判事補の外部経験

第0 目次

第1   判事補の外部経験に関する最高裁判所人事局任用課長の事務連絡等
第2   判事補の個別の外部経験先
第3   判事補の外部経験に関する国会答弁
第4   外部経験から復帰後の異動の方針
第5   判事補の弁護士職務経験実施のスケジュール
第6   判事補の海外留学状況(平成29年6月22日更新
第7の1 判事補の民間会社研修
第7の2 民間企業長期研修中の裁判官の死亡,及び安全配慮義務に関する裁判例等

* 判事補の経験多様化に関する基本方針(平成16年6月23日裁判官会議議決)には,「事件処理態勢の確保,適切な受入先の確保・拡充等の環境・条件を整備した上,原則としてすべての判事補に,弁護士職務経験,行政機関,在外公館等での勤務,民間企業等への派遣又は海外留学等の多様な経験を積む機会を与えるものとする。」と書いてあります。

第1 判事補の外部経験に関する最高裁判所人事局任用課長の事務連絡等

1 「判事補の外部経験の概要等について」(平成26年4月11日付の最高裁判所人事局任用課長の事務連絡)を掲載しています。

2 本ページの第2ないし第4の記載は,任用課長の事務連絡に基づいて記載していますから,専ら平成27年度に関するものです。

3 平成14年度の判事補の外部経験については,首相官邸HPにある「外部に出ている判事補の現状」に詳しく書いてあります。

4 弁護士職務経験をした判事補の氏名等については,「弁護士職務経験判事補の名簿」を参照してください。 
 
5 行政官庁等に出向している判事補の氏名等については,「出向裁判官の名簿及び判検交流」を参照して下さい。 

第2 判事補の個別の外部経験先

1 訟務検事
   訟務事務を担当し,期間は原則として2年であり(本省は原則として2年又は3年),10名程度です。
  勤務場所は,高裁所在地の各法務局訟務部又は法務省訟務局(平成27年4月10日再設置)です。
  出向中の身分は検事です。

2 法務省
   法務行政事務(裁判官としての法律知識,経験を活用して行政事務を行います。)を担当し,期間は原則として2年又は3年であり,10名程度です。
  勤務場所は,法務省(司法法制部,民事局,刑事局,人権擁護局),法務総合研修所(研修部(東京),国際連合研修協力部(東京),国際協力部(大阪))です。
  出向中の身分は検事です。

3 弁護士
   弁護士職務を担当し,期間は原則として2年であり,10名程度です。
  勤務場所は,原則として東京,大阪又は名古屋の法律事務所です。
  出向中の身分は裁判所事務官(弁護士職務従事職員)・弁護士です。

4   行政官庁
(1) 行政官庁研修
ア   行政官庁における行政事務(主として,裁判事務とは直接関連しない行政事務を行います。)を担当し,期間は原則として2年であり,数名程度です。
  勤務場所は,内閣官房(内閣官房副長官補付),金融庁(総務企画局,検査局),総務省(自治行政局,総合通信基盤局),外務省(総合外交政策局,北米局,国際法局),財務省(国際局),厚生労働省(労働基準局),農林水産省(食料産業局),経済産業省(経済産業政策局,通商政策局),国土交通省(鉄道局)です。
  出向中の身分は検事(出向先省庁の事務官に併任)です。
イ 事前研修的な趣旨で,出向前に短期間,最高裁判所事務総局に配置されることがあります。
(2) 公正取引委員会,金融庁,証券取引等監視委員会,公害等調整委員会,中央労働委員会,国税不服審判所
   行政事務(準司法的事務を含む。)(裁判官としての法律知識,経験を活用して事務を行う。)を担当し,期間は原則として2年であり,数名程度です。
  勤務場所は,公正取引委員会事務総局,金融庁,証券取引等監視委員会事務局,公害等調整委員会事務局,中央労働委員会事務局,国税不服審判所(東京,大阪,名古屋)です。
  出向中の身分は,公正取引委員会は審判官(検事に併任),金融庁は金融庁審判官(検事に併任),証券取引等監視委員会は内閣府事務官(検事に併任),公害等調整委員会は総務事務官(検事に併任),中央労働委員会は特別専門官(検事に併任),国税不服審判所は検事(財務事務官(国税審判官)に併任)です。

