裁判官の職務に対する苦情申告方法

第1 裁判官の職務に対する苦情(クレーム)申告方法の種類

   裁判官の職務に対する苦情(クレーム)申告方法の種類は以下のとおりです。

1 裁判所法等の法律に基づく制度
① 裁判所総務課への不服申立て
② 最高裁判所への不服申出
③ 裁判官訴追委員会に対する訴追請求

2 最高裁判所規則に基づく制度
① 裁判官再任評価情報の提供
② 裁判官人事評価情報の提供

第2 裁判所総務課への不服申立て,最高裁判所への不服申出,注意処分及び分限裁判

1 裁判所総務課への不服申立て
(1) 当事者は,裁判所総務課に対し,司法行政の監督権(裁判所法80条)の発動を求める趣旨で,裁判所の事務の取扱方法に対して不服を申し立てることができます(裁判所法82条)。
(2) 裁判官の職務について裁判所総務課に対して不服を申し立てたとしても,裁判の結論が変わることはあり得ません(裁判所法81条参照)。
(3)  司法行政の監督権は,司法行政事務として裁判官会議の議により行われるものの(裁判所法29条2項),大部分の権限は所長等に委任されています(下級裁判所事務処理規則20条1項,最高裁大法廷平成10年12月1日決定参照)。
 
2 最高裁判所への不服申出
(1) 「裁判所法第82条に基づき裁判所の事務の取扱方法に対して最高裁判所に申出がなされた不服の処理要領」(平成27年4月15日付の最高裁判所裁判官会議議決)には以下の記載があります。

① 投書の記載内容が「裁判所の事務の取扱方法」に対する「不服」に当たるものであれば,裁判所法82条の「不服」として取り扱う(2頁)。

② 「不服」の申出に該当するためには,不服の対象となる裁判所の事務の取扱方法が具体的に特定されていること,これに対して司法行政の監督権による措置を求める意思が明らかになっていることが解される。

      したがって,趣旨が不明確なもの,単に希望や要望を述べるにすぎないもの,人格攻撃をするにすぎないもの等は,これに当たらない(2頁)。

③ 「裁判所の事務の取扱方法」とは,司法行政の監督権で処分しうる事務でなければならず,司法行政事務の取扱方法は一般に不服の対象となるが,裁判事務の取扱方法は原則として対象とはならない。

      もっとも,裁判事務の取扱方法であっても,明らかに法令に違反し,又は裁判官に与えられた自由裁量や書記官等に与えられた判断権を逸脱した場合には,司法行政の監督権が及ぶから,裁判所法82条の不服の対象となる(2頁)。

④ 裁判事務のうち,明らかに法令に違反し,又は裁判官に与えられた自由裁量や書記官等に与えられた判断権を逸脱するものとして裁判所法82条の不服の対象となる例としては,裁判所が職権を濫用して公判期日を変更した,怠慢で判決を言い渡さないなどと主張されている場合が挙げられる(3頁)。

⑤ 裁判所法82条の不服として取り扱わない場合,苦情として処理することができるから,この場合の案件の処理の決定は,「庶務」(裁判所法13条)として,事務総局限りで行う(4頁)。

⑥ 裁判所法82条の不服として取り扱う場合,最高裁判所裁判官会議の議決に基づき,決裁権者は,原則として最高裁判所長官である(4頁)。

⑦ 司法行政事務に対する不服が主張されているが,当該司法行政事務が違法又は不相当とはいえないことが明白である場合(当該司法行政事務が違法又は不当であることを基礎付ける具体的事実の主張が全くない場合を含む。),局長等の専決とする(6頁)。

⑧ 裁判事務に対する不服が主張されているが,当該裁判事務が明らかに法令に違反し,又は裁判官に与えられた自由裁量や書記官等に与えられた判断権を逸脱するとはいえないことが明白である場合(当該裁判事務が明らかに法令に違反し,又は裁判官に与えられた自由裁量や書記官等に与えられた判断権を逸脱することを基礎付ける具体的事実の主張が全くない場合を含む。),局長等の専決とする(6頁)。

