売上高の水増しや経費の過小計上といった操作で,両年度合計で連結当期損失を100億円~300億円隠したという程度のものでした(外部HPの「カネボウ粉飾決算問題」参照)。 
(3) 平成17年4月13日,カネボウ旧経営陣の粉飾決算問題で,不適正な会計処理による粉飾の総額が約2000億円に上っていたことが,同社と監査法人の内部経理調査で明らかになった(外部HPの「カネボウ粉飾決算問題」参照)。
(4) 平成17年6月13日,カネボウは上場廃止となりました。
(5) 平成17年7月30日,東京地検特捜部は,カネボウ元社長ら3人を証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で逮捕しました。
(6)ア 平成17年9月13日,東京地検特捜部は,カネボウ粉飾事件に関与したことを理由に,中央青山監査法人の4人の会計士を証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕しました。
   逮捕された4人は14年間から29年間にわたってカネボウの監査を担当しており,カネボウが行った最大829億円の粉飾決算が発覚するのを防ぐため,旧経営陣に助言した疑いを持たれていました。
イ 同日,東京地検特捜部は,逮捕した4人の公認会計士の自宅,中央青山監査法人の理事長の自宅など10数か所を家宅捜索しました(外部ブログの「公認会計士さん逮捕」参照)。
ウ カネボウが行っていた粉飾決算は,連結外し(子会社の損失隠し),棚卸資産の過大計上(売上原価の圧縮),繰延税金資産の計上(回収可能性の悪用),押し込み販売(連結外しの利用),各種費用の過少計上といったものでした(外部HPの「粉飾決算の全体像~カネボウを事例とした研究~」参照)。
(7) 平成18年5月10日(水),金融庁は,中央青山監査法人に対し,以下の懲戒処分を出しました(金融庁HPの「監査法人及び公認会計士の懲戒処分について」参照)。
① 業務の一部停止は2か月(平成18年7月1日から平成18年8月31日まで)でした。
② 停止する業務は,証券取引法監査及び会社法(商法特例法)監査でした。
   ただし,7月末日までに有価証券報告書を提出しなければならない会社の監査は7月末までできましたし,8月末日までに有価証券報告書を提出しなければならない会社の監査は8月末までできるなどとされていました。
③ 証券取引法違反で逮捕された4人の公認会計士のうち,東京地検に起訴された3人については登録抹消とし,東京地検に起訴されなかった1人については業務停止1年としました。
(8) 平成18年8月9日,東京地裁は,1人の会計士について懲役1年6月,執行猶予3年の有罪判決を出し,残り2人の会計士について懲役1年,執行猶予3年の有罪判決を出しました。
(9) 平成18年9月1日,中央青山監査法人は,業務停止期間が終了したことを受けてイメージ刷新を図るため,みすず監査法人に名称変更しました。
   ただし,平成18年4月時点で830社余りいた上場企業の顧客は,この時点で600社程度にまで落ち込んでいました。
(10) 平成18年12月18日,証券取引等監視委員会は,中央青山監査法人が平成17年3月期の決算に関して適正意見を出していた日興コーディアルグループについて,傘下の投資会社の決算上の数字の扱いについて不適切な処理を行い,約180億円の利益を水増ししていたと指摘し,この決算に基づき,日興コーディアルグループが500億円の社債を発行していたことから,内閣総理大臣及び金融庁長官に対し,5億円の追徴金を課すよう勧告しました。
(11) 平成19年2月20日,みすず監査法人の理事長は,記者会見において監査業務から撤退し,他の大手3法人(新日本監査法人,あずさ監査法人及びトーマツ監査法人)等に監査業務を移管し,社員・職員の移籍を行う方針を発表しました。
(12) 平成19年7月31日,みすず監査法人は監査法人としての業務を終了して解散しました。

3 公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)
(1) 平成26年3月14日以後に適用されている,公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)は,金融庁HPの「「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)について」(案)に対するパブリックコメントの結果等について」別紙3として掲載されています。
(2) 基本となる処分の量定
ア 社員の故意による虚偽証明・不当証明の場合
   「課徴金(監査報酬の1.5 倍)+契約の新規の締結に関する業務の停止1年+業務改善命令」 又は 「業務停止3 月」となっています。
イ 社員の相当の注意を怠ったことによる虚偽証明・不当証明の場合
   「課徴金(監査報酬の1 倍)+契約の新規の締結に関する業務の停止6 月 +業務改善命令」 又は 「業務停止1 月」となっています。

第13の4 中央青山監査法人に対する業務停止処分と,アディーレに対する業務停止処分の比較

1 平成18年5月10日に金融庁から2か月の業務停止を受けた中央青山監査法人の場合,カネボウの約2000億円の粉飾決算に共謀して4人の公認会計士が逮捕され,うち3人が起訴されました。
   また,合併前の中央監査法人は,粉飾決算後に倒産した山一證券,ヤオハン・ジャパン及び足利銀行の監査も担当していました。
   そのため,平成28年2月16日に景表法違反で消費者庁から措置命令を受けたにとどまるアディーレは,中央青山監査法人ほど悪いことをしたわけではないと思います。

2 中央青山監査法人の場合,①業務停止開始は約52日後であったため顧客に事情説明できましたし,②監査業務以外の業務は禁止されなかったため業務停止期間中も事務所を使用できましたし,③業務停止期間中に有価証券報告書を提出する会社等の監査業務は引き続き担当できました。

3 アディーレの場合,①業務停止の予告期間は一切なかったため顧客に全く事情説明ができませんし,②全面的に弁護士業務を禁止されたため業務停止期間中はほとんど事務所を使用できませんし,③業務停止期間中に顧客が対応しなければならない業務も一切担当できません。
   ③につき,例えば,アディーレの業務停止期間中に,控訴状又は上告状を提出する必要があったり,上告理由書を提出する必要があったり,再生計画案を提出する必要があったり,和解契約に基づく分割金を送金したりする必要があったりしたとしても,アディーレは依頼者のための業務を一切することはできません。

