集合修習

目次

第0 はじめに
第1 はしがき
第2 民事裁判
第3 民事弁護
第4 民事共通
第5 刑事裁判
第6 検察
第7 刑事弁護
第8 刑事共通
第9 その他の共通科目

*1  PDFデータは以下のとおりです。
①   第67期集合修習A班カリキュラムの概要
②   第67期集合修習B班カリキュラムの概要
*2 司法研修所における起案については,外部HPの「【2回試験・即日起案】司法研修所起案マニュアル」が参考になります。
*3 司法研修所いずみ寮については,「司法研修所」を参照してください。
*4 集合修習の開始等について(平成29年6月21日付の司法研修所事務局長の通知)を掲載しています(平成29年7月27日追加)。
70期A班集合修習週間日程表

第0 はじめに

1 集合修習は,和光市にある司法研修所において,A班とB班に分かれて実施されています。
 
2(1)   集合修習を含む司法修習の日程については,「司法修習の日程」を参照してください。
   なお,集合修習初日に実務修習結果簿が回収されますから,69期実務修習結果簿を掲載しています。
(2) 集合修習の場合,1限目が9時50分~11時40分であり,2限目が12時40分~14時30分であり,3限目が14時45分~16時35分であり,講義等は110分単位で実施されます。

3 第1以下の記載は,ナンバリングを除き,平成27年7月の司法修習生指導担当者協議会(司法修習生に関する規則9条2項参照)で配布された「第67期集合修習A班カリキュラムの概要」を丸写ししたものです。
司法研修所本館
司法研修所西館及び向かいのコンビニ
和光市駅南口
司法修習生バッチ

第1 はしがき

   平成25年度(第67期)司法修習生のうち,A班(実務修習地が東京,立川,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,奈良,大津,和歌山である者)を対象とする集合修習のカリキュラムは,14クラス編成で平成26年8月4日に開始され,同年9月22日に終了した(その後,各実務修習地等において選択型実務修習が実施された。)。
   第67期A班の集合修習のカリキュラムの概要は,この資料及び別添「平成25年度(第 67期)司法修習生A班集合修習日程予定表」のとおりである。
   集合修習のカリキュラム策定に当たっては,法科大学院において修得した学識及び実務の基礎的素養等並びに分野別実務修習の成果を踏まえて「幅広い法曹の活動に共通して必要とされる法的問題の解決のための基本的かつ汎用的な技法と思考方法」 (司法修習生指導要綱(甲)第1章第1)を修得させる観点から,実務修習を補完し,司法修習生全員に, 実務の標準的な知識,技法の教育を受ける機会を与えるとともに,体系的で汎用性のある実務知識や技法を修得させることを旨としている(要綱(甲)第3章第1)。
   このような趣旨を踏まえ,第67期A班においても,修習記録を用いて司法修習生に文書を起案させ,討論,講評を行うことを指導の中心としつつ(同第4の1),従来の司法修習で要求していたような法律書面の全体を形式面も含めて起案させることにはこだわらず, より実質的に,書面の内容の根底をなす思考過程を明らかにさせることを重視する方法で出題がされているほか, ロールプレイングも含めた民事・刑事の様々な講義,演習, 問題研究や法曹倫理,国際人権等に関する演習,講演なども実施された。
   司法修習生指導担当者各位におかれては,本資料を今後の実務修習の参考としていただきたい。

