司法修習生の修習給付金及び修習専念資金

第0 目次

第1の1 71期からの修習給付金(平成29年7月24日更新
第1の2 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い(平成29年7月24日追加
第2の1 修習給付金制度が創設されるまでの経緯
第2の2 修習給付金の導入理由等(平成29年7月3日追加
第2の3 修習給付金の名称に関する説明(平成29年7月3日追加
第2の4 月額13万5000円の基本給付金の根拠(平成29年7月24日更新
第3の1 修習給付金に関する法務大臣の国会答弁
第3の2 修習給付金に関する法務省大臣官房司法法制部長の国会答弁
第3の3 修習給付金に関する最高裁判所人事局長の国会答弁
第3の4 衆議院法務委員会における国会答弁資料(平成29年7月3日追加
第3の5 参議院法務委員会における国会答弁資料(平成29年7月3日追加
第4   裁判所法の一部を改正する法律の成立に当たっての日弁連会長声明等
第5   裁判所法の一部を改正する法律案要綱
第6の1 修習給付金と最低賃金等の比較
第6の2 給費制と修習給付金制度との比較等(平成29年7月5日追加
第7の1 裁判官の推定年収(参考)
第7の2 上場企業の時給ランキング2017(参考)
第8   OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当すること等
第9   経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)の文言
第10    修習専念資金(平成29年7月24日追加
第11の1   修習給付金に関する税務上の取扱い(平成29年7月25日追加
第11の2   修習給付金と扶養控除及び配偶者控除との関係(平成29年7月25日追加
第11の3   修習給付金は非課税所得等に該当する可能性があること(平成29年7月25日追加
第11の4   修習給付金の税務上の取扱いに関して争う方法(平成29年7月24日追加
第12    弁護士登録5年目の平均所得の推移(平成29年7月24日追加

*0 平成29年7月3日付の「平成29年度司法修習生採用選考要項」によれば,平成29年9月上旬頃,修習給付金及び修習専念資金に関する説明が最高裁判所HPに掲載されるとのことです。
*1 「司法修習生の修習資金貸与制」及び「司法修習生の給費制及び修習手当」も参照して下さい。 
   司法修習生の修習給付金は,司法修習生の給費制の限定的復活といえるものですが,新65期ないし70期のいわゆる谷間世代(無給修習世代)に遡及して支給される予定はありません。
*2 司法修習等の日程については,「司法修習開始前の日程」「司法修習の日程」「司法修習期間中の就職説明会の日程」及び「二回試験等の日程」参照して下さい。
*3 実務修習地については,「実務修習地の選び方」及び「実務修習地ごとの人数の推移等」を参照して下さい。 
*4 裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省提出分は除く。)を掲載しています。
修習給付金の金額の妥当性に関する国会答弁資料です。
修習給付金は雑所得として所得税及び住民税の課税対象となります。
修習生は国民健康保険の被保険者となり,国民年金の第1号被保険者となります。
生活保護法における単身世帯の住居扶助額の全国平均は月額3万4542円となっています。

第1の1 71期からの修習給付金

1(1) 71期からの修習給付金は以下の三つの給付からなります(裁判所法67条の2第2項)。
① 基本給付金
   司法修習生に対して一律月額13万5000円を支給するもの(裁判所法67条の2第3項参照)
② 住居給付金
   修習期間中に住居費を要する司法修習生に対して月額3万5000円を支給するもの(裁判所法67条の2第4項参照)
③ 移転給付金
   司法修習生に対して旅費法の移転料基準に準拠して支給するもの(裁判所法67条の2第5項)
(2) 従前の修習資金は,修習専念資金(司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって、修習給付金の支給を受けてもなお必要なもの)となります(裁判所法67条の3)。

2(1) 平成29年度裁判所所管一般会計歳出予算各目明細書(裁判所HPの「平成29年度予算」に掲載されているもの)7頁によれば,修習給付金として11億5237万5000円が計上されています。
   平成29年12月から平成30年3月までの分ですから,司法修習生が1500人であると仮定した場合,11億5237万5000円÷1500人÷4ヶ月=19万2062円となりますから,司法修習生全員に対して基本給付金及び住居給付金(合計18万円)を支給しても余りが出るように計上されています。
(2) 「平成29年度予算のポイント 経済産業,環境,司法・警察係予算(平成28年12月)」21頁によれば,司法修習生関連経費は,平成28年度は54.8億円であるのに対し,平成29年度は46.6億円となっています。
   そのため,71期司法修習生に対するトータルの支給額は,70期司法修習生に対するトータルの支給額よりも少なくなるかもしれません。
(3) 裁判所の予算等については,「裁判所の司法行政」を参照してください。

3(1) 平成28年度以前の司法試験合格者であっても,施行日である平成29年11月1日以降に司法修習生となるのであれば,修習給付金の適用対象になります(裁判所法改正法附則2項参照)。
   また,第70期以前の司法修習生が平成29年11月1日以降に再採用された場合,「その修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間」(改正後の裁判所法67条の2第1項)を経過している場合を除き,修習給付金を支給してもらえます。
(2) 法務省が作成した,「裁判所法の一部改正法案の施行期日を平成29年11月1日とする理由」及び「附則第2項から第4項までの規定について」に詳しいことが書いてあります。

4(1) 司法修習生に対して支給される移転給付金の額については「路程に応じて最高裁判所が定める額とする」(改正後の裁判所法67条5項)と規定されており,その算出に当たり「路程」以外の事情を考慮することは予定されていません(法務省作成の「移転料の額に関する規定ぶりについて」参照)。
(2) 「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」には以下の記載がありますから,導入修習及び集合修習に参加するための引越についても移転料が支給されるのかもしれません。
   「③移転給付」について
   修習に伴う住所又は居所の移転につき,国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年法律第104号)が規定する移転料に準拠して支払われる(注4)。
(注4)具体的には,国家公務員の行政職俸給表(一)3級以下の職員(係長級以下)に準拠して計算される。例えば,福岡市居住の者が司法試験に合格した札幌修習となった場合,①福岡市→埼玉県和光市,②埼玉県和光市→札幌市,③札幌市→埼玉県和光市の3回分の移転料(計34万0500円)が支給されることになる。

5 法務省大臣官房司法法制部が平成29年1月に作成した以下の文書を掲載しています。
① 裁判所法の一部を改正する法律案用例集
② 裁判所法の一部を改正する法律案用例集(追加分)

第1の2 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い

〇裁判所HPの「司法修習生」には,「司法修習生は,国家公務員ではありませんが,これに準じた身分にあるものとして取り扱われ,兼業・兼職が禁止され,修習に専念する義務(修習専念義務)や守秘義務などを負うこととされています。」と書いてあります。
「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱いについて」には以下の記載があります。

1 社会保険の取扱い
(1) 健康保険
〇 国民健康保険に加入することになる(現行貸与制下の司法修習生と同じ。)。
〇 なお,給費制下の司法修習生と同様に裁判所共済組合に加入できないかが問題となるが,国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)第2条第1項第1号は,国家公務員共済組合の組合員たる「職員」の範囲として,「常時勤務に服することを要する国家公務員」(「政令で定める者」,具体的には,同法施行令(昭和33年政令第207号)第2条第2項第4号所定の「国…から給与を受けない者」等を除く。)であることを前提としている。司法修習生は,国家公務員でない上,国から給与を受けない者であるため,同法第2条第1項第1号所定の「職員」には該当しない。
〇 親族が健康保険に加入している場合,その被扶養者として健康保険の「被保険者」(健康保険法(大正11年法律第70号))第3条第1項)とならないかが問題となるが,修習給付金の支給を受けた場合,「主としてその被保険者により生計を維持するもの」(同条第7項)とはいい難いことから,健康保険の被保険者には該当しない。
(2) 年金
〇 健康保険と同様の整理により,国民年金の第一号被保険者(国民年金法(昭和34年法律第141号)第7条第1項第1号)に当たることになる(現行貸与制下の司法修習生と同じ。)。

2 税務上の取扱い
(1) 所得税の課税の有無
〇 修習給付金は,貸与金と異なり返済が予定されていない以上,所得税法上の「所得」に該当する。
〇 なお,修習給付金が非課税所得である「学資に充てるため給付される金品」(所得税法(昭和40年法律第33号)第9条第15号)に該当しないかが問題となり,この点は,国税庁担当者と協議中である(なお,これまでの法務省と国税庁の担当者協議では,修習給付金の金額規模等から,同号に該当する金品と直ちに解するには難しい面があるのではないかという指摘があった。)。
(2) 所得の性格
〇 仮に,非課税所得に該当しない場合,その性格(雑所得か給与所得か)が問題となる。この点も,国税庁担当者と協議することになる(これまでの法務省と国税庁の担当者協議では回答は得られていない。)が,修習給付金は,基本的に雑所得に当たるのではないかと考えられる。すなわち,「給与所得」とは,雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいうところ,修習給付金は,労務提供の対価ではなく(給与とは明らかに性質の異なるものと整理されている。),司法修習生の任用関係を雇用契約類似と整理することも容易ではないからである。
〇 修習給付金について,雑所得となれば,その収入については確定申告を要することになる。
(3) 住民税の課税の有無
〇 住民税も課税されることになる。修習給付金の金額規模からして,非課税要件は満たさないのが通常と考えられる。

第2の1 修習給付金制度が創設されるまでの経緯

○修習給付金制度が創設されるまでの経緯は以下のとおりです(衆議院HPの「議案審議経過情報」(裁判所法改正法案)及び「議案審議経過情報」(平成29年度一般会計予算)参照)。
○内閣提出法律案につき,原案作成から公布までの流れが内閣法制局HPの「法律の原案作成から法律の公布まで」に載っています。

平成25年
6月26日
   「法曹養成制度検討会議取りまとめ」(平成25年6月26日付)の「法曹養成課程における経済的支援」において,貸与制を前提とした上で,①分野別実務修習開始時における転居費用の支給,②集合修習期間中の入寮及び③兼業許可に関する従来の運用の緩和を実施すべきいう趣旨のことが記載されました。
7月16日
   「法曹養成制度改革の推進について」(平成25年7月16日法曹養成制度関係閣僚会議決定)2頁の「法曹養成課程における経済的支援」において,①分野別実務修習開始時における転居費用の支給,②集合修習期間中の入寮及び③兼業許可に関する従来の運用の緩和を実施することが期待されるという趣旨のことが記載されました。
平成27年
6月30日
   
「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成27年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)6頁に,「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」と記載されました。
平成28年