(2) 「裁判所法第82条に基づき裁判所の事務の取扱方法に対して最高裁判所に申し出がなされた不服の処理状況」(平成27年6月9日~平成28年3月末日)を掲載しています。
これによれば,不服の総処理件数は43件であり,長官決裁による処理はなく,局長等による処理件数は43件であり,その全部が監督権不行使でした。
また,裁判事務関係が42件であり,司法行政事務関係が1件でした。

3 注意処分

高等裁判所長官等が,事務の取扱及び行状について,担当裁判官に対して注意をすることがあります(下級裁判所事務処理規則21条)。

   例えば,戸倉三郎東京高裁長官は,平成28年6月21日,ツイッターに不適切なつぶやきをしたり,縄で縛られた上半身裸の男性の画像を投稿したりした岡口基一東京高裁第22民事部判事について,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意処分をしました。
 
4 分限裁判
(1) 裁判官は,職務上の義務に違反し,若しくは職務を怠り,又は品位を辱める行状があったときは,裁判官分限法で定めるところにより,分限裁判によって,戒告又は1万円以下の過料(裁判官分限法2条)に処せられます(裁判所法49条)。
(2) 地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所の裁判官に係る分限事件は高等裁判所が行い(裁判官分限法3条1項),最高裁判所及び各高等裁判所に係る裁判官に係る分限事件,及び高等裁判所がした分限裁判に対する抗告事件(裁判官分限法8条)は最高裁判所が行います(裁判官分限法3条2項各号)。
(3) 分限事件は,高等裁判所においては5人の裁判官の合議体で,最高裁判所においては,大法廷でこれを取り扱います(裁判官分限法4条)。
(4)   高等裁判所が分限事件を取り扱う場合,当該高等裁判所の事務分配に基づき,長官が裁判長となる特別部が担当します。
(5) 裁判官の懲戒処分の場合,通常の公務員の場合の停職,減給というものに相当する処分はありません。
   その理由は,①停職は実質上,一定期間罷免をするのと同じこととなる点で,これを懲戒処分として行うことは,弾劾裁判所による弾劾裁判によらなければ罷免されないとする憲法64条及び78条の精神に反する可能性があること,②減給は,在任中の裁判官の報酬の減額を禁止する憲法80条2項に違反する可能性があることによります(平成13年3月21日の衆議院法務委員会における房村精一法務省大臣官房司法法制部長の答弁参照)。
(6) 分限事件については憲法82条1項の適用はありません(最高裁大法廷平成10年12月1日決定)から,分限裁判は非公開となっています。
(7) 分限裁判が確定した場合,「裁判官分限事件の裁判の公示」として官報で公示されます(裁判官の分限事件手続規則9条)。

第3 裁判官訴追委員会に対する訴追請求,及び裁判官弾劾裁判所

1 総論
(1)  裁判官に以下の事由がある場合(裁判官弾劾法2条),裁判官訴追委員会の訴追に基づき,裁判官弾劾裁判所の裁判により罷免されます(憲法64条,国会法125条ないし129条,裁判官弾劾法参照)。
① 職務上の義務に著しく違反し,又は職務を甚だしく怠つたとき。
② その他職務の内外を問わず,裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき。
(2) 裁判官訴追委員会に対する訴追請求をすることで,裁判官の罷免を求めることができます。
   しかし,判決等の内容を理由に罷免された裁判官はいません。
 