第2 民事裁判

1 講義
(1) 講義1
   集合修習の冒頭に,集合修習における民事裁判科目及び民事共通科目の修習内容を説明してその意義を理解させ,今後の学修方法に関する指導を行うことで集合修習への動機付けを行った。また,事実認定に関し,分野別実務修習の成果を理論的・体系的に整理するという観点から,記録形式の資料を用いて,基礎的な考え方に関する講義を行うとともに,当該事案の結論や判断過程等に関する討論を行った。
(2) 民裁問題研究 
   修習記録を使用した事実認定起案への導入として,比較的争点が明確である記録を使用し,判断の基礎となる重要な事実をどのような証拠から認定すべきか,認定した重要な事実を踏まえて結論に至る判断の過程をどのように考えるかについて検討させ,講評を行った。
   あわせて,当該事案において問題となる,株主総会決議不存在確認の訴えにおける原告適格や総会決議の暇庇を基礎付ける事由等の実体面からの説明も行い,会社訴訟を検討する際の基本的視点を提供した。
(3) 講義2
   民事裁判修習の総括を行い,実務家になるに当たっての心構えなどを講義した。
2 起案
(1) 総説 
   民事裁判科目の起案においては,第59期後期以降,主張整理用と事実認定用の異なる事件の2冊の修習記録を同時に与え,所定の時間内で主張整理起案と事実認定起案を行わせてきたところであるが,新第65期集合修習(A班)からは,主張整理及び事実認定に加えて法規範への当てはめや法的評価の視点も取り入れ,また,1つの事件を深く考察して事件全体を見通した上で紛争解決の在り方を考えるという観点から,起案1,2のいずれについても1冊の修習記録を与えて起案を実施している。
   起案1の講評では,主張整理及び事実認定の要点を中心に解説した。主張整理については,要件事実に関する細かな知識の修得ではなく,実体法の基本的な知識, 考え方を基に,それを実務における様々な事件に適用,応用できる法的思考力をかん養させることを主眼とした。また,事実認定については,当該事案の判断枠組みを検討し,当事者双方のストーリーを対比した上で,要証事実を認定するための具体的争点を確定し,その具体的争点の判断をするに当たり認定すべき事実を検討するなどといった,事実認定の具体的な思考方法について検討させる指導を行った。 起案2の講評では,争点把握のためには実体法の正確な理解が必要不可欠であること,争点となる事実は具体的事実であるが,その認定のためには間接事実や周辺事情等についての検討が重要となる場合があることを理解させるとともに,動かし難い事実との整合性を基本に事実認定することの重要性を理解させることに重点を置いた解説を行った。あわせて,法科大学院等で修得した実体法の知識等を活用して事案に即した具体的な基準を設定した上で事実関係を整理することやその評価を通じて,事実認定等に関する基礎的な知識や一般的な技法等を複雑な事例に応用することができるよう実践的な指導を行った。
   また,起案1,2のいずれにおいても,社会の実相を反映した事案や事項を取り上げることで,より実践的な観点を意識させることに意を用いた。
(2) 起案1
ア 事案の概要 
   本件は,原告(X)において,その父(A)が生前,Xの姉(B)の夫である被告(Y)に300万円を貸し付けていた(本件消費貸借契約)ところ,遺産分割協議(本件遺産分割協議)によって上記貸金債権(本件貸金債権)を自分が相続したと主張して,YがAに差し入れた借用書(本件借用書)を根拠に,Yに対し,貸金及びこれに対する弁済期の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
   Yは,本件消費貸借契約を否認し,その当時,Yは先物取引の追加証拠金の支払を余儀なくされており,Yから相談を受けた妻Bがそれを出損したものの, 自らの出損をYに秘すために,AがYに貸し付けたものかのように仮装して,Yに本件借用書を書かせたものであると主張するとともに,ー部弁済,免除,本件遺産分割協議の錯誤無効及び債務不履行解除,相殺の主張をしてxの請求を争っている。
   主張整理においては,本件遺産分割協議の錯誤無効とそれに対する重過失等の主張分析,遺産分割協議の債務不履行解除の可否等が問題となり,事実認定においては,本件借用書に記載されたとおりの事実を認定すべきでない特段の事情の有無が問題となった。
   このように,本件は,実務上よく見られる,相続が絡んだ貸金返還請求の事案であり,消費貸借,錯誤,相殺といった民法の基本的,基礎的な理解や実務で必須の相続法の理解を問うとともに,実務上散見される重要な報告文書についての 「特段の事情」の有無を検討させることを通じて,主張の基本的な構造の分析及び事実認定の基本的な手法を検討させるものである。
起案事項 
   ①訴訟物の記載,②請求原因や抗弁等に当たる当事者の主張の見出しと主張内容の要約の記載,③裁判官からの求釈明を受けて,被告が消滅時効の主張を撤回した場合の考えられる求釈明の内容の説明,④本件消費貸借契約の締結の事実が認められるかについて,結論の記載と理由の説明をそれぞれ求めた。
   本件は,貸金返還請求という典型的な事案ではあるが,当事者から比較的多岐にわたる主張が提示されており,②では,民法の基本的・基礎的な理解をもとに, 当事者の主張の位置づけを吟味しながら的確に主張分析していくことが求められ,民事実体法の基本的事項(要件・効果など)に関する正確な理解及びこれに基づく主張整理の在り方に関する理解度を確認するものである。また,③では,抗弁として主張された消滅時効が意味のある主張か否かについて, 当事者の主張構造との関係で考えさせるとともに,争点整理は書証を踏まえて行う必要があることを理解させようとするものである。さらに,④では,重要な報告文書についての 「特段の事情」の立証責任の分配と立証の程度について具体的事案に即して検討させ,事実認定能力,論理的思考力及び文章表現力を総合的に問うものである。 起案の講評では,単に結論を教えるのではなく,双方向,多方向の指導方法を採り入れ,修習生に活発に意見を述べさせながら,結論に至る理由やプロセスを考えさせることに重点を置いた。
(3) 起案2
事案の概要 
   介護保険法による「居宅サービス事業」等を目的とする有限会社であるXが, 社会福祉法人であるYから,高齢者グループホームとして利用する目的で,土地建物を購入したが,その際,XとYとの間で, 「Xが,高齢者グループホームの運営に必要な指定居宅サービス事業者の指定を得られないときは,Yが本件土地建物の売買及び建物工事費用等を全額補償する」旨の記載がされた確約書が取り交わされた。その後,Xが,県から当該指定が得られないことが確定したとして, Yに対し,上記補償合意に基づき,本件土地建物の購入や建物の改築等のために支出したー切の費用の補償を求めた。
   これに対し,Yは,確約書の成立は認めつつ,補償合意の締結を否認するとともに,県から指定を得るために窮状をアピールするためだけの目的で確約書は作成されたもので,その趣旨はXも了解していたなどを主張して,心裡留保,通謀虚偽表示等を主張して争った。
起案事項等 
   ①訴訟物の記載,②請求原因や抗弁等に当たる当事者の主張の見出しと主張内容の要約の記載,③補償合意の効果が認められるかについて,結論の記載と理由の説明をそれぞれ求めた。
①は,非典型契約を取り上げたものであり,適切に訴訟物を把握できるかを間うものである。
②は,非典型契約の請求原因につき,心裡留保,通謀虚偽表示,錯誤の主張がされているのに対し,それら典型的な攻撃防御方法を適切に抽出して位置づけることができるかを問いつつ,ー部の主張に実体法上の要件を欠くものを含めることで,実体法の正確な理解が重要であることを意識させる内容となっている。
   ③は,請求原因について,確約書(処分証書)の成立に争いがないが,補償合意の締結を否認している場合について適切に説示した上で,抗弁については,高齢者グループホームの設置に関する各種交渉や準備作業等を適切に把握し,双方の立場にとってそれぞれ重要となる動かし難い事実経過を抽出,意義付けした上で, さらに当事者が先鋭に争っている事実経過についても,その認定判断を避けずに真撃に検討を深めることで,事案を解明し,要証事実の認定についての説得的な論述ができるかを確認しようとするものである。
   起案の講評では,起案1のそれと同様に,双方向・多方向の指導方法を取り入れるとともに,班別討議を行わせるなどして,修習生に活発に意見を述べさせながら,結論に至る理由やプロセスを考えさせることに重点を置いた指導を行った。
3 演習(争点整理)
(1) 総説 
   新第65期集合修習から新しく設けられたカリキュラムである。実践的な争点整理は,訴訟の進行に応じて変動する主張や証拠に即してなされるべきものであり, 本演習は,修習生に対してこのような争点整理の動的な部分を体験させることを趣旨とするものである。本演習では,暇庇担保責任が問題となる建築訴訟を取り上げた。まず,第1回口頭弁論期日終了後,弁論準備手続期日が指定され,双方から準備書面が提出された時点の記録(第1分冊)を配布して,事情も含めた事実や法的に不明確な主張を検討させ,争いのある事実を抽出するとともに,法的に構成し得ない主張や要件事実が不足する主張などを整理し,更にその時点の証拠から得られる暫定的な心証をも手がかりにして,今後の争点整理の方向性や立証の見通しを考えさせた。これらの点についての講評後,更に,第2回弁論準備手続期日が終了した段階の記録(第2分冊)を配布し,その段階での争点を検討させるとともに,提出されている主張と証拠の状況を踏まえ,専門委員の活用や現地進行協議期日の活用をも視野に入れてその後の進行を検討させた。また,和解を勧試するとした場合の考慮要素等を問い,当該訴訟の背景事情等も踏まえた解決の方向性や内容を検討させることで,事案に応じた適切な紛争解決能力をかん養することも目的としたものである。
(2) 事案の概要 
   原告(X)が,被告(Y)に対し,Yから発注を受けたY宅のリフオーム工事及び耐震補強工事を完成させたとして,請負契約に基づき報酬の支払を請求した事案である。
   Yは,Xには基礎の耐震補強工事も依頼していたとして請負契約の内容を否認するとともに,Xの施工した工事には不具合・未施工があるから仕事は完成していないとしてこれを否認した。   また,抗弁として,①暇庇があるから請負契約を解除する,②蝦庇担保責任に基づく損害賠償請求権と報酬支払請求権とを相殺する,と主張した。
   このように,本件は,建築を巡る訴訟であり,専門的知見を要する訴訟類型であることから,請負契約や暇庇担保責任に関する正確な理解とともに,木造建築の構造や工法に関するー定程度の理解を要するものであり,争点整理を進めるに当たっては,専門的知見の利用も視野に入れて考えることが必要な内容となっている(ただし,必要な情報の多くは記録中に記載されている。)
(3) 演習内容等 
   演習内容は,訴訟の進行に応じて2段階に分かれる。まず,第1段階は,修習記録の第1分冊に基づいて,①本件訴訟の訴訟物を検討する,②請求原因を整理して,そのうち請負契約の内容に関して争いがあるのか否かを確定するとともに立証の見通しを検討し,仕事の完成の意味を考察することを通じて,同事実に争いがあるのか否かを確定する,③解除の主張が民法の要件を満たしているのかを検討し,本件訴訟において解除を主張することの意味を撤回の当否を含めて検討する,④相殺の抗弁について,Yの主張する暇庇の内容を確定し,そのうち争いのある事実を抽出するとともに,立証の見通し等を検討するというものである。次に,第2段階は,修習記録の第2分冊をも検討した上で,①これらの争点整理を経た結果,第2回弁論準備手続期日終了時点での争点は何かを確定する,②こうした争点整理の状況を踏まえ,専門的知見の利用等をも含めて今後の訴訟の進行について検討する,③本件訴訟について和解を勧試するとした場合に考慮すべき要素について検討するというものである。
   演習の講評は,要件事実や訴訟手続の細かい知識を解説するのではなく,これらの検討過程を通じて,修習生が争点整理のダイナミズムを感じ,理解することができるように,主張や立証の状況によって争点がどのように変化するかという争点整理のプロセスに重点を置いた指導を行い,また,争点整理に対する実務的な考え方や視点も織り交ぜながら実践的な指導を行った。このように,本カリキュラムは, 実務家としての基礎的かつ実践的な思考力,状況に応じた問題解決能力のかん養を目的とするものであり,法曹としての実際の活動との架橋を意識したものである。