6月2日
   「経済財政運営と改革の基本方針2016~600兆円経済への道筋~」(平成28年6月2日閣議決定)(いわゆる骨太方針です。)28頁(PDF36頁)に,「
(前略)法科大学院に要する経済的・時間的負担の縮減や司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化(中略)を推進する。」と記載されました。
8月2日
   「未来への投資を実現する経済対策」(平成28年8月2日閣議決定)22頁(PDF28頁)に,「(2)若者への支援拡充、女性活躍の推進(中略)・法科大学院に要する経済的・時間的負担の縮減や司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化等の推進(法務省、最高裁判所、文部科学省)」と記載されました。
11月4日
・   遅くともこの日までに,裁判所法の一部を改正する法律案について内閣法制局の予備審査が開始しました(「裁判所法の一部を改正する法律案(仮称)について」(平成28年11月4日付)参照)。
・ 裁判所法の一部を改正する法律案新旧対照条文のうち,初期段階のもの(手書きの記載は内閣法制局参事官の手によるものと思われます。)を掲載しています。実際に成立した,裁判所法の一部を改正する法律の条文と全く異なります。
12月8日
   平成29年度司法試験の願書受付が終了しました(法務省HPの「平成29年司法試験の実施について」掲載の「実施日程」参照)。
12月19日
・   法曹三者の幹部が集まって,司法修習生に対する経済的支援策を確認して,これを発表しました(法務省HPの「司法修習生に対する経済的支援について」のほか,フォトニュース「司法修習生に対する新たな経済的支援策について法曹三者で確認しました(平成28年12月19日)」)。
・ 法務省大臣官房司法法制部長,最高裁判所事務総局総務局長及び日本弁護士連合会事務総長が「確認事項」を作成しました。
12月22日
   平成29年度予算政府案が閣議決定されました(財務省HPの「平成29年度予算」参照)。
平成29年
1月20日
   平成29年度予算案が衆議院予算委員会に付託されました。
2月1日
   裁判所法の一部を改正する法律案が閣議請議されました(裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省提出分は除く。)参照)。
2月3日
   裁判所法の一部を改正する法律案(第193回国会閣法第5号)(以下「裁判所法改正法案」といいます。)が国会に提出されました(法務省HPの「裁判所法の一部を改正する法律案」のほか,「裁判所法の一部を改正する法律案の概要」参照)。
2月27日
   平成29年度予算案が衆議院予算委員会及び衆議院本会議で可決され,参議院に送付されました。
3月17日
   裁判所法改正法案が衆議院法務委員会に付託されました。
3月27日
   平成29年度予算案が参議院予算委員会及び参議院本会議で可決された結果,平成29年度予算が政府案どおり成立しました(財務省HPの「平成29年度予算」参照)。
3月31日
   裁判所法改正法案が衆議院法務委員会で可決されました。
4月4日
   裁判所法改正法案が衆議院本会議で全会一致で可決され(参議院HPの「議案情報」参照),参議院に送付されました。
4月12日
   裁判所法改正法案が参議院法務委員会に付託されました。
4月18日
   裁判所法改正法案が参議院法務委員会で可決されました。
4月19日
   裁判所法改正法案が参議院本会議で全会一致で可決され(参議院HPの「議案情報」参照,成立しました。
4月26日
   裁判所法改正法(裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号))が公布されました。
6月6日
   日弁連の,「修習給付金の創設を感謝する会~若手法曹が輝く社会へ~」が開催されました。
11月1日
   裁判所法改正法が施行されました。
司法修習生に対する給費制と貸与制(経済的支援)の状況
経済財政運営と改革の基本方針2016等の抜粋(修習給付金関係)
修習給付金制度の趣旨は,法曹志望者が大幅に減少している中で,28年6月の骨太の方針で言及された「法曹人材確保の充実・強化の推進」等を図る点にあることから,修習給付金について,今後,新たに司法修習生として採用される者を対象とすれば足り,現行貸与制下の司法修習生をも対象とする必要性に欠けるとのことです。

第2の2 修習給付金の導入理由等

○修習給付金の導入理由等が書いてある,法務省が作成した「修習給付金(仮称)について」の本文は以下のとおりです。

1 制度内容 
   司法修習生全員に対し,修習給付金(仮称)を支給する制度を導入する。
   なお,現行の貸与制については,貸与額等を見直した上で,新設する上記制度と併存させる。
2 導入理由
(1)   司法修習生の修習専念義務を担保するための財政的措置の経緯 
   戦後,法曹三者を統一的に養成する司法修習制度の創設に伴い,司法修習生に対し国が給与を支給する制度(給費制)が導入された。
   その後,司法制度改革のー環として,新たな法曹養成制度の整備に伴い,平成16年,給費制に代えて,国が修習資金を無利息で貸与する制度 (貸与制)を導入する裁判所法改正法案が成立した。貸与制は,平成22年議員立法により,その施行がー年延期された後,新65期司法修習生(平成23年11月修習開始)から開始されている。加えて,最高裁判所において,第67期司法修習生(平成25年11月修習開始)から,分野別実務修習開始時における転居費用の支給,集合修習期間中に司法研修所内の寮への入寮を希望する者のうち通所圏内に住所を有しない者への入寮に関する配慮,兼業許可基準に関する運用の緩和の措置が実施されている。
(2)   貸与制導入時からの状況の変化
   平成16年裁判所法改正時の貸与制導入時には,その立法理由として,司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)において,「平成22年ころには司法試験の合格者数を3, 000人程度とすることを目指す」とされたことを前提に,①新たな法曹養成制度の整備に当たり,司法修習生の増加に実効的に対応できる制度とする必要があること,②新たな法曹養成制度の整備や日本司法支援センター(法テラス)の創設,裁判員制度の導入等,新たな財政負担を伴う司法制度改革の諸施策を進める上で,限りある財政資金をより効率的に活用し,司法制度全体に関して国民の理解が得られる合理的な国民負担(財政負担)を図る必要があること,③公務員ではなく公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは現行法上異例の制度であること等を考慮すれば,給費制の維持について国民の理解を得るのは困難であることが挙げられていた。
   しかしながら,①の点については,司法試験の年間合格者数3, 000人目標は現実性を欠くものとして「法曹養成制度改革の推進について」(平成25年7月16日法曹養成制度関係閣僚会議決定)において事実上撤回されており平成27年度の司法修習生数は1,787人と,給費制下の平成22年度(2, 124 人)よりも少なくなっている。
   また,②の点についても,司法制度改革関連予算については,貸与制創設当初には想定されていなかった上記3,000人目標の撤回や法科大学院の統廃合等(平成17年度のピーク時には74校あったが,平成28年5月現在,32 校が学生の募集を停止しており,学生の募集をしているのは42校のみ)を背景に平成22年度(567億円)をピークに減少傾向にあり,平成28年度予算では約450億円程度にまで減少している。
   このように,貸与制創設当初は想定されていなかった様々な事情を背景として,現時点では,貸与制導入時から大きな事情の変化が認められる。
   なお,③の点についても,導入予定の制度は,貸与制を前提とするものであり,給与を支給する給費制を復活させるものではなく,制度の連続性・整合性は維持されており,必ずしも妥当しない。
3 司法修習生に対する追加的な支援措置の必要性 
   司法修習生の貸与制の導入を1年延期する平成22年裁判所法改正後,法曹養成フオーラムにおいて法曹の所得調査が実施され,同調査結果等に基づき貸与制を基本とすることが決定された。しかしながら,本年3月,法務省が日弁連・最高裁の協力の下で実施した法曹の所得調査では,弁護士の所得が平成22年の調査時に比べ明らかに減少しており,特に,貸与制導入以降の新65期以降の若手弁護士の所得は,例えば,登録1年の弁護士の所得については58期(平成18年分)では平均値が690万円,中央値が600万円であったのに対し,67期(平成27年分)では平均値が327万円,中央値が317万円となるなど,所得の低い層が拡大している。このように,貸与制を基本とすることの前提とされた弁護士の経済状況についても大きな変化が認められており,現行のような貸与制をそのまま継続すれば,返済に窮する弁護士も出てくるおそれもあり,その安定的な運用に支障を来すおそれがある。
   また,法曹志望者数についても,法科大学院志願者数は平成16年当時は7万2,800人であったのが本年には僅か8, 278人に減少し,適性試験の志願者数も平成15年当時は5万9, 393人であったのが本年には僅か3, 535人に減少するなどしており,こうした傾向に歯止めをかけ,法曹志望者を確保することが喫緊の課題である。「経済財政運営と改革の基本方針2016(本年6月2日閣議決定)や「未来への投資を実現する経済対策」(本年8月2日閣議決定)も,「司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化等…を推進する」ことを求めている。
   法務省・文科省が共同で本年9月~10月に実施した法学部生に対するアンケートにおいても,「法曹等を志望するに当たって感じている不安や迷いは何ですか」という質間に対し,制度的な要因の中では最も多くの学生が「司法修習の1年間,貸与制の下で給与の支給を受けられない」ことを1位に挙げている。また,日弁連のアンケートによれば,68期司法修習生の回答者の約65%が司法試験や法曹を目指すに当たり,経済的不安を感じており,進路選択を迷ったと回答しており,進路選択に迷った者のうち約20%が司法修習の辞退を考えたことがあり,うち約71%がその理由として「貸与制に移行したことによる経済的不安」を挙げている。このような法曹志願者数の減少は,法曹の給源である法曹志願者や司法修習生の質の低下を招き,ひいては有為な法曹の減少につながりかねないものであるから,公共的・公益的使命を有する法曹の役割の重要性に鑑み,経済的不安による法曹志望の阻害要因の除去を図るため,司法修習生に対し,修習給付金(仮称)を支給することとし,併せて法曹の資格要件としての司法修習の確実な履践を担保し,その実効性の更なる確保を図るための方策を導入するとともに,司法修習を終えた者の公益性を高めるための措置を設けることとしたい。

第2の3 修習給付金の名称に関する説明

○修習給付金の名称に関する説明が書いてある,法務省が作成した「「修習給付金(仮称)」の名称について」の本文は以下のとおりです。

1 名称に「給付金」を用いる理由 
   司法修習生に対して支給される渡し切りの金銭(修習給付金(仮称))の名称については,用例上,「手当」又は「給付金」を用いることが考えられる。このうち,「手当」については,一般的には,「労働・勤務などの報酬として与える金銭。また,基本的な給料などのほかに支給する金銭。」(広辞苑)を意味するものとされており,用例上も,「児童手当」など給与ではない支給金の名称に用いられる例もあるものの,「期末手当」「住居手当」など,基本的には本給に付随する給与の名称に用いられる例が多い。これに対し,「給付金」は,犯罪被害者等給付金(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律)や,「老齢年金生活者支援給付金」(年金生活者支援給付金の支給に関する法律)など,支給対象者の生活を支援する等の目的で無償で支給される金銭の名称として用いられる例が多く,反対に,給与の名称として用いられている例は見当たらない。
   司法修習生は,公務員ではなく,国に対して何らかの職務を行う立場にはなく,本改正法案により司法修習生に支給される渡し切りの金銭(修習給付金) は,(司法修習生の生活支援を通じて)修習専念義務を確保するために,修習資金の一部として支給されるものであり,司法修習生の給与として支給されるものではない。このような修習給付金の性格及び上記の用例によれば,修習給付金の名称に「給付金」を用いることにつき,用例上問題はないと考えられる。
   また,修習給付金の支給額については,現在,修習期間中の約1年間にわたり,月額10万円から20万円の範囲内の金額を支給する方向で調整が進められている。他の給付金制度としては,①雇用保険を受給できない求職者が公共職業訓練等を受講することを容易にするため,当該求職者に対し,訓練期間(概ね3月から1年)中,月額10万円を支給する職業訓練受講給付金制度(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律)や,②雇用保険に加入している育休取得中の者に対し,子が1歳(両親が取得する場合は1歳2か月)に達するまでの間,賃金の一定割合(50%ないし67%)の金額を支給する育児休業給付金制度(雇用保険法)等がある。

