証人尋問及び当事者尋問

第0 目次

第1    証人尋問及び当事者尋問の共通点
第2    証人尋問
第3    当事者尋問
第4    宣誓
第5    尋問の順番
第6    尋問を受ける際の留意点
第7の1  裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成
第7の2  尋問前の心証形成の程度,及び尋問による心証形成
第8    真実を陳述することに対する対価として金員を支払う旨の合意は公序良俗に反する場合があること
第9    尋問に出席した場合の旅費日当
第10   証人が正当な理由なく出頭しなかった場合の取扱い
第11   尋問の必要性等に関する東京高裁部総括の講演での発言
第12の1 証人尋問に関する民事訴訟規則の条文
第12の2 当事者尋問に関する民事訴訟規則の条文

*1 「陳述書」及び「尋問調書」も参照してください。
*2 刑事事件の証人尋問については,「刑事裁判の証人尋問」を参照してください。
*3 刑事裁判に関するものですが,証人等の保護のための諸制度に関する参考事項について(平成28年11月25日付の,最高裁判所刑事局第二課長及び総務局第三課長の事務連絡)を掲載しています。
*4 東弁リブラ2011年5月号「民事裁判における効果的な人証尋問(前編:基調講演)」及び東弁リブラ2011年7月号「民事裁判における効果的な人証尋問(後編:パネルディスカッション)」が参考になります。
*5 大阪地裁HPの「傍聴バーチャルツアー 裁判の傍聴に行ってみよう!!」には,裁判所内の廊下,開廷表,法廷等の写真が載っています。
*6 特許庁HPの「証人尋問の順序」に,特許庁の審判手続における証人尋問のことが書いてあります。
*7 中村真弁護士のブログに「尋問における異議のあり方」が載っています。
*8 みずほ中央法律事務所HP「【証人尋問|事前準備・法廷に行くまで|服装・持参品・法廷での待機】 」が載っています。
*9 東京地方裁判所民事部プラクティス委員会作成の書式集を掲載しています。
証人等目録
尋問調書の表紙
証人呼出状
証人向けの御案内

第1 証人尋問及び当事者尋問の共通点

1 尋問前の準備等
(1) 訴訟手続を進めていく中で証人尋問又は依頼者本人の当事者尋問が必要になった場合,証人の方又は依頼者本人に必ず裁判所の法廷に来てもらう必要があります。
(2) 「当事者は,主張及び立証を尽くすため,あらかじめ,証人その他の証拠について事実関係を詳細に調査しなければならない。」(民事訴訟規則85条)とされています。

   そのため,依頼した弁護士が証人及び依頼者本人との間で尋問に関する打ち合わせをすることは,民事訴訟規則が当然に予定していることです。
(3) 尋問のための事情聴取の際は,有利不利を問わず,関係する事情を一通り話して下さい。
   依頼した弁護士が十分に当事者又は証人の言い分を把握していない場合,当事者又は証人の法廷での証言において,言い間違い,記憶違い等があった場合,依頼者に不利な事実が法廷で初めて明らかになる危険を排除できないことから,言い間違い等を訂正するための質問ができなくなることがあります。
(4) 証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の口頭による意見の陳述において使用する予定の文書は,証人等の陳述の信用性を争うための証拠(=弾劾証拠)として使用するものを除き,当該尋問又は意見の陳述を開始する時の相当期間前までに提出する必要があります(民事訴訟規則102条)。
(5)ア 証人尋問又は当事者尋問を申請する場合,尋問に要する見込みの時間等を記載した証拠申出書(民事訴訟規則106条・127条)と一緒に,できる限り個別的かつ具体的に記載した尋問事項書を裁判所に提出します(民事訴訟規則107条・127条)。
    相手方に自宅を知られたくない場合,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階 林弘法律事務所内」といった感じで,勤務先を住所として記載すればいいです。
イ 証人及び当事者本人の尋問の申し出は,できる限り一括してしなければなりません(民事訴訟規則100条)。
ウ 証拠申出書,証拠説明書等の書式が日弁連HPの「裁判文書」に載っています。
(6)ア 証人尋問又は当事者尋問における主尋問及び反対尋問の時間(「尋問予定時間」といいます。)は,裁判所が,陳述書,尋問事項書等を踏まえた上で,当事者と協議しながら決定します。
イ 証人又は当事者を尋問する旨の決定があったときは,尋問の申出をした当事者は,証人又は当事者本人を期日に出頭させるように努める必要があります(民事訴訟規則109条・127条)。

    また,証人又は当事者本人は,期日に出頭することができない事由が生じたときは,直ちに,その事由を明らかにして裁判所に届け出る必要があります(民事訴訟規則110条・127条)。
(7)  誘導質問(尋問者が期待する答えを示唆・暗示するような質問)は禁止されています(民事訴訟規則115条2項2号・127条本文)。
   そのため,例えば,依頼した弁護士に対し,主尋問において,「はい」とだけ答えれば済むような質問(「クローズドクエスチョン」といいます。)だけをしてもらうことはできません。
(8) 尋問当日の服装に特に決まりはありませんが,裁判所という公の場で供述する以上,カジュアルな服装は避けて,その場にふさわしい清潔感のある服装が無難です。
   例えば,会社員の場合はスーツ姿,学生の場合は制服が無難ですが,ネクタイまではしなくてもいい気がします。
(9) 最低限,尋問当日に持参すべきものとしては,①印鑑(認め印でいいですが,シャチハタは避けた方が無難です。),②依頼した弁護士からもらった尋問に関するメモ書き等(尋問直前,依頼した弁護士の事務所で最後の確認をするのが通常と思います。)となります。
 
2 尋問当日の流れ
(1)ア 尋問当日は,トイレをすませた上で,期日が開始する10分前ぐらいまでに法廷に入った方がいいです。
   そうすれば,期日開始前に,宣誓書に当事者又は証人として署名押印をしたり,証人等出頭カードに住所,氏名,職業及び年齢を記入したりすることができ,時間に余裕を持てます。
イ 印鑑を忘れた場合,押印の代わりに指印(指に朱肉を付けて指形(ゆびがた)を押すこと。)を押すことになります。

(2) 尋問を開始する際,裁判長が当事者又は証人に対し,人定質問として,証人等出頭カードを見ながら,「住所,氏名,職業及び年齢は証人等出頭カードに記載したとおりですね。」と確認しますから,「はい。間違いありません。」と答えます。
   個人情報保護のため,証人等出頭カードに記載した住所,氏名,職業及び年齢が朗読されることはまずありません。
(3) 人定質問の直後に,起立して宣誓書を朗読します。
   詳細については,後述しています。
(4) 宣誓書朗読が終わると,裁判官から虚偽の陳述をした場合の制裁について告知されます。
   証人尋問の場合は偽証罪を,当事者尋問の場合は過料の制裁を告知されます。

(5)ア 偽証罪等の告知が終わると,事前に決められている尋問予定時間を目安に,当事者又は証人が着席したまま証言します。
   通常は,依頼した弁護士(主尋問),相手の弁護士(反対尋問),裁判官(補充尋問)という順番で尋問が行われます(民事訴訟規則113条1項)。
イ 当事者又は証人の陳述書を書証として提出している場合,主尋問の冒頭において,弁護士が陳述書の署名押印部分を示した上で,「これはあなたが署名押印したものということで間違いありませんか?」などと確認することで,陳述書の成立の真正を立証することが多いです。
(6) 尋問が終わると,当事者であれば当事者席に座ることができますし,証人であればそのまま帰るか,傍聴席で裁判の続きを傍聴することができます。
 
3 尋問の雰囲気
証人尋問及び当事者尋問の大体の雰囲気としては,テレビドラマのとおりです。
    ただし,尋問者の核心を突いた質問に対し,証人又は当事者本人が一方的に自白を始めるようなことは絶対にあり得ません。

4 文書等を利用した尋問
(1) 当事者は,裁判長の許可を得て,文書,図面,写真,模型,装置その他の適当な物件を利用して証人又は当事者に質問することができます(民事訴訟規則116条1項・127条)。
   この場合,依頼を受けた弁護士又は相手方の弁護士が,「甲第1号証の3頁目を示します。」とか,「原告準備書面(1)の上から3行目以下を示します。」などと述べることで,弁護士が証人又は当事者に対してどの書面を示しているかを明確にしつつ質問します。
(2) 刑事裁判の場合,書面等を示すことができるのは以下の三つの場合に限定されていますものの,民事裁判の場合,特に限定されていません。
① 書面又は物に関し,その成立,同一性その他これに準ずる事項について尋問する場合(刑事訴訟規則199条の10)
② 証人の記憶を喚起するために示す場合(刑事訴訟規則199条の11)
③ 供述を明確にするために図面,写真,模型,装置等を示す場合(刑事訴訟規則199条の12)