第3 民事弁護

1 講義
(1) 講義1 (民事保全・民事執行)
ア 民事保全手続の概略(ビデオ教材視聴)
   具体的な民事事件を映像化したビデオ教材を視聴させることにより,民事保全・民事執行の各手続の具体的なイメージを持たせた。
   ビデオ教材は,顧間先の不動産会社が賃貸しているビルのー室を賃借人以外の者が占有していることが判明したため,同社からの依頼を受け,賃貸借契約を解除して建物の占有者に対し明渡しを請求した事案を用いて,占有移転禁止の仮処分の申立てから,建物明渡請求の本案訴訟,判決に基づく強制執行までの各手続の流れを映像化したものである。
イ 両手続の概略的説明及び事例に基づく研究解説等 
   民事保全・民事執行はいずれも極めて実践的な分野であり,その手続の習熟及びスキルアップは実務家として必要不可欠である。そこで,両手続を概説し,実務上よく見受けられる事例を用いて研究させた。なお,民事事件において,保全, 本案,執行は一連の手続の流れに位置づけられるものであるから,事例はいずれも民事保全及び民事執行を有機的に結びつけた設定とした。両手続を同一のカリキュラムにおいてー体的・統ー的に教えることで,学修の効果を上げることを狙いとしたものである。
   設問の内容は,①仮差押えの事案における事前調査方法, 目的物の選択及び執行方法,保全異議及び債権執行の方法並びに強制執行停止に関する実務的対応等, ②建物無断転貸のケースにつき建物の明渡しを求める場合の保全手段において選択すべき保全命令及びその執行方法等を問うものとし,それらの設問の解説講義を行うとともに, さらに参考問題として,③土地の所有権移転登記の抹消登記手続を求める場合において選択すべき保全命令及びその執行方法並びに起訴命令の申立て等の債務者側の対抗手段等を問う課題も与えた。
(2) 講義2(契約概説)
   弁護士の業務は,法廷活動に限られるものではなく,その極めて基本的かつ重要なものとして,契約書の作成,修正及び契約締結交渉に係る業務がある。契約書作成に当たっては,最終的には訴訟手続上の証拠として提出され得ることも想定しながら,紛争を未然に防止し,依頼者の利益を擁護することが重要である。
   本講義では,弁護士業務と契約案件の関わり,契約書作成に関する基礎的事項についての概説的講義を行った。その上で,本講義での学習を踏まえて行われる民事共通講義(契約書作成)の事例と課題を修習生に与え, これを検討させることを通じて,学修効果の定着を図った。
(3) 講義3 (弁護士の職責と倫理)
   法律実務家としての活動開始を目前にした修習生に,社会から負託された弁護士の職責,使命を再確認させ,弁護士活動における職務上の倫理の重要性を理解させることを目的とし,弁護士活動全般を題材として,教官から実務法曹としての心構えについて指導した。なお,職責・倫理問題にアプローチする基本的な視座は,法曹を志す者全体に共通するものという意識を持たせるよう留意した。

2 問題研究 
   問題研究(事案分析・準備書面)
(1) 実施内容 
   起案1, 2の実施に先立ち,事案の法的な分析,事実や証拠の把握,分析に関する能力のかん養を図るとともに,法律文書の作成に関する一般的な留意事項,訴訟手続における準備書面の果たす役割等についての理解を深め,さらに,説得的な法律文書を作成するために必要な技法と思考方法を体得させることを目的として,修習記録を用いた事案分析とその結果の起案及びその分析結果を踏まえた準備書面起案を題材に,問題研究,解説を行った。
(2) 事案の概要 
   依頼者は,プールバーの経営を目的として,仲介業者の仲介により,売主から本件土地を1, 100万円で購入するとともに,仲介業者に対して本件土地上の建物の建築を発注したところ,本件土地が市街化調整区域内にあり依頼者の意図していたプールバー施設の建築ができないことが判明した。このため依頼者が,売主に対して,支払済みの売買代金1, 100万円の返還を求めた事案である。
(3) 研究事項等 
ア 事案分析報告書 
   上記事案につき,弁護士と依頼者等とのやりとりの状況と,その過程で弁護士が取得した資料で構成される記録を修習生に与え,提訴を依頼された弁護士という立場で,民事訴訟を提起する場合の法律構成や見通し等について分析した報告書を起案させ,その解説を行った。
   分析事項は,請求をするに当たって考えられる法律構成及び訴状において主張することが妥当と考えられる法律構成の選択とその理由,訴訟で想定される事実認定上の争点とそれが争点となる理由,争点に関する立証の見通しとその理由, 必要な立証活動等である。当該事案の事実関係と要件事実を念頭においた法律構成を意識しながら,確認すべき事実や証拠の過不足をチェックし,追加の事情聴取や調査・証拠収集を行い,依頼者のニーズと事案の解決に適した具体的な紛争解決手段の選択・分析を行うことは弁護士業務の基本である。具体的事案を通して,上記のような弁護士として必要不可欠なスキルのかん養を目的としたものである。
イ 準備書面 
   上記アの記録に加えて,訴状,答弁書等を含む記録を追加して修習生に与え, 答弁書に対する反論を内容とする原告準備書面を検討させるとともに,訴状,答弁書及び準備書面の作成技法や説得的な法律文書の作成方法についての研究を行った。
 
3 起案 
(1) 起案1
ア 事案の概要 
   建設機械商社である原告が,建設業者である訴外会社から,同社が所有する本件機械をいったん買い取った上で,所有権を留保して同社に対し割賦販売して使用させていたところ,訴外会社が原告への割賦金の支払を怠ったことから,原告が,本件機械を占有する被告に対し,所有権に基づき本件機械の引渡しを求めた。 これに対して,被告は,本件機械を訴外会社から買い受けて即時取得した旨主張して争っている事案である。
イ 起案事項等 
(ア) (最終)準備書面 
   具体的事案を通して,法的問題の解決に必要な技法や思考方法,説得的な法律文書の作成方法といった法律家に共通して必要となるスキルを体得させることを目的として,原告最終準備書面を起案させた。
   中心的な論点は被告の過失の有無であり,適切な事実を抽出し,証拠に基づいて説得的な論証をすることを求めた。
(イ) 小問
   上記事案に関連して,債権者(原告)代理人として申し立てるべき民事保全手続,保全命令の執行方法等や,証拠説明書に記載すべき立証趣旨等を間う小問を出題し,保全手続の重要性,証拠説明書の意義やその記載内容と要証事実との関係に触れることの重要性について意識させた。
(2) 起案2
ア 事案の概要 
   被告は,原告との間で,原告所有建物の一部を喫茶店として賃借し,併せて同建物敷地の隣接地を駐車場として使用貸借する旨の契約を締結した。その後,被告は,建物部分を借り増し,喫茶店と炉端焼店に改装し,さらには,全面的に炉端焼店に改装して,営業を行った。そこで,原告は,建物部分について用法遵守義務違反・無断増改築を理由とする賃貸借契約解除による明渡しを,駐車場部分について使用貸借契約の期間満了による明渡しを,それぞれ求めて訴えを提起した。
イ 起案事項等 
(ア) 事案分析報告書 
   上記事案につき,提訴後に被告から相談を受けた弁護士の立場で,訴訟の展開についてー定の見通しを立てることを目的として,予想される争点及びその立証の見込み等について事案分析を行わせ,その結果を起案させた。分析事項は,本件訴訟の訴訟物,原告の請求に対する反論として考えられる法律構成, 各法律主張について想定される事実認定上の争点,各争点に関する立証の見通し及びその理由等である。
   当該事案の事実関係と要件事実を念頭においた法律構成を意識しながら,確認すべき事実や証拠の過不足をチェックし,追加の事情聴取や調査・証拠収集を行い,紛争解決に向けての見通しを立てることは,弁護士業務の基本である。
   本起案は, このような弁護士として必要不可欠な能カを,具体的事案を通して養うことを目的としたものである。
(イ) 答弁書 
   事案の法的分析を踏まえて,答弁書を起案させた。弁護士は,依頼者からの事情聴取,調査・証拠収集活動及び法的分析を経て,最終的には,検討の結果を裁判所その他の第三者へ示すために,書面化することが求められる。本起案では,上記(ア)の事案分析を前提として,裁判官を説得するに足る表現能力の修得を目指して,指導を行った。
(ウ) 小問 
   上記事案に関連して,相手方代理人が作成した和解条項案について,訴訟代理人として,合意された和解条件の骨子や自らの法的主張等を考慮しつつ,より依頼者に有利な条項となるよう修正等を加えるという実務で一般的に行われている手法を実際に体験させる小問を出題した。条項の形式面よりもその内容面を重視する観点から,修正理由を記載させることとした。
 