4(1) 平成18年5月10日に中央青山監査法人が受けた業務停止処分は,平成29年10月11日にアディーレが受けた業務停止処分よりもかなり軽いものであったと思います。
   それにもかかわらず,監査業界の最大手であった中央青山監査法人は,2か月の業務停止処分が最大の原因となって解散しました。 
(2) 外部ブログの「東芝不正会計で新日本監査法人が処分」(2015年11月19日)には,「業務停止はあまりにもインパクトが大きすぎ、中央青山監査法人の際のようにある程度つぶしても構わないと腹をくくっていない限り行わないと思われます。」と書いてあります。

第14 弁護士法人の懲戒事例

〇官報情報検索サービス(有料版)において「処分を受けた弁護士法人」というキーワードで検索すれば判明しますところ,弁護士法人の懲戒事例は以下のとおり合計10件です。
〇弁護士法人の懲戒第1号は弁護士法人アディーレ法律事務所でした。
〇弁護士法人に対する業務停止以上の懲戒処分は,①平成23年1月12日付の業務停止1月(東弁),②平成23年7月6日付の業務停止1年(東弁),③平成23年11月8日付の除名(東弁),④平成29年8月31日付の業務停止1年6月(福岡弁)及び⑤平成29年10月11日付の業務停止2月(東弁)の合計5件です。
   また,これらのうち,その他の法律事務所があった弁護士法人は,弁護士法人アディーレ法律事務所だけです。

1 平成22年10月5日付で東京弁護士会で「戒告」となった,弁護士法人アディーレ法律事務所(その他の法律事務所は立川支店,那覇支店,名古屋支店,札幌支店,仙台支店及び大阪支店)の懲戒行為の内容(自由と正義2011年1月号152頁)
① 被懲戒弁護士法人は,2006年11月6日有限会社Aの破産申立事件並びに同社の代表者B及び取締役Cの破産申立事件及び免責申立事件を受任した。
   ところが,被懲戒弁護士法人は,その後,A社の財産を保全する義務を怠り,また速やかに破産申立てをなすべき義務を懈怠し,これにより破産申立時において破産財団を構成すべき約587万円の財産を消失させた。
② 被懲戒弁護士法人は,2005年12月2日,有限会社Dの破産申立事件並びに同社の代表者Eの破産申立事件及び免責申立事件を受任した。
   ところが,被懲戒弁護士法人は,D社の財産を保全すべき義務を懈怠し,D社の財産の管理一切を安易にEに任せ,債権者への偏波弁済を許し,その結果,破産申立時までに,約650万円の財産を不当に消失させた。
③ 被懲戒弁護士法人は,2005年12月2日にD社らの破産申立事件を受任してから,2008年1月7日にD社らの破産申立てをするまでの間,合理的理由が存在しないにもかかわらず,2年以上,破産申立てをせず,これにより破産管財人による偏波弁済の否認権行使が妨げられて破産財産に損害を及ぼした。
④ 被懲戒弁護士法人は,D社から同社の破産申立事件を受任してその業務を行っているにもかかわらず,その後,2007年1月13日,D社の債権者であるF株式会社から破産申立事件を受任し,F社がD社の債権者であることを知り,さらにF社がD社から偏波弁済を受けていたことを知ってからもなおF社の破産申立事件に係る業務を行った。
⑤ 被懲戒弁護士法人は,2007年1月13日,F社及び同社の代表者Gら合計4名の破産申立事件を受任した。
   ところが,被懲戒弁護士法人は,財産の保全も含めた破産申立事件の受任者としてなすべき業務遂行を懈怠し,これにより約350万円の財産を消失させた。

2 平成23年1月12日付で東京弁護士会で「業務停止1月」となった,弁護士法人かすが総合(その他の法律事務所はありません。)の懲戒行為の内容(自由と正義2011年4月号156頁)
   被懲戒弁護士法人は,懲戒請求者から損害賠償請求の示談交渉を受任していたにもかかわらず,懲戒請求者の母Aの依頼を受け,懲戒請求者及びAの同意を得ないまま,2007年8月17日付けで懲戒請求者に対する遺留分減殺請求の通知を行い,引き続き,調停の申立て,訴訟の提起等の法的措置を採った。

3 平成23年3月7日付で大阪弁護士会で「戒告」となった,弁護士法人協立法律事務所(その他の法律事務所はありません。)の懲戒行為の内容(自由と正義2011年6月号140頁)
① 被懲戒弁護士法人は,民事再生手続を取り扱わない方針をとっていたにもかかわらず,その断りを入れず,2006年頃,スポーツ新聞等に多重債務問題の適切な解決を行う旨の広告をした。
② 被懲戒弁護士法人は,無資格者である事務職員が弁護士の関与なく法律相談を行わないよう指導監督する義務があるにもかかわらず,これを怠り,その結果,2006年12月15日,事務職員が弁護士の関与なく懲戒請求者に対して法律相談を行った。

4 平成23年7月6日付で東京弁護士会で「業務停止1年」となった,弁護士法人片山会(その他の法律事務所はありません。)の懲戒行為の内容(自由と正義2011年10月号107頁)
①   被懲戒弁護士法人は,2009年1月21日にAから受任した任意整理事件について,委任契約締結前及び締結後のいずれにおいても,Aとの対応を専ら被懲戒弁護士法人の事務職員に行わせた。
② 被懲戒弁護士法人は,Aからの依頼が,弁護士法第72条に違反することが疑われるBからの事件紹介によるものであって,受任にあたり,Bの同条違反の疑いの有無及び紹介の手続について事務職員から事情を聴取するなどの調査をすべきであったが,これを怠った。