5 付き添い及び遮へい
(1) 証人又は当事者の年齢又は心身の状態その他の事情を考慮し,証人又は当事者が尋問を受ける場合に著しく不安又は緊張を覚えるおそれがある場合,証人尋問又は当事者尋問の際,裁判長の許可があれば,適当な人を付き添わせることができます(民事訴訟法203条の2・210条,民事訴訟規則122条の2・127条)。
(2) 事案の性質,証人の年齢又は心身の状態,証人と当事者本人等との関係その他の事情により,証人又は当事者が当事者本人等の面前で陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがある場合,証人尋問又は当事者尋問の際,裁判長の許可があれば,遮蔽の措置をとってもらえます(民事訴訟法203条の3・210条,民事訴訟規則122条の3・127条)。

6 書類に基づく陳述はできないこと
(1) 裁判所で尋問を受ける場合,裁判長の許可がない限り,書類に基づいて陳述することはできません(民事訴訟法203条・210条)。

(2) 書類に基づく陳述が原則として禁止されているのは,証人があらかじめ尋問事項に基づいて用意をし,メモを作成してくると,メモの作成状況が明らかでなく,他人の影響を受けやすく,自由な記憶に基づく真相を吐露しにくくなるし,一定の目的に沿う証言のみをして偽証がしやすくなるためとされています。 

   また,書類に基づく陳述が例外的に許容されているのは,証人が,計算事項について証言する場合,又は相当長期間にわたる事件の経過を陳述する場合等,単に記憶に基づいて証言することが困難であり,しかも偽証するおそれもないと認められるときは,書類に基づく陳述を許容する方が真実発見に資すると考えられているからです。

7 公開の法廷で行われること
(1) 証人尋問及び当事者尋問は,公開の法廷における口頭弁論期日に行われます(憲法82条1項)。
   憲法82条1項は,裁判の対審及び判決が公開の法廷で行われるべきことを定めていますところ,その趣旨は,裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し,ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにあります(最高裁大法廷平成元年3月8日判決)。

(2) 口頭弁論期日を公開しなかった場合,最高裁判所に対する絶対的上告理由となります(民事訴訟法312条2項5号)。
   ただし,口頭弁論の公開の有無は口頭弁論調書の形式的記載事項であり(民事訴訟規則66条1項6号),口頭弁論調書によってのみ証明できる事柄です(民事訴訟法160条3項)。

8 裁判所HPでの説明
   裁判所HPの「口頭弁論等」には,「証人は,原則として尋問を申し出た当事者が最初に尋問し,その後に相手方が尋問することになっています。裁判所は,通常は当事者が尋問を終えた後に尋問を行います。もっとも,裁判長は,必要があると考えたときは,いつでも質問することができます。証人等の尋問の順序,誘導尋問に対する制限その他の尋問のルールは民事訴訟法及び民事訴訟規則に定められていますが,一般的に言って,英米法に見られるような広範で厳格な証拠法則は,日本の制度には存在しません。」と書いてあります。

9 岡口基一裁判官の説明
   「裁判官!当職そこが知りたかったのです。-民事訴訟がはかどる本-」55頁及び56頁には以下の記載があります。
岡口   尋問で印象が変わることは少なくないですね。何で変わるかというと,じかに会って,お話を聞くから,人となりが見えてくるんですよね。
   それで,陳述書で抱いていたイメージと大分変わるんですよ。尋問でバレバレの嘘を言ったりすると,途端に今まで積み重ねてきたのも全部ダメになっちゃう。
   その人の人間性とか全部出ちゃうので,尋問って怖いですよ。むしろ裁判官は,そういうところを見ているんですね。なので,練習させておいたほうがいいかもしれません。
中村 そうですね。練習は絶対必要ですよね。私は修習中に裁判官から言われた「スーツをふだん着ていないような人がきっちり着てきたら,ちょっとうさんくさいと思いますね」というのが,すごく印象に残っているんですけど,そういうところはありますか?
岡口   自然体がいいですね,無理していない感じが。そこは信用性にかかわります。
中村 やっぱり尋問の時にも,つくり過ぎているなという印象はあまりよくないのかなと。
岡口 よくないですね。だから,練習し過ぎもよくないんですよ。
中村 すらすら出てき過ぎというのも。
岡口 そうなんですね。これは言わされているなと思っちゃうので。

第2 証人尋問

1 事前打ち合わせができる証人を申請した場合,当事者が当該証人を同行して期日に出席しますから,裁判所からの呼出状は送達されません(民事訴訟法94条2項「その他相当と認める方法」参照)。
   これに対して事前打ち合わせができない証人を申請した場合,相手方が同行してくれない限り,裁判所からの呼出状(民事訴訟法94条1項及び民事訴訟規則108条参照)が送達されます。
  
2 正当な理由なく証人尋問期日に出頭しない証人は,①10万円以下の罰金に処せられたり(民事訴訟法193条1項),②裁判所に勾引(刑事訴訟法58条参照)されたりすることがあります(民事訴訟法194条)。
   ただし,実務では,勾引等が行われるケースはまずないのであって,呼出を受けた証人が証拠調べ期日に出頭しない場合,裁判所は,証人申請をした当事者に対して申請を撤回するように求めることが多いです。
 
3 宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは,偽証罪として,3月以上10年以下の懲役に処せられます(刑法169条)。
    なお,虚偽の陳述とは,自己の記憶に反する証言をいいます(大審院大正3年4月29日判決)から,自己の記憶に従って証言した結果,客観的事実と矛盾していたとしても,偽証罪が成立することはありません。
 
4(1) 証言をすることによって,証人本人なり,証人の配偶者なり,四親等内の血族なり,三親等内の姻族なりが①刑事訴追を受け,若しくは有罪判決を受けるおそれがある場合,又は②名誉を害すべき事項に関する場合,証言を拒絶できます(民事訴訟法196条1号)。
(2) 医師,歯科医師,薬剤師,医薬品販売業者,助産師,弁護士,弁理士,弁護人,公証人等は,職務上知り得た事実で黙秘すべきものについては,証言を拒絶できます(民事訴訟法197条1項2号)。
   詳細については,「弁護士の守秘義務,弁護士職務基本規程等」を参照して下さい。
(3) 技術又は職業の秘密に関する事項については,証言を拒絶できます(民事訴訟法197条1項3号)。
 
5 後に尋問すべき証人は,自分よりも前の証人尋問に在廷できないことがあります(民事訴訟規則120条参照)。
 
6 偽証罪に問われない場合であっても,証人の証言が信用されているというわけでは全くありません。
   裁判所が証人の証言が信用できないと判断した場合であっても,偽証罪について捜査されることは極めて稀です。
 
7 ①単独の裁判官が代わった場合又は②合議体の裁判官の過半数が代わった場合において,その前に尋問をした証人について,当事者が更に尋問の申し出をしたときは,裁判所は,その尋問をする必要があります(民事訴訟法249条3項)。
    ただし,当事者尋問の場合,民事訴訟法249条3項(旧民事訴訟法187条3項)の準用はありません最高裁昭和42年3月31日判決)。 

第3 当事者尋問

1 当事者尋問は,証人尋問及び当事者尋問をするときは,証人尋問をした後に行われます。
    ただし,裁判所が適当と認めるときは,当事者の意見を聴いて,まず当事者本人の尋問をすることがあります(民事訴訟法207条2項)。
 

2 当事者尋問を正当な理由なく欠席した場合,自由心証主義(民事訴訟法247条)の例外として,尋問事項に関する相手方の主張を真実と認められることとなります(民事訴訟208条)。
 

3 宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは,裁判所は,決定で,10万円以下の過料に処します(民訴法209条1項)。
    ただし,過料の裁判は,裁判所が職権によって行うものであり,訴訟の当事者はその裁判を求める申立権を有しません最高裁平成17年11月18日決定)。