4 演習
(1) 演習1 (法律相談)
ア 実施の概要 
   本演習は,二つの事例を用いて,修習生に法律相談担当弁護士役として実際に法律相談をロール・プレイさせるとともに,その振り返りや講評を行うものである。相談者役には,現職弁護士が当たった。
イ 演習の目的 
   法律相談は,受任に先立つ行為として,受任の可否,事案解決の見込み,処理方針などを判断し,かつ,依頼者に対して,報酬等の説明,事案処理方針の説明, 弁護士委任契約の締結などを行う重要なステージである。また,依頼者から適切に事案の本質を聴き出し,かつ,依頼者との信頼関係を酸成する重要な場でもある。
   本演習は,法律相談の重要性に鑑み,効率的な法律相談及びその機能を理解させることを狙いとするものである。また,同時に,実務では,与えられた課題に対して正しい答えを出すこと以上に,依頼者のために課題を見出し, 自ら主体的に最善の解決方法を探索し,実践することが肝要であるという,弁護士としての考え方を,演習の形式を使って理解させることをも狙いとしている。
ウ 事案の概要 
(ア) ケース1
   事案は,マンションの一室を事務所として賃借して使用している相談者が, 賃貸人から,用法遵守義務違反を理由に事務所としての使用中止を警告する旨の内容証明郵便を受け取り,今後の対応について相談に来たというものである。 弁護士会の法律相談場面を想定しており,修習生には,法律相談カードによって相談のごく概要のみしか事前に知らせていない。ケース1は,インタビュー イングを中心として, 当該法律相談で重要な情報は何か,いかに要領よく事実関係を把握するか,そのために相談者がいかに話しやすい雰囲気を作るべきか, 相談者に対する応答は適切かどうかなどを,相談担当弁護士役の立場に立って考えることに主眼を置くものである。
(イ) ケース2
   事案は,顧問先の織物会社が卸間屋に反物を売却したところ,卸問屋が手形不渡りを出しそうであるとの情報が流れたため,代金回収や反物の取り戻し等の対応を相談に来たというものである。顧問会社の具体的な紛争処理の相談を想定しており,修習生には,あらかじめ紛争の具体的な概要や関係資料を示している。ケース2は,事前に示されている資料や情報に基づいて,的確なコンサルティングを行って事件処置方針を立てることに重点を置くものである。
エ 実施内容 
   ケースごとに5人の修習生が相談担当弁護士役となり,相談者から30分程度の法律相談ロール・プレイングを行い,また,相談担当弁護士役とは別に,弁護士側と相談者側にそれぞれ4名の観察者役を指名し,弁護士あるいは相談者になったつもりで法律相談を主体的に観察させた。ロール・プレイング後に,教官及び相談者役からの講評,及び観察者役の振り返りによる検討を行い,法律相談や弁護士の助言に関する技法の修得を図った。
(2) 演習2(立証)
ア 総説 
   実務においては,事実は所与のものではなく,事実自体が不明確であることが大半である。事実を踏まえない法律論は無意味であり,弁護士はまず事実を把握することから入らなければならない。演習では,民事弁護実務において極めて重要な意義を有する立証活動について,総論として,裁判外及び裁判上の証拠収集活動の方法・手続を確認した上で,各論として,具体的な事例を題材に,弁護士が依頼者から相談を受け,事案を把握し,対応を検討するに際し,いかなる調査・証拠収集活動を行うのか,収集した内容をどのように証拠化していくのか等の事項を,双方向の演習を通じて,修習生に修得させることを目的として指導を行った。
イ 事案の概要
   ー棟マンションの所有者兼賃貸人であるXは,当該マンションの居室の賃借人であるYが,居住用と定める契約上の使用目的に反して,同居室を事務所として使用していることを知った。Xから依頼を受けたA弁護士がYに対し事務所使用を止めるよう内容証明郵便を送付したところ,Yの依頼を受けたB弁護士から反論の内容証明郵便が送付された。
   当該居室は,その後,Y不在中の出火により, ほぼ全焼した。出火原因について,XはYが当該居室の室内を改造して取り付けた照明設備が原因と主張しており,他方,Yは賃借する以前から当該居室に備え付けられていた空調機が原因と主張している。
ウ 実施内容 
   事案の概要(出火の前と後のA,B両弁護士による事情聴取の形式によるもの),賃貸借契約書,図面等を資料として事前配布し,当該事例に関して,当該居室の事務所使用につき賃貸人Xの承諾があったという事実を立証するためにB弁護士が行うべき証拠収集活動や,相手方Yに対して損害賠償請求をするためにA弁護士が行うぺき立証活動等についてあらかじめ検討させた上,演習実施日に討論及び解説を行った。