5 平成23年11月8日付で東京弁護士会で「除名」となった,弁護士法人公尽会(その他の法律事務所はありません。)の懲戒行為の内容(自由と正義2012年2月号107頁)
   被懲戒弁護士法人は,2007年10月22日ころ,懲戒請求者から1000万円の連帯保証債務についての債務整理を受任した。被懲戒弁護士法人は,懲戒請求者から少なくとも670万円を預かったが,委任された事件を放置し,2009年3月25日付けで辞任するにあたり,懲戒請求者に対し事件処理の状況及び結果の説明をせず,預り金の清算を怠った。また,被懲戒弁護士法人は,事務職員が法律事務を取り仕切っていることを認識しながら,これを放置し,黙認していた。

6 平成28年12月7日付で千葉県弁護士会で「戒告」となった,弁護士法人ひいらぎ綜合法律事務所(主たる法律事務所は千葉県から福岡県に移転。その他の法律事務所は小倉支店)の懲戒行為の内容(自由と正義2017年4月号78頁及び79頁)
   被懲戒弁護士法人は,2011年7月29日の設立後,2013年2月21日に従たる法律事務所を設けるまでの間,所属弁護士は代表弁護士Aの1名であったところ,2011年10月頃,懲戒請求者から被懲戒弁護士法人の当時の主たる法律事務所に依頼したい旨の電話による申入れを受けて債務整理事件を受任したが,受任に際し,代表弁護士Aは,自ら面談をして事情聴取や説明等を行わない特段の事情があるとは認められないにもかかわらず,懲戒請求者と面談をして事情聴取をせず,懲戒請求者に対し,事件処理方針等及び不利益事項について説明をせず,また,上記事件の相手方である貸金業者との間で同年12月28日に若い所に調印したところ,調印までの間に,懲戒請求者に対し,過払金の計算結果の報告をせず,和解をすることや和解条件について説明をして協議をしなかった。

7 平成29年2月10日付で東京弁護士会で「戒告」となった,弁護士法人十枝内総合法律事務所(その他の法律事務所は十和田支所)の懲戒行為の内容(自由と正義2017年6月号126頁)
   被懲戒弁護士法人は,懲戒請求者から離婚等請求事件,離婚等反訴控訴事件等を受任していたところ,控訴審裁判所からいずれも棄却する旨の判決が言い渡され,2014年5月4日に懲戒請求者から上告及び上告受理申立事件を受任したにもかかわらず,同月7日の上告期限までに上告等の手続を行わなかった。

8 平成29年3月28日付で新潟県弁護士会で「戒告」となった,弁護士法人美咲総合法律税務事務所(その他の法律事務所はありません。)の懲戒行為の内容(自由と正義2017年7月号87頁)
   被懲戒弁護士法人は,戸籍法及び住民基本台帳法により弁護士に認められた業務を遂行するために必要があるとは認めることができないにもかかわらず,2013年5月15日に懲戒請求者を筆頭者とする戸籍の付票の写しについて,2014年1月14日に懲戒請求者を筆頭者とする戸籍の付票の写し及び戸籍謄本について,それぞれ職務上請求を行い,職務上請求書の利用目的欄に,いずれも「売掛金請求」と事実と異なる記載をした。

9 平成29年8月31日付で福岡県弁護士会で「業務停止1年6月」となった,弁護士法人北斗(その他の法律事務所はありません。)の懲戒行為の内容
→ 平成29年9月20日付の官報掲載分です。
   福岡市の弁護士が,破産申立ての依頼者から預かった預かり金を報酬と区別せず,ずさんに管理していたみたいです(弁護士自治を考える会HPの「田畠光一弁護士(福岡)業務停止1年6月懲戒処分 破産事件預り金の管理が不適切」参照)。

10 平成29年10月11日付で東京弁護士会で「業務停止2月」となった,弁護士法人アディーレ(その他の法律事務所は85個)の懲戒行為の内容
→ 中身は前述したとおりです。

第15 各弁護士会の懲戒請求の出し方

1 弁護士自治を考える会ブログの「各弁護士会の懲戒請求の出し方」には,以下の弁護士会について懲戒請求の出し方案内書等が掲載されています。
(1) 関東弁護士会連合会管内の弁護士会
・   東京弁護士会(正本1部,副本4部)
・ 第一東京弁護士会(正本1部,副本3部)
・ 第二東京弁護士会(5部)
・ 神奈川県弁護士会(6部)
・ 埼玉弁護士会(正本1部,副本1部)
・ 千葉県弁護士会(部数の教示なし。)
・ 群馬弁護士会(正本1部,対象弁護士人数分)
・ 静岡県弁護士会(2部)
・ 山梨県弁護士会(部数の教示なし。)
・ 長野県弁護士会(正本1部,副本2部)
・ 新潟県弁護士会(正本1部,副本2部)
(2) 近畿弁護士会連合会管内の弁護士会
・   大阪弁護士会(正本1部,副本3部)
・ 京都弁護士会(正本1部,副本4部)
・ 兵庫県弁護士会(正本1部)
・ 奈良弁護士会(部数の表示なし。)
・ 滋賀弁護士会(正本1部,副本2部)
(3) 中部弁護士会連合会管内の弁護士会
・   愛知県弁護士会(正本1部,副本4部)
・ 三重弁護士会(正本1部,副本2部)
・ 岐阜県弁護士会(正本1部,対象弁護士人数分)
・ 福井弁護士会(正本1部,副本1部)
・ 金沢弁護士会(正本1部,副本1部)
(4) 中国弁護士会連合会管内の弁護士会
・   広島弁護士会(1部)
・ 山口県弁護士会(正本1部,副本2部)
・ 岡山弁護士会(正本1部,副本1部)
・ 鳥取県弁護士会(案内書なし。)
(5) 九州弁護士会連合会管内の弁護士会
・   佐賀県弁護士会(正本1部,副本1部)
・ 大分県弁護士会(1部)
・ 熊本県弁護士会(正本1部,副本2部)
・ 鹿児島県弁護士会(3部)
・ 宮崎県弁護士会(正本1部,写し5部)
・ 沖縄弁護士会(部数の教示なし。)
(6) 東北弁護士会連合会管内の弁護士会
・   仙台弁護士会(正本1部,副本1部)
・ 福島県弁護士会(正本1部,副本1部)
・ 山形県弁護士会(正本1部,副本1部)
・ 秋田弁護士会(1部)
・ 青森県弁護士会(正本1部,副本1部)
(7) 北海道弁護士会連合会管内の弁護士会
・   札幌弁護士会(1部)
・ 函館弁護士会(正本1部,副本2部)
・ 旭川弁護士会(正副2部)
・ 釧路弁護士会(正本1部,副本1部)
(8) 四国弁護士会連合会管内の弁護士会
・   香川県弁護士会(正本1部,副本2部)
・ 徳島弁護士会(2部)