2 「修習給付金」の名称を用いる理由 
   法令上の「給付金」の名称については,犯罪被害者等給付金(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律),特定B型肝炎ウイルス感染者給付金(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法)のように,その支給の客体に着目した名称,職業訓練受講給付金(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律),育児休業給付金(雇用保険法)のように,支給対象者が置かれた状況に着目した名称のほか,老齢年金生活者支援給付金(年金生活者支援給付金の支給に関する法律),被害回復給付金(犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律)のように,その支給目的に着目した名称があると考えられる。
   本改正法案による給付金については,司法修習を実施している司法修習生に対して支給されるものであり,「修習資金」(本改正法案による改正前の裁判所法第67条の2)との平灰も考慮して,支給対象者が置かれた状況に着目して「修習給付金」との名称にした。

第2の4 月額13万5000円の基本給付金の根拠

1 平成29年3月22日の衆議院法務委員会における国会答弁資料(右側の写真データ参照)には,以下の趣旨の記載があります。
・ 日弁連が実施した第68期司法修習生の修習実態アンケート結果によれば,修習生の実務修習期間中の標準的な1か月の支出状況は,平均支出月額が約18万1000円であり,
・ このうち,住居費の支出を要しない自宅等からの通所者の平均支出月額が約13万5000円,
・ うち,アパートを借りるなどして住居費の支出を要する者の平均支出月額が約20万7000円となっている。

2 「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」には,13万5000円の基本給付金に関して,以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
(1) 日本弁護士連合会が第68期の司法修習生を対象に実施した「修習実態アンケート」によれば,以下のとおり,修習期間中に生活実費及び学資金として月額おおむね13.5万円程度の支出がされている。
(内訳)
①生活実費(合計約9.4万円)
・ 食   費(約4.0万円)
・ 交 通 費(約0.9万円)
・ 情報通信費(約0.9万円)
・ 水道光熱費(約1.0万円)
・ 就職活動費(約1.1万円)
・ 諸雑費(医療費・衣服費等)(約1.5万円)
※ アンケートに回答した全ての司法修習生の平均値。なお,食費及び水道光熱費については,回答中75%を占める住居費支出のある司法修習生の平均値。
②学資金(合計約4.0万円)
・ 学 習 費(約1.0万円)
・ 書 籍 代(約0.8万円)
・ OA機器購入費(約1.2万円)
・ 勉強会参加費(約1.0万円)
※ 学習費についてはアンケートに回答した全ての司法修習生の平均値。勉強会参加費は,アンケート結果の交際費(2.7万円)のうち,業務時間外に庁舎や会議室等で行う弁護士等との勉強会の参加費用として日弁連が推計した金額。書籍代及びOA機器購入費は,法曹に必要な能力の修得に資する関連書籍・判例集等やパソコン本体・周辺機器等の初期投資費用を月割で按分した金額として,日弁連が推計した金額
(2) 基本給付の額については,以上のような生活実費及び学習費等に関する司法修習生の生活実態(注1)のほか,法曹人材確保の充実・強化の推進等といった修習給付金制度の導入理由(注2),貸与制との連続性(注3),類似の給付・貸付制度(別紙「生活費等の給付・貸付制度」参照)との均衡等を総合考慮したうえで決定されたものである。
 
(注1)このほか,一般的な生活実態としては,総務省統計局が公表している平成27年度の「家計調査」によれば,単身世帯(全国の全世帯対象。ただし,学生の単身世帯等を除く。)の消費支出は合計約16.0万円(食費約4.0万円,住居費約2.0万円,水道・光熱費約1.2万円,交通・通信費約1.9万円,被服・履物費約0.7万円,諸雑費約1.4万円,教養娯楽費約1.8万円)となっている。
(注2)法曹人材確保の観点から,日本弁護士連合会は,司法修習生に対する給付額として,大学院卒者の平均給与額と同水準を要望していたところ,厚労省「平成28年賃金構造基本統計調査」によれば,大学院卒者の平均給与額は23万1400円(男女計・初任給)である。(注3)現行貸与制では,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金として,月額23万円(基本額)を司法修習生の希望者に貸与されている。後記2のとおり,修習給付金(基本給付額)と貸与額(基本額)を合わせた額は23.5万円となる予定である。
国会答弁資料1/4
国会答弁資料2/4
国会答弁資料3/4
国会答弁資料4/4(住居費支出がない場合,標準的な1ヶ月の支出の状況は13万4625円となっています。)

第3の1 修習給付金に関する法務大臣の国会答弁

○金田勝年法務大臣は,平成29年3月1日の参議院法務委員会において,以下の答弁をしています。

1 私ども法務省は、平成二十九年度以降に採用予定の司法修習生に対しまして修習給付金を支給する制度を創設すること等を内容といたします裁判所法の一部改正法案を今国会に提出をいたしたところであります。
2 制度の概要なんですけれども、修習給付金の具体的な支給金額につきましては、最終的には最高裁判所規則において定められることになるのでございますが、基本給付金としては、ただいまの委員の御指摘のとおり、全ての司法修習生に対して一律に月額十三万五千円を支給するほか、司法修習生が住宅を借り受けたり家賃を支払っている場合には、住居給付金といたしまして月額三万五千円、司法修習に伴いまして住所や居所を移転することが必要と認められます場合には、その移転につき移転給付金として国家公務員の旅費法の移転料に準拠した金額を併せて支給することを予定をいたしております。
  また、現在実施されております貸与制につきましては、貸与額を見直しをいたしました上で新たな給付制度と併存するということにいたしております。これは、ただいま御指摘のありましたように、法曹志望者が大幅に減少しておるという状況、新たな時代に対応した質の高い法曹を多数輩出をしていくためにも、法曹志望者の確保というものは喫緊の課題であるという考え方に基づくものであります。
3 平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定におきまして、司法修習生に対します経済的支援の在り方について検討するとされましたほか、魚住先生を始め与党の先生方のお力により、昨年六月の骨太の方針においても法曹人材確保の充実強化を推進することがうたわれたものと承知をいたしております。
   これを受けまして、法曹人材確保の充実強化の推進等を図るために修習給付金制度を創設することとしたものでありまして、法務省としては裁判所法の一部改正法案の早期成立に向けまして引き続き努力をしてまいりたい、このように考えておる次第であります。

第3の2 修習給付金に関する法務省大臣官房司法法制部長の国会答弁

1   日弁連が平成21年8月20日付で発表した「「司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(案)」に対する意見書」に,修習資金貸与制に関する問題点が一通り記載されています。

2 小山太士法務省大臣官房司法法制部長は,平成29年3月21日の衆議院法務委員会において,以下の答弁をしています。 
① まず、税務上の取り扱いについての御質問がございました。
  これは、当時、給費制下におきましては、裁判所法に基づきまして司法修習生に対して給与が支給されておりました。給与でございますので、これは給与所得として課税されていたものと承知しております。
  これに対しまして、修習給付金制度のもとでは、先ほど立法の理由についても御説明しましたが、修習給付金は給与として支給されるものではないわけでございまして、そういうことから、給与所得に該当せず、雑所得として区分されるものと認識してございます。
② 次に、社会保険の関係でございます。
  社会保険につきまして、旧給費制下におきましては、裁判所法に基づきまして、今申し上げましたとおり司法修習生に対して給与が支給されておりましたので、司法修習生は裁判所共済組合への加入が認められておりました。
  これに対しまして、修習給付金制度のもとでは、司法修習生は国家公務員ではございませんし、この修習給付金も給与として支給されるものではございませんので、現状、貸与制でございますが、この貸与制下の司法修習生と同様に、裁判所共済組合の組合員たる職員には該当せず、国民健康保険の被保険者に該当することになるものと認識しております。
  また、司法修習生は、修習期間中、その修習に専念することとされておりまして、修習給付金が労務の提供に対して支払われるものでなく、修習期間中の生活を維持するために必要な費用として定められる額を支給するものであることを踏まえますと、年金の関係でございますが、厚生年金保険の被保険者には該当せず、国民年金の第一号被保険者に該当することになるものと認識しております。

3 小山太士法務省大臣官房司法法制部長は,平成29年3月31日の衆議院法務委員会において,以下の答弁をしています。
   新65期ないし70期に対する救済措置は予定していないと述べています。
① 委員から御指摘がございました、修習給付金制度の創設に伴いまして、現行の貸与制下の司法修習生、これは新六十五期から第七十期まででございますけれども、これに対しましても何らかの救済措置を講ずべきとの御意見があることは我々としても承知しております。
   ただ、修習給付金制度の趣旨でございますが、これは、先ほど御答弁申し上げましたとおり、法曹志望者が大幅に減少している中で、昨年六月の骨太の方針で言及されました、法曹人材確保の充実強化の推進等を図る点にあるわけでございまして、この趣旨に鑑みますと、修習給付金につきましては、今後新たに司法修習生として採用される者を対象とすれば足りるのではないかと考えられたところでございます。
   それからまた、加えて、仮に既に貸与で修習を終えられたような方に何らかの措置を実施するといたしましても、現行貸与制下において貸与を受けていらっしゃらない方もいらっしゃいまして、この取り扱いをどうするかといった制度設計上の困難な問題がございます。また、そもそも、既に修習を終えている人に対して事後的な救済措置を実施することにつき、国民的な理解が得られないのではないかという懸念もあるところでございます。
   ということで、本制度につきましては、救済措置を設けることは予定していないわけでございます。
② 本法案が可決、成立いたしますと、本年十一月に修習が開始される第七十一期の司法修習生から修習給付金を支給することになります。まずは新たな制度を導入していただきまして、その後はこの制度について継続的、安定的に運用していくことが重要であろうと考えております。御理解を賜りたいと考えております。

第3の3 修習給付金に関する最高裁判所人事局長の国会答弁

平成29年8月1日付の司法行政文書不開示通知書によれば,裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)に関する国会答弁資料は存在しません。
○堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成29年3月22日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 
1 まず、修習給付金の金額の点の御質問がございました。
   この具体的な金額につきましては最終的に最高裁判所規則において定めることになりますが、基本給付金として全ての修習生に対して一律十三万五千円、そのほか、住宅を借り受け、家賃を支払っている場合には住居給付金、あるいは移転に必要な移転給付金といったものを支給するということを予定しているところでございます。
   これらの修習給付金の額は、制度設計の過程の中で、法曹人材の確保、充実強化の推進等を図るという制度の導入理由のほか、修習中に要する生活費や学資金等の司法修習生の生活実態その他の諸般の事情を総合考慮するなどして決定されたというふうに承知しているところでございます。
   最高裁といたしましては、この新たな給付金制度の円滑な実施及び継続的かつ安定的な運用に努めてまいりたいというふうに考えておりますが、今後、制度のいろいろな問題点等は運用の中で出てくるかもしれません。そのようなところはまた法務省等とも御相談申し上げて、運用については万全を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
2 それから、制度間の不公平の問題も御指摘ありました。
   修習給付金制度の創設に伴いまして、現行貸与制下の修習生、新六十五期から七十期までということですが、これらに対しても何らかの経済的措置や救済措置を講ずべきという意見があることは承知しているところでございます。
   しかしながら、給付金の制度の導入に伴い、現行貸与制下の修習生に対して救済措置を設けるか否かにつきましては、立法政策というところにもかかわるところでございますので、最高裁として、今の段階で意見を述べることは差し控えたいというふうに考えているところでございます。