平成8年改正前民訴法下では,当事者尋問は他の証拠方法によって心証を得ることができない場合又は他の証拠方法がない場合に限って行うことができるとされていた(旧民事訴訟法336条・当事者尋問の補充性)。
   しかし,当事者本人は紛争の直接の関与者であり事実関係を最もよく知っている場合が多いし,我が国においては当事者本人の供述が証言と比べて信用性が劣るとは必ずしもいえないとの認識が一般的であり,当事者本人と証人との差異を強調すべきでないといえます。
   そこで,平成8年改正法は,証人尋問と当事者尋問とで尋問の順序の点では補充性を維持しつつ,適当と認められる場合には先に当事者尋問をなし得るとしました(民事訴訟法207条2項ただし書)。
 

第4 宣誓

1 宣誓書
(1) 証人尋問又は当事者尋問の前に,宣誓書(「良心に従って本当のことを申し上げます。知っていることを隠したり,ないことを申し上げたりなど,決していたしません。以上のとおり誓います。」という文言が記載されています。)に署名押印し,法廷で起立して読み上げてもらうことで,宣誓を行います(証人尋問につき民事訴訟法207条1項後段及び民事訴訟規則112条,当事者尋問につき民事訴訟法201条,民事訴訟規則127条・112条)。
   その後,依頼した弁護士,相手方代理人及び裁判所からの尋問に答えてもらうことになります(民事訴訟規則113条・127条)。
(2) 宣誓書には通常,はんこを付いてもらいます(認め印で結構です。)。
   はんこを忘れた場合,指印(親指又は人差し指の先に朱肉を付けて押す印のこと。)を押してもらうことになります。

 
2 宣誓拒絶
   ①証言拒絶権(民事訴訟法196条)を行使できる証人が尋問を受ける場合,裁判所から宣誓を求められないことがあります(民事訴訟法201条3項)し,②自己又は自己の配偶者等に著しい利害関係のある事項について尋問を受ける場合,宣誓を拒むことができる(民事訴訟法201条4項)のであって,宣誓をしないで証言をした場合,「法律により宣誓した証人」(刑法169条)に当たりませんから,偽証罪に問われることはありません。
    ただし,この場合,宣誓を拒む理由を疎明する必要があり(民事訴訟法201条5項前段・199条1項),宣誓拒絶を理由がないとする裁判(即時抗告権があることにつき民事訴訟法201条5項前段・199条2項)が確定した場合,宣誓をしなければなりません。
証人の宣誓書(東京地裁)

第5 尋問の順番

1   尋問の順番は通常,以下のとおりです(民事訴訟法202条1項,民事訴訟規則113条1項・127条)。
① 主尋問
→ 依頼した弁護士から質問される尋問です。
② 反対尋問
→ 相手方又はその代理人弁護士から質問される尋問です。
③ 再主尋問
→ 依頼した弁護士から再び質問される尋問です。
④ 補充尋問
→ 裁判長又は陪席裁判官による質問です(陪席裁判官による質問につき民事訴訟規則113条4項・127条)。
 
2 尋問でのメインは主尋問及び反対尋問であり,再主尋問及び補充尋問は付け足し程度になることが多いです。
   ただし,補充尋問は裁判所による尋問ですから,裁判所の心証が現れていることがあります。

第6 尋問を受ける際の留意点

1 証人尋問又は当事者尋問の際,陳述書の言葉を暗記してそのとおりに話さなければならないといったことは全くないのであって,自分の言葉で記憶のとおりに供述すればいいです。
   ただし,陳述書と異なる事実関係を供述した場合,反対尋問での攻撃材料となりますから,尋問の直前に陳述書を読み直すことで記憶喚起しておいた方がいいです。
 
2 以下の事項に留意して供述した方がいいです。
(1) 主尋問と反対尋問とで共通の留意事項
① 質問事項に対してはっきり答えること
→ 証人尋問では,一問一答式の質疑によって回答する必要があります(民事訴訟規則115条1項参照)から,質問事項に対してはっきりと答えて下さい。

   ただし,記憶が曖昧であるときは,そのとおり曖昧であることを率直に述べて下さい。
② 質問事項以外に回答する必要はないこと。
→ 不用意に長い回答をすると,予期しない反対尋問を誘発する危険があります。
    特に,理由や根拠に関する証言は,質問されない限り答える必要はないのであって,必要があれば,重ねて質問します。
③ 趣旨が不明の質問や聞き逃した質問には,改めて質問をしてもらうようにすること。

→ 尋問者の質問の趣旨がよく理解できなかった場合,理解が不十分なままに回答するのではなく,尋問者に対して質問の趣旨を尋ねたり,もう一度質問をしてもらったりするよう要求して下さい。
④ 裁判長の求めがある場合,図面を書かせられたり,図面に記入したりする場合があること(民事訴訟規則119条)。
→ 不動産事件では不動産の占有状況や現況を説明させたりする場合に図を用いたり,交通事故の事件で車両の動きを矢印で図示したりする場合があります。
 
(2) 反対尋問での留意事項
① 相手の弁護士の質問には全部について答える必要はないこと。
→ 尋ねられたことでも,覚えていないこと,知らないことはその旨を率直に回答すればよいのであって,質問された以上,必ず何かを回答しなければならないという気持ちは持たないで下さい。
   また,日時など細かいことを思い出せない場合,「細かいことは思い出せませんが,大体,〇〇だったと思います。」という風に答えればいいですし,資料を見なければ分からない場合,「資料を見なければ,分かりません。」という風に答えればいいです。
② 想像で答えないこと。
→ 何か答えなければ格好が付かないとか,依頼者に対して少しでも多くを語って協力したいとの心境で,想像を交えて答える人もいますが,止めて下さい。
③ 相手の弁護士の挑発に乗らないこと。
→ あえて証人を怒らせるのも法廷における反対尋問の作戦の一つですものの,相手の弁護士の挑発に乗ると,冷静を失い,事実が述べ足らなかったり,余計な発言をしたり,事実に相違することを述べたりする危険が高まります。
   また,同じ事柄を聞き方を変えて何回も質問された場合,何回でも同じ答えを繰り返せばいいです。
④ 文書を示して質問された場合,すぐに回答する必要はないこと。
→ 文書をじっくり読んで理解したうえで,質問に対する回答をしてください。
⑤ 証人と当事者との利害関係を尋ねられる場合があること。
→ 訴訟代理人と事前に打ち合わせたとか,本人とどんな経済的関係にあるかといった点が,相手の弁護士や裁判官から尋ねられることがありますものの,率直に答えてもらえれば結構です。
    このことは,民事訴訟規則85条が「当事者は,主張及び立証を尽くすため,あらかじめ,証人その他の証拠について事実関係を詳細に調査しなければならない。」と規定していることからも確認できます。
⑥ 主尋問と反対尋問とで態度に区別を設けないこと。
→ 真摯かつ誠実に対応できた方が裁判所の印象はよいものです。

3 外部HPの「反対尋問のテクニック」によれば,反対尋問をする側の一般的注意点として以下のことが記載されていますから,これらの点にも留意して反対尋問に対応してもらう方がいいです。

① テンポは速くする。

・ 証人を動揺させ、考える時間もなくすことで、矛盾する証言を引き出しやすくなる。

② 質問のスタイルは証人によって変える

・ 例えば、証人に対し友好的な態度を示し油断させるスタイルと、威圧的に質問するスタイルは、相手によって使い分けるべきである。

③ 答えが「イエス・ノー」でできる質問にする

④ 証言の根拠・理由は原則として聞かない

⑤ 出たとこ勝負にしない

⑥ 予定時間通り行う

⑦ 総花的に行わない

・ 証言すべてが虚偽ということは無いので、そもそも総花的反対尋問の意味はない。おかしいと思うところを集中的に攻撃することで、証言全体を弾劾できるので、反対尋問は一点豪華主義が効果的である。

⑧ 異議を出されないようにする。

・ 証人に休憩する暇を与えないため。

⑨ 深入りしない

⑩ 失敗した場合は早めに切り上げ、次の質問に移る

 

・ 証言の信用性を強めたり、不利な証言が出そうな場合には、方向転換をしなければならない。その場合、失敗を悟られないため、「今の質問は質問の趣旨がわかりにくかったと思うので、次の質問に移ります」とか、「表現が適切でなかったので撤回します」といった決まり文句をストックしておくとよい。