2 裁判官訴追委員会
(1) 裁判官訴追委員会は,衆議院議員及び参議院議員各10人で組織されます(国会法126条1項,裁判官弾劾法5条1項)。
(2) 弾劾による罷免の事由が発生した時点(例えば,判決の日)から3年を経過したときは、罷免の訴追をすることができなくなります(裁判官弾劾法12条)。
   この3年は,訴追請求状を訴追委員会に提出する期限ではなく,提出後に訴追委員会が訴追審査事案を審議議決し,弾劾裁判所に訴追状を提出するまでの期間が含まれます。
(3) 裁判官訴追委員会が訴追請求状を受理してから審議議決に至るまでの期間は,半年から1年程度です。
(4) 罷免の訴追の請求をするためには,その事由を記載した書面を裁判官訴追委員会に提出する必要があります(裁判官弾劾法15条1項・4項)。
(5) 罷免の訴追を請求するための費用及び手数料は,不要です。
(6) 裁判官弾劾裁判所が罷免の訴追又は罷免の訴追の猶予をするためには,出席訴追委員の3分の2以上の多数でこれを決することとなっています(裁判官弾劾法10条2項)。
(7) 罷免の訴追をした事案の概要,罷免の訴追を猶予した事案の概要は,裁判官訴追委員会のHPに掲載されています(訴追猶予の決定につき裁判官弾劾法13条)。
(8) 裁判官訴追委員会が訴追するかどうかを議決した場合,訴追請求人に対し,議決結果を文書で通知します。
   ただし,裁判官訴追委員会の議事は非公開です(裁判官弾劾法10条3項)から,決定理由は教えてもらえません。
(9) 裁判官訴追委員会の訴追しない決定に対して不服申立てをすることはできません。
(10) 裁判官訴追委員会HPに掲載されている訴追審査事案統計表によれば,昭和23年から平成27年までの合計は以下のとおりです。
① 受理事案数が1万8672件,訴追が48件(ただし,被審査裁判官の実員は9人),訴追猶予が12件(ただし,被審査裁判官の実員は7人)
② 訴追請求人数は,最高裁判所が8人,弁護士が2664人,国民が89万3701人です。
 
3 裁判官弾劾裁判所
(1) 総論
ア 裁判官弾劾裁判所は,衆議院議員及び参議院議員各7人で組織されます(国会法125条1項,裁判官弾劾法16条1項)。
イ 下級裁判所の裁判官の報酬については,当該裁判官が逮捕又は勾留されたことを理由として減額することはできませんし,裁判官弾劾裁判所による職務停止決定(裁判官弾劾法39条)があった後でも報酬等は支給され続けます(平成21年4月10日付の「参議院議員前川清成君提出弾劾手続き中の裁判官に対する給与支払いに関する質問に対する答弁書」参照)。
ウ 裁判官弾劾裁判所は,公開の法廷で審理を行い,罷免するかどうかの裁判をします(裁判官弾劾法20条)。
エ 弾劾裁判所の判決は官報で公示されます(裁判官弾劾法36条)。
オ 弾劾裁判所が罷免の裁判を宣告した場合,その裁判官は直ちに罷免されます(裁判官弾劾法37条)。
カ 罷免された裁判官は,罷免の裁判の宣告日から5年を経過して相当とする事由があるような場合,資格回復の裁判により資格を回復することができます(裁判官弾劾法38条)。
(2) 弾劾裁判の事例
   裁判官訴追委員会が罷免の訴追をして,裁判官の罷免判決が出た事例はこれまでに9件だけであり,高輪1期以降の裁判官が対象となったのは以下の5件だけであり,その内容は以下のとおりです(裁判官訴追委員会HPの記載を参照しています。)。
① 昭和52年3月23日罷免判決
   あたかも検事総長であるかの如く装って総理大臣に電話をかけ,同人に対し,いわゆるロッキード事件に関して虚偽の捜査状況を報告した上,前内閣総理大臣及び自民党幹事長の取り扱い方について直接の裁断を仰ぎたい旨申し向け,その言質を引き出そうと種々の問答を行い,その会話を録音した者があるところ,その録音テープの内容がニセ電話であること,また,その問答が新聞で報道されれば政治的に大きな影響を与えることを認識しながら,東京都内のホテルにおいて,新聞記者2人に同録音テープを再生して聞かせた,19期の鬼頭史郎裁判官(対象行為当時,京都地裁判事補)(検事総長ニセ電話事件)
② 昭和56年11月6日罷免判決
   破産事件を担当中,破産管財人である弁護士から,ゴルフクラブ2本,外国製ゴルフ道具1セット,キャディバッグ1個及び背広三つ揃2着の供与を受けた,25期の谷合克行裁判官(対象行為当時,東京地裁判事補)
③ 平成13年11月28日罷免判決
   少女3名に対し,同少女らが18歳に満たない児童であることを知りながら,対償として現金を供与することを約束して児童買春をした,38期の村木保裕裁判官(対象行為当時,東京高裁刑事部判事職務代行)
④ 平成20年12月24日罷免判決(平成28年5月17日資格回復決定)
   裁判所職員の女性に対し,その行動を監視していると思わせたり,名誉や性的羞恥心を害したりするような内容の匿名のメールを繰り返し送信したりして,ストーカー行為をした,36期の下山芳晴裁判官(対象行為当時,甲府地家裁都留支部判事)
⑤ 平成25年4月10日罷免判決
   京阪電鉄京阪本線の寝屋川市駅から萱島駅(かやしまえき)までの間を走行中の電車内において,録画状態にした携帯電話機を女性乗客のスカートの下に差し入れ,下着を動画撮影した,新63期の華井俊樹裁判官(対象行為当時,大阪地裁判事補)

