陳述書

第0 目次

第1 陳述書とは
第2 陳述書の作成者
第3 陳述書の機能,裁判官の心証形成,及び通常は信用性を有する私文書との違い
第4 陳述書作成の注意点
第5 陳述書の通数及び分量
第6 陳述書の作成が違法となる場合に関する裁判例
第7 処分証書と報告文書の違い

* 陳述書提出後に実施される民事裁判の証人尋問及び当事者尋問については,
「証人尋問及び当事者尋問」並びに「尋問調書」を参照してください。 

第1 陳述書とは

1 弁護士に依頼した後に当事者尋問又は証人尋問を申請する際,「陳述書」という表題の書面を作成することが多いです。
    陳述書とは,原則として人証調べの直前に,①当事者本人,②その親族若しくは従業員といった準当事者,又は③第三者の供述を記載し,書証の形式で裁判所に提出する報告文書をいい,②準当事者及び③第三者は原則として証人予定者となります。

2 陳述書の記載例が,前橋地方・家庭裁判所HPの 「地方裁判所における民事手続について」に掲載されています。
   リンク先HPには,「陳述書とは,事件に関してあなたが経験したり認識したりした事実を時系列に沿って述べたものをいい,あなたの言い分を裁判所や相手方が理解し,事件の経緯や問題の所在を把握するために用いられるものです。」と書いてあります。

第2 陳述書の作成者

1 陳述書の作成者は,形式的には当事者又は証人予定者となります。
  しかし,実際は,依頼した弁護士が当事者又は証人予定者から事情を聞き,関係証拠と矛盾が生じないように留意しながら陳述書の原案を作成し,内容確認をした当事者又は証人予定者の署名押印をもらった上で,裁判所に書証として提出しています。
 

2 裁判所から見た場合,本人だけで作成した陳述書は,心情はあふれているけれども,整理がされていなくて,争点とは関係のないことが一生懸命書いてあって,肝心の争点がどうなっているかが読み取れないなど,様々な問題点があると考えられています。
  そのため,裁判所としても,プロである弁護士が本人から事実関係をヒアリングし,その成果を裁判官に理解しやすい形で再構成してくれることを期待しています。
 

3 連名で陳述書を提出した場合,どの部分が誰の陳述であるかが判明せずに反対尋問ができないため,連名で陳述書を作成することはできません。 

第3 陳述書の機能,裁判官の心証形成,及び通常は信用性を有する私文書との違い

1 陳述書の機能
① 証拠開示機能
    本人の供述内容なり,証人の証言内容なりを事前に開示する機能です。
    これにより,反対尋問の準備が促進され,効果的な反対尋問が可能となり,集中証拠調べが充実・活性化されます。
② 主尋問代用補完機能
    主尋問に代用し,これを補完する機能です。
    詳細な数値など性質上口頭の陳述に適さない事項や,身上・経歴関係などわざわざ口頭で時間をかけて尋問するまでもない事項は陳述書に譲り,提出された書証等によって確定されず証拠調べの実施によって初めて確定できる争点に絞って主尋問を行うことが可能となります。
③ 情報収集機能
    早い段階での事案の正確な把握のため,情報及び証拠収集作業を代理人が前倒しするようになる機能です。
④ 参加意識向上機能
    陳述書の作成過程及び自己名義の陳述書が裁判所に提出されることを通じて,当事者の訴訟への参加意識を高める機能です。
⑤ 主張固定機能
    事後に主張を変更したり,誤解があったなどと弁解したりすることを困難にし,事実についての当事者の主張を固定する機能です。
⑥ 調書作成補助機能
    書記官が正確な要領調書を作成する助けとなる機能です。

 
2 裁判官の心証形成
(1)   周辺的な事情,例えば,①過失や因果関係が争点になっている事案における被害感情等が書かれている場合,②実質的に争いがない事実が書かれてある場合,③提出者にとって不利なことが書かれている場合,人証調べを行わないで陳述書により裁判所の心証が形成されることが多いです。
(2) ア  反対尋問を経ていない陳述書の証明力は極めて弱いと考えられています。
   そのため,争いがある重要な事実については,原則として,人証調べを行った上で裁判所の心証が形成されますから,反対尋問を経ていない陳述書だけで重要な事実が認定されることは原則としてありません。
イ やむを得ない理由で反対尋問ができなかった本人尋問の結果は証拠資料となることがあります(最高裁昭和32年2月8日判決参照)。
   また,民事訴訟においては,伝聞証言の証拠能力は当然に制限されるものではなく,その採否は,裁判官の自由な心証による判断に委ねられています(最高裁昭和32年3月26日判決。先例として,最高裁昭和27年12月5日判決参照)。
   そのため,反対尋問を経ていないというだけの理由で陳述書の証拠能力が否定されるわけではありません。 
ウ 外部ブログの「反対尋問を経ない陳述書の証明力について」によれば,簡易裁判所の場合,反対尋問を申請しなかった相手方当事者の陳述書が過大評価されることがあるみたいです。
(3) 裁判官の心証形成一般については,外部HPの「事実認定と裁判官の心証形成」が参考になります。
 