第4 民事共通

1 民事共通演習1から4まで
(1) 総説 
ア 趣旨 
   裁判官,原告代理人又は被告代理人の各役割を修習生自身に模擬的に行わせ, 証人役からの事情聴取,法律構成の再構築及び立証方針の策定等を経て,争点及び証拠を整理した上で人証の集中的な証拠調べを行うという訴訟運営を実施させることによって,ーつの事件について,事情聴取から判決に至るプロセスを実践的に理解させ,法曹として必要な事実調査能カ,法的分析能力,事実認定能力, 説得的な表現能力等を総合的に向上させることを目標とした。
   この演習では,修習生に対し,あえて法律構成や立証が不十分な主張書面,言い分及び各当事者の手持ち書証を与えることにより,生の言い分から動的に法律構成を組み立てさせ,主体的に事案を解決するプロセスを経験させ,実務的な活動の在り方を修得させることを狙いとしている。
イ 事案の概要 
   印刷会社である原告は,被告から,被告が経営するカラオケボックス店で使用する会員カードの製作依頼を受け, 20店舗分の会員カード計8万枚の表面を印刷した上,新規出店の都度4, 000枚ずつ裏面に必要な店舗情報を印刷し,被告に対して納品していた。被告は, 3店舗分の計1万2, 000枚のカードを原告から受領し,これに相当する代金を支払ったものの,その後事業計画が頓挫したことをきっかけに,残りのカードを原告から受領せず,また,これに相当する代金の支払を拒んだため,原告は,被告に対して,表面印刷済みの残カード全部につき代金等の支払を求めた。
(2) 民事共通演習1 (口頭弁論)
ア 課題及び実演等 
   修習生全員に裁判官,原告代理人,被告代理人又は各証人の役割を与え,演習1に先立つ演習1準備において,各グループ(裁判官役,各代理人役ごとに3人から5人の複数のグループを組成)に法律構成等を検討させ,かつ,各代理人グループにはそれぞれ共同で証人役からの事情聴取を体験させた上,各グループに合議の結果に基づく検討メモ及び既提出書証に関する証拠説明書を作成,提出させた。その上で,裁判官役,原告代理人役又は被告代理人役ごとに各グループを合体してそれぞれ大合議又は作戦会議での検討を経た上,第1回口頭弁論期日において,三者それぞれの担当グループがロール・プレイングの方法により,訴訟物,主要な争点及び立証方針の確認等を行った。
イ 講評 
   民事裁判教官からは訴状・答弁書の審査等,第1回口頭弁論期日前の準備について,民事弁護教官からは事情聴取等の訴訟活動に向けた準備活動等について, それぞれ問題点を指摘するなどの講評を行った。
(3) 民事共通演習2(弁論準備手続期日)
ア 趣旨 
   演習2に先立ち,代理人役の担当グループに,第1回口頭弁論期日の結果を踏まえた準備書面を作成させ,併せて手持ち書証の中から追加提出すべきものを選択の上,証拠説明書とともに提出させた。演習2では,弁論準備手続期日において,三者それぞれの担当グループがロール・プレイングの方法による主張及び証拠の整理を行い,主要事実レベルでの争点を確定するとともに,更に重要な間接事実レベルでの争点についても議論し,また,書証の認否,人証の採否及び人証調べに関する協議等を行った。
イ 講評 
   民事裁判教官からは,争点整理全般について講評を行い,民事弁護教官からは,主に次に予定する尋問についての総論的な講義を行った。
(4) 民事共通演習3(交互尋問)
ア 趣旨 
   演習2に引き続き,証人尋問を実施し,代理人としての立証活動及び尋間の事前準備についての理解を深めさせるとともに,尋問技術の修得を図ることを目指した。あわせて,裁判官役の修習生には訴訟指揮を行わせ,交互尋問の進め方,補充尋問,異議の処理,事実認定に関する心証形成の在り方等についても体得させることによって,適切な尋問期日の進行(訴訟運営)や事実認定の在り方について研究させた。
イ 事前準備等 
   代理人役の担当グループに,各証人の陳述書,尋問事項書及び尋間で明らかにするべき事項のポイントをまとめた尋問ポイントメモをそれぞれ事前提出させた。
ウ 交互尋問等 
   弁論準備手続の結果陳述を冒頭に行った上,各証人の尋問を実施した。
エ 講評等 
   修習生自身に尋問や訴訟指揮を模擬的に体験させることによって,尋問技術や訴訟指揮について,実際に行うことの難しさを経験させるとともに,尋問に至るまでの事情聴取や主張立証の組立ての重要性を確認させた。また,証人役の修習生からも,実際に尋間を受けた感想を発表させることによって,尋問する側からは気付きにくい視点を提供した。
(ア) 外部講師(裁判所職員総合研修所教官)による講評 
   尋問を傍聴した裁判所職員総合研修所教官から,裁判所書記官の観点からの尋間の問題点等を指摘してもらうなどして,多面的かつ実践的な指導を行った。
(イ) 教官による講評 
   民事裁判教官及び民事弁護教官から,各場面での尋問の在り方や,あるぺき訴訟指揮について指導を行った。
(ウ) 事実認定討論 
   尋問を踏まえて,事実認定についてグループ討論を行わせ,裁判官役の各グループからは理由付きの判決メモを,代理人役の各グループからも簡易なメモを,それぞれ作成・提出させた。
(5) 民事共通演習4 (判決)
判決 
   民事共通演習3における尋問等の証拠調べの結果を踏まえて,全裁判官チームによる判決言渡しを行った。
イ 教官による講評 
   民事裁判教官からは主に事実認定と心証形成の在り方などについて,民事弁護教官からは準備書面,陳述書及び尋問などについて,それぞれ総評的な講評を行った。
2 民事共通問題研究(和解)
   実務では,訴訟上・訴訟外の和解により紛争が解決する場合が多い。そこで,民事共通演習と同一の記録を用いて,全修習生に裁判官,原告代理人及び被告代理人の各役割を割り振り,訴訟上の和解を素材にして,和解交渉から和解成立(又は不成立) に至るプロセスをロール・プレイングの方法で体験させた。演習後は,民事裁判教官及び民事弁護教官から,それぞれ,和解交渉に臨むに当たっての視点やポイントを講評するとともに,民事弁護教官から和解条項作成に当たって配慮を要する事項等について講義を行い,理解を深めさせた。
3 民事共通講義(契約書作成)
   本講義では,民事弁護講義2(契約概説)の学習を前提として,事前に,修習生に, 依頼者から検討を依頼された契約書案と法律相談の概要を配布し,契約書案に含まれる問題点の検討,修正案の作成,依頼者から聴取すべき点の検討,相手方の反応を想定した交渉戦略の検討を行わせた。その上で,修習生の事前検討の結果を前提に,各契約条項の修正案について講義することを通して,契約実務の基本的な知識と考え方を教示した。具体的な契約書案と修習生の事前検討を踏まえた講義を行うことにより,契約書のリーガルチェックにおいて考慮すべき事項や考え方をできる限り実践的に体得させることに意を用いた。

第5 刑事裁判

1 講義
(1) 講義1
   演習事例(殺人未遂等被告事件)を題材として,(1)公訴提起直後の段階,(2)検察官から証明予定事実記載書の提出及び証拠請求がなされた段階,(3)弁護人から予定主張記載書面の提出及び証拠意見の表明がなされた段階等において,裁判所が,どのように争点及び証拠の整理(以下「争点整理等」という。)を進めるべきか,当事者として争点整理等に向けてどのように準備を進めるべきかを内容とする演習間題を検討させるとともに,争点整理等の目的や,争点整理等において行われるべき事項について教官から解説を行った。
(2) 講義2
   最終講義として,刑事裁判科目のまとめをしたほか,法曹となるに当たり必要な心構え等について,教官から,その経験等に基づき説明した。
 
2 起案
(1) 総説 
   刑事裁判科目の2回の起案は,それぞれーつの修習記録に基づき,特定の争点について,争点整理等の在り方や,その結果等をも踏まえた事実認定の在り方を検討させるとともに,当該事案の進展に応じて生じるいくつかの問題について検討を求めるものである。なお,修習記録は,実在した事件の中から修習に適したものを選別し,これを素材に適宜改変を施して作成している。
   公判前整理手続の段階における争点整理等に関する設問は, 当事者の主張の内容等を踏まえ,その主張する証拠の構造や,ポイントの意味合い,重みなどを考えさせ,公判審理を見通す動態的思考力を問うことに主眼を置くものである。また,公判審理の段階における事実認定に関する設問においては,当事者の主張の内容や争点整理の結果等をも踏まえつつ,争点となった事実の存否について,各自の結論に至った判断過程を論理的に説明することを求めている。 さらに,手続の各段階で生起する問題に関する設問では,争点整理の進展や結果を踏まえた解答が要求されるなど,実体面と手続面を有機的に連関して考える能力も問われている。
   なお,いずれの設問についても,書式,形式等を要求するものではないし,単なる知識を間うものでもなく,新司法修習における指導理念に対応した,法曹としての活動に共通して必要となる汎用性のある基礎的な能力を修得させることに重点を置いて出題している。
(2) 起案1
事案の概要 
   被告人が故意を否認している偽造通貨行使の事案である。
起案事項
(ア) 公判前整理段階で検討すべき事項に関する起案 
   検察官から提出された証明予定事実記載書を踏まえ,裁判所として,要証事実(偽造通貨であることの認識)との関係で,検察官に対しどのような求釈明を行うべきかを間う出題をした。また,予定主張を踏まえ,弁護人として,検察官にどのような主張関連証拠の開示請求を行うべきか,検討を求めた。さらに,公判で取り調べられた証拠のうち,結果として,争点判断の上で必要性が乏しかったと考えられるものや,的確な心証形成の観点からその内容が適切でなかったと考えられるものはないかを問い,公判前整理手続における争点整理等の在り方を翻って考えさせる出題をした。
(イ) 公判審理段階で検討すべき事項に関する起案 
   重要証人に対する検察官の主尋問を取り上げ,このうち,弁護人として異議を申し立てるべき尋問はないか,検討を求めた。また,最終的な事実認定として,被告人に偽造通貨行使罪が成立するか否かにつき,結論を示させた上,その結論に至る判断過程を証拠に基づき説明するよう求めた。
ウ 講評 
   各設問を通じ,最終的な事実認定を見据え,手続の進行段階に応じて,要証事実との関係を有機的に考えさせ,手続の連続性を意識した講評を行った。取り分け,求釈明事項に関する設問との関係では,争点整理の在り方や裁判所・当事者の役割についての理解を深めさせることにも留意した。事実認定に関する設間では,偽造通貨行使罪が成立するためには,行使時だけでなく収得時における偽造の認識が必要であるという実体法の理解を前提として,要証事実との関係で意味のある事実を指摘し,それらの意味合いを考える際には,上記のうちどの時点の認識と結びつくのかを意識した検討が必要であることなどを説明した。取り調べられた証拠に関する設間では,公判審理の結果に現れた問題点を考えさせることにより,公判前整理手続の段階における争点整理等の重要性について,理解を深めさせることに留意した。
(3) 起案2
事案の概要 
   被告人が, 自己が犯人であることを争っている,同一市内2か所における建造物侵入,窃盗の事案である。
起案事項 
(ア) 公判前整理段階で検討すべき事項に関する起案 
   検察官から提出された証明予定事実記載書を踏まえ,裁判所として,その書面に記載された事実が要証事実(被告人と犯人との同一性) との関係でどのような意味を持つのかを視野に入れつつ,検察官に対しどのような求釈明を行うべきかを問う出題をした。
   また,公判前整理手続終結後における弁護人からの保釈請求について,整理された争点との関係で,罪証隠滅のおそれがどの程度具体的に認められるのかなどの点に留意しながら,その許否を検討させた。
(イ) 公判審理段階で検討すべき事項に関する起案1
   証人尋問においてその証人を供述者とする供述調書を提示することについて, 争点との関係や具体的な局面に留意しつつ,その可否を検討させた。これは, 尋問に関する刑事訴訟規則上の基本的な準則を整理させるとともに,証人尋問の段階においても争点整理の結果を踏まえてこれを行う必要があることについて,意識の喚起を図る出題である。
   また,最終的な事実認定として,被告人と犯人とが同一であるか否かにつき, 結論を示させた上,その結論に至る判断過程を証拠に基づいて説明するよう求めた。この検討に際しては,反対仮説を意識した上での間接事実の積重ねによる評価を行うことが不可欠であるところ, これを上記の争点整理と連関させることにより,争点整理を踏まえた事実認定を行うことの重要性を自ずと体感できる出題となっている。
ウ 講評 
   起案1と同様の方法で実施した。
   各設問を通じ,最終的な事実認定を見据え,手続の各段階に応じて,要証事実との関係を有機的に考えさせ,手続の連続性を意識した講評を行った。取り分け,求釈明事項に関する設題との関係では,争点整理の在り方や裁判所・当事者の役割についての理解を深めさせることにも留意した。
   事実認定に関する設問との関係では,要証事実の証明が合理的な疑いを超えてなされているかどうかを検討するに当たり,弁護人の主張を踏まえ,証拠から意味のある個々の間接事実を的確に認定した上,各間接事実相互の関係を意識し,その意味合いや重み(反対仮説が成り立ち得る可能性の程度)等に留意しながら, これらを総合的に判断することが必要であること,本件においては,公訴事実が複数あるものの,それらの各犯行が一連のものであるとの特質があることを踏まえ,そうした事案の個性を的確に把握した検討が求められることなどについて,理解が深まるよう努めた。
 