第7の1 裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成

   以下の記述は,①月刊大阪弁護士会平成23年10月号27頁ないし30頁,及び②阪地裁と大阪弁護士会の,平成27年2月2日開催の第72回民事裁判改善に関する懇談会議事録に書いてある,裁判官の発言をほぼ抜粋したものです。
 
1 総論
○弁論準備の終結段階で形成された心証が,尋問によって覆るという割合はそれほど多くはない。尋問前に心証が固まっている場合には,目的を持って証人尋問で検証している。
   客観的な証拠が乏しく,どちらのストーリーも成り立ちうるような場合は,どちらがより整合性があるかなどを考えて心証を確立させる場合が多い。
○目的意識が明確で簡にして要を得たものや,不利な点や矛盾点など相手方が指摘しそうな部分も意識的にカバーするような尋問が良い尋問であり,逆に,悪い尋問としては,陳述書をなぞるだけの尋問や意見を押しつける尋問,感情的になったり,証人を刺激したりするような尋問が挙げられる。
○証人の証言態度や口癖は基本的には心証形成にさほど影響しない。
   誠実に答えない場合は信用性に影響を及ぼす場合があり,逆に不利益事実も認めた上で証言すると全体として信用性が高まるという意見があった。
 
2 主尋問
(1) 総論
○大阪地裁では,主尋問を陳述書に譲って5分とする運用はしていない。
○具体的な事実をきちんと聞くと印象が強い。
   逆に,印鑑の管理が問題になっているのに,誰が管理していましたということだけ聞いて具体的にどこでどのように管理していたかということを聞かないと印象が良くない。
○表面的に流れているだけの質問では駄目で,きちんと裁判官が絵を描けるような質問が良く,リアルさに欠ける質問は適切ではない。
   主尋問で機械的に答えていたのに反対尋問で急に自分の言葉に変わるという場合,心証は良くない。本人の言葉で答えていることが大事である。
○証人や本人が直接体験していることを語ることが大前提であるから,そのリアリティーが浮かび上がってくるかどうかがポイントになってくる。
○実質的に争いのない点や争点に関係のない点に時間をかける主尋問はよくない。
   争点とは関係ないものの話しておきたいことがあれば,一番最後に「裁判所にいっておきたいことはありますか」という形で要約して伝えてもらえればよいのではないか。

(2) 主尋問における誘導
○陳述書に書いてあっても肝心なところは誘導せずに本人に話してもらいたい。
   裁判官は本人がどのように言うのかを見ているので,誘導して良い部分との区別が重要である。
○争点にかかわる部分に対する答えが「はい」「いいえ」のみの誘導が過ぎる尋問は悪い主尋問である。
○裁判所は,主尋問において,弱いと思っているところを本人がどのように説明するのかを見ているので,そういうところを誘導されると心証がとれないので止めてもらいたい。
 
(3) 陳述書との関係
○争点について具体的に証人の口から語らせるというところを一番重視しなければならない。
   陳述書をなぞるだけのメリハリのない尋問は,聞いていて効果がない。
○陳述書はきれいにまとまっていることが多いので,証人の認識等について,具体的に証人自身の言葉で聞くと迫真性が違う。
○証人が陳述書でも出ていない重要な間接事実について突然証言し出したような場合,争点に関係しないと言い切れるかどうかは疑問で,裁判所が尋問を止めることは難しい。
   ただし,その話がなぜこの段階で出るかについては非常に疑問を持つから,その理由を反対尋問で聞いてもらうのが良いのではないか。

(4) 文書等を示しての尋問
○高裁での経験からいうと,尋問は簡潔に要点を抜き出して,必要な書証に触れながら自分の言葉で語っているものが絶対良い。
   だらだらした調書を読まされることは非常に不評であり,簡にして要を得たものが一番理想だと思う。
○民事訴訟規則102条の「相当期間前」は尋問期日前の1,2週間前との理解であり,その期間は概ね遵守されている。
○尋問で示す証拠が尋問直前又は当日に提出された場合,相手方の意見を聞いた上で,事案の内容や証拠の重要性に応じて考える。
   期日の続行もあり得るし,弾劾証拠としてのみ使用を許したり,尋問で示すことを制限したり,時機に後れた攻撃防御方法として却下することもあり得る。
   例は少ないが,尋問期日が変更されたこともあるようである。
  
3 反対尋問
(1) 総論
○良い反対尋問は,淡々と事実や認識を証言させ,その中で客観的事実や主尋問との矛盾点や不合理な変遷を浮かび上がらせる尋問,記憶の内容や根拠が曖昧であることが明らかになるような尋問である。
○悪い反対尋問は,威圧的な尋問,侮辱的な尋問,些細な記憶違いをとらえて糾弾する尋問,意見や主張を押しつける尋問,無理に誘導する尋問,主尋問の上塗りの尋問である。
○反対尋問において客観的証拠との矛盾を指摘することは意味があるものの,矛盾を認めさせたり,証言を変えさせたりする必要はない。
   踏み込みすぎると,かえって弁解されたり,合理的な理由が出てきたりして逆効果となる。
○客観的な事実との矛盾を浮かび上がらせる尋問が効果的である。「このとき会いましたよね。」「いや,会っていません」というように主尋問を固めていくものは余り意味がない。
   証言と矛盾する物を示しながら,矛盾を浮かび上がらせられると良いのではないか。反対尋問で,証言の弱いところがよく分かったり,記憶の曖昧さが鮮明になったこともある。
○客観的証拠との矛盾を反対尋問で指摘する意味について,最終準備書面での指摘でもかまわないが,敗訴する側に譲歩させた和解に持って行くときに,尋問で指摘してもらっていると,それを前提に和解ができるという意味では非常にありがたい。
   自分としてはやっていただいた方が良い。
○最終準備書面における指摘で足りるということもあるが,最終準備書面は参考程度に拝見するということもあるので,尋問時間との関係もあるものの,ある程度尋問で指摘してもらった方がよい。
  
(2) 弾劾証拠
○尋問時に弾劾証拠が提出される例は多くないが,証人等の供述と矛盾する客観的事実を裏付けるような証拠(例えば,後遺症の程度と矛盾する画像,不貞の事件でホテルに入っていく写真,主張や供述と矛盾する証人自らの言動を示す文書)は効果的である。
   ただし,弾劾証拠といっても本体の証拠でもあることが多く,争点整理段階で出してもらえれば,争点や人証を絞り込めたり,和解の可能性も高まったと思われることが多い。
○弾劾証拠として機能しない証拠が出されることもある。
   録音反訳が出されることもあるが,尋問の場で反訳の正確性を検証できないから,事前に出しておくべきという意見が複数ある。
○その場で証人が内容を確認して反論できてしかるべきもの,例えば,鮮明な写真,証人自身が作成した手紙やメモで内容が完結しており,その場で見てどういうものかが誰でも分かるものであれば,尋問の際に弾劾証拠で出されても問題はない。
   しかし,内容をその場で見て確認できないものや反論の機会を後日改めて与えなければならないようなもの,例えば,録音反訳書,長いメールで一部だけ取り出してきてもやりとりの全体が分からないもの,第三者が作成したものについては,時間をとって内容を確認してもらう必要があるので,場合によっては尋問期日を続行したり,争点整理をやり直したりということにもなりかねない。
   期日を重ねて反論させるようなものであれば,尋問前に出してもらった方が良かったのではないかと思うし,尋問前に出してもらっていれば和解できたのではないかという事案もある。
   事案にもより一概に言えないが,内容に応じた適時の提出を心がけていただきたい。
○弾劾証拠をどのタイミングで提出するのかについては,弁護士の戦略と思うが,事前に提出すると弁解されて効果がなくなってしまうようなものについては,本当に弾劾証拠として意味があるのか。
   弾劾証拠というのは,その場でぎゃふんといわせるというか,弁解ができないようなものが良いのではないか。前後の文脈を見なければ分からないものはふさわしくない。
○録音した会話の証拠の価値については,裁判所と弁護士との間で若干認識のずれがある。
   発言の意味については,文脈や会話の流れの中で評価する必要がある。今証言した内容とその会話に出てきた内容との間に矛盾があることによって直ちに弾劾になるかといわれるとそうではなく,発言の趣旨を吟味した上で,弾劾証拠としての意味があるかについて判断していくことにある。
 