第3の4 衆議院法務委員会における国会答弁資料

○以下のとおり衆議院法務委員会における国会答弁資料を掲載しています。
1 平成29年3月21日の,安藤裕衆議院議員(自民党)の以下の質問に対するもの
① 司法修習生に対する経済的支援が給費制から貸与制に変わった理由,そして,今回,給付金制度を新設した理由について,法務当局に問う。
② 課税関係について,なぜ給費制下の給与所得から,給付金は雑所得に変わるのか,年金や健康保険は国民年金や国民健康保険ということだが,これもなぜ給費制下の取扱いと変わるのか,法務当局に問う。
③ 大学の給付型奨学金も今国会で法案が提出されているが,司法修習生で奨学金と修習資金の両方の貸与を受けるとかなりの負債を負うことになる。65期から70期までの司法修習生の救済策について,法務当局に問う。
④ 法曹志望者の減少理由をどのように考えているか,法務当局に問う。
⑤ 弁護士になっても就職できない,また収入が低いという減少が現れており,それが有為な法曹人材の確保のため,今後法務省としてどのように取り組むのか,法務大臣に問う。

2 平成29年3月21日の,國重徹衆議院議員(公明党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度の導入の理由について法務当局に問う。
② 平成27年6月の法曹養成制度改革推進会議決定に基づき修習給付金制度の制度設計を担った法務省では,どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度設計をしたのか,法務当局に問う。
③ 今後の修習給付金の金額水準の見直しの在り方につき,制度設計を担った法務省としてはどのように考えているのか,法務当局に問う。
④ 修習給付金について,給付型奨学金等とは異なり,司法修習生に一律に支払う理由につき,法務当局に問う。
⑤ 司法修習生の懲戒的措置に関する規程の整備として,罷免以外に修習の停止及び戒告を設ける理由につき,法務当局に問う。
⑥ 修習停止の期間中に修習給付金は支給されるのか,法務当局に問う。
⑦ 昨年12月の法務省,最高裁判所及び日本弁護士連合会の確認にある「修習の成果の社会還元を推進するための手当て」に関する検討状況につき,法務当局に問う。
⑧ 法曹志望者が大幅に減少している中,今後の法曹養成制度の改革に向けた決意につき,法務大臣に問う。

3 平成29年3月22日の,井出庸生衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 司法修習生の実務修習地についてどのように決まるのか,希望は通るのか,法務大臣に問う。
② 司法修習生の修習先に応じた経済的負担を把握するため,司法修習生の経済的負担につき,アンケートなどの実態調査はしているのか,法務大臣に問う。
③ ①実家から修習先へ通勤できる修習生,②従来の居住地から引っ越しをすることなく修習地に通勤できる修習生,③実家問うから修習先への通勤が不可能で,新たに住居を確保することを迫られる修習生の割合は過去5年でそれぞれどの程度か,法務大臣に問う。
④ 住居費に応じた司法修習生に対する経済的支援はどの程度あり,実体としてどれほどの住宅補助の役割を果たしているのか,法務大臣に問う。
⑤ 司法修習生は,司法修習において,罪刑法定主義や刑法の謙抑主義を改めて学ぶのか,法務大臣に問う。
⑥ 国際法,国際人権法,国際刑事法については,司法修習でどのような形でどのくらいの時間をかけて学ぶのか,法務大臣に問う。
⑦ 将来の司法を担う人材である司法修習生が,激変する国際法,国際人権法,国際刑事法を学ぶ大切さにつき,法務大臣の所見を問う。
⑧ 司法修習において,双罰性についての考え方,日本の裁判例などは教えるのか,法務大臣に問う。
⑨ 司法修習において,国際法と国内法との優先順位,国際法の実効性についてどう教えるのか,法務大臣に問う。

4 平成29年3月22日の,逢坂誠二衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 法曹志望者の減少の要因と解決策につき,法務大臣に問う。
② 司法試験制度の抜本的な見直しにつき,法務大臣に問う。
③ 修習給付金制度の創設は歓迎すべきことだが,修習給付金制度の課題をどのように考えているか,法務大臣に問う。
④ 修習給付金の金額は適切であると考えるか,法務大臣の所見を問う。
⑤ 修習給付金の税務上の取扱いにつき,法務大臣に問う。
⑥ 司法修習生の社会保険の取扱いにつき,法務大臣に問う。
⑦ 司法修習修了者の社会貢献の在り方につき,法務大臣に問う。
⑧ 現行貸与制と修習給付金制度との制度間の不公平につき,法務大臣に問う。

5 平成29年3月22日の,階猛衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 裁判所法改正法案の立法目的は何か,法務大臣に問う。
② 同改正法案で立法目的は達せられるのか,法務大臣に問う。
③ 立法目的を達するために,同改正法案以外に他の選択肢を検討したのか,法務大臣に問う。
④ 司法試験受験資格を見直すべきではないか,法務大臣に問う。
⑤ 予備試験合格者の司法試験合格率が法科大学院修了者の司法試験合格率を上回り続ける理由について,法務大臣に問う。

6 平成29年3月22日の,松浪健太衆議院議員(日本維新の会)の以下の質問に対するもの
① 法曹志望者の減少の要因につき,どのように考えているか,法務当局に問う。
② 弁護士の収入について,平成23年の調査と平成28年の調査を比較して所得中央値が半減した理由は何か,法務当局に問う。
③ 法科大学院出身者である弁護士の平均年収について,法務当局に問う。
④ 法曹人口増大が,弁護士の収入など弁護士の需給バランスに与えた影響について,法務当局に問う。
⑤ 平成28年司法試験について,予備試験合格による受験資格者と法科大学院修了による受験資格者のそれぞれの司法試験合格率について,法務当局に問う。

7 平成29年3月22日の,藤野保史衆議院銀(共産党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度創設の意義について,法務大臣の所見を問う。
② 今回の制度設計をした法務省では,どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度としたのか,法務当局に問う。
③ 現行の貸与制下の司法修習生に不公平が生じているが,貸与制下の司法修習生に対する経済的措置や救済措置を講ずべきではないか,法務大臣の所見を問う。
④ 司法修習生に対する懲戒的措置の整備により,司法修習生による自主的な法曹としての識見を高めるための諸活動を萎縮させることにならないか,法務大臣の所見を問う。
⑤ 戦前と異なり,一元的な法曹養成である現行の司法修習を行うことの意義について,法務当局に問う。

8 平成29年3月31日の,階猛衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金を支給する制度を導入した上で,現行制度を維持した場合,来年の司法試験の受験者数は増えるのか,法務大臣の所見を問う。
② 法科大学院修了者の司法試験合格率が予備試験合格者の司法試験合格率より著しく低いことからすれば,予備試験は法科大学院修了者と同等の学識を有することを判定するという司法試験法第5条に照らし,法科大学院は,本来,法科大学院を修了すべきでない者を修了させていることになるのではないか,法務大臣の所見を問う。
③ 法科大学院の修了認定を厳しくし,司法試験法第5条のとおりに法科大学院を修了すべき者に法科大学院修了資格を付与していれば,司法試験受験者は,現在よりもっと減少するのではないか,法務大臣の所見を問う。
④ 仮に,来年も司法試験の受験者数が減少した場合,合格者数1,500人以上という目的は達成できるのか,法務大臣の所見を問う。
⑤ 3月22日の質問時に,私の「まず司法試験の受験資格を見直すことだ」という質問に対し,大臣は「委員のご指摘を踏まえて,検討をしていくプロセスを用意すれば,それはそれで非常に大きな前進になるのではないか」と答弁したが,検討していくプロセスとは具体的に何か,法務大臣の所見を問う。
⑥ 3月22日の質問時に,私が示した法学部に在籍する学生に対する法曹志望に関するアンケートにつき,大臣は「こういう精緻な資料を何枚かいただいてこの話に臨んだことは,私は残念ながら初めてだ」と答弁したが,肝心なデータを部下から得ていないのは,法務省の組織の在り方として問題ではないか,法務大臣の所見を問う。
⑦ 法曹志願者を量的にも質的にも高めていくためには,修習給付金を支給する制度の復活だけでなく,司法試験の受験資格の見直しが不可欠ではないか,法務大臣の所見を問う。

9 平成29年3月31日の,今野智博衆議院議員(自民党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度の意義と,基本給付金を司法修習生全員に一律に支給する制度とした理由について,法務当局に問う。
② これまでの貸与世代の修習生について,何らかの救済策を講じるべきではないか,法務当局に問う。
③ 法曹志望者の確保のため,弁護士が行政庁や企業などで活躍分野を広げる取組が重要と考えるが,法曹有資格者の活動領域の拡大にどのように取り組むのか,法務大臣に問う。

10 平成29年3月31日の,山尾志桜里衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 「谷間の世代」である現行貸与制下の司法修習生の人数と全法曹人口につき,法務大臣に問う。
② 法曹志望者の減少の理由につき,法務大臣に問う。
③ 「谷間の世代」である現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講じない理由につき,法務大臣に問う。
④ 法務省としては,どのような検討の結果,現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講じないこととしたのか,これまでの検討状況の詳細につき,法務大臣に問う。
⑤ 現行貸与制下の司法修習生に対する救済措置を講ずるか否かにつき,法曹養成制度改革連絡協議会で検討されたのか,法務大臣に問う。
⑥ 法曹養成制度改革連絡協議会の議事録が非公開とされている理由は何か,法務大臣に問う。
⑦ (最高裁判所が説明する)予算規模からすれば,現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講ずるべきではないか,法務大臣の所見を問う。
⑧ 昨年12月に法曹三者間で確認された「修習の成果の社会還元」とは何か,法務大臣に問う。
⑨ 「修習の成果の社会還元」と弁護士自治との関係につき,法務大臣に問う。

11 平成29年3月31日の,國重徹衆議院議員(公明党)の以下の質問に対するもの
① 司法試験の合格者について,年間3,000人目標を撤回し,年間1,500人程度とした理由は何か,法務当局に問う。
② 司法修習終了後の弁護士未登録者数の状況は,最近どのような傾向にあるか,法務当局に問う。
③ 法曹有資格者の活動領域の拡大について,法務省としても,取組をバックアップしていくべきではないか,法務当局に問う。

第3の5 参議院法務委員会における国会答弁資料

○以下のとおり参議院法務委員会における国会答弁資料を掲載しています。
1 平成29年4月18日の,元榮太一郎参議院議員(自民党)の以下の質問に対するもの
① 修習給付金制度の導入に至った理由及びその背景について,法務当局に問う。
② 今回の制度設計に当たり,どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度としたのか,給費制下の支給額と比較して低いのではないか,法務当局に問う。
③ 今回新たな給付制度を導入しつつ,貸与制を併存させる理由は何か,貸与制の内容日打て見直しをするのか,法務当局に問う。
④ 現行貸与制下の司法修習生に対して救済措置を講ずるべきではないか,法務当局に問う。
⑤ 基本給付金の額を検討するに当たって,修習期間中の交通費は考慮されたのか,法務当局に問う。
⑥ 法曹資格取得までの期間を短縮するため,法科大学院修了前に司法試験の受験を可能とし,4月から司法修習を開始できるようにすべきと考えるが,法務当局の見解を問う。
⑦ 司法修習期間が1年間と短期間である中,懲戒的措置として戒告を設ける意味はあるのか,法務当局に問う。
⑧ 今後とも,法曹の魅力を高め,法曹人材を確保するための不断の検討を続けるべきではないか,法務大臣の所見を問う。