3 通常は信用性を有する私文書と陳述書との違い
(1) 通常は信用性を有する私文書としては,以下のものがあります。
① 紛争が顕在化する前に作成された文書
→ 例えば,取引中にやり取りされた見積書があります。
② 紛争当事者と利害関係のない者が作成した文書
→ 例えば,第三者間のメールがあります。
③ 事実があった時点に近い時期に作成された文書
→ 例えば,紛争当時のメール,作業日報があります。
④ 記載内容が習慣化されている文書
→ 例えば,商業帳簿,カルテがあります。
⑤ 自己に不利益な内容を記載した文書
→ 例えば,領収書があります(最高裁昭和45年11月26日判決参照)。
(2) 陳述書は,①紛争が顕在化した後に作成される文書ですし,②紛争当事者又はこれと利害関係のある人が作成することが通常ですし,③事実があった時点からかなり後に作成される文書ですし,④記載内容が習慣化されているわけではないです。
   そのため,陳述書は,通常は信用性を有する私文書と大きく異なりますから,自己に不利益な内容が記載されている部分を除き,陳述書それ自体の証明力は大きくありません。

第4 陳述書作成の注意点

1(1) 陳述書では,陳述書の作成者が直接体験した生の事実をできる限り日時を入れて時系列で記述することが重要です。
   記載内容としては,争点に関係する生の事実が中心となりますものの,背景事情にも言及した方がいいです。

(2)   伝聞を入れることは許されますものの,この場合,これは伝聞である旨をはっきり書いておく必要があります。
 
2 体験したことではっきりした記憶があるものはそのとおり記述すればいいのですが,すでに記憶があいまいだという部分も当然あり得ます。
    そういう部分は,むしろここはもう記憶がはっきりしませんと正直に書いていただいた方が,裁判所に与える印象がいいです。
 

3 何でもかんでも明快に,断定調で書けばいいというものではありません。
   記憶を喚起しても,それ以上明らかにならないところは,ここは今となってはよく分からない,思い出せないと正直に書いた方が,裁判所に与える印象がいいです。
 

4 陳述書に記載されていない重要な事実が尋問で突然,出てきた場合,裁判官が違和感を持つことが多いですから,重要な事実は一通り陳述書に書いておいた方がいいです。
  
5 事実と意見は区別し,意見については当時のものか現在のものかを明らかにする必要があります。
  
6 感情的な記載は,事件の種類や記載した場合の影響を考えて適切な範囲にとどめる必要があります。
 
7 都合の悪い事実であっても反対尋問が予想されるものは書いておいた方がいいです。
  
8(1) 依頼した弁護士によっては,陳述書の作成者がどういう人間であるかを裁判所に伝えるため,陳述書の冒頭に経歴を書く人もいます。
(2)   交通事故事件において後遺障害逸失利益が問題となる場合,基礎収入をいくらとするのかが問題となりますから,通常は依頼者の経歴を記載します。

第5 陳述書の通数及び分量

1 陳述書の通数
(1) 陳述書提出後,主尋問の準備をしている最中に,陳述書で言い足りないことが出てきた場合,追加の陳述書を出すことがあります。
   しかし,裁判官からすると,陳述書の通数は1通が望ましいといわれています。
   なぜなら,五月雨式に陳述書がぽつぽつと出てきた場合,裁判官からすれば他の書証と陳述書が混ざって記録が見にくくなりますし,書きぶりが少し違う場合,事実関係の整理に使いにくくなるからです。
(2) 記録が膨大な事件で,例えば,責任論と損害論を分けるというように,区分けができるところで陳述書を分けて書くのは問題ありません。