2 第一東京弁護士会の「懲戒請求について(留意事項)」には以下の記載があります(弁護士自治を考える会ブログの「各弁護士会の「懲戒請求の出し方」案内書・マニュアル書募集します。」参照)。
   懲戒請求書及び証拠資料の提出部数以外は,他の弁護士会でも大体,同じであると思います。
(1) 調査開始
   弁護士会は,所属の弁護士又は弁護士法人に対して,事由の説明を添えて懲戒の請求があったときは,綱紀委員会にその懲戒請求事案につき,懲戒委員会の審査に付するか否かについての調査を求めます。(弁護士法58条2項)
(2) 懲戒手続とは
   懲戒手続は,裁判とは異なり,弁護士会が弁護士を懲戒するかどうかを調査及び審査する手続です。あなたとの間の争いを解決したり,あなたや関係者に対する金銭の支払い,資料の返却等を弁護士に命じることを目的とするものではありません。
   また,この手続によって弁護士の懲戒処分がなされても,請求者の被害の回復は果たせません。
(3) 調査期間について
   綱紀委員会の結論が出るまでには,事案によっては半年以上かかることもあります。
   また,懲戒委員会に審査が進んだ場合には,更にその結論を待つ必要がありますので,その点をご留意ください。
(4) 調査結果の通知について
   綱紀委員会,懲戒委員会の結論は,書面(議決書)で通知します。電話等でのお問い合わせにはお答えすることができませんので,ご了承ください。
(5) 異議の申出
   綱紀委員会が出した結論に不服があるときは,日本弁護士連合会に異議を申し出ることができます。(弁護士法64条1項)
   また,異議の申出の結論について不服があるときは,日本弁護士連合会に,綱紀審査会による,綱紀審査を行うことを申し出ることができます。(弁護士法64条の3)
(6) 懲戒請求を取り下げたときの扱いについて
   懲戒の請求をした時には,後に弁護士との間で示談が成立するなどして請求を取り下げても,弁護士会は手続を続行して結論を出すことになります。
   但し,懲戒請求の取り下げをした方には,議決書の送付はいたしません。
(7) 除斥期間について
   弁護士法の規定により,懲戒の事由があったときから3年を経過したときは,懲戒の手続を開始することが出来ません。(弁護士法63条)
   懲戒の請求をする人が”懲戒の事由を知ったとき”からではありませんので,十分ご注意ください。
   なお,除斥期間につきましては,綱紀委員会で判断します。
(8) 答弁書等資料の取扱いについて
   提出された資料は返却しておりませんので,資料をご提出の際には,原本ではなく,コピーをご提出くださいますようお願いします。
   また,提出された資料は,原則として懲戒請求者・対象弁護士双方に閲覧及び謄写を認めておりませんので,予めご了解願います。
   なお,対象弁護士からの答弁書については,懲戒請求者から要請があった場合に綱紀委員会に諮ったうえ,懲戒請求者にご送付する取り扱いとしておりますので,答弁書をご希望の方は,その旨を綱紀委員会に書面でご連絡願います。