3 問題研究1及び2
(1) 指導目標 
   間接事実による事実認定が問題となる事案においては,その立証上,科学的証拠が重要な位置を占めるものも少なくない。このような事案で適切な事実認定を行うためには,当該証拠が依拠する科学的知見の特質について基本的視点を有していることのほか,当該科学的証拠により導き出される事実が争点判断に対して持つ意味とその限界を解明することが不可欠である。
   また,ー般に,科学的証拠は,鑑定結果として示されることが多いことから,その証明力や証拠調べの方法等について的確な問題意識を持つことも有益である。そこで,問題研究1では,修習生に対し, 具体的事例に基づいて問題を提起し,科学的証拠を理解する上で持つべき基本的視点を修得させ,要証事実との関係で科学的証拠が持つ意味とその限界を解明することの重要性を理解させるとともに,公判前整理手続の場面における争点整理等に際し,鑑定を巡って留意しておくべき事項等について,理解を深めさせることを目標とした。
   また,刑事裁判において,争点整理等を適正かつ迅速に進行させるためには,その前提として,早期の段階から弁護人による充実した弁護活動が行われる必要があることはいうまでもない。そこで,問題研究2では,充実した弁護活動を行う際の重要な前提となる証拠開示制度に関し,具体的事例に基づく問題を提起し,実務上の主要な論点を理解させるとともに,いわゆる任意開示の運用を巡る現状やその意義についても理解を深めさせることに留意した。
(2) 実施内容 
   問題研究1では,いずれも犯人性が争われているが,DNA型鑑定の持ち得る意味合いが異なる2つの強盗殺人等の事例を取り上げ,それぞれ事実の概要に関する資料を配布し,研究を行った。
   具体的には,各事例で認められる科学的証拠に依拠した間接事実を中心に,それが要証事実を推認させる理由と推認を妨げる事情,更には鑑定人の証人尋問に備えた実務上の工夫や留意事項等について問題を提起し,グループ別討論を実施した上で,クラス全体による討論を行った。研究討論の際には,上記指導目標を意識し, 科学的証拠により導かれた事実と要証事実との結び付き如何を慎重に検討することの重要性について,修習生の理解が深まるよう配慮した。また,その冒頭において, DNA型鑑定を題材に,科学的証拠による事実認定に際し問題となり得るー般的な注意点等について,説明を加えた。
   また,問題研究2の証拠開示に関しては,従来から,刑事共通演習(後記Ⅳ1) との連動性を意識し, これと共通する教材を使用するなどの工夫を講じてきたところであるが, より実質的に刑事共通演習との一体性を高め,実施時期の面でもこれと連続した一連のカリキュラムと位置付けて,その実施方法を改めた。これにより,証拠開示と争点整理との関連性についてより明確な意識付けを行って,充実した争点整理を迅速に行うという観点から,証拠開示にどのような姿勢で臨むべきかをー 層意識的に考えさせるようにし,証拠開示を巡る多角的な理解が深まるよう留意した。
   具体的には,強盗致傷被告事件の刑事争点整理教材を題材として強盗致傷の共同正犯の事例を取り上げ,各修習生を裁判官役,検察官役,弁護人役のそれぞれのグループに分けた上,役柄に応じて教材の配布範囲を変えた。三者による打合せを行った上,検察官役が証明予定事実記載書を作成,提出した後,弁護人役は,類型証拠開示請求をすべき事項を,検察官役は類型証拠開示請求を受けて対処すべき事項を,裁判官役は類型証拠開示に関する裁定請求が出た場合の対応を,それぞれ検討することとし,これらの類型証拠開示等を踏まえながら更に争点整理手続を進行させることとした。並行して,実務におけるいわゆる任意開示の運用を踏まえ,検察官役が,任意開示すべき証拠を随時開示することとして,手続進行に向けた法曹三者の相互理解を醸成するよう努めた。
   その上で,刑事共通演習1の時間に全体討論及び講評を行い,上記の過程で課題として浮かび上がった事項について,実務における現状や今後の在るべき方向性等について検討を深めさせ,また,検察教官及び刑事弁護教官の参加を得て,それぞれの立場における留意点等についても,各教官から適宜助言を行った。