(3) 反対尋問で質問しないことの意味
○陳述書に重要な事実が書いてあるのに主尋問で聞かなかった場合に反対尋問しないことの印象について,反対尋問できないのだと思ってしまうという意見が多い。
○主尋問で陳述書に記載されている重要な事実を聞かなかった場合に,相手方がその事実に対して反対尋問を行わないときに,裁判所としてどういう印象をうけるかについては,ケース・バイ・ケースだと思う。
   主尋問で聞かなかった重要な事実について反対尋問を行わない場合には,そもそもその事実を立証できていないということになることもあるとは思うが,自分の印象ではむしろ逆にとらえてしまうことが多いように思う。
   反対尋問で聞かないということは,その事実は当然の前提として認めていると受け取ったり,反対尋問をしても効果が見込めないからしないと受け取ることの方が多いように思う。弁論の全趣旨で認定しても良いのだなと考える場合もある。
   したがって,争うのであれば,反対尋問はした方が良いと思う。
○反対尋問で聞かなければいけないと思っている事実については,主尋問で出てこなくても,反対尋問すべきだと思う。
○陳述書だけで事実を認定しない一番大きな理由は,反対尋問の機会が与えられておらず,弾劾を経ていないからであるが,陳述書が出され,重要な事実についての記載があり,反対尋問の機会が与えられているときに,反対尋問がされていないということになると,やはりそこは真剣に争っていないのかなという心証を抱く場合もあり得る。
   もっとも,主尋問でも触れられていないということで,その分,証明力としては弱いということは否定できないところではある。
○主尋問で触れられなかった重要な事実について,何でもかんでも反対尋問しておいた方がいいことになるのかといえば,逆効果な場合もあり得る。
   主尋問で触れられないことで,立証できていないとなりそうであったにもかかわらず,反対尋問で聞いて固めてしまうこともあり得ないわけではない。
   
4 介入尋問
○介入尋問は,身振りや手振り,「あれ,それ,そこ」といった表現,その他調書に残らない場合の確認のために行う。
○介入尋問は,証言の趣旨が不明確,質問を理解できていない,質問と答えがかみ合っていない,議論になった場合にも行う。

第7の2 尋問前の心証形成の程度,及び尋問による心証形成

○大阪地裁と大阪弁護士会の,平成28年2月9日開催の第21回民事裁判改善に関する若手法曹の懇談会の議事録には,以下の趣旨の記載があります。

1(1) 争点整理が終わった段階で裁判所が心証をどの程度形成しているか,尋問によりどのように心証を形成するかについては,個別事案に応じて異なるが,敢えて類型分けすれば,恐らく3類型に分けることができる。
(2)   A類型は,動かし難い事実や書証からほぼ心証がとれる事案である。この類型の事案では,尋問の結果,心証が変わることは少ないが,必要な人証調べを行ってもやはり心証が変わらなかったということを確認することで,より確定的な心証を得ることができるため,事案によっては尋問を行う意義がある。
   B類型は,尋問前に大体の心証がとれているが,まだ浮動的であり,尋問によって心証が変わり得る事案である。この類型の事案では,尋問の結果,新たな事実が判明するなどし,それまで不合理であると感じていた当事者の主張について納得がいくなど,心証が変わることもある。
   C類型は,人証調べを聞いてみないと心証がとれない事案である。例としては,通りすがりの他人同士の喧嘩等,ほとんど書証がない事案が挙げられる。この類型の事案では,当事者から事実関係をできるだけ細かく主張してもらい,双方の主張の一致点から,動かしがたい事実や争いの少ない事実を押さえていくこととなる。ただ,中には双方の言い分が全く食い違っている事案もあり,その場合には人証調べを聞かなければ心証形成ができないこともある。

2 全体における各類型の割合については,裁判官により意見が異なるところであるが,敢えて私の意見を含めた最大公約数的な結論をいうと,A類型が大体3割程度,B類型が最も多く4~5割程度,残り1~2割程度がC類型にあたると思われる。

第8 真実を陳述することに対する対価として金員を支払う旨の契約は公序良俗に反する場合があること

   証人等が真実を陳述しなければならないことは,もともと当然のことなのであって,ひとたび虚偽の陳述をした証人等が,改めて正当な行為に出るに当たり,その対価の授受を約するようなことは,証人等に対し甚だ不当な利益を与えるものとなります。
   そのため,証人等が虚偽の陳述をしたため,一方の当事者が,自己に不利な判決を予測するにいたったが,その後,証人等が翻意して,右当事者に対し,改めて真実を陳述する旨申し出るとともに,その対価として金員を要求した場合,右当事者が,自己の権利を守るため必要であると考えて,当該証人等との間で,真実を陳述することの対価として金員を支払う旨の契約を締結したとしても,当該契約は公序良俗に反します(最高裁昭和45年4月21日判決)。

第9 尋問に出席した場合の旅費日当

1(1) 証人尋問に出席した証人の場合,旅費日当(民事訴訟費用法18条1項)を請求できます。
   ただし,証人からの旅費日当の請求が予想される場合,証人尋問を申請した当事者が旅費日当相当額を事前に裁判所に納付する必要があります(民事訴訟費用法11条1項1号・2項及び12条1項)。
   そのため,当事者及び裁判所に余計な事務手続が発生しないよう,証人が旅費日当を放棄することが多いです。
(2) 証人が旅費日当を請求した場合,尋問終了後に裁判所から旅費日当を支払ってもらえます。
   この場合,証人の旅費日当は訴訟費用額に含まれることとなります。
(3) 裁判所HPの「証人等日当及び宿泊(止宿)料」には,証人等の日当額は8000円以下となっています。
 
2(1) 当事者尋問に出席した当事者の場合,判決確定後の訴訟費用額確定処分(民事訴訟法71条)を通じてしか,旅費日当を請求できません。
   つまり,当事者は判決確定前に旅費日当を支払ってもらうことはできません。
(2) 訴訟費用額確定処分については,外部HPの「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」が分かりやすいです。
 
3 日当は1日当たり3950円です(民事訴訟費用法2条4号ロ・民事訴訟費用規則2条2項)。

第10 証人が正当な理由なく出頭しなかった場合の取扱い

1 証人が正当な理由なく出頭しなかった場合,つまり,出頭を拒否した場合の取扱いは以下のとおりです。
① 裁判所が決定で,証人の不出頭によって生じた訴訟費用の負担を命じ,かつ,10万円以下の過料に処します(民事訴訟法192条1項)。
② 10万円以下の罰金又は拘留に処せられ(民事訴訟法193条1項),場合によっては併科されます(民事訴訟法193条2項)。
③ 勾引されることがあります(民事訴訟法194条1項)。

2 平成29年6月14日付の開示文書によれば,平成28年に関して,民事訴訟法193条に基づき10万円以下の罰金又は拘留に処した件数は0件です。

3 平成29年6月14日付の司法行政文書不開示通知書によれば,平成28年に関して,民事訴訟法192条に基づき訴訟費用の負担を命じた件数が分かる文書,及び民事訴訟法194条に基づき証人の勾引を命じた件数が分かる文書は存在しません。

第11 尋問の必要性等に関する東京高裁部総括の講演での発言

○富田善範東京高裁14民部総括判事(当時)は,平成28年2月8日の講演「現代の民事裁判における裁判所の役割」(平成27年度司法研修所特別研究会7(現代社会における法と裁判)2/2参照)において,尋問の必要性等に関して以下の発言をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。