第4 裁判官再任評価情報の提供

1 下級裁判所裁判官指名諮問委員会
(1) 下級裁判所の裁判官の任期は10年であり(憲法80条本文後段,裁判所法40条3項),再任されなかった場合,任期終了と同時に裁判官を退官することとなります。
   これがいわゆる「再任拒否」です。
(2)  裁判官「再任」評価情報の提供は,平成15年5月1日施行の下級裁判所裁判官指名諮問委員会規則(平成15年2月26日最高裁規則第6号)11条に基づく制度であり,所属裁判所を管轄する高等裁判所の事務局総務課長に対し,郵送(親展表示)又は持参する方法で提出します。
   そして,提供された再任評価情報は,下級裁判所裁判官指名諮問委員会の地域委員会がとりまとめた上で,中央の委員会に報告されています(規則13条)。
(3) 下級裁判所裁判官指名諮問委員会は,最高裁判所の諮問に応じて,下級裁判所裁判官としてとして任命されるべき者を指名することの適否等について審議し,その結果に基づき,最高裁判所に意見を述べる委員会です(規則2条)。
(4) 中央の委員会は11名の委員で組織され(規則5条),高裁単位で設置される地域委員会(規則12条)は原則として5名の委員です。
   ただし,東京地域委員会だけは例外的に10名の委員で組織されています(規則14条)。
(5) 東京地域委員会は東京高裁に設置され,大阪地域委員会は大阪高裁に設置され,名古屋地域委員会は名古屋高裁に設置され,広島地域委員会は広島高裁に設置され,福岡地域委員会は福岡高裁に設置され,仙台地域委員会は仙台高裁に設置され,札幌地域委員会は札幌高裁に設置され,高松地域委員会は高松高裁に設置されています。
(6) 中央の委員会の庶務は,最高裁判所事務総局総務局第一課文書総合調整係で処理され,地域委員会の庶務は,高等裁判所の事務局総務課で処理されています(規則18条参照)。
   また,中央の委員会の議事要旨は最高裁判所のホームページに,地域委員会の議事要旨は各高等裁判所のホームページに掲載されています。
 
2 裁判官再任評価情報の内容
(1) ①専ら裁判官の訴訟指揮及び判断に対する不満が記載された情報,②具体的な記述に欠ける情報,及び③提出者氏名の記載がない情報については,地域委員会に提出したとしても,中央の委員会には送付してもらえません(平成23年5月31日の大阪地域委員会(第29回)の議事要旨参照)。
(2) 裁判書の記載であっても,①当事者に対する侮蔑的な表現があって,一般人の目から見ても明らかに逸脱しているといえる場合,及び②一見明白な法律の適用の誤りがあるような場合であれば,裁判官の資質,能力を示すものとして,情報としての適格性が認められることがあります(平成20年11月10日の大阪地域委員会(第21回)の議事要旨参照)。
(3) 「189名の候補者に,139通の外部情報(現任地・前任地を問わず)。1名あたり平均0.735通。」(平成22年2月23日の下級裁判所裁判官指名諮問委員会(第42回)の議事要旨6頁)という記載があることからも分かるとおり,実際に提供される裁判官再任評価情報は少ないです。
   そのため,具体的事実を記載して資料を添えた裁判官再任評価情報は,裁判官の再任の可否を判断するに際して大きな影響を持つかも知れません。
 