第16 弁護士の懲戒制度の問題点に関する弁護士の声

ライフアンドマガジン株式会社が発行しているFIVE STAR MAGAZINE「アディーレ業務停止2ヶ月の衝撃 大規模法人への業務停止で一体,何が起こったか!?」(平成29年11月23日発行)5頁には,弁護士の懲戒制度の問題点に関する弁護士の声として,例えば,以下の声が載っています。
1 非行に関しては、処分が必要であるが、それぞれのケースに適切な処分が、設定されてない。
   今回の場合、新規の勧誘、営業活動について一定期間の停止処分にすればよいことである。
   業務停止のためクライアントとの委任契約を解除しなければならないというのは、当該弁護士法人へのペナルティーのみならず、何の落ち度のないクライアントへのペナルティーになっている。
2 古い体質の弁護士が懲戒の決定権を持っているため、新しいことを始めようとしてもギルド体質的な意趣返しが懲戒制度によって行われるのではないかという萎縮効果を生んでいる。
3 身内が身内を処分するということが問題である。
   また、弁護士法人への業務停止は影響が大きすぎるので、制度設計を見直すべき。
4 戒告の上の処分がいきなり業務停止であること。
   弁護士法人の場合、個人事務所の寄り合い事務所と異なり、事務所全体が業務停止になるので硬直的にすぎる。「品位」という極めてあいまいな要件が基準となっており、弁護士会の意思によっていかようにも判断ができる。
   刑事事件と異なりまったく手続き保証がなされていない(黙秘権が事実上存在しない。訴因の特定がない。争点整理がなされない。立証責任が事実上弁護士側にある)。
   弁護士会内での人的関係が処分の軽重に影響している。政策的な懲戒処分がなされている。
   証拠不十分で不起訴となった弁護士が退会命令となり、ごく軽微な違反で業務停止1 カ月となった弁護士のケース。
   とにかく目立つ弁護士に厳しい判断がなされている。
5 恣意的な判断が見受けられ、予測可能性がたちにくいのと、戒告と業務停止の影響に差がありすぎるのでその中間の処分を作るべき。
6 運用も対象にあがる懲戒案件自体が公平であるとは思えないことと確たる基準があるわけではなく、そのときの委員の意見で決まっているようにみえる。
7 柔軟性のある処分を創設すべき。
8 濫用的申立てを前提としていないため、不当な懲戒請求であっても弁護士(法人)の手続き負担が重い。
9 懲戒処分の端緒を広く求める意味では、懲戒請求権者に限定がないことは意味があるが、単位会で懲戒不相当とされた場合の日弁連への不服申立てを懲戒請求権者にも認めるのは行き過ぎである。
10 業務停止処分は、原則として、一定期間の新規受任の停止などにとどめるべき。
   また、不服申立てによる処分の効力停止を認めるべき。
   そうでないと、今回のように依頼者に対する不利益が大きく、大規模法人事務所の経営リスクも過大となる。
11 弁護士の品位を害したことが懲戒事由とされており、分かりにくい。
   また、同業者が同業者を処分するという点でも問題。
   さらに、不服申立てをしている間も処分の効果が生じる点も問題。
   懲戒請求は近時、濫用的(相手方の報復目的など)に使用されることがあり、請求権の行使を限定すべき。
12 戒告と業務停止の中間が存在しない。(たとえば、改善命令→改善されない場合に重い処分など)。
   日弁連や裁判所で争う前に(単位会の処分で)業務停止の効力が生じる、など。
13 一部のクローズドな集団の判断で経営が止まる可能性がある点。
14 法治ではなく、弁護士会の人治な処分と感じるから。
15 お客様を見てない誰でも懲戒請求できるので、濫用されている点。犯罪に相当する行為が戒告となる一方、そうではない行為が業務停止になっており、量定が恣意的。
16 法制度悪用といった件については不当に軽く、更生が見込まれる件に重い場合が散見
17 俗に言う「村社会」の論理があって、一般的には身内に甘いが、アディーレやホームロイヤーズなど、新興勢力には、極端に厳しい。
18 懲戒制度でなく、弁護士会自体が特定の弁護士が特定の倫理観を振りかざして構成されているので問題がある。柔軟性や多様性に欠ける側面がある。
19 判断が場当たり的なところがある。
(本件とは直接関連しないが)不倫騒動等、業務に関連のない理由についても無数に請求対象として受け付け得る建て付けであり、必ずしも運用側の判断能力・事務能力の及ばない領域までが対象となっている点。
20 印象ですが、目立つ事務所が叩かれるイメージで、公平性に疑問がある。

第17 弁護士の懲戒請求事案集計

1(1) 弁護士の懲戒請求事案集計(平成5年以降)を掲載しています。
   日弁連HPの「基礎的な統計情報2010」では,平成13年以降の懲戒等の件数しか記載されていないのに対し,私のデータは,平成5年以降の懲戒等の件数を記載しています。
(2) 日弁連HPには,「2015年懲戒請求事案集計報告」及び「2016年懲戒請求事案集計報告」が掲載されています。
(3) 朝鮮学校への高校授業料無償化の適用,補助金交付等を求める声明を出した全国の弁護士会に対し,弁護士会長らの懲戒を請求する懲戒請求書が4万件以上提出されています(毎日新聞HPの「懲戒請求 弁護士会に4万件超 「朝鮮学校無償化」に反発」参照)。
   そのため,平成29年の懲戒請求件数は,過去最高であった平成19年の9585件(うち,8095件は光市母子殺害事件の弁護団に対する懲戒請求です。)をはるかに超えています。

2 年度のずれを無視した場合,懲戒委員会の審査が開始した場合の懲戒処分率は以下のとおりです。
平成5年:42.6%,平成6年:44.6%,平成7年:78.0%,平成8年:60.0%
平成9年:62.3%,平成10年:55.1%,平成11年:57.1%,平成12年:47.7%
平成13年:66.7%,平成14年:55.0%,平成15年:83.1%,平成16年:52.1%
平成17年:56.4%,平成18年:60.0%,平成19年:50.7%,平成20年:53.6%
平成21年:57.6%,平成22年:60.6%,平成23年:58.4%,平成24年:59.0%
平成25年:55.4%,平成26年:55.5%,平成27年:52.2%,平成28年:59.7%

3 日弁連に対する審査請求の件数等は以下のとおり推移しています。
(1) 既済件数の推移
平成19年:30件 平成20年:17件 平成21年:31件 平成22年:31件
平成23年:28件 平成24年:29件,平成25年:35件,平成26年:34件
平成27年:33件,平成28年:33件
(2)   原処分取消(懲戒処分が取り消されること)
平成19年:6件 平成20年:1件 平成21年:0件 平成22年:4件
平成23年:2件 平成24年:2件 平成25年:3件 平成26年1件
平成27年:6件 平成28年:1件
(3) 原処分変更(懲戒処分が軽くなること)
平成19年:2件 平成20年:2件 平成21年:2件 平成22年:5件
平成23年:3件 平成24年:0件 平成25年:1件 平成26年:4件
平成27年:1件 平成28年:2件