1(1) 私は訟務に2回,合計13年行っておりました。現場の法廷に立つ訟務検事としても6年ぐらいはやっております。ですから,国の立場ではありますけれども,当事者の心理といいますか,やり方というものもよく分かるところがあります。
(2)   皆さん御承知のように,民事裁判は,当事者主義によって成り立っており,当事者に主張立証を任せれば自分に有利な主張立証をどんどん出してくるであろうから,当事者主義によって訴訟資料は充実するはずだと,民事訴訟法を習った段階ではそのように理解していました。
   現実はどうかというと,代理人をやってみると分かるのですが,率直に言って,当事者双方は,本来裁判所が審理の対象とすべき証拠のせいぜい2,3割ぐらいしか出してきません。
   その原因は何かというと,明らかに自分に有利な証拠はもちろん出しますが,明確に有利な書証というのはそんなにあるわけではありません。
   多くの資料は,自分にとって有利にもなるが, 不利にもなります。そうすると,少しでも不利になりそうなものは自分からは自主的に出さないのです。これが当事者の心理なのです。
(3)   ですから,訴訟段階で最初に出てくる書証は,客観的資料である登記簿とか,戸籍とかそういうものは出ますし,契約書があれば契約書が出てくる。
   しかし,それ以外のものというのは, なかなか普通の民事事件では出てこないことになります。しかも,事件のポイントになるところは余り書面化されていないことも多いわけです。
(4)   このようなことから,私は,民事裁判はミステリー小説ではないかと思っています。要するにぽつん,ぽつんと書証がありますが,その書証をつなぐものが直接ないのです。
   特に訴訟の最初の段階では余り出てこないものですから,裁判官には事実関係がよく分からないわけです。
   このように書証をつなぐものがはっきりしないとなれば,事件のストーリー,全貌は少しも浮かび上がってこないということになります。
(5)   ある先輩の裁判官は,これをクロスワードパズルと言っておられましたが,いずれにしてもこのミステリー小説のような状態をどう理解し解明していくかというのがなかなか難しいということになります。
   しかも,当事者は事実がどういうものかを知っています。代理人が全部知っているかどうか分かりませんが,当事者は真実というものを知っているわけです。代理人は少なくとも裁判所よりはよく知っています。
   そして,裁判所には分からないと思いますが,当事者同士では共通の事実認識も結構あります。6,7割は少なくとも当事者間で共通の事実認識があって,最後の少しは違ってくるかもしれませんが,代理人も当事者本人から話を聞けば,大体事件の全貌は浮かび上がってきます。
   ところが,これを裁判において,裁判所に説明する段階になると,お互いの見合いになってしまうわけです。
   とりあえず,必要最小限度の主張立証をして,相手の出方を見ながら,ここは反論しなければいけないというところだけは一所懸命反論しますが,それ以外の部分については,自分にとって有利か不利か分からないとなると, 急に身構えて主張立証を出し渋ってしまうのが当事者の心理です。
(6)   このような当事者主義に任せているとどういう結果になるかというと,当事者は一応の主張はするが,非常に資料が乏しく,何でこういう紛争になったのかとか,いろいろな経緯,動機とか背景事情とか,そういったものを余り出してこないことになります。
   そして,現にそういった当事者の主張立証が不足している事件がすごく増えているように思います。
   私は,民事裁判においては,このように当事者だけに主張立証を任せている限りはそうなりやすいことをよく考えておかなければならないと思います。
2(1) 私は,昨年6月に知財高裁から高裁民事部に移りまして,平成21年以来久しぶりに民事事件をやっているのですが,このような統計と歩調を合わせたように,原審で人証を調ぺていない,そして本人尋問すらしていない事件が以前に比べて目立って増えています。
   さらには陳述書すら出ていないという事件も増えております。
(2)   そういう事件では,一審の記録を見ると,書証以外は当事者の主張だけなのです。そうすると,その紛争に至った経緯とか動機とか背景事情は主張の中には少し述べられていますが,証拠上は全くないわけです。
   例えば,契約書はあるが,その契約書の成立等を争っていても,当事者が陳述書を出さないまま終結になっている事件が結構目につきます。
   そうすると,契約書をつくったけれども,これはこういう趣旨だったというようなことについては主張があるだけですので,裁判所の判断は,抽象的にそういう主張を認めるに足る証拠がないとか,あるいはこういう契約書がある以上,そういうことはないはずだとか,そういう判決になっていることが多いのです。
   しかし,そういう事件だと,高裁としては,この事件の実態がよく分からないということになります。その結果,当部の主任裁判官の合議メモでは,事件の経緯が分からないから,主張をやり直させなければならないとか,まずは陳述書を出させ,尋問しなければならないという意見が多くなっております。
   さすがに高裁段階で全部尋問するわけにもいかないので,ー応,事情を聞くために弁論準備や和解にすればいろいろ話をしてくるので,それによって,かなりの事件が和解で終わりますが,それだけではすまないので,今は,月に1,2件は証拠調べをするという状態です。
(3)   最近の事例では,離婚事件について,原審では,争点が破綻したかどうかだけだったためか本人尋問も実施されていなかったのですが,当審で慰謝料請求が追加されたので,これは調べざるを得ないということで双方本人を調べました。
   調べてみると,やはり事件の内容がよく分かります。当事者の言いたいこと,そして事件になった由来というのが分かります。
   皆さんも御承知のように,本人を見ながら尋問を聞けば,本人の言うことが信用できるかどうか,ある程度分かるわけです。その結果,結論が覆るのもあれば,もとの結論が維持されるのもありますが,間接事実を積み重ねていけば,判決においても事実関係を認定できますので,当然,判決は書きやすくなるわけです。
(4)   そういう意味でも,なぜそれが原審でされていないかということがーつ問題になるわけです。 当事者主義を突き詰めていくと,要は当事者が自分から陳述書も出さない,本人尋問も申請しないで,それで判決してくれということだから,裁判所は判決しているということなのでしょう。
   しかし,本当にそれでよいのかと思います。これで片側が本人訴訟の場合になると,私の部に来る控訴事件では,これまたほとんど尋問がされていないのです。
   尋問がなくて,弁論調書でポイントだけ押さえて何か言わせて,その限度で判決を書かれている例が結構あります。
   昔は,本人訴訟となると,なかなか書面だけでは何を言いたいのか分かりづらいので,とりあえず尋問して,言いたいことはこうねと,でもこうでしょうという形で話を押さえていくというのがやり方でした。
   このような場合も,当審で尋問する例があります。当事者は原審で話を聞いてもらえていませんから,当然,控訴してくるという形になるわけです。
   しかし,本当にこのように本人の言い分を直接聞く機会を作らないままでよいのかということが,今,問われているのではないかと思います。
3(1) 民事裁判における裁判官としての謙虚性と積極性という話をしたいと思います。
   これは,私自身が民事裁判に臨むに際してどういう考えで臨んでいるかということなのですが,先ほど申し上げたように,要するに,裁判所は当事者から全く何も知らされていない訳ではないですけれども,極めて少ない情報しか知らせてもらえないという面があります。
   ですからやはり裁判官は事件については大抵の場合よく分からない,基本的には知らないということになります。
   もっとも,我々は具体的事件の審理をやってみると,準備書面が往復する過程で,経験を積んでくると,特にここにおられる方は,大体この事件の結論はこうだよなという見通しが見えてきます。
   恐らく7,8割の事件は多分これはこう終わるだろうなと皆さん思われると思うのです。問題はそのときに,当事者がそれ以上主張・立証しない場合に, これで判断できると,判決を書けると思うかどうかが大事だと思うのです。
   私の経験では,7,8割の事件は,準備書面段階で大体こういう結論になると考えたとおりになりますが,2,3割の事件では人証調べの結果によって判断が変わっております。
   これは,結論だけでなく,事件のストーリーや細部が変わる場合を含みます。そういうケースは珍しくないのです。
   ですから,乏しい証拠しか出ていない段階で,主張レベルで余り早く結論を決めてしまわないというのが大事だと思います。もちろんその段階での心証に基づいて,心証開示したり,和解勧告をしたりするというのはよいと思います。
   むしろそれをして,裁判所の考えを当事者に告げた方が当事者にとってもよいことだと思うのです。
   これに対して,当事者から,いやそれは違います,こういう反論ができますといわれれば,やはり陳述書を出させ,証拠調べを行うことが必要になります。逆に,弁論準備で当事者と主張内容について何のやりとりもなく,和解勧告もなく,当事者が自分から陳述書を出さない,本人尋問を申請しないからということで終結して判決を書くとなると,当事者と双方向の議論なく判断するということになり,それは極めて危険なことだと思います。
   事件というのは,もともと証拠が乏しいものが多く,そもそも,当事者が証拠を全部出しても,本当のところはなかなか分かりません。最後は口頭でのやりとりが多いわけです。
   ですから,口頭でのやりとりについて,ちゃんと尋問で聞いて,反対尋問もし, 裁判所からも聞いて,立証が尽きたところで,やはり裁判所としてはこう判断するしかありませんというのが私は民事裁判ではないかと思います。
   要するに証拠調べが尽きたところで初めて結論を出せるのであって,証拠調べが尽きていない段階で軽々しく判断を出すというのは極めて危険であると思います。
   そういう意味で裁判官は事件に対して謙虚でなければならないと思っているわけです。
4(1) 皆さん,刑事事件では,よく動機ということが言われます。動機は何かと,動機が分からないと新聞でも議論になります。
   私は,刑事事件では,動機が直接ない場合もあるし,黙秘権によって動機をー切言わなくても,それは仕方がないと思うのです。
   ある意味では自分の内心のことですし,それでも必ず刑は言い渡されるわけです。 
(2)   しかし,民事事件で,少なくとも契約絡みの事件で動機がない事件というのはまず考えられないと思います。
   民事事件は,お金,異性及び親族,そして事故が原因になりますが,少なくとも前二者について,人間の行動には動機がないはずがないのです。
   その動機に基づく行為が合理的かどうかで民事事件というのはある程度分かり,心証が掴めるのです。そして,その部分はやはり本人は知っているので,本人がどう説明するかというのがポイントになります。