2 平成29年4月18日の有田芳生参議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 本改正法案の立法目的は何か,法務大臣に問う。
② 本改正法案により,法曹志望者は増えるのか,法務当局に問う。
③ 司法試験出願者数の推移について,法務当局に問う。
④ 法曹志望者が減少した理由について,どのように考えるか,法務当局に問う。
⑤ 法科大学院の課程を修了したことを要件とする現行司法試験の受験資格を見直すべきではないか,法務当局に問う。
⑥ 法科大学院修了者の司法試験合格率が,予備試験合格者の司法試験合格率より大幅に低いのは,司法試験法第5条違反ではないか,法務当局に問う。
⑦ 有為な法曹人材の確保に向けた法務大臣の決意を問う。

3 平成29年4月18日の,真山勇一参議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 各種の「子どもの人気職業ランキング」等で法曹関係者の人気下落が著しいが,この点につき,法務大臣の見解を問う。
② 小学生や中学生に対し法曹の魅力を伝える努力をすべきではないか,法務当局に問う。
③ 司法修習制度が存在する理由及び司法修習生に対し修習専念義務が課されている理由について,法務当局に問う。
④ 給費制から貸与制に移行した理由について,法務当局に問う。
⑤ 登録5年目の弁護士の平均的な所得額はどうなっているか,法務当局に問う。
⑥ 登録5年目の弁護士の所得状況に照らし,貸与金の返還義務の負担の軽重についてどのように考えるか,法務大臣の見解を問う。
⑦ 現行の貸与制下の司法修習生に対して救済的措置を講ずるべきではないか,法務大臣の所見を問う。
⑧ 現行の貸与制下の司法修習生に対する救済的措置の是非について検討したことがあるか,法務当局に問う。
⑨ 現行の貸与制下で司法修習を終えて弁護士となった者による独立開業を支援すべきではないか,法務当局の見解を問う。

4 平成29年4月18日の,佐々木さやか参議院議員(公明党)の以下の質問に対するもの

① 修習給付金創設の趣旨及び背景について,法務当局に問う。
② 修習給付金と給費制下における給費の性格や金額の違いについて,法務当局に問う。
③ 法曹有資格者の活動領域の拡大に今後も努めるべきではないか,法務当局に問う。
④ 今回の改正で,修習の停止及び戒告の制度を設けた理由について,法務当局に問う。
⑤ 改正後の裁判所法第68条第1項で,心身の故障等を罷免事由として明記した理由について,法務当局に問う。
⑥ 修習給付金を受け取って法曹となった者の社会貢献活動の在り方についてどのように考えるか,法務大臣の見解を問う。

5 平成29年4月18日の東徹参議院議員(日本維新の会)の以下の質問に対するもの
① 弁護士会は強制加入団体であると言われているが,それに違いはないか,法務当局に問う。
② 弁護士会のような強制加入団体では,政治的中立性を確保することが極めて重要であると考えるが,法務大臣の見解を問う。
③ 弁護士会において,政治的中立性が適切に確保されるため,どのような対策が行われているのか,それが効果的であるのか,法務当局に問う。
④ 今後,法曹をどこまで増やす必要があるのか議論がある中で,なぜ法曹志望者を確保するために給付金制度が必要となるのか,法務大臣の見解を問う。
⑤ 貸与制を導入した理由について,法務当局に問う。
⑥ 司法修習生に対する経済的支援策として,修習給付金制度以外の選択肢を検討しなかったのか,法務当局に問う。
⑦ 昨年12月に法曹三者間において修習給付金制度の内容について確認がされたが,なぜ法曹三者で確認したのか,法務当局の見解を問う。
⑧ なぜ,弁護士問うの養成課程において司法修習が必要なのか,法務大臣の見解を問う。
⑨ 修習給付金制度の創設により,国の財政的負担が増大することから,裁判所法を改正して司法修習の期間を短縮すべきではないか,法務当局の見解を問う。

6 平成29年4月18日の,山添拓参議院議員(共産党)の以下の質問に対するもの

① 質の高い法曹を輩出する理由についてどのように考えているか,法務大臣の見解を問う。
② 本改正法案は,貸与制に移行したことで法曹志望者の減少に拍車がかかったという反省を踏まえて提出したものか,法務大臣の見解を問う。
③ 給費制下の支給金額及び貸与制下の貸与額は,修習専念義務の下,司法修習生が修習生活を送る上で必要な額であるという前提で制度設計がなされていたのか,法務当局に問う。
④ どのような検討により,基本給付金を月額13.5万円,住居給付金を月額3.5万円とする制度としたのか,法務当局に問う。
⑤ 貸与制を併存させる理由について,法務当局に問う。
⑥ 本改正法案は,修習給付金だけでは生活できない司法修習生がいるという前提で制度設計されたものか,法務大臣の認識を問う。
⑦ 現行貸与制下の司法修習生の救済について,法務大臣の見解を問う。

7 平成29年4月18日の,糸数慶子参議院議員(沖縄社会大衆党)の以下の質問に対するもの
① 平成29年司法試験出願者数について,法務当局に問う。
② 平成18年(2006年)以降の司法試験出願者数の推移について,法務当局に問う。
③ 法曹志望者の減少の要因について,法務当局に問う。
④ 国選弁護人を10年間担っているある弁護士の方が「法曹を養成する段階では充分な国費を投入することがまずもって求められている。」と述べているが,法曹養成の重要性について,法務大臣の見解を問う。
⑤ 現行貸与制下の司法修習生を救済する必要性があるのではないか,法務大臣の見解を問う。

8 平成29年4月18日の,山口和之参議院議員(無所属)の以下の質問に対するもの

① 本改正法案で「修習の停止」及び「戒告」を新たに設ける趣旨は何か,また,これらはどのような効果を持つ処分か,法務当局に問う。
② 裁判所法で規定されている司法修習制度の目的と意義についてどのように考えるか,法務当局に問う。
③ 司法修習を経ずに弁護士となるルートとして,どのようなものがあるか,また,そのようなルートを経て弁護士になった者と,司法修習を経て弁護士となった者とでは,その資格等に違いがあるか,法務当局に問う。
④ 司法試験合格者のうち,かつては新司法試験組より旧司法試験組の方が,現在は法科大学院組より予備試験組の方が,就職に有利な扱いを受けていると聞くが,法科大学院を経た者が低い評価を受ける原因をどのように考えるか,法務当局に問う。
⑤ 今後,法科大学院改革を含む法曹養成制度改革にどのように取り組んでいくのか,法務大臣の決意を問う。

第4 裁判所法の一部を改正する法律の成立に当たっての日弁連会長声明等

1 日弁連は,平成29年4月19日,「裁判所法の一部を改正する法律の成立に当たっての会長声明」として,以下の会長声明を発表しました。
 
   本日、平成29年度以降に採用される司法修習生に新たな給付型の経済的支援を行う「裁判所法の一部を改正する法律」が、政府提案のとおり可決され成立した。本日まで多大なる御協力をいただいた市民団体、消費者団体、労働団体による「司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会」や法科大学院生、司法修習生、若手弁護士らによる「ビギナーズ・ネット」、法改正の成立に並々ならぬ御尽力をいただいた各政党・国会議員の方々、法務省、最高裁判所等関係諸機関の皆様、更にはこれまで御支援をいただいた諸団体並びに市民の方々に心から感謝申し上げる。
   今回の法改正は、法曹養成課程における経済的負担の重さが法曹への道を断念させる一因となっていることに鑑み、司法修習生に対して修習給付金等を支給する制度を創設することにより、法曹となる人材の確保の推進等を図る、というものであり、法曹養成制度の改革にとって前進である。
   当連合会は、改正法に基づく新たな制度の円滑な実施に最大限の協力をするとともにその継続的かつ安定的な運用を図り、安心して修習に専念できる環境整備を更に進めることにより、一人でも多くの志ある若者が法曹の道を志望することにつながるよう引き続き取り組む。加えて、今後とも、若手法曹と共に、弁護士法第1条に定められた弁護士の使命を果たしていく。
   他方、この法案の審議の過程において、平成23年11月から平成28年11月までに司法修習生に採用されたいわゆる谷間世代の者の経済的負担が改正法施行後に司法修習生に採用された者に比して重くなる、ということについて、指摘がなされ、何らかの措置を講ずべきであるとの意見もあった。当連合会としては、これらの指摘・意見及び谷間世代の声を受け止め、谷間世代の者がその経済的負担等によって法曹としての活動に支障が生じることがないよう、力を尽くす。
   当連合会は、法曹養成制度の改革について、引き続き関係諸機関と連携し、取り組む所存である。

2 平成29年6月1日に第二東京弁護士会が発表した「裁判所法の一部を改正する法律成立に対する会長声明」によれば,第二東京弁護士会は,新65期ないし70期のいわゆる谷間世代(無給修習世代)に対し,会費の一部を免除することを平成29年3月の臨時総会で決議したみたいです。

第5 裁判所法の一部を改正する法律案要綱

○裁判所法の一部を改正する法律案につき,法律案要綱は以下のとおりです(法務省HPの「裁判所法の一部を改正する法律案」参照)。
   法律案要綱に金額の記載はないものの,平成28年12月19日の発表時点で,基本給付金は月額13万5000円であり,住居給付金は月額3万5000円であると決まっていました(平成28年12月19日の「法務大臣臨時記者会見の概要」の「司法修習生に対する経済的支援策に関する質疑について」参照)。
「裁判所法の一部を改正する法律案の概要」(平成28年12月22日付の文書)では,司法修習を終えた者の努力義務規定の創設(改正法附則関係)ということで,「改正法の施行後に開始される司法修習を終えた者は,その修習の成果を社会に還元するよう努めなければならないものとする旨の改正を行う。」とありました(詳細につき「改正法附則において努力義務規定を設ける理由について」参照)が,内閣法制局の予備審査で削られたみたいです。
○司法修習生に対する処分として,修習停止及び戒告が追加されています。
 