4 弁護士の懲戒件数等は以下のとおり推移しています。
(1) 懲戒請求の新受件数の推移
平成5年:439件 平成6年:517件 平成7年:576件 平成8年:485件
平成9年:488件 平成10年:715件 平成11年:719件 平成12年:1030件
平成13年:884件 平成14年:840件 平成15年:1127件 平成16年:1268件
平成17年:1192件 平成18年:1367件 平成19年:9585件 平成20年:1596件
平成21年:1402件 平成22年:1849件 平成23年:1885件 平成24年:3898件
平成25年:3347件 平成26年:2348件 平成27年:2681件 平成28年:3480件
(2) 懲戒の件数の推移
平成5年:23件 平成6年:25件 平成7年:39件 平成8年:27件
平成9年:38件 平成10年:43件 平成11年:52件 平成12年:41件
平成13年:62件 平成14年:66件 平成15年:59件 平成16年:49件
平成17年:62件 平成18年:69件 平成19年:70件 平成20年:60件
平成21年:76件 平成22年:80件 平成23年:80件 平成24年:79件
平成25年:98件 平成26年:101件 平成27年:97件 平成28年:114件
(3) 戒告の件数の推移
平成5年:12件 平成6年:15件 平成7年:17件 平成8年:16件
平成9年:11件 平成10年:19件 平成11年:17件 平成12年:17件
平成13年:34件 平成14年:28件 平成15年:27件 平成16年:23件
平成17年:35件 平成18年:31件 平成19年:40件 平成20年:42件
平成21年:40件 平成22年:43件 平成23年:38件 平成24年:54件
平成25年:61件 平成26年:55件 平成27年:59件 平成28年:60件
(4) 業務停止の件数の推移
平成5年:4件 平成6年:6件 平成7年:15件 平成8年:7件
平成9年:23件 平成10年:20件 平成11年:27件 平成12年:16件
平成13年:24件 平成14年:32件 平成15年:25件 平成16年:21件
平成17年:22件 平成18年:33件 平成19年:28件 平成20年:15件
平成21年:30件 平成22年:29件 平成23年:35件 平成24年:23件
平成25年:29件 平成26年:37件 平成27年:30件 平成28年:47件
(5) 退会命令の件数の推移
平成5年:4件 平成6年:2件 平成7年:5件 平成8年:3件
平成9年:1件 平成10年:2件 平成11年:5件 平成12年:7件
平成13年:4件 平成14年:3件 平成15年:3件 平成16年:3件
平成17年:3件 平成18年:2件 平成19年:1件 平成20年:2件
平成21年:5件 平成22年:7件 平成23年:2件 平成24年:2件
平成25年:6件 平成26年:3件 平成27年:5件 平成28年:3件
(6) 除名の件数の推移 
平成5年:3件 平成6年:2件 平成7年:2件 平成8年:1件
平成9年:3件 平成10年:2件 平成11年:3件 平成12年:1件
平成13年:0件 平成14年:3件 平成15年:4件 平成16年:2件
平成17年:2件 平成18年:3件 平成19年:1件 平成20年:1件
平成21年:1件 平成22年:1件 平成23年:5件 平成24年:0件
平成25年:2件 平成26年:6件 平成27年:3件 平成28年:4件

第18 他の士業の懲戒

0 総論
(1) 特許庁HPに「行政庁による士業の懲戒比較表」及び「士業団体による会員の処分比較表」が載っています。
(2) 弁護士の場合と異なり,他の士業の場合,行政庁が懲戒します。
(3) 公証人以外の士業について懲戒事由がある場合,何人でも懲戒請求をすることができます。

1 公認会計士及び監査法人の懲戒
(1) 以下の場合,金融庁長官は,公認会計士又は監査法人について,戒告,2年以内の業務の停止又は登録の抹消(監査法人の場合は解散)の処分を行います(公認会計士法29条各号)。
   また,審判手続を経た上で,公認会計士又は監査法人に対して課徴金納付命令を出すことがあります(公認会計士につき公認会計士法31条の2,監査法人につき公認会計士法34条の21の2)(権限の委任につき公認会計士法49条の4)。
① 公認会計士又は監査法人が虚偽,錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽,錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合(公認会計士法30条)
② 公認会計士が公認会計士法若しくは公認会計士法に基づく命令に違反した場合又は公認会計士法34条の2に基づく指示に従わない場合(公認会計士法31条1項)
③ 公認会計士が著しく不当と認められる業務の運営を行った場合(公認会計士法31条2項)
(2) 何人も,公認会計士に懲戒事由に該当する事実があると思料するときは,金融庁長官に対し,その事実を報告し,適当な措置をとるべきことを求めることができます(公認会計法32条1項)。
(3) 金融庁HPの「「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)について」(案)に対するパブリックコメントの結果等について」(平成26年3月14日以後の施行分)に処分期順が載っています。
(4)ア 金融庁HPに「課徴金制度について」が載っています。
イ   公認会計士及び監査法人に対する課徴金制度は平成20年4月に導入されました。
(5) 公認会計士ナビに「公認会計士・監査法人の懲戒処分」が載っています。
(6) 日本公認会計士協会HPの「懲戒処分の量定に関する考え方の制定について」に,「懲戒処分の量定に関するガイドライン」が含まれています。
(7) 平成29年11月1日付の金融庁の行政文書不開示決定通知書によれば,公認会計士の懲戒の手続が書いてある訓令,通達その他の文書は存在しません。