   だから尋問においては,そういったところを多角的に聞いていくというのが大事になります。
(3) 私は,今回で高裁が4回目で通算約7年になります。地裁より高裁の方が長いというのが特徴です。
   最初は平成元年4月から平成4年3月まで3年間いて,その頃は,うちの部は,申請があれば本人尋問をやり直すのが原則で,離婚事件でも両当事者をもう一回聞いていました。
   しかし,2度目の平成14年3月から平成16年3月まで2年間いたときには,もうほとんど 1回結審の時代に入っていました。
   そのときに困ったのは,原審の尋問内容でして,あなたはなぜこうしたのですかという最後の一押しがない事件が目立ちました。
   これは両代理人からは極めて聞きにくいことなのです。自分に不利なことが出るのは嫌だから,反対尋問であなたはなぜこうしたのだというのはなかなか聞かないのです。これを聞けるのはやはり裁判官なのです。
   大体,本人や証人は裁判官に聞かれると割に正直に言います。だから,私は,代理人当時, 反対尋問の極意としては,最後にその一言を裁判官に聞かせるように尋問しました。
   そうすると,裁判官がその最後のー押しを聞いてくれる。あなたはなぜこうしたのですかといった,当然起こる疑問について,そこを聞いてみて,本人の応答ぶりを聞いて大体心証が決まるのです。
   その質問に対して本人がうまく説明できないということがあります。そうなると,もうそこで心証が決まります。そこまで詰めておけば,和解もまず半分以上できますし,判決でもあなたの言うことは信用できないと書けるわけです。
   しかし,その最後の一押しがないと心証が取りにくいのです。かと言って,高裁でそのためだけにもう一回聞くわけにはいかないから,そこを原審に是非やってほしいと言っていたわけですが,今は尋問自体がされていないので,その最後の一押しも全くなく,心証など全然取れないわけです。
   仕方がないから,どうにもならない事件は当審で証拠調べを行っているというのが実情です。とにかく,尋問もせず,最後の一押しの質問もなく,それに対する当事者の応答もなくて,原審はどうして心証がとれるのかが,私には理解できません。
   そういう意味の裁判官の後見的積極性というものは必要なことであると思っております。
5(1) 当事者本人の尋問の機能の必要性をどう考えるかについては,既に大体お話してきたとおりです。
   民事事件の場合,決め手になる書証が極めて乏しい,あるいは処分証書が出ても,その有効性が争われるというようなことになりますが,それ以外の事情というのはほとんど書証ではまず決着がつかないわけです。
   そうすると,証人あるいは本人尋問になるので,その前提で陳述書を出させることになります。
   しかし,多くの場合,陳述書はほとんど準備書面に書いてあることと同じことを書いてきます。ですから語弊がありますけれども,やはり弁護士の作文の域を出ないということがよくあります。したがって,普通は尋問が必要になります。
   この点について,私が若い頃に先輩から聞いたのは,証人は全て嘘を言うことが多い。
   我が国の証人は,私はどちらの依頼,又はどちらの立場で出るのでしょうかと聞いてその立場で証言することが多いと聞きました。
   証人は一般にごくわずかな部分しか関与していませんから,全面的にどちらかの当事者の方向に寄ってしまうことが多いのです。
   これに対し,当事者本人は全て嘘を言うわけではないと聞きました。本人は全ての過程に関与していますが,肝心のところは当然ながら双方言い分が違います。
   しかし,前後の過程は結構真実を言っている面が多いわけです。そのため,昔から当事者本人がー番真実の宝庫だと言われているのです。
   したがって,聞き方次第では真実が出てきたり,それが分かるというのが当事者本人であるので,一般的に事件を審理する上では,当事者本人の尋問は欠かせないと思います。
   その上で,先ほど申し上げたように,本人の言いたいことを裁判所が聞いてくれたという機能のこともきちんと押さえておいた方がよいと思います。
(2)   最近,高裁で当事者本人尋問を実施した事例では,特に片側が本人訴訟だったせいもあって,裁判所から,まずあなたの言いたいところはこういうところなのですかというところを十分に確認し,その上で,しかしここはこういう点で問題ではないですかということを尋ねました。
   そこをちゃんと十分に意識してやることで,本人も基本的に裁判所に話を聞いてもらえたと, 裁判所は私の言うことを聞いてくれているのだということを理解させた上で,今度は問題点を指摘します。
   そういったことが本人の尋問では非常に大事になるし,裁判官が尋問を行う意味が出てくるのではないかと思います。
   そういった形で多角的にいろいろな議論をすることで, 例えば,動機や経緯に合理性がないといったことも当事者本人にもよく分かってきますから, 和解もやりやすいし,判決も書きやすいということになります。下級審の判決の極意はできるだけ事実認定で書くことだと言われますが,それはなぜかというと,事実認定であれば,基本的に下級審の専権に属する分野ですし,法的判断の部分が狭くなればなるほど法的に争う領域が減ってくるということになります。高裁の場合は最高裁で通る確率が高まるという効果もあります。
   しかし,当事者本人にとっても,事実がどうかという認定で判断されるということは決して嫌ではないわけであって,そういう意味で,ー審においても,やはり間接事実レベルの事実をどこまで認定し,どこまで認定できないか,そこから法的判断にどう行くのかというところをきちんと書けば,高裁に対する説得力も全然違うということになろうかと思います。 
(3)   私は,事件の審理においては,証拠調べがいわば頂点をなすものだと思います。事件の処理としては,主張を整理し,書証が出て,そこから人証に入ります。もちろんその間に時系列表を作成し,事件についてー所懸命考え,ー定の心証が普通はできているわけです。
   しかし,面白いことに,主尋問を聞き,反対尋問を聞いている間に,どんどん,どんどん頭の中でこの事件に対する見方や心証が変わってくるのです。
   私は,代理人当時は相手の主尋問を聞きながら何を反対尋問するかフル回転で考えていたのですが,同じことが裁判官でもあって,この人に何を聞こうか,どこで押さえようかといったことが頭を駆け巡り,尋問の間も,時系列表と記録をいろいろ見て,ここだ,よし,ここから行こうとか,そういうことばかり考えて最後の補充尋問に至るという形になります。
   ですから,人証調べというのは,事件を理解するにおいて―番分かるところなので,十分な準備の下にそれをやるということで事件は解決するのだと, その点において,私は非常に確信を持って言えます。
   今も月に何件か尋問しておりますが,後で陪席と話をしても,やはりこうだよとか,ここはこうだったねというのがきちんと議論できますから,そういう意味でやはり人証調べを,いま一度重視し,そこを頂点に事件処理するといったことを考えていただければと思います。