3 重点審議者
(1) 下級裁判所裁判官指名諮問委員会には,多数の指名候補者について諮問がされる場合があり,そのような場合には,実質的な審議を行うため,各諮問に応じて,同委員会においてまず指名の適否について慎重な判断を要する者を振り分け,その者を対象に重点的に審議することとされておりますところ,このようにして振り分けられた者が重点審議者となります(平成27年度(最情)答申第10号(平成28年3月23日答申))。
(2)   下級裁判所裁判官指名諮問委員会における年度ごとの重点審議者の数が分かる文書は存在しません(平成27年度(最情)答申第10号(平成28年3月23日答申))。
(3) 重点審議者については,下級裁判所裁判官指名諮問委員会福岡地域委員会HPにある「指名の適否について審議する手順・方法について(暫定版)」(平成15年7月30日の第1回配付資料)も参考になります。
(4) 下級裁判所裁判官指名諮問委員会は,その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは,指名候補者に対して必要な説明を求め,又は指名候補者の意見を聴くことができます(規則10条)。
   ただし,重点審議者のうち,不適格の答申がなされる可能性のある指名候補者であっても,面接が実施されるとは限りません(平成17年2月7日付の日弁連意見書参照)。
(5) 平成17年3月4日に開催された「市民のための裁判所をめざして」(東弁LIBRA2005年5月号)には,「重点審議者とする根拠が不十分で資料を追加しても らった例や当初は重点審議者ではなかった裁判官が委員会審議で重点対象に追加された例がある。」と書いてあります。
(6) 平成19年2月26日付の日弁連意見書には,「現在は、再任希望者たちが、自らの適格性に関して委員会でどのような資料・情報、具体的選考基準に基づき、何がどのように審議され答申されたのか、まったく見えない状況にあり、自らが重点審議者とされてもそれに対する意見表明や弁明の機会が何ら与えられないまま推移し、不適格とされた場合でも具体的な理由が開示されない実情にあります。」と書いてあります。
 
4 再任評価情報の提供時期
(1) 裁判官「再任」評価情報の提供は,対象裁判官の再任時期に合わせて提供する必要があります。
(2)   以前の裁判官の任官時期は4月だけでしたから,再任「評価」情報の提供は年1回でした。
   しかし,53期(平成12年10月任官)が10年目の再任期を迎える平成22年からは,再任「評価」情報の提供は4月と10月の年2回となりました。
    また,新60期(平成20年1月任官)が10年目の再任期を迎える平成30年からは,再任「評価」情報の提供は1月と4月と10月の年3回となります。
 