2 行政書士及び行政書士法人の懲戒
(1) 行政書士が行政書士法若しくは行政書士法に基づく命令,規則その他都道府県知事の処分に違反した場合,又は行政書士たるにふさわしくない重大な飛行があった場合,都道府県知事は,当該行政書士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は業務の禁止の処分をすることができます(行政書士法14条)。
   行政書士法人が行政書士法又は行政書士法に基づく命令,規則その他都道府県知事の処分に違反した場合,又は運営が著しく不当と認められる場合,戒告,2年以内の業務の全部又は一部の停止,解散の処分をすることができます(行政書士法14条の2)。
(2) 何人も,行政書士又は行政書士法人について懲戒事由に該当する事実があると思料するときは,当該行政書士又は当該行政書士法人の事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し,当該事実を通知し,適当な措置をとることを求めることができます行政書士法14条の3第1項)。
(3) 日本行政書士会連合会HPの「綱紀事案の公表」に,都道府県知事による懲戒処分事例及び単位会長による処分事例が載っています。
(4) 総務省HPの「行政書士制度」に,行政書士法14条及び14条の2に基づく処分の状況(つまり,行政書士の懲戒処分の状況)が載っています。
(5) 日本行政書士会連合会HPに「職務上請求書の適正な使用及び取扱いに関する規則」が載っています。
(6) 大阪府行政書士会HP「内部統制」「職務上請求書の適正な使用について」及び「本会会員の広告に関する運用指針について」が載っています。
(7) 平成29年11月2日付の総務大臣の行政文書不開示決定通知書によれば,行政書士法第14条の3に基づく懲戒の手続が書いてある訓令,通達その他の文書は存在しません。
(8) 行政書士の懲戒に関する文書を以下のとおり掲載しています。
① 行政書士法14条及び14条の2に基づく処分の状況(昭和50年度から平成26年度まで)
② 行政書士法14条及び14条の2に基づく処分の状況(平成27年度)

3 公証人の懲戒
(1) 公証人が職務上の義務に違反し,又は品位を失墜すべき行為をした場合,法務大臣によって懲戒されます(公証人法79条)ところ,懲戒処分には,譴責,10万円以下の過料,1年以下の停職,転属及び免職があります(公証人法80条)。
(2) 法務大臣が譴責以外の懲戒処分を行う場合,検察官・公証人特別任用等審査会 公証人分科会の議決に基づく必要があります(公証人法81条)。
(3) 法務省HPの「公証制度について」には,「公証人は,取り扱った事件について守秘義務を負っているほか,法務大臣の監督を受けることとされ,職務上の義務に違反した場合には懲戒処分を受けることがあります。」と書いてあります。

4 司法書士及び司法書士法人の懲戒
(1) 司法書士が司法書士法又は司法書士法に基づく命令に違反した場合,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は,当該司法書士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は業務の禁止の処分をすることができます(司法書士法47条)。
   司法書士法人が司法書士法又は司法書士法に基づく命令に違反した場合,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は,当該司法書士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は解散の処分をすることができます(司法書士法48条)。
(2)   何人も,司法書士又は司法書士法人に司法書士法又は司法書士法に基づく命令に違反する事実があると思料するときは,当該司法書士又は当該司法書士法人の事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に対し,当該事実を通知し,適当な措置をとることを求めることができます司法書士法49条1項)。
(3) 日本司法書士会HPの「綱紀事案公表一覧」に,司法書士の懲戒処分事例が載っています。
(4) 平成29年11月9日付の法務省文書には以下のことが書いてあります。
① 司法書士若しくは司法書士法人又は土地家屋調査士若しくは土地家屋調査士法人(以下「司法書士等」という。)に対する懲戒処分は,司法書士法又は土地家屋調査士法の規定に基づき,法務局又は地方法務局の長が行うものであり,また,懲戒処分書は当該懲戒処分を行う法務局又は地方法務局の長が作成するものであることから,法務本省では,司法書士等に対する懲戒処分書は保有していません。
② 司法書士等の懲戒処分を行った場合,司法書士法又は土地家屋調査士法の規定に基づき,官報に,当該司法書士等の氏名,所属する司法書士会又は土地家屋調査士会,登録番号,事務所の所在地及び違反行為が掲載されることとなりますので,官報情報検索サービスの利用登録をされているか又は官報を購読されていれば,インターネットの「官報情報検索サービス」を利用して,景品表示法を理由に懲戒処分を受けた司法書士等がいるかどうかを確認することができます。
(5) 平成19年5月17日付の「司法書士等に対する懲戒処分に関する訓令」(法務省訓令)を掲載しています。
(6) 「司法書士」も参照してください。

5 土地家屋調査士及び土地家屋調査士法人の懲戒
(1) 土地家屋調査士が土地家屋調査士法又は土地家屋調査士法に基づく命令に違反した場合,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は,当該土地家屋調査士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は業務の禁止の処分をすることができます(土地家屋調査士法42条)。
   土地家屋調査士法人が土地家屋調査士法又は土地家屋調査士法に基づく命令に違反した場合,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は,当該土地家屋調査士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は解散の処分をすることができます(土地家屋調査士法43条)。
(2)   何人も,土地家屋調査士又は土地家屋調査士法人に土地家屋調査士法又は土地家屋調査士法に基づく命令に違反する事実があると思料するときは,当該土地家屋調査士又は当該土地家屋調査士法人の事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に対し,当該事実を通知し,適当な措置をとることを求めることができます土地家屋調査士法44条1項)。
(3) 日本土地家屋調査士会連合会HPの「懲戒処分情報の公開」に,以下の懲戒情報が載っています。
① 過去6か月以内の,戒告の処分
② 処分期間終了の日から1年以内の,業務停止処分
③ 処分の日から5年以内の,業務の禁止又は解散の処分
(4) 平成19年5月17日付の「土地家屋調査士等に対する懲戒処分に関する訓令」(法務省訓令)を掲載しています。