第12の1 証人尋問に関する民事訴訟規則の条文

第二節 証人尋問
(証人尋問の申出)
第百六条 証人尋問の申出は、証人を指定し、かつ、尋問に要する見込みの時間を明らかにしてしなければならない。
(尋問事項書)
第百七条 証人尋問の申出をするときは、同時に、尋問事項書(尋問事項を記載した書面をいう。以下同じ。)二通を提出しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、裁判長の定める期間内に提出すれば足りる。
2 尋問事項書は、できる限り、個別的かつ具体的に記載しなければならない。
3 第一項の申出をする当事者は、尋問事項書について直送をしなければならない。
(呼出状の記載事項等)
第百八条 証人の呼出状には、次に掲げる事項を記載し、尋問事項書を添付しなければならない。
一 当事者の表示
二 出頭すべき日時及び場所
三 出頭しない場合における法律上の制裁
(証人の出頭の確保)
第百九条 証人を尋問する旨の決定があったときは、尋問の申出をした当事者は、証人を期日に出頭させるように努めなければならない。
(不出頭の届出)
第百十条 証人は、期日に出頭することができない事由が生じたときは、直ちに、その事由を明らかにして届け出なければならない。
(勾引・法第百九十四条)
第百十一条 刑事訴訟規則(昭和二十三年最高裁判所規則第三十二号)中勾引に関する規定は、正当な理由なく出頭しない証人の勾引について準用する。
(宣誓・法第二百一条)
第百十二条 証人の宣誓は、尋問の前にさせなければならない。ただし、特別の事由があるときは、尋問の後にさせることができる。
2 宣誓は、起立して厳粛に行わなければならない。
3 裁判長は、証人に宣誓書を朗読させ、かつ、これに署名押印させなければならない。証人が宣誓書を朗読することができないときは、裁判長は、裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。
4 前項の宣誓書には、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、また、何事も付け加えないことを誓う旨を記載しなければならない。
5 裁判長は、宣誓の前に、宣誓の趣旨を説明し、かつ、偽証の罰を告げなければならない。
(尋問の順序・法第二百二条)
第百十三条 当事者による証人の尋問は、次の順序による。
一 尋問の申出をした当事者の尋問(主尋問)
二 相手方の尋問(反対尋問)
三 尋問の申出をした当事者の再度の尋問(再主尋問)
2 当事者は、裁判長の許可を得て、更に尋問をすることができる。
3 裁判長は、法第二百二条(尋問の順序)第一項及び第二項の規定によるほか、必要があると認めるときは、いつでも、自ら証人を尋問し、又は当事者の尋問を許すことができる。
4 陪席裁判官は、裁判長に告げて、証人を尋問することができる。
(質問の制限)
第百十四条 次の各号に掲げる尋問は、それぞれ当該各号に定める事項について行うものとする。
一 主尋問 立証すべき事項及びこれに関連する事項
二 反対尋問 主尋問に現れた事項及びこれに関連する事項並びに証言の信用性に関する事項
三 再主尋問 反対尋問に現れた事項及びこれに関連する事項
2 裁判長は、前項各号に掲げる尋問における質問が同項各号に定める事項以外の事項に関するものであって相当でないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを制限することができる。
第百十五条 質問は、できる限り、個別的かつ具体的にしなければならない。
2 当事者は、次に掲げる質問をしてはならない。ただし、第二号から第六号までに掲げる質問については、正当な理由がある場合は、この限りでない。
一 証人を侮辱し、又は困惑させる質問
二 誘導質問
三 既にした質問と重複する質問
四 争点に関係のない質問
五 意見の陳述を求める質問
六 証人が直接経験しなかった事実についての陳述を求める質問
3 裁判長は、質問が前項の規定に違反するものであると認めるときは、申立てにより又は職権で、これを制限することができる。
(文書等の質問への利用)
第百十六条 当事者は、裁判長の許可を得て、文書、図面、写真、模型、装置その他の適当な物件(以下この条において「文書等」という。)を利用して証人に質問することができる。
2 前項の場合において、文書等が証拠調べをしていないものであるときは、当該質問の前に、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。ただし、相手方に異議がないときは、この限りでない。
3 裁判長は、調書への添付その他必要があると認めるときは、当事者に対し、文書等の写しの提出を求めることができる。
(異議・法第二百二条)
第百十七条 当事者は、第百十三条(尋問の順序)第二項及び第三項、第百十四条(質問の制限)第二項、第百十五条(質問の制限)第三項並びに前条(文書等の質問への利用)第一項の規定による裁判長の裁判に対し、異議を述べることができる。
2 前項の異議に対しては、裁判所は、決定で、直ちに裁判をしなければならない。
(対質)
第百十八条 裁判長は、必要があると認めるときは、証人と他の証人との対質を命ずることができる。
2 前項の規定により対質を命じたときは、その旨を調書に記載させなければならない。
3 対質を行うときは、裁判長がまず証人を尋問することができる。
(文字の筆記等)
第百十九条 裁判長は、必要があると認めるときは、証人に文字の筆記その他の必要な行為をさせることができる。
(後に尋問すべき証人の取扱い)
第百二十条 裁判長は、必要があると認めるときは、後に尋問すべき証人に在廷を許すことができる。
(傍聴人の退廷)
第百二十一条 裁判長は、証人が特定の傍聴人の面前(法第二百三条の三(遮へいの措置)第二項に規定する措置をとる場合及び法第二百四条(映像等の送受信による通話の方法による尋問)に規定する方法による場合を含む。)においては威圧され十分な陳述をすることができないと認めるときは、当事者の意見を聴いて、その証人が陳述する間、その傍聴人を退廷させることができる。
(平一九最裁規一七・一部改正)
(書面による質問又は回答の朗読・法第百五十四条)
第百二十二条 耳が聞こえない証人に書面で質問したとき、又は口がきけない証人に書面で答えさせたときは、裁判長は、裁判所書記官に質問又は回答を記載した書面を朗読させることができる。
(付添い・法第二百三条の二)
第百二十二条の二 裁判長は、法第二百三条の二(付添い)第一項に規定する措置をとるに当たっては、当事者及び証人の意見を聴かなければならない。
2 前項の措置をとったときは、その旨並びに証人に付き添った者の氏名及びその者と証人との関係を調書に記載しなければならない。
(平一九最裁規一七・追加)
(遮へいの措置・法第二百三条の三)
第百二十二条の三 裁判長は、法第二百三条の三(遮へいの措置)第一項又は第二項に規定する措置をとるに当たっては、当事者及び証人の意見を聴かなければならない。
2 前項の措置をとったときは、その旨を調書に記載しなければならない。
(平一九最裁規一七・追加)
(映像等の送受信による通話の方法による尋問・法第二百四条)
第百二十三条 法第二百四条(映像等の送受信による通話の方法による尋問)第一号に掲げる場合における同条に規定する方法による尋問は、当事者の意見を聴いて、当事者を受訴裁判所に出頭させ、証人を当該尋問に必要な装置の設置された他の裁判所に出頭させてする。
2 法第二百四条第二号に掲げる場合における同条に規定する方法による尋問は、当事者及び証人の意見を聴いて、当事者を受訴裁判所に出頭させ、証人を受訴裁判所又は当該尋問に必要な装置の設置された他の裁判所に出頭させてする。この場合において、証人を受訴裁判所に出頭させるときは、裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所以外の場所にその証人を在席させるものとする。
3 前二項の尋問をする場合には、文書の写しを送信してこれを提示することその他の尋問の実施に必要な処置を行うため、ファクシミリを利用することができる。
4 第一項又は第二項の尋問をしたときは、その旨及び証人が出頭した裁判所(当該裁判所が受訴裁判所である場合を除く。)を調書に記載しなければならない。
(平一九最裁規一七・一部改正)
(書面尋問・法第二百五条)
第百二十四条 法第二百五条(尋問に代わる書面の提出)の規定により証人の尋問に代えて書面の提出をさせる場合には、裁判所は、尋問の申出をした当事者の相手方に対し、当該書面において回答を希望する事項を記載した書面を提出させることができる。
2 裁判長は、証人が尋問に代わる書面の提出をすべき期間を定めることができる。
3 証人は、前項の書面に署名押印しなければならない。
(受命裁判官等の権限・法第二百六条)
第百二十五条 受命裁判官又は受託裁判官が証人尋問をする場合には、裁判所及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。

第12の2 当事者尋問に関する民事訴訟規則の条文

第三節 当事者尋問
(対質)
第百二十六条 裁判長は、必要があると認めるときは、当事者本人と、他の当事者本人又は証人との対質を命ずることができる。
(証人尋問の規定の準用・法第二百十条)
第百二十七条 前節(証人尋問)の規定は、特別の定めがある場合を除き、当事者本人の尋問について準用する。ただし、第百十一条(勾引)、第百二十条(後に尋問すべき証人の取扱い)及び第百二十四条(書面尋問)の規定は、この限りでない。
(法定代理人の尋問・法第二百十一条)
第百二十八条 この規則中当事者本人の尋問に関する規定は、訴訟において当事者を代表する法定代理人について準用する。
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