裁判所法の一部を改正する法律案要綱
 
第一 司法修習生に対し国が修習給付金を支給する制度の創設等(第六十七条の二及び三関係)
一 司法修習生には、その修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間、修習給付金を支給すること。(第六十七条の二第一項関係)
二 修習給付金の種類は、基本給付金、住居給付金及び移転給付金とすること。(第六十七条の二第二項関係)
三 基本給付金の額は、司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用であって、その修習に専念しなければならないことその他の司法修習生の置かれている状況を勘案して最高裁判所が定める額とすること。(第六十七条の二第三項関係)
四 住居給付金は、司法修習生が自ら居住するため住宅(貸間を含む。以下同じ。)を借り受け、家賃(使用料を含む。以下同じ。)を支払っている場合(配偶者が当該住宅を所有する場合その他の最高裁判所が定める場合を除く。)に支給することとし、その額は、家賃として通常必要な費用の範囲内において最高裁判所が定める額とすること。(第六十七条の二第四項関係)
五 移転給付金は、司法修習生がその修習に伴い住所又は居所を移転することが必要と認められる場合にその移転について支給することとし、その額は、路程に応じて最高裁判所が定める額とすること。(第六十七条の二第五項関係)
六 一から五までに定めるもののほか、修習給付金の支給に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定めること。(第六十七条の二第六項関係)
七 司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金を国が無利息で貸与する制度を変更し、修習専念資金(司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって、修習給付金の支給を受けてもなお必要なもの)を国が無利息で貸与する制度とすること。(第六十七条の三関係)
第二 司法修習生の罷免等に関する所要の規定の整備(第六十八条関係)
一 最高裁判所は、司法修習生に成績不良、心身の故障その他のその修習を継続することが困難である事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは、最高裁判所の定めるところにより、その司法修習生を罷免することができるものとすること。(第六十八条第一項関係)
二 最高裁判所は、司法修習生に品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは、最高裁判所の定めるところにより、その司法修習生を罷免し、その修習の停止を命じ、又は戒告することができるものとすること。(第六十八条第二項関係)
第三 施行期日等(附則関係)
一 この法律は、平成二十九年十一月一日から施行すること。(附則第一項関係)
二 この法律の施行に伴う所要の経過措置について定めること。(附則第二項から第五項まで関係)

第6の1 修習給付金と最低賃金等の比較

1(1)  平成28年10月1日発効の,埼玉県最低賃金は時給845円です(埼玉労働局HPの「埼玉県の最低賃金」参照)。
   そのため,埼玉県において最低賃金で1日8時間働いた場合の30日分の給料は,845円×40時間×30日/7日(約171時間)=14万4857円となります。
(2) 司法修習が労働に該当するとした場合,月額13万5000円(1月の労働時間を171時間とした場合,時給は789円)の修習給付金は,埼玉県の最低賃金を下回ることとなります。
 
2(1) 最低賃金法4条2項は,「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。」と定めています。
(2) 平成28年10月1日以降の東京労働局の最低賃金に関するポスターには,「東京都最低賃金 時間額932円」とか,「守ってる?守られてる?雇う上でも,働く上でも,最低限のルールなんです!!」などと書いてあります(東京労働局HPの「賃金・家内労働関係」参照)。

3(1) ガベージニュースHPの「アルバイトの時給動向をグラフ化してみる(2017年)(最新)」 によれば,2017年3月時点で,パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏)は,全体で999円,販売・サービス系で986円,フード系で968円,介護スタッフで1016円,派遣スタッフで1599円となります。
(2) 1日8時間働いた場合の30日分の給料は,全体で17万1257円,販売・サービス系で16万9028円,フード系で16万5942円,介護スタッフで17万4171円,派遣スタッフで27万4114円となります。

4 公益財団法人国際研修協力機構(略称は「JITCO」です。)HPの「研修生・技能実習生の講習手当・研修手当・賃金情報について」によれば,平成21年度の調査では,技能実習生の全業種平均給与額は14.3万円でした。

第6の2 給費制と修習給付金制度との比較等

1   司法修習生の給費制が実施されていた現行65期までの司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです(平成25年12月17日開催の第5回法曹養成制度改革顧問会議の資料3-1「司法修習生に対する支給等一覧」参照)。
① 月額20万4200円(新64期の場合)の給料,地域手当,扶養手当等を支給されており,給与所得として給与所得控除が適用されました。
② 裁判所共済組合の組合員として各種の給付を受けることができました。
③ 実務修習中,通勤手当,住居手当及び寒冷地手当を支給されていました。
④ 集合修習中,通勤手当,住居手当及び日額旅費を支給されていました。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員として,引き続き短期給付及び福祉事業を受けることができました(共済組合の任意継続組合員の意義につき,文部科学省共済組合HPの「退職後の医療」参照)。
(3)ア 裁判所共済組合への加入実績に基づき,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらえます。
  私のねんきん定期便によれば,59期徳島修習(1年6月の修習)(調整手当→地域手当は0%)で扶養手当をもらっていなかった私の場合,公務員厚生年金からの老齢厚生年金は年額2万7407円です。
イ 平成27年10月1日,共済年金は厚生年金に統合された結果,公務員厚生年金となりました(外部HPの「共済年金は厚生年金に統一されます」参照)。
ウ 平成28年7月27日発表の平成27年簡易生命表の概況によれば, 平成27年現在,30歳男性の平均余命は51.46年であり(平均で81.46歳まで生きるということ。),30歳女性の平均余命は57.51年です(平均で87.51歳まで生きるということ。)。
  65歳から老齢厚生年金を受給できますから, 男性であれば平均で16.46年間,女性であれば平均で22.51年間,公務員厚生年金から老齢厚生年金を受給できることとなります。
エ 今後の年金の状況については,厚生労働省HPの「いっしょに検証!公的年金」にある,「財政検証結果レポート」(発表年は16年,21年及び26年)が非常に参考になります。

2 司法修習生の修習給付金が実施される71期以降の司法修習生の場合
(1)   司法修習生の取扱いは以下のとおりです。
① 月額13万5000円の基本給付金,月額3万5000円の住居給付金及び引越のための移転給付金は出ますものの,雑所得として課税の対象となりますし,地域手当及び扶養手当はありません。
② 修習給付金は給与ではない点で裁判所共済組合の組合員となることはできません(国家公務員共済組合法2条1項1号・国家公務員共済組合法施行令2条2項4号「国及び行政執行法人から給与を受けない者」参照)から国民年金及び国民健康保険となります。
③ 実務修習中,通勤手当は出ませんから交通費は自腹になりますし,寒冷地手当は出ませんから寒冷地の実務修習地における暖房代等は自腹になります。
④ 集合修習中,通勤手当及び日額旅費は出ませんから交通費は自腹になります。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員となることはできません。
(3) 裁判所共済組合への加入実績がありませんから,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらうことはできません。

3 給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧等
(1) 平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料14(PDF77頁,末尾73頁)に,給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧表が載っています。
(2)   新64期司法修習生の場合,毎月20万4200円の給与を支給されていたほか,諸手当として以下のものがありました。
① 扶養手当
   配偶者につき1万3000円,配偶者以外の扶養親族一人につき6500円等
② 住居手当
   家賃額に応じて2万7000円を限度に支給
③ 通勤手当
   交通機関等の利用者について一ヶ月あたり5万5000円を限度に支給
   自転車等の使用者について使用距離に応じて2000円~2万4500円を支給
④ 地域手当
   支給対象地域で修習を行う者について,給与月額等に,修習地の区分に応じた割合(3%~18%)を乗じて得た額を支給
⑤ 寒冷地手当
   支給対象地域で修習を行う者について,11月から3月までの間,修習地の区分等に応じて7360円~2万6380円を支給
⑥ 期末手当
   年間で,給与月額等の2.6月分を支給
⑦ 勤勉手当 
   年間で,給与月額等の1.29月分を支給 

4 他の公的な研修制度の取扱い
   平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料15(PDF79頁,末尾75頁)によれば,他の公的な研修制度の取扱いは以下のとおりです。
① 防衛大学校
   陸上・海上・航空の各自衛隊の幹部自衛官となる者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は4年です。
② 防衛医科大学校
   医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は6年です。
③ 税務大学校
   税務職員に対する必要な研修等を目的としており,身分は税務職員であり,終了後は引き続き税務職員として勤務し,給与が支給され,期間は個々の研修によります。
④ 警察大学校
   上級幹部に対して必要な知識,技能,指導能力及び管理能力を習得させるための教養等を目的としており,身分は警察官であり,終了後は引き続き警察官として勤務し,給与が支給され,期間は個々の教養課程によります。
⑤ 航空大学校
    航空機の操縦士の教育訓練を目的としており,身分は学生(非公務員)であり,終了後は民間企業等への就職等であり,給与等の支給はなく,期間は2年です。

5 平成17年度決算検査報告における指摘
   最高裁判所ほか79裁判所は,会計検査院の平成17年度決算検査報告において,自動車等を使用して通勤する職員等に対する通勤手当の認定等を適切に行い、適正な支給額となるよう改善させられました(平成17年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項参照)。

第7の1 裁判官の推定年収(参考)

平成27年12月1日時点の,裁判官の推定年収は以下のとおりです(「裁判官の年収及び退職手当」参照)。
 
1 判事の年収
① 任官34年目(34期)~任官40年目(28期)(判事1号)
      約1984万円(地域手当0%)~約2325万円(地域手当18%)
② 任官29年目(39期)~任官33年目(35期)(判事2号)
      約1747万円(地域手当0%)~約2047万円(地域手当18%)
③ 任官24年目(44期)~任官28年目(38期)(判事3号)
      約1630万円(地域手当0%)~約1909万円(地域手当18%)
④ 任官19年目(49期)~任官23年目(45期)(判事4号)
      約1381万円(地域手当0%)~約1618万円(地域手当18%)
⑤ 任官16年目(53期)~任官18年目(50期)(判事5号
      約1192万円(地域手当0%)~約1397万円(地域手当18%)
⑥ 任官14年目(55期)~任官15年目(54期)(判事6号)
      約1070万円(地域手当0%)~約1253万円(地域手当18%)
⑦ 任官13年目(56期)(判事7号)
      約969万円(地域手当0%)~約1135万円(地域手当18%)
⑧ 任官11年目(57期)~任官12年目(58期)(判事8号)
      約871万円(地域手当0%)~約1020万円(地域手当18%)

2 判事補の年収
① 任官8年目(現行61期)~任官10年目(59期)(判事補1号)
      約774万円(地域手当0%)~約905万円(地域手当18%)
② 任官7年目(現行62期及び新61期)(判事補2号)
      約711万円(地域手当0%)~約832万円(地域手当18%)
③ 任官6年目(現行63期及び新62期)(判事補3号)
      約653万円(地域手当0%)~約767万円(地域手当18%)
④ 任官5年目(現行64期及び新63期)(判事補4号)
      約611万円(地域手当0%)~約717万円(地域手当18%)
⑤ 任官4年目(新64期)(判事補5号)
      約567万円(地域手当0%)~約665万円(地域手当18%)
⑥ 任官3年目(65期)(判事補6号)
      約555万円(地域手当0%)~約648万円(地域手当18%)
⑦ 任官2年目(66期)(判事補7号)
      約541万円(地域手当0%)~約629万円(地域手当18%)
⑧ 任官1年目(67期)(判事補9号)
      約508万円(地域手当0%)~約584万円(地域手当18%)

第7の2 上場企業の時給ランキング2017(参考)

○VORKERSの調査レポートVol.38「上場企業の時給ランキング2017」によれば,以下のとおりです。
   残業時間も含めた労働時間による「時給」だそうです。