6 税理士及び税理士法人の懲戒
(1) 以下の場合,財務大臣は,税理士又は税理士法人について,戒告,2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止(税理士法人の場合は解散)の処分を行います(税理士につき税理士法44条,税理士法人につき税理士法48条の20第1項)。
① 故意に,真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をした場合(税理士法45条1項)
② 不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,指示をし,相談に応じ,その他これらに類似する行為をした場合(税理士法45条1項・36条)
③ 税理士法33条の2に基づき,計算事項,審査事項等を記載した書面に虚偽の記載をした場合(税理士法46条前段)
④ 税理士法又は国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反した場合(税理士法46条後段)
⑤ 税理士法人の運営が著しく不当と認められる場合(税理士法48条の20第1項)
(2) 何人も,税理士について,懲戒事由に該当する行為又は事実があると認めたときは,財務大臣に対し,当該税理士の氏名及びその行為又は事実を通知し,適当な措置をとるべきことを求めることができます税理士法47条3項)。
(3)ア 国税庁HPに「税理士等に対する懲戒処分等」が載っています。
イ 国税庁HPの「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方(平成27年4月1日以後にした不正行為に係る懲戒処分等に適用)」には,具体的な懲戒処分の基準が書いてあります。
ウ 国税庁HPの「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等」に懲戒処分の対象となった税理士及び税理士法人があいうえお順に掲載されています。
(4) 国税庁HPに「税理士が遵守すべき税理士法上の義務等と懲戒処分」が載っています。
   通知弁護士(税理士法51条2項)は,税理士業務を行う範囲において税理士とみなされて,税理士に準じて,税理士法上の義務等の規定が適用されます。
(5) 平成25年7月時点の,税理士法事務取扱規程税理士懲戒処分等事務取扱規程及び税理士法聴聞事務取扱規程を掲載しています。
(6)ア 平成29年11月14日付の行政文書不開示決定通知書によれば,景品表示法違反を理由とする税理士法に基づく税理士懲戒処分通知書(過去5年分)は存在しません。
イ 平成29年11月14日付の行政文書不開示決定通知書によれば,景品表示法違反を理由とする税理士法に基づく税理士法人処分通知書(過去5年分)は存在しません。

7 社会保険労務士及び社会保険労務士法人の懲戒
(1) 厚生労働大臣は,以下の場合,社会保険労務士又は社会保険労務士法人について,戒告,1年以内の業務の停止又は失格処分を行います(社会保険労務士法25条)。
① 社会保険労務士が,不正に労働社会保険諸法令に基づく保険給付を受けること,不正に労働社会保険諸法令に基づく保険料の賦課又は徴収を免れることその他労働社会保険諸法令に違反する行為について指示をし,相談に応じ,その他これらに類する行為をした場合(社会保険労務士法15条)
② 社会保険労務士が,故意に,真正の事実に反して申請書等の作成,事務代理若しくは紛争解決代理業務を行った場合(社会保険労務士法25条の2第1項)
③ 社会保険労使が,相当の注意を怠り,真正の事実に反して申請書等の作成,事務代理若しくは紛争解決代理業務を行った場合(社会保険労務士法25条の2第2項)
④ 社会保険労務士が申請書等に添付する書面等に虚偽の記載をした場合(社会保険労務士法25条の3)
⑤ 社会保険労務士法及び社会保険労務士法に基づく命令又は労働社会保険諸法令の規定に違反した場合(社会保険労務士法25条の3)
⑥ 社会保険労務士たるにふさわしくない重大な飛行があった場合(社会保険労務士法25条の3)
⑦ 社会保険労務士法人の運営が著しく不当と認められる場合(社会保険労務士法25条の24)
(2) 何人も,社会保険労務士法人について懲戒事由に該当する行為又は事実があると認めたときは,厚生労働大臣に対し,当該社会保険労務士の氏名及びその行為又は事実を通知し,適当な措置をとるべきことを求めることができます社会保険労務士法25条の3の2第2項)。
(3) 厚生労働省HPに「懲戒処分等の基準」及び「社会保険労務士法人の懲戒処分事案」が載っています。
(4) 平成25年3月29日付で厚生労働省労働基準局監督課社会保険労務士係が作成した,「社会保険労務士の懲戒処分等に関する事務手続マニュアル」を掲載しています。
(5) 平成29年10月30日付の厚生労働大臣の行政文書不開示決定通知書2通によれば,景品表示法違反を理由とする社会保険労務士及び社会保険労務士法人の懲戒処分書(過去5年分)は存在しません。

8 弁理士及び特許業務法人の懲戒
(1) 特許庁HPに「弁理士及び特許業務法人に対する経済産業大臣による懲戒処分に関する運用基準」(平成26年8月1日施行)が載っています。
(2) 特許庁HPの「弁理士の懲戒制度等の在り方について」1頁には以下の記載があります。
   弁理士法では、弁理士が弁理士法や同法に基づく命令に違反した場合(特許業務法人は、それに加えて運営が著しく不当と認められる場合)には、行政処分として聴聞及び審議会における意見聴取を経て懲戒を行うことを定めており、懲戒の種類は、①戒告、②2 年以内の業務の停止(特許業務法人においては業務の全部若しくは一部の停止)、③業務の禁止(特許業務法人においては解散)の3 種類である(弁理士法第32 条及び第54 条第1 項)。
   また、経済産業大臣は、弁理士に懲戒事由に該当する事実があると思料するときは、職権を持って必要な調査をすることができる(同法第33条第3 項)。
   なお、弁理士(特許業務法人)の懲戒については、何人も弁理士に懲戒事由に該当する事実があると思料するときは、経済産業大臣に対し、その事実を報告し、適当な措置(懲戒)をとるべきことを求めることができる(同法第33 条第1項及び第54 条第2 項)。また、日本弁理士会は、その会員に懲戒事由に該当する事実があると認めたときは、経済産業大臣に対し、その事実を報告するものとする(同法第69 条第1 項)。
1(1) 交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
 
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。