5 裁判官再任評価情報を弁護士会が組織として取りまとめるのは相当ではないとされていること
   庶務から,東京弁護士会発行の「LIBRA」2013年3月号40頁以下に掲載された同弁護士会裁判官選考検討委員会事務局長名義の「裁判官情報提供のお願い」と題する記事の中に,昨年7月の当委員会において判事指名不適当とされた2人の判事補について,そのような結果となった経緯が記載され,また,同弁護士会の会員が裁判官情報を報告書として3通提出し,同弁護士会の裁判官選考検討委員会の承認があったときには,これを会務活動と認定すると記載されていることから,委員会庶務として,日弁連を通し,同弁護士会に対して,前者の部分については,あたかも当委員会の非公開の審議内容を同弁護士会の裁判官選考検討委員会が把握しているとの誤解を与えかねない記載ぶりになっており,ひいては,当委員会の信頼を失墜させ,裁判官任命候補者や弁護士任官候補者に対し,不要な誤解や憂慮を与えるおそれが高いこと,また,後者の部分については,従来から当委員会が適切でないとしている組織としての情報の取りまとめを強化しようとするものというだけでなく,ある種の利益誘導により情報を提供させようとするものであり,いずれも大変問題ではないかと強く指摘したところ,LIBRA」5月号において,前者の点は推測した内容を断定的な表現で記載してしまったものであり,訂正してお詫びする旨の記事が掲載され,また,同6月号において,裁判官選考検討委員会の承認があったときに裁判官情報の報告を会務活動と認定するとの運用は取りやめる旨の記事が掲載されたことが報告された。 
   委員長より,前者の点については,守秘義務違反の疑いを生じさせ,委員会の信頼が失墜しかねないものであり,誠に遺憾である,委員としても,守秘義務の遵守が,当委員会の審議に対する指名候補者,情報提供者その他の関係者の信頼を確保する上で決定的に重要であることに思いを致し,この点について疑義が生じることのないよう自重,自戒しなければならないことを改めて確認したいとの発言があり,委員一同これを了承した。また,後者の点については,裁判官情報の提供を利益誘導を伴う弁護士会の組織的活動として行おうとするものであって,裁判官の職権の独立に対する影響,プライバシーへの配慮,適格性に疑義が生じない情報を広く収集するという観点に照らすと,これも誠に遺憾であり,今後,各地の弁護士会が情報提供の在り方について十分に理解し,同様の事態が生じないように望むとの発言があった。
 
6 再任不適当者の人数
(1)   平成27年5月14日の参議院法務委員会における中村愼最高裁判所事務総局総務局長の答弁によれば,平成16年から平成26年までの間で合計41人の裁判官について再任又は判事任命が適当でないと下級裁判所裁判官指名諮問委員会が答申しています。
(2) 「裁判官の種類,再任拒否,弁護士任官等」も参照してください。

第5の1 裁判官人事評価情報の提供

1 総論
(1) 裁判官「人事」評価情報の提供は,平成16年4月1日施行の裁判官の人事評価に関する規則(平成16年1月7日最高裁規則第1号)3条2項後段に基づく制度であり,所属裁判所の事務局総務課長に対し,郵送(親展表示)又は持参する方法で提出します。
(2)  裁判官「人事」評価情報の提供は,評価権者(例えば,地裁所長)による人事評価のための情報提供ですから,時期を限定せずに一年中受け付けています。
  ただし,裁判官に対する裁判所での人事評価は毎年8月1日を基準日として行われますから,7月頃から評価権者による裁判官の面接が始まります。
   そのため,日弁連では,6月末を集中期間としてこの時期に裁判官人事評価情報を集めて裁判所に提供するように努力しています。
(3)   「裁判官の人事評価に関する規則の運用について(平成16年3月26日付の最高裁判所事務総長通達)」(規則6条参照)には,「裁判所外部からの情報の把握」として以下の記載があります。
   裁判所外部からの裁判官の人事評価に関する情報については,その裁判官が所属する裁判所(簡易裁判所である場合は,その所在地を管轄する地方裁判所)の総務課において受け付ける。この場合においては,情報の的確性を検証できるようにするという観点から,原則として,当該情報を提供した者の氏名及び連絡先を記載した書面であって具体的な根拠となる事実を記載したものによって,情報の提供を受けるものとする。
(4) 「裁判官の職務情報提供推進委員会報告」(東弁LIBRA2016年6月号)には,以下の記載があります。
   平成24年10月から平成25年9月までの一年間の人事評価の情報提供数は,東京弁護士会で分かった範囲で40件以上,再任適否の職務情報は数件であった。
  訴訟指揮や判決等を通じた法的知識,論点理解力, 審理を運営してゆくためのマネジメント能力,当事者との意思疎通,説得力,柔軟性,法廷における態度などにつき,例えば,訴訟指揮が強引だ,当事者の意見を聞こうとしない,判決文が簡潔過ぎて意味が不明だ,判決日が何度も延びる,和解の押しつけがある等のケ ースに出合われたら,報告をお願いしたい。
 