1位:GCA株式会社の7682円
2位:株式会社キーエンスの6548円
3位:三菱商事株式会社の6368円
4位:ファナック株式会社の6361円
5位:三井物産株式会社の6296円
6位:伊藤忠商事株式会社の6025円
7位:三菱地所株式会社の5650円
8位:住友商事株式会社の5539円
9位:株式会社ジャフコの5429円
10位:丸紅株式会社の5394円
11位:三井不動産株式会社の5068円
12位:株式会社電通の5062円
13位:双日株式会社の4946円
14位:第一三共株式会社の4875円
15位:日本オラクル株式会社の4830円
16位:アステラス製薬株式会社の4816円
17位:日本有線株式会社の4787円
18位:国際石油開発帝石株式会社の4657円
19位:株式会社商船三井の4657円
20位:三洋貿易株式会社の4646円

第8 OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当すること等

1   国立国会図書館HPの「調査と情報」に掲載されている「諸外国における大学の授業料と奨学金」(「調査と情報」2015年7月9日号)の1頁目には,以下の記載があります。
① OECDの国際比較では,日本は高授業料・低補助のモデルに該当する。
② 日本以外のOECD加盟国には,授業料が有償で高額,かつ給付制奨学金がない国は見られない。

2 経済産業省HPの「不安な個人,立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」(平成29年5月 次官・若手プロジェクト)30頁には,「日本は,少子高齢化の影響を考慮したとしても高齢者向け支出に比べて現役世代向け支出が低い」と書いてあります。

第9 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)の文言

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)13条は,以下のとおりです。

 1 この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。

2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
(d) 基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化されること。
(e) すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。

3 この規約の締約国は、父母及び場合により法定保護者が、公の機関によって設置される学校以外の学校であって国によって定められ又は承認される最低限度の教育上の基準に適合するものを児童のために選択する自由並びに自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。

4 この条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行なわれる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。 

第10 修習専念資金

「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」には,修習専念資金に関して,以下の記載があります。

   修習専念資金については「司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって,修習給付金の支給を受けてもなお必要なもの」として司法修習生の希望者に貸与することを予定しており,その額については月額原則10万円程度を想定している。
   これは,司法修習生の修習実態等に鑑みたものであり,司法修習生の通常の支出のうち修習給付金では賄われない費用としては,前記の「修習実態アンケート」(日弁連)及び平成27年度の「家計調査」(総務省統計局)等によれば,以下のとおり,おおむね10万円程度が想定される。
(内訳)合計10.2万円
・社会保険料(約1.6万円)
・所得税・住民税等(約0.5万円)
・勉強会参加費を除く交際費(約1.7万円)
・奨学金返済費用(約0.6万円)
・教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。)(約1.5万円)
・理美容・嗜好品等(約1.4万円)
・自動車等関係費(約0.7万円)
・仕送り金(約0.3万円)
・家具家電・衣服購入費等(約1.9万円)
※ 社会保険料は,平成28年度の国民年金保険料月額。所得税・住民税等は,修習給付金の金額水準に基づく所得税の試算値。勉強会参加費を除く交際費及び奨学金返済費用は,「修習実態アンケート」に回答した全ての司法修習生の平均値。教養娯楽費,理美容・嗜好品等,自動車等関係費及び仕送り金は,「家計調査」における単身世帯の消費支出の平均額。家具家電・衣服購入費は,修習の開始に伴って必要となる初期購入費用(家具家電10万円,衣服費15万円)を月割で按分した金額として,日弁連が推計した金額。
   なお,現行貸与制では,司法修習生がその収集に専念することを確保するための資金として,月額23万円(基本額)が希望者に貸与されている。貸与制度は,修習給付金の創設に伴い,貸与額等を見直した上で併存することになるが,新制度の創設に伴って司法修習生の経済状況や生活実態に変更が生ずるわけではないから,現行貸与制下の貸与額そのものは引き続き相当性が認められる(注5)。現行貸与制下の貸与基本額である23万円から修習給付金の基本額である13.5万円を控除した金額とほぼ一致する10万円を修習専念資金の額とすることは,このような観点からも合理的といえる。
(注5)第69期の司法修習生1,788名のうち貸与申請者は1,205名(67.39%)であり,貸与申請者のうち基本額である月額23万円の貸与を申請した者が894名(74.19%)である(このほか,月額18万円が51名(4.23%)。なお,月額23万円を基礎に,一定要件を満たして加算が認められた月額25.5万円が235名(19.50%),月額28万円が25名(2.07%)となっている。)。司法修習生ごとに貸与を要する事情や使途は様々と思われるが,こうした実績に照らす限り,月額23万円程度が修習期間中の生活の基盤確保に一般的に必要な金額水準になっていると見ることができる。

第11の1 修習給付金の税務上の取扱い

1 修習給付金に関する確定申告の時期
(1) 年末調整をされている給与所得者の場合,雑所得が20万円未満であれば確定申告をする必要がありません(所得税法121条1項1号)。
   また,毎年11月27日付の採用から年末までに支給される修習給付金から必要経費を控除した場合,雑所得自体が発生しないかも知れません。
   そのため,修習給付金について修習期間中に確定申告をする必要はないと思われます。
(2) 71期司法修習生の場合,平成30年中に支給された修習給付金について,平成31年3月15日頃までに確定申告をする必要があります。

2 必要経費に関する一般論
(1) 不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得の金額を計算する上で,必要経費に算入できる金額は,一般論としては以下のとおりです(所得税法37条1項参照)。 
① 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額 
→ 個別対応の必要経費です。
② その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額 
→ 期間対応の必要経費です。また,償却費以外の費用については,12月31日現在で債務の確定しているものに限られます。
(2)ア 個人事業の場合,家事(生活)上の費用と事業場の経費とが混在していることが多いところ,事業又は業務上必要な経費は「必要経費」として,収入金額から控除されますものの,例えば,以下に掲げる家事費や家事関連費等は所得の処分と考えられ,必要経費として控除することはできません(所得税法45条1項)。
   ただし,家事関連費であっても,業務の遂行上必要であることが明らかな部分は,必要経費として控除されます。
① 家事費
② 家事関連費
③ 租税公課
④ 罰金及び科料並びに過料
⑤ 損害賠償金(生活上の損害賠償金,業務上の故意又は重大な過失による損害賠償金)
イ 家事関連費について,所得税法では,家事関連費の主たる部分が不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分することができる場合,その部分に相当する経費に限り,必要経費に算入できるものとし,区分できない場合,原則として必要経費に算入できません(所得税法45条,所得税法施行令96条1号)。
(3) 税大講本「所得税法」「第4章 課税標準の計算 第5節 必要経費」が参考になります。

3 修習給付金に関する雑所得を計算する上で,必要経費に算入できる項目及び算入できなさそうな項目
   全くの個人的意見ですが,修習給付金に関する雑所得を計算する上で,必要経費に算入できる項目は以下のとおりと思います。なお,括弧内の金額は,「修習実態アンケート」(日弁連)及び平成27年度の「家計調査」(総務省統計局)に基づき,「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」に書いてある金額です。
(1) 争いなく算入できそうな項目
① 実務修習地や司法研修所に赴くための旅費
→ そもそも非課税ともいえる項目です(所得税法9条1項4号参照)が,同額が旅費として支給されるため,課税問題は発生しません。
② 配属先の裁判所,検察庁及び法律事務所並びに司法研修所に通勤するための毎日の交通費
③ 導入修習,分野別実務修習及び集合修習に参加するための引越代
→ 移転給付金を超過する部分についても必要経費になると思います。
(2) 算入できるかどうか微妙な項目
① 導入修習,実務修習及び集合修習における家賃
→ これらの修習に参加するために引越をして家賃を支払っている場合,住居給付金を超える部分についても必要経費になると思います。
   しかし,修習前から賃借している自宅に住みながらこれらの修習に参加した場合,修習給付金を得るために直接要する費用に該当するわけではない気がします。
② その他の交通費(毎日の交通費込みで約0.9万円)
③ 情報通信費(約0.9万円)
④ 学習費(約1.0万円)
⑤ 書籍代(約0.8万円)
⑥ OA機器購入費(約1.2万円)
⑦ 勉強会参加費(約1.0万円)
→ ②ないし⑦の全部が,修習専念義務等を守って修習給付金を得るために直接要する費用に該当するわけではない気がします。
(3) 算入できなさそうな項目
① 食費(約4.0万円)
② 水道光熱費(約1.0万円)
③ 就職活動費(約1.1万円)
→ 法律事務所への就職活動は,修習給付金を得るために直接要する費用ではありません。
④ 諸雑費(医療費,衣服費等)
⑤ 社会保険料(約1.6万円)
→ 社会保険料控除の対象になります。
⑥ 所得税・住民税等(約0.5万円)
⑦ 勉強会参加費を除く交際費(約1.7万円)
⑧ 奨学金返済費用(約0.6万円)
⑨ 教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。)(約1.5万円)
⑩ 理美容・嗜好品等(約1.4万円)
⑪ 自動車等関係費(約0.7万円)
⑫ 仕送り金(約0.3万円)
⑬ 家具家電・衣服購入費等(約1.9万円)

4 雑所得の場合,記帳は不要であること
   平成26年1月1日以降,事業所得,不動産所得又は山林所得について,白色申告であっても記帳が義務化されていますが,雑所得については,記帳が義務化されていません(おさいふプラスHPの「白色申告でも記帳が義務化されているけど,雑所得も対象なの?」参照)。

第11の2 修習給付金と,扶養控除及び配偶者控除の関係

1 修習給付金と,扶養控除との関係
(1) 納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合,一定の金額の所得控除が受けられますところ,これを扶養控除といいます。
(2)ア 扶養親族とは,その年の12月31日の現況で,以下の四つの要件のすべてに当てはまる人をいいます(国税庁HPの「No.1180 扶養控除」参照)。
① 配偶者以外の親族等であること。
② 納税者と生計を一にしていること。
③ 年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)。
④ 青色申告の事業専従者としてその年を通じて一度も給料の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
イ 控除対象扶養親族とは,扶養親族のうち,その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
ウ 司法修習生に採用された年についていえば,導入修習開始に際して旅費及び移転給付金が支給され,導入修習中に12月分の修習給付金が支給されると思いますが,引越代等の必要経費を控除すれば,それだけで年間の合計所得金額が38万円を超えるわけではありません。
   そのため,司法修習生に採用された年は控除対象扶養親族のままであると思われます。
(3) 司法修習生に採用された年の翌年の年末,つまり,二回試験の合格発表後の年末の場合,修習給付金に関する雑所得の金額だけで38万円を超えると思われます。
   そのため,司法修習生に採用された年の翌年は控除対象扶養親族から外れると思います。

2 修習給付金と,配偶者控除との関係
(1) 納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合,一定の金額の所得控除が受けられますところ,これを配偶者控除といいます。
(2)ア 控除対象配偶者とは,その年の12月31日の現況で,以下の四つの要件のすべてに当てはまる人をいいます(国税庁HPの「No.1191 配偶者控除」参照)。
① 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
② 納税者と生計を一にしていること。
③ 年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)。
④ 青色申告の事業専従者としてその年を通じて一度も給料の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
イ 司法修習生に採用された年についていえば,導入修習開始に際して旅費及び移転給付金が支給され,導入修習中に12月分の修習給付金が支給されると思いますが,引越代等の必要経費を控除すれば,それだけで年間の合計所得金額が38万円を超えるわけではありません。
   そのため,司法修習生に採用された年は控除対象配偶者のままであると思われます。
(3) 司法修習生に採用された年の翌年の年末,つまり,二回試験の合格発表後の年末の場合,修習給付金に関する雑所得の金額だけで38万円を超えると思われます。
   そのため,司法修習生に採用された年の翌年は控除対象配偶者から外れると思います。