5   在外公館
(1)   在外公館における外交事務又は領事事務を担当し,期間は原則として約2年であり,若干名です。
   勤務場所は,在アメリカ合衆国日本国大使館,在中国日本国大使館,在ジュネーブ国際機関日本政府代表部,在ストラスブール日本国総領事館,国際連合日本政府代表部です。
   出向中の身分は外務事務官(一等若しくは二等書記官又は領事)であり,判事任命資格に算入されません。
(2) 平成27年の場合,同年秋に外務省研修所において約4ヶ月間,判事補身分で赴任前研修に参加しました。
  その後,派遣までの間,東京又は周辺の裁判所において勤務します。なお,事前研修的な趣旨で,出向前に短期間,最高裁判所事務総局に配置されることがあります。

6   法整備支援
(1)   海外における法整備支援(裁判官としての法律知識,経験を活用して法整備支援を行う。)を担当し,期間は1年又は2年であり,若干名です。
  勤務場所は,ベトナム(ハノイ)又はカンボジア(プノンペン)です。
  出向中の身分は検事(国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律による派遣職員たる検事)であり,独立行政法人国際協力機構(JICA)長期専門家です。
(2) 派遣前に判事補身分で研修に参加します。なお,派遣先に1年間勤務し,帰国後,法務省に1年間勤務する可能性もあります。

7   民間企業研修
   民間企業又は日本銀行における業務を担当し,期間は1年であり,10名程度です。
   勤務場所は,東京,大阪,名古屋,福岡地区所在の民間企業又は日本銀行です。
出向中の身分は判事補です。

8   海外留学
   海外の大学又は裁判所等における在外研究を担当し,期間は1年又は2年であり,30数名程度です。
  勤務場所は,アメリカ,イギリス,カナダ,オーストラリア,フランス,ドイツ,ベルギーの各国です。
  出向中の身分は判事補です。

9   その他
(1) 立法機関
   立法機関における事務を担当し,期間は原則として2年であり,1名程度です。
   勤務場所は,衆議院法制局です。
   出向中の身分は衆議院法制局参事です。
(2) シンクタンク等における研修
   シンクタンク等における企画・研究業務を担当し,期間は原則として1年であり,1名程度です。
    勤務場所は,一般社団法人日本経済団体連合会21世紀政策研究所です。
   出向中の身分は判事補です。
(3) 預金保険機構
   預金保険機構における業務(裁判官としての法律知識,経験を活用して事務を行います。)を担当し,期間は原則として2年であり,若干名です。
   勤務場所は,預金保険機構(東京)です。
   出向中の身分は預金保険機構職員であり,判事任命資格に算入されません。

第3 判事補の外部経験に関する国会答弁

   堀田眞哉最高裁判所事務総局人事局長は,平成27年5月14日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。

1 判事補の外部経験といたしましては、民間企業等への派遣、弁護士職務経験、海外留学、行政官庁への出向等などを行ってきているところでございます。
   概要を申し上げますと、民間企業等は、毎年十五人程度を一年間派遣をしております。
   弁護士職務経験につきましては、毎年十人程度を二年間派遣をしております。
   また、海外留学は、毎年三十五人程度が一年又は二年間の期間派遣をされてきているところでございます。
   さらに、行政官庁等には、毎年三十五人程度が、これは行き先によっても期間、長短がございますが、原則として二年間出向をしております。
   今後もより多くの若手の裁判官がこれらの外部での様々な経験を通じて、幅広い視野あるいは柔軟でバランスの取れた考え方というものを身に付けることができるよう、新たな外部経験先の確保等も含めた充実というものを検討してまいりたいというふうに考えております。

2 民間企業研修の意義あるいは必要性について御理解をいただいております日本経団連加入の企業等の中から、毎年、業種あるいは業態のバランスなども勘案しながら研修先を選定しているというところでございます。

3 派遣先の企業等との関係で、公平性と申しますか中立性と申しますか、の担保が必要でございますので、そのようなことも配慮して行き先を変えますとか、あるいは、同一の業界の中で不均衡がないようにするとかそういったようなことも検討しているところでございます。

第4 外部経験から復帰後の異動の方針

   以下の記載は,平成27年2月5日及び6日に開催された,最高裁の実務協議会(冬期)の人事局配付資料を丸写ししたものであり,外部経験から復帰した裁判官の転勤パターンが分かります。

外部経験から復帰後の異動の方針について

1 前任地から引き続き地域的異動を伴わずに外部経験をする場合
  当該地の異動条件により異動

2 地域的異動を伴って外部経験をする場合
  外部経験(民間企業研修又はシンクタンク等における研修を除く。)後,希望すれば,引き続き同一地域の裁判所で2年間勤務可能
  同一地域を希望しない場合は,当該地の異動条件により異動