2 陳述書の分量
(1) 5枚から10枚ぐらいの陳述書であれば,裁判官は一気に読むことができますから,適切な分量であるといわれています。
(2) 陳述書が短すぎて要件事実に近いことが抽象的に書いてあるだけのものは使い物になりません。
(3) 陳述書が10枚を大きく超える場合,同時に膨大な事件を抱えている裁判官からすると読む時間をなかなか確保できないため,一生懸命作ったのに,裁判官の読み方が浅くなってちゃんと読んでもらえなくなる可能性が高まります。

第6 陳述書の作成が違法となる場合に関する裁判例

1 東京地裁平成13年4月25日判決
   以下のとおり判示しています(ナンバリング及び改行を行っています。)。
①   裁判所は、当事者双方の主張する事実について争いがあるときは、民事訴訟法に従い、当事者が提出する証拠方法を取り調べ、その結果に基づいて事実を認定し、これに法を適用して請求の当否を判断するものであり、私人の主張する権利又は法律関係はこのような手続によってその存否が確定されるものである。
  そのようなことから、民事訴訟手続において尋問を受ける証人は、特別の定めがある場合を除き、宣誓の上、尋問された事項について良心に従って真実を述べるべき義務がある(民事訴訟法201条1項、民事訴訟規則112条4項参照)。
  そして、証人の証言は、要証事実と関連性があるものとして質問され、それに答えるべき必要性がある限り、他人の名誉を毀損し、もしくは侮辱することになったとしても、それが真実と認められる場合には、違法性を阻却し、不法行為に当たらないものと解される。
② そして、書証として訴訟手続に提出される陳述書は、作成者が証言をすることになったときにはそれを補い、もしくは証言に代わるものとしての機能を有し、その意味で、作成者が証人として証言する場合に類似したものということができるから、当該陳述書の内容が、要証事実に関連性を有し、明らかにする必要性がある限り、他人の名誉を毀損し、もしくは侮辱することになったとしても、それが真実と認められる場合には、証言の場合と同様、違法性を阻却し、不法行為に当たらないものと解される。

2 東京地裁平成27年10月30日判決
   以下のとおり判示しています(ナンバリング及び改行を行っています。)。
① 一般的に陳述書は,陳述者が自らの体験,記憶,認識等に基づく事実や意見を記載して民事訴訟の証拠として用いることで,客観的な裏付け資料を得にくい事実関係についての当事者の立証活動に資するものであるが,その信用性は,受訴裁判所において,記載内容の合理性,当該事実認識の根拠となった前提事実の蓋然性・確実性,対立当事者の陳述書を含む他の証拠との整合性,陳述書作成者の尋問等を通じて吟味,判断されるものである。
  もとより,第三者が一方当事者の求めに応じて陳述書を作成する場合にも,虚偽内容の陳述書を作成して真実発見を阻害することは許されないというべきであるし,また,誇張する表現を用いた陳述書を作成して真実発見を歪めることは相当でないというべきであるが,結果として裁判所の認定した事実と異なる事実や誇張された表現を記載した陳述書の作成が,それだけで事後的に違法と評価されるならば,陳述書の作成は著しく制約を受けることになり,当事者の立証活動を妨げかねず,その結果,受訴裁判所の判断に資する証拠が乏しくなり,ひいては真実の発見・解明を困難にすることにつながりかねない。
② したがって,陳述書の作成が相手方当事者との関係で違法と評価されるためには,その記載内容が客観的な裏付けを欠く(客観的裏付けのあることを立証できない場合を含む。)というだけでは足りず,少なくとも,陳述書に記載された事実が虚偽であること,あるいは,判断等の根拠とされた資料に看過できない誤りがあり,作成者がその誤りを知り又は当然に知り得たことを要するものと解される。

第7 処分証書と報告文書の違い

1(1) 処分証書とは,意思表示その他の法律行為が文書によってされた場合における当該文書をいいます。
   例としては,判決書のような公文書のほか,契約書,約束手形,解除通知書,遺言書等があります。
(2) 処分証書が真正に成立している場合,特段の事情がない限り,原則としてその記載通りの事実が認定されることとなります(最高裁昭和32年10月31日判決最高裁昭和45年11月26日判決)。
   また,処分証書が真正に成立している場合,処分証書の記載以上に本人尋問の結果を信頼すべき特段の事情がない限り,処分証書の記載が尊重されることとなります(最高裁平成14年6月13日判決(判例時報1816号25頁)参照)。
 
2 報告文書とは,処分証書以外の文書で,事実に関する作成者の認識,判断,感想等が記載されたものをいいます。
   例としては,領収証,商業帳簿,議事録,日記,手紙,陳述書等があります。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
 
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。