第11の3 修習給付金は非課税所得等に該当する可能性があること

1 学資に充てるため給付される金品(いわゆる「学資金」)の意義
(1) 学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するものを除く。)及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品(所得税法9条1項15号)は非課税所得です。
(2) 「学資に充てるため給付される金品」(いわゆる「学資金」)について定める国税庁の所得税基本通達9-14ないし9-16には,金額規模に関する言及はありません。
   そのため,修習給付金が学資金に該当する場合,修習給付金は非課税所得であると主張できることとなります。
(3) 税大講本「所得税法」「第1章 総説 第3節 非課税所得」によれば,学資に充てるため等に給付される金品は,社会政策的配慮(担税力)に基づき,非課税所得とされています。

2 学資に充てるため給付される金品の意義に関する裁判例
   判例秘書で見る限り,以下の二つの裁判例がありますところ,金額規模は問題となっていません。
(1) 東京地裁昭和44年12月25日判決
   所得税法は、課税対象としての給与所得につき極めて包括的な定義規定を設け、退職所得を除き、原則として、勤務関係ないし雇用関係に由来するすべての金銭的給付又は経済的価値の給付を包含するものとしている(二八条一項、三六条なお最高裁昭和三七・八・一〇第二小法廷判決、民集一六巻八号一七四九頁参照)のであるから、それから除外されるべき学資に充てるための給付、つまり給与その他の対価の性質を有しない学資に充てるために給付される金品とは、勤務の対価ではなくして、会社が購入した新規機械設備を操作する技術を習得させるための授業料のごとく客観的にみて使用者の事業の遂行に直接必要があるものであり、かつ、その事実遂行の過程において費消されるべき給付を指すものと解するのが相当である。
(2) 福岡地裁平成21年2月19日判決14頁
   使用者が使用人等に支給し、又は使用人等のため負担する学資金等は、支給された使用人等が上記費用相当分の経済的利益を受けたことになるから、給与として課税されるのが原則である(所得税法9条1項14号括弧書き、36条1項)。
   しかし、所得税基本通達9-15は、「使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない。」としている(乙57・74頁)。
   上記通達の趣旨は、使用者が支出する上記金品が、もともと使用者が使用人等にその職務遂行に必要な技術、知識等を習得させることを通じてその者の職務内容の質的向上を図るためのものであるから、それにより、その使用人等が知識、資格等を取得したとしても、使用人等が使用者のためにその職務を遂行する過程においておのずから修得する技術、知識又はいわゆる社内研修により修得する技術、知識等と本質的に異ならないということにあり、合理性を有するものといえる。
   そして、上記通達の趣旨等も考慮すると、使用者から支給された研修費等が給与所得の収入金額に該当するためには、それが使用者の事業の遂行上、直接必要なものであり、かつ、使用人の一般的な資質の向上を直接の目的とするものでないことを要すると解すべきである。
→ 赤字部分につき「給与所得の収入金額に該当するためには」と書いてありますが,「
給与所得の収入金額に該当しないためには」の方が正しい気がします。

3 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与の取扱い
(1) 「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は,贈与税の非課税財産となります(相続税法21条の3第1項2号)。
(2) [扶養義務者からの生活費等関係]について定めた相続税基本通達21の3-3ないし21の3-7は以下のとおりであります。
(「生活費」の意義)
21の3-3 法第21条の3第1項第2号に規定する「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除く。)をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除く。)を含むものとして取り扱うものとする。(昭50直資2-257改正、平15課資2-1改正)
(「教育費」の意義」)
21の3-4 法第21条の3第1項第2号に規定する「教育費」とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限らないのであるから留意する。(平15課資2-1改正)
(生活費及び教育費の取扱い)
21の3-5 法第21条の3第1項の規定により生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいうものとする。したがって、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱うものとする。(平15課資2-1改正)
(生活費等で通常必要と認められるもの)
21の3-6 法第21条の3第1項第2号に規定する「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいうものとする。(平15課資2-1改正)
(生活費等に充てるために財産の名義変更があった場合)
21の3-7 財産の果実だけを生活費又は教育費に充てるために財産の名義変更があったような場合には、その名義変更の時にその利益を受ける者が当該財産を贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(平15課資2-1改正)

4 修習給付金は,非課税所得としての学資金に該当する可能性があること
   修習給付金は,その金額の決定理由からすれば,修習期間中の生活費又は教育費に充てるために国からの贈与により取得した財産ですし,一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産であると思います。
   また,基本給付金については1年当たり13.5万円×12ヶ月=162万円であり,扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与と比べて金額が特に大きいわけでもありません。
   そのため,金額規模を理由に,修習給付金が非課税所得に該当しないと解することはバランスを欠くと思います。
   よって,修習給付金は,非課税所得としての学資金に該当する可能性があります。

5 修習給付金は給与所得に該当する可能性があること
(1)ア   給与所得(所得税法28条1項)とは,雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいいます(最高裁昭和56年4月24日判決)。
   そのため,例えば,修習給付金が非課税所得でないとしても,司法修習生による実務修習が実務修習庁会の指揮命令に服して提供した労務に該当するといえる場合,修習給付金は労務の対価として最高裁判所から受ける給付に該当する結果,給与所得であるということで給与所得控除の適用を主張できることとなります。
イ 最高裁判所事務総局総務局が作成した裁判所法逐条解説(昭和44年6月30日発行)(法曹の養成に関するフォーラム第4回会議(平成23年8月4日開催)資料6に含まれています。)397頁には,「修習は、国に対する勤務ないし給付の性質をもつものではなく、むしろ自己の向上のためになされるものであるから、修習の対価として給与を受けるということは、意味をなさない。」と書いてあります。
   つまり,最高裁判所は,給費制時代から,司法修習生の給料は労務の対価ではないと説明していました。
(2)
平成29年1月20日付の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では,従前の基準では明確にされていなかった労働時間について以下の説明がなされています。
   労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。そのため、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければならないこと。
   ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱うこと。
(中略)
ウ   参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

第11の4 修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法

1 修習給付金の税務上の取扱いについて争いたい場合,以下の流れになると思います。
(1) 所得税関係
① 修習給付金が雑所得であることを前提として確定申告をする。
② 確定申告をした直後,税務署長に対し,所得税及び復興特別所得税について更正の請求(国税通則法23条)をする(国税庁HPの「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」参照)。
→ 更正の請求自体は,法定申告期限から5年以内であれば可能です。
③ 「更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分」を税務署長が出した場合,税務署長に対する再調査の請求で決定が覆ることはありえないと思われることにかんがみ,国税不服審判所長に対する審査請求をする(国税通則法87条以下)(国税庁HPの「税務署の処分に不服があるとき」参照)。
④ 国税不服審判所が棄却裁決を出した場合(審査請求前置につき国税通則法115条1項),地方裁判所に対し,更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求訴訟を提起する(事件名につき,国税庁HPの「平成25年1月~12月判決分」参照)。
→   この場合,被告は国であり,処分行政庁(行政事件訴訟法11条4項1号)は税務署長となり,法務大臣が被告の代表者となります(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(法務大臣権限法)1条)。
(2) 住民税関係
① 6月上旬,1月1日時点の住所地の市町村又は特別区から,住民税の納税通知書が届く。
② 納税通知書が届いてから3か月以内に,住所地の市町村又は特別区の長に対し,審査請求をする(地方税法19条・行政不服審査法)(大阪市HPの「市税にかかる不服申立て(審査請求)」参照)。
③ 市町村又は特別区の長が棄却裁決を出した場合(審査請求前置につき地方税法19条の12),地方裁判所に対し,市民税府民税賦課決定処分取消請求訴訟(大阪府内又は京都府内の市長が被告となる場合の事件名です。)を提起する。
→   この場合,被告兼処分行政庁は市町村又は特別区となり,市町村又は特別区の長が被告の代表者となります。

2(1) 71期司法修習生の場合,平成29年12月分の修習給付金について,平成30年2月15日頃から同年3月15日頃にかけて確定申告をすることができます。
   そのため,その直後から修習給付金の税務上の取扱いについて争えることとなります。
(2) 国税不服審判所又は市区町村長の棄却裁決が出た後,取消訴訟の出訴期間である6か月(行政事件訴訟法14条1項)が経過するまでに司法修習が終わると思いますから,司法修習終了直後に取消訴訟を提起すればいいかもしれません。
(3)   国を被告とする訴訟は,原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所(「特定管轄裁判所」といいます。)にも提起することができます(行政事件訴訟法12条4項)。
   そのため,例えば,大阪高裁管内に原告の住所地がある場合,原告が大阪府に住んでいない場合であっても,大阪地裁に取消訴訟を提起できます。
(4) 税務訴訟を提起した場合,東京地裁であれば2民,3民,38民又は51民に係属し,大阪地裁であれば2民又は7民に係属します(「現職裁判官の分布表,全国の地裁の本庁及び支部ごとの裁判官数」参照)。

3 国税庁が作成した課税関係訴訟事務処理要領(平成26年6月30日最終改正)を掲載しています。

4(1) 司法修習生研修委託費(略称は「司法修習委託金」です。)は,弁護士会において司法修習生の弁護実務修習の指導に要する経費に充てることをその使途とするものです。
(2) 予算の示達の場面において,司法研修所ひいては最高裁判所が,司法修習委託金を消費税の課税対象と考えていなかったようにもうかがえることは,司法修習委託金が消費税の課税対象となることを妨げるものではありません(大阪高裁平成24年3月16日判決(原審は京都地裁平成23年4月28日判決))。
   また,東京高裁平成26年6月25日判決(原審は東京地裁平成25年11月27日判決)も同趣旨の判断をしています(平成26年度法務年鑑162頁ないし164頁)。
   そのため,法務省が修習給付金を非課税所得と考えていなかったことは,修習給付金が非課税所得となることを妨げるものではないと思われます。

第12 弁護士登録5年目の平均所得の推移

1 法務省の国会答弁資料によれば,弁護士登録5年目の平均所得の推移は以下のとおりです。
 (1) 平成23年の,法曹の要請に関するフォーラムによる調査結果
54期:1386万円
55期:1110万円
56期:1236万円
57期:1204万円
58期:1107万円
(2) 法務省が,平成28年に弁護士を対象に実施したアンケート調査の集計結果
現行61期:648万円
新 61期:697万円
現行62期:643万円
新 62期:690万円
現行63期:697万円
新 63期:686万円

2 平成29年7月25日現在,法科大学院協会HPの「理事長からのメッセージ」には以下の記載があります。
   弁護士の活動領域は着実に拡大しており、活躍の舞台は、法律事務所だけでなく、企業、公務員、国際機関、国会議員政策秘書など実に多様になりました。弁護士の就職難といわれる状況も確実に解消されつつあります。司法試験に合格し司法修習を終えた者の97%が就職でき、しかも、弁護士5年目の年収(中央値-経費等を引く前の数字)は1,081万円と、安定した収入を得ています。
法務省の国会答弁資料
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
 
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。