2 評価権者
(1) 原則(規則2条1項及び2項)
ア 人事評価は,判事及び判事補についてはその所属する裁判所の長が,簡易裁判所判事についてはその所属する簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の長が,それぞれ行う(規則2条1項)。
イ 地方裁判所又は家庭裁判所の長が行った人事評価については,その地方裁判所又は家庭裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の長官が,調整及び補充を行います(規則2条2項)。
ウ 簡易裁判所判事と兼任している判事又は判事補の人事評価については,判事又は判事補の評価権者が行います。
エ 複数の裁判所に補職されている裁判官の人事評価については,本務庁(簡易裁判所である場合は,その所在地を管轄する地方裁判所)の長が評価権者となります。
   ただし,評価対象裁判官が主として兼務庁において職務を行っている場合であって,人事評価を適正に行う上で必要があるときは,本務庁の長及び兼務庁の長の協議により,兼務庁の長が評価権者となることがあります。
 
(2) 規則2条3項に基づく定め
ア 地方裁判所長又は家庭裁判所長の人事評価については,その所属する裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の長官が評価権者となります。
イ 補職されている裁判所(=補職庁)と異なる裁判所の裁判官の職務を行う裁判官の人事評価については,補職庁の長が評価権者となります。
ウ 最高裁判所事務総局の審議官又は局課長の人事評価については,最高裁判所事務総長が評価権者となります。
エ 最高裁判所事務総局の各局課に勤務する裁判官(局課長を除く。)の人事評価については,その勤務する局課の局課長が評価権者となります。
オ 最高裁判所の裁判所調査官(首席調査官を除く。)の人事評価については,最高裁判所首席調査官が評価権者となります。
カ 最高裁判所の研修所に勤務する裁判官(研修所長を除く。)の人事評価については,その勤務する研修所の所長が評価権者となります。
キ  個々の裁判の結論の当否を問題とするものなど,裁判官の独立(憲法76条3項参照)への影響が懸念される情報については,裁判官人事評価情報として考慮してもらうことはできません。
 
3 裁判官第三カード,人事評価のための面談及び評価書
   評価対象裁判官は,評価権者に対し,人事評価のための面談の前に,「担当した職務の状況に関する書面」として裁判官第三カードを提出しています。
   評価権者は,規則第4条の人事評価を記載した書面(以下「評価書」という。)の作成に先立って,評価対象裁判官と規則第3条第3項に定める面談を行う。ただし,評価権者は,評価対象裁判官の人数等の事情に照らし自ら面談を行うことが困難な場合には,人事局長が定めるところにより,この面談を,下級裁判所事務処理規則(昭和23年最高裁判所規則第16号)第22条第1項に定める高等裁判所長官,地方裁判所長若しくは家庭裁判所長の司法行政事務を代理する者,同規則第3条第1項の規定により支部長を命じられた裁判官又は裁判所法第37条の規定により簡易裁判所の司法行政事務を掌理する者に指名された裁判官に代行させることができる。
(3) 評価権者は,評価対象裁判官から申し出があった場合,評価書を開示します(規則4条)。
(4) 裁判官は,評価書の記載内容について,評価権者に対して不服を申し出ることができます(規則5条1項)。
(5) 評価書に対する不服の申出があった場合,評価権者は,必要な調査をし,その結果に基づき,その申出に理由があると認めるときは,評価書の記載内容を修正し,その申出に理由がないと認めるときは,その旨を評価書に記載します(規則5条2項)。
(6) 平成29年1月31日付の司法行政文書不開示通知書によれば,裁判官の人事評価に関する規則5条に基づく不服申立ての件数が,評価権者ごと及び年度ごとに分かる文書(平成16年度から平成26年度までの分)は存在しません。 
(7) 評価書の保管等については,「裁判官の人事評価に係る評価書の保管等について(平成16年3月26日付の最高裁判所人事局長通達)」に書いてあります。
   作成した日から10年が経過するか,又は評価対象裁判官が高裁長官に任命されたり,退官したりしたときに廃棄されるそうです。