第6 検察

1 講義
(1) 講義1 (2コマ連続)
ア 集合修習のガイダンス等
   集合修習の冒頭に,集合修習における検察科目のカリキュラムの概要及び習得目標を説明した。
イ 総括的復習 
   これまで行ってきた実務修習の総まとめとして,検察官が捜査結果に基づいて当該事件の終局処分を決定する際の検討事項や思考過程に関する総括的な復習を行い,その中で,①証拠による事実認定の意義,②間接事実を用いた事実認定の手法,③客観的証拠を重視した犯人性推認の考え方,④犯人目撃識別供述,共犯者供述及び被疑者供述等の供述証拠の信用性判断の方法,⑤訴因構成の考え方,⑥個々の犯罪構成要件の意義を正確に把握して, これに該当し得る具体的な事実関係を証拠によって認定した上,その法的評価(要件該当性)を的確に検討するなど犯罪の成否に関する検討手法等について,改めて説明した。
   さらに, こうした検討結果を正しく文章表現するという観点から,公訴事実等の法的文章につき修習生が陥りがちな用語の誤解,誤用などに言及しながら,改めて指導した。
(2) 講義2
   集合修習における最終講義として,集合修習における検察科目の総まとめを行い,さらに,法曹となるに当たっての心構え等について講義を行った。
2 起案
(1) 検察起案の概要 
   検察科目の起案は,修習記録を検討させ,検察官として適切な終局処分をするものとして,被疑者につき起訴又は不起訴の処分を決定させ,起訴状に記載すべき公訴事実等又は不起訴裁定書に記載すべき事実等を起案させた上,当該処分に至る思考過程を記述させるものである。主問として,犯人性及び犯罪の成否等の両方を記述させるもの,あるいは,当該処分に至る思考過程のうち犯人性に係る部分又は犯罪の成否等に係る部分のいずれかについて記述させるものがあり, さらに,小間として,①重要人物の供述内容の信用性検討に関する問題,②刑事手続に関する問題について解答を求めるものである。
   主問及び小問いずれもが,司法修習における指導理念に対応し,法曹としての汎用性のある基礎的な能力を習得きせることに重点を置いた出題であり,刑事手続に関する問題についても,単に法的知識を間うだけではなく,修習記録中に現れた具体的な事実関係を正確に把握しなければ正解に達し得ない問題を出題するように配慮した。
(2) 起案1
ア 事案の概要
   本事件は,勤務先の同僚である被疑者両名が共謀の上,見知らぬ男性被害者に因縁を付け,暴行脅迫を加えて現金等を強取し,その際被害者に傷害を負わせたという強盗致傷事案であり,被疑者2名のうち,1名が実行行為を行い,残る1名は,実行行為を行わず,逃走車両の運転手役を務めたという事案である。
イ 起案事項等
(ア) 主問 
   修習記録を検討し,検察官として適切と考える終局処分の起案をさせるとともに,当該処分に至る思考過程のうち,実行行為者の犯人性,被疑者両名の犯罪の成否等について記述させた。
(イ) 小問 
   重要人物の供述内容の信用性検討に関する問題として,被疑者両名の共謀場面を見聞きした被疑者両名の同僚の供述内容の信用性を検討・記述させた。
   刑事手続に関する問題として,前記同僚が法廷での証言に遺巡しているという設定の下,刑事訴訟法第227条のいわゆる第ー回公判期日前の証人尋問に関する問題を出題し,検討・記述させた。
ウ 講評 
   起案実施日の約2週間後の講評前までに,添削・採点を終えた起案を修習生に返却して起案内容を確認させ,記憶を鮮明にさせた上,講評においては,修習生の理解が不十分であった部分を中心としつつ,主問のうち,犯人性の検討に係る部分に関しては,①犯人性を推認させる間接事実,②当該間接事実の認定根拠である証拠や再間接事実の検討,③当該間接事実が犯人性を推認させる理由や推認力の程度,④共犯者及び被疑者の各供述の信用性について,犯罪の成否に係る部分に関しては,構成要件該当性(客観面・主観面),共謀共同正犯の成否等について,それぞれ具体的かつ詳細に解説・教示し,小問についても,具体的な事実関係に即して解説・教示して,各修習生の理解を深めることに努めた。
(3) 起案2
ア 事案の概要 
   本事件は,不動産業を営む会社の従業員である被疑者が,公文書たる裁判所書記官作成名義の債権差押命令正本を偽造した上,これを被害者宛に郵送して行使するとともに,支払義務がある旨同人を誤信させ,情を知らない交際相手をして被害者から現金を受領させて詐取したという有印公文書偽造・同行使・詐欺の事案である。
イ 起案事項等
(ア) 主問 
   修習記録を検討し,検察官として適切と考える終局処分の起案をさせるとともに,当該処分に至る思考過程のうち,犯人性を除く犯罪の成否等について記述させた。
(イ) 小問 
   重要人物の供述内容の信用性検討に関する問題として,前記交際相手の供述内容の信用性を検討・記述させた。
   刑事手続に関する問題として,被疑者方を捜索した際,覚醒剤と思料されるものを偶然に発見したとの設定の下, これを押収する適切な方法に関する問題を出題し,検討・記述させた。
ウ 講評 
   起案1と同様,起案実施日の約2週間後の講評前までに,添削・採点を終えた起案を修習生に返却して起案内容を確認させ,記憶を鮮明にさせた上,講評においては,修習生の理解が不十分であった部分を中心としつつ,主問及び小問について,詳細に解説・教示し,各修習生の理解を深めることに努めた。
3 問題研究(被害者保護)
   指導目標及び実施内容等 
   修習生に対し,犯罪被害者保護に関する問題に直面した場合に自ら調査し,解決策を考えることができるようにするための手掛かりを与えることを指導目標とした。
   具体的には,深夜,帰宅途中の女性が人通りの少ない路上で強制わいせつの被害に遭った事例を事前に修習生に呈示し,事件送致を受けた検察官が捜査を行う上で被害者に配慮すべき事項,公判請求後の被害者の証人尋間に当たり配慮すべき事項等についての設問を通じ,関係する法条を確認しながら,具体的事例に則して解説した。
   また,本問題研究では,刑事裁判教官及び刑事弁護教官も各々の立場から,被害者保護制度の基本的事項,問題に直面した場合の心構え・注意事項について説明するなどし,修習生の理解を深めさせることに努めた。

第7 刑事弁護

1 講義
(1) 講義1
ア 集合修習のガイダンス 
   集合修習の冒頭に,刑事弁護科目の各カリキュラムが刑事弁護活動のどの場面に対応しているかを示しながら,カリキュラムの概要及び全体像について説明を行った。また,起案に当たっての注意事項などを説明した。
イ 起訴前弁護 
   起訴前における接見に関する講義を行い,特に初回接見の重要性を理解させるとともに,接見時の具体的な手法や注意点などを説明し,捜査段階における弁護活動の基本的手法を確認した。
(2) 講義2
   最終講義として,集合修習における刑事弁護科目のまとめや実務家になるに当たっての心構えなどについて講義を行った。
   また,カリキュラムにおいて独立して扱えなかった一審判決後の注意点,控訴審での弁護活動について,強盗罪の共同正犯として第一審で実刑判決を受けた被告人が控訴した事案を題材に講義を行った。

2 起案
(1) 総説
   2回の起案を実施し,講評を行った。
   使用した修習記録は,実在した無罪事件や,いわゆる認定落ち事件の中から修習に適したものを選別して作成したものである。
   修習記録に基づいて,起案1においては主要な論点について公判前整理手続終了直前段階にあるとの設定のもと,検察官証明予定事実記載書及び請求証拠,証拠等関係カードのほかに,開示済証拠と被告人の言い分を起案資料として示し,同段階において作成するべき想定弁論の案を起案させ,起案2においては,尋問まで終了した事件記録を題材に弁論要旨全体の起案を行わせた。
   刑事弁護科目における起案及び講評は,弁護人の立場から,弁護方針に基づいて, どのように証拠を評価し,説得のための論証を行うかを考えさせるとともに,訴訟手続や証拠法に関する実務の理解を一層深めさせることを主たる目的としたものである。
(2) 起案1
ア 事案の概要 
   本事案は,被告人が友人と共謀して,路上で被害者に暴行を振るうとともに, その直後に被害者から金品を強取したとして公訴提起されたものであるが,被告人は,暴行の事実は認めるものの,共謀及び強取の事実はないとして否認しており,共犯者とされる者らの供述の信用性及び自白の任意性・信用性が主たる論点となった事案である。 
イ 起案事項 
   弁護人として,公判前整理手続が終了する直前の段階において作成すべき想定弁論の案を起案させた。
ウ 講評 
   まず事案全体を分析し,争点を把握させた。本設問では,実行行為の有無,共謀の有無が主な争点となることから,主にこの争点について検察官の主張・立証構造を解明し,主要な証拠である共犯者とされる者の供述の信用性及び自白の弾劾等について解説した。
   また,本設問においては,従来実施していた終結記録をもとにした弁論ではなく, 「想定」弁論を作成することの必要性について解説をした。即ち公判前整理手続に付された事件においては,検察官証明予定事実を出発点に,争点が整理されること,開示記録を検討して公判での弁護方針を策定することができるようになること,一方で,公判前整理手続が終了した後には主張や立証が制限されることから,公判前整理手続終了前に,弁護方針即ち最終弁論を想定した準備を終えておかなければならないことを理解させるとともに,検察官証明予定事実に対応した主張や弁護側立証を準備する際の思考方法,開示記録を利用した証人尋間の準備の方法,弁護側の立証などについて解説した。
   また,本設問においては,想定弁論作成の目的や,その方法について解説した。 さらに,反対尋問の目的やその手法についても説明を行った。
(3) 起案2
ア 事案の概要 
   本事案は,被告人が, ラーメン店内において,他の客に対して灰皿で殴るという暴行を加え,傷害を負わせたという傷害の罪で公訴提起されたものであるカも被告人は,灰皿で殴るという暴行の態様を否認するとともに,正当防衛の成立を主張しており,被害者供述の信用性及び自白の信用性が主な論点とされた事案である。
イ 起案事項 
   弁護人として,弁論要旨に記載すべき事項を起案させた。
ウ 講評 
   起案1と同様に,事案全体を分析して,主な争点を把握させた。その上で,当該争点に関する検察官の主張・立証構造を解説し,被害者証言の信用性の弾劾の手法, 自白の信用性の争い方等について解説を行った。
 