第5の2 裁判官の人事評価に関する国会答弁

   堀田眞哉最高裁判所事務総局人事局長は,平成27年5月14日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 
1 裁判官の人事評価につきましては、平成十六年四月以降、裁判官の資質、能力を高めるとともに、国民の裁判官に対する信頼を高め、人事評価の透明性、客観性を確保するという観点から、裁判官の人事評価に関する規則、最高裁の規則でございますが、に基づいて新しい人事評価制度が実施されてきているところでございます。
  この人事評価制度によりまして、人事評価の透明性、客観性が高まっただけではなく、裁判官の主体的な能力向上に資するものとして、制度として定着し、安定的に運用されてきているものというふうに認識しております。
 
2   新しい人事評価制度におきましては、最高裁規則に基づきまして、人事評価を行う評価権者を所属の庁の長、すなわち地家裁所長あるいは高裁長官等と明確に規定をいたしまして、さらに、評価項目を定めて評価基準が明確化されているなど、人事評価制度としての透明性を向上させてきているというところでございます。
  このような裁判官の新しい人事評価制度の概要につきましては、裁判所のウエブサイトにも掲載いたしまして公開しているところでございます。
  そういう意味においても、国民に対する透明性も向上しているものというふうに考えております。
 
3 平成二十六年度の数字で申し上げますと、評価書の開示の申出件数は二百十七件でございまして、当然ながら全部について写しを交付して開示をしております。
 
4   裁判所外部からの情報の多くは、訴訟等の場で日常的に裁判官に接しております弁護士からのものでございます。
   具体的には、裁判官の法廷等における言動等に関する情報などでございます。
   受け付けました外部情報を人事評価に取り入れるに当たりましては、当該情報の的確性について検証する必要がございますので、原則として提供者の名前が明らかにされており、かつ具体的な根拠事実が明らかになっているものに限って活用をしております。
  もっとも、個々の裁判の結論の当否を問題にするというものなど、裁判官の独立に影響を及ぼすおそれのあるような情報については考慮することができないというふうに考えております。
 
5 裁判官の人事評価に関する規則におきましては、評価権者は、人事評価に当たり、裁判官の独立に配慮しつつ、多面的かつ多角的な情報の把握に努めなければならないというふうに規定をされております。
   評価権者であります地家裁所長、高裁長官等は、裁判官、その他の裁判所職員からの裁判所内部の情報のほか、先ほど申し上げましたような裁判所外部からの情報についても配慮するものとされておりまして、それらを活用して評価を行ってきているところでございます。

第6 下級裁判所の裁判官の倫理の保持に関する申合せ

1   下級裁判所の裁判官の倫理の保持に関する申合せ(平成12年6月15日高等裁判所長官申合せ)を掲載しています。

2 下級裁判所の裁判官の倫理の保持に関する申合せは,裁判官においても,平成12年4月施行の国家公務員倫理法,及びこれに基づく国家公務員倫理規程及び裁判所職員倫理規則の趣旨・内容を尊重して行動することが望ましいのではないかということで作成されました。

3 裁判官は,事件関係者(担当事件の代理人弁護士等を含む。)といった利害関係者との間で飲食を伴う会合等をしてはなりません。

第7 関連記事

1 幹部裁判官の経歴につき,238人の幹部裁判官の現職及び前職1ないし前職7を掲載している幹部裁判官の名簿を参照してください。
  最高裁長官,最高裁判事,高裁長官及び大規模地家裁所長の後任候補者につき,幹部裁判官の後任候補者を参照してください。
  高輪1期以降の最高裁裁判官及び高裁長官人事の一覧表につき,幹部裁判官人事の一覧表を参照してください。
  238人の幹部裁判官がいつ,定年退官するかについては,幹部裁判官の定年退官発令予定日(定年退官日の翌日です。)を参照してください。

2 どの裁判所に何人の裁判官がいるかといった裁判官の分布については,現職裁判官の分布表,全国の地裁の本庁及び支部ごとの裁判官数参照してください。

3 裁判官の年収等につき,裁判官の年収及び退職手当(推定計算)を参照してください。

4 平成15年12月以降,下級裁判所裁判官指名諮問委員会で再任不適当とされた裁判官の数の推移については,「裁判官の種類等」を参照して下さい。

1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
 
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)の略歴取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ等はこちらであり,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図はこちらです。