3 問題研究
(1) 問題研究1
   前半は,当番弁護士として,住居侵入罪で逮捕された被疑者と初回接見を行うという事例につき,教官らが被疑者役となって模擬接見を実施し,その後,勾留を阻止するために検察官ないし裁判官に提出すべき意見書に記載すべき事項について,模擬接見で聴取した事項に基づきグループ討論及びメモの作成を行わせた。
   後半は,同一事案につき,窃盗罪及び住居侵入罪で公訴提起されたことを前提に,勾留後の事情について記載した記録を配布し, 当該記録に記載された事情及び,前半の模擬接見の実施により得られた情報を踏まえた上,身体拘東からの解放に向けてどのような活動をする必要があるのか検討させた。講評においては,刑事裁判教官及び検察教官の参加を得て,実務上の運用等について,幅広い視点から解説を行った。
(2) 問題研究2
   少年2名と, 20歳の成人とが,スーパーで酒を万引きし,そのうち少年2名については窃盗で逮捕・勾留され,成人については,逃げる際に事後強盗を行ったとして逮捕・勾留された事例について,少年については,付添人として審判までに行うべき活動,審判において述べるべき意見,要保護性解消のための活動等についてグループ討論を行わせた。また,成人については,情状に関してどのような弁護活動を行うべきかについて,グループ討論を行わせた。
   講評においては,本事例の解説に加え,少年事件における実務上の運用及び情状弁護等について,幅広い視点から解説を行った。

第8 刑事共通

1 刑事共通演習1及び2
(1) 指導目標 
   刑事共通演習は,争点整理演習(演習1・・500分)とそれを踏まえた証人尋問演習(演習2・・200分)との二つの場面で構成されるところ,上記Iの3のとおり,刑事裁判問題研究2(証拠開示)も一連のカリキュラムを構成するものとして実施した。
   争点整理演習は,争点中心の充実した公判審理を実現するためには公判前整理手続の的確な運用が極めて重要となっていることを踏まえ,具体的な事例を題材に, 争点整理等と審理計画の策定について,裁判官,検察官及び弁護人は,それぞれどのような観点から, どのような活動をすべきかを検討させ,その検討に基づく整理手続を実践させることにより,これらの点について基本的な理解を得させることを目標とした。
   証人尋問演習は,争点整理の結果を踏まえて証人尋間や被告人質問を実演させ,法廷で的確な心証を取れるような争点に即した適切な尋間の在り方を理解させることを目標とした。さらに,証人尋問演習を踏まえた論告・弁論を行うこととし,あるべき論告・弁論を目指した法廷活動,ひいては主張・立証の構成を検討する契機を設けた。
   これらの演習を通じ,的確な争点整理を行う上での必要な視点を提供し, これにより,法曹としての活動に共通して必要とされる汎用性のある基礎的な能力を修得させるよう努めた。
(2) 実施内容 
   刑事裁判問題研究2で使用した強盗致傷被告事件の刑事争点整理教材を題材として,共謀の有無,暴行の内容について,争点整理の実演を行い,その後,その争点整理を踏まえた証人尋問及び被告人質間の実演を行った。
   争点整理演習においては,刑事裁判問題研究2に引き続き,修習生が,裁判官役, 検察官役及び弁護人役のそれぞれの立場から争点整理の検討・準備を行った上で, 争点整理期日において,裁判官役の主宰の下,検察官役及び弁護人役が主張を予定する事実や証拠調べについての意見交換を行いながら,争点整理手続を進めた。具体的には,まず,検察官役及び弁護人役が証明予定事実記載書,予定主張記載書面をそれぞれ作成し,その過程で随時行われる争点整理期日の実演において,当事者間に争いのある事実関係について個々の事実の位置付けを踏まえながら争点整理を行い, こうした争点整理期日を積み重ねて,最終的な争点の取りまとめと証拠の採否に至った。それぞれの争点整理手続の実演に先立ち,各グループごとに構成員全員による作戦会議を行わせ,各グループ内で実演に向けた対処方針についての共通認識を持たせた。そして,争点整理手続の中間段階及び終結段階の二度にわたって, 刑事裁判,検察及び刑事弁護の刑事系三教官が,それぞれの立場から,具体例を通じて見た争点整理等の重要性を確認した上,争点整理等の方法や結果について,適宜問題点を指摘するなどして講評を行った。
   尋問演習においては,検察官役及び弁護人役が,争点整理演習の結果を踏まえて尋問事項を検討した上,重要証人2名(被害者及び共犯者)に対する尋問と被告人質間を実演し, さらに,これらの尋間の結果を踏まえ,検察官役及び弁護人役が, それぞれポイントになった事項について指摘する論告・弁論を実演した。なお, これらの過程で,裁判官役に対しては,的確な訴訟指揮等を行うことを求めた。
   これらー連の争点整理演習及び尋問演習が終了した後,刑事系三教官が,尋間演習において顕れた手続上の問題点について講評を行ったほか,裁判官役が得た心証の発表を契機として,法廷で的確な心証が取れるような争点に即した適切な尋間であったか,翻って争点整理手続の段階から留意すべき点がどのようなところにあるのかといった観点から,問題点を指摘するなどの講評を行った。

2 刑事共通問題研究
(1) 指導目標 
   具体的な事例を題材として,情状に関する充実した審理を実現するため,量刑の基本的な考え方を前提として,検察官及び弁護人がどのような点に留意しながら活動することが必要とされるのかについて,修習生に基本的な理解を得させることを目標とした。
(2) 実施内容 
   傷害致死被告事件について,具体的な事案を記載した書面を配布して演習を実施した。
   修習生を検察官及び弁護人の2グループに分けて,上記事案の事件につき,検察官担当グループは論告で述べるのにふさわしい求刑意見とその論拠を検討し,弁護人担当グループは最終弁論で述べるのにふさわしい科刑意見とその論拠を検討し,グループごとに報告メモを提出させるとともに,これに基づいて発表を行わせた上, 量刑の基本的な考え方を前提とした量刑判断のプロセスを踏まえ,刑事系三教官から講評を行った。

第9 その他の共通科目

I 全科目共通 
   特別講義「国際人権法の理論と実践」
   講 師 弁護士(第一東京弁護士会) 上 柳 敏 郎 氏 
   国際人権については,第54期まで,刑事弁護科目の講義の中で,主に自由権規約 (B規約)のうち刑事手続関係規定を取り上げていたが,国際人権の重要性に鑑み,第55期以降は,全科目共通特別講義という形式に改めて国際人権全般にわたって講演を行ってきた。
   第67期においても,同様の趣旨に基づき,講師が,国際人権が全科目共通講義となっている理由や,国際人権法の国内的・国際的実施等について講演を行った。
 
II 弁護共通 
   演習「弁護士倫理」
   民事・刑事各分野の弁護士活動における弁護士倫理の重要性に鑑み,民事弁護に関する設例及び刑事弁護に関する設例をあらかじめ検討させ,民事弁護教官及び刑事弁護教官において,各設例について討論及び解説を行うとともに,弁護士懲戒制度についても講義した。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
 
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。