3 例外的に外部経験先コース,地域が希望外となった場合には,復帰後の異動について上記よりも有利に取り扱うことがある。
※ 勤務地別の異動条件(当面,外部経験の実施が予定されている地のうち,異動条件の付されているもの)
  東京,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,名古屋,広島,福岡(いずれも「最高裁指定庁」)
※ 留学は地域的異動を伴わないものとして扱う。ただし,留学からの帰国後は,従前の異動条件にかかわらず,「最高裁指定庁」の異動条件が付されたものとして扱う。
※ 地域的異動を伴って民間企業研修又はシンクタンク等における研修をする場合,異動後の配属庁における任期のうち,最初の1年が民間研修,その後が裁判所での勤務となる。
※ 在外公館,法整備支援の海外勤務は派遣地を「東京」とみなす。
※ 「東京・横浜・さいたま・千葉」(各管内を含む。)又は「大阪・京都・神戸」(各管内を含む。)はそれぞれ同一地域とみなす。

第5 判事補の弁護士職務経験実施のスケジュール

平成27年2月24日付の最高裁判所事務総局秘書課文書開示係の事務連絡によれば,判事補の弁護士職務経験実施のスケジュールのうち,平成26年度分は以下のとおりです。

平成25年
12月20日~ 事務所訪問,契約交渉
平成26年
2月4日まで 受入先に関する情報及び契約書案の所長への報告
2月5日まで 弁護士名簿への登録請求
3月上旬ころ 判事補への取決めの提示,同意書等必要書類提出
3月上中旬ころ 入会予定の弁護士会での面談
3月14日まで 雇用契約の締結
3月20日まで 雇用契約書の写しを所長に提出 

第6 判事補の海外留学状況

1(1) 以下の通り,判事補の海外留学状況が分かる文書を掲載しています。
① 平成18年度から平成26年度までの分
② 平成27年度分平成29年6月17日追加
③ 平成28年度分平成29年6月22日訂正
(2) 元データは,最高裁判所裁判官会議における配布資料と思います。

2 海外留学で必要となる,英文(終了・成績)証明書交付願については,「旧司法試験,司法修習及び二回試験の成績分布及び成績開示」を参照してください。

3(1) 現行60期の勝又来未子裁判官の海外留学(1年間,ドイツ・ミュンヘンの知的財産法センターに留学)の体験談が横浜地裁HPの「判事補の研鑽について」(リレーエッセイ「ハマの判事補の1日」(第3回))に載っています。
(2) 新63期の福岡涼裁判官の海外留学の体験談(平成26年7月からの2年間,行政官長期在外研究員として2年間,アメリカに留学)が慶応義塾大学法科大学院HPの「『グローバルに活躍する』第6回 福岡涼君(千葉地方・家庭裁判所)」(平成27年9月17日の記事)に載っています。
(3) 20期判事補であった江田五月の海外留学の体験談(昭和44年7月から昭和45年6月まで,イギリスのオックスフォード大学に留学)が江田五月HPの「出発のためのメモランダム」に載っています。

4 外部ブログの「渉外弁護士の留学-裁判官や検察官との比較-」及び「裁判官の留学と検察官の留学」がある程度は参考になります。細かいことは全く分からないみたいですが。

5 平成17年から平成24年までの,検事の在外研究員等派遣状況が法務省HPの「検事に採用されてから」に載っています。

第7の1 判事補の民間会社研修

1 外部HPの「判決の参考にできる?裁判官の企業研修開始」等によれば,以下のとおりです。
① 昭和62年4月から,1年間の民間会社研修が始まった。
   31期の山下郁夫判事補はソニーに,35期の田中昌利判事補は富士銀行に,30期の出口尚明判事補は三井物産に派遣された。
② 最高裁は,昭和56年に起きた東京地裁破産部の裁判官による「司法汚職事件」を契機に,昭和57年から毎年,若手裁判官を朝日新聞社など報道機関に3週間から4週間派遣,昭和60年からは三菱商事など大手の民間企業にも10日間ほど派遣してきた。
③ 長期研修を断行したのは矢口洪一最高裁長官である。
④ 民間派遣組の身分は東京地裁判事補であり,毎月の給与,交通費,出張費等は全額,裁判所から支出されている。

2 破産事件を担当中,破産管財人である弁護士から,ゴルフクラブ2本,外国製ゴルフ道具1セット,キャディバッグ1個及び背広三つ揃2着の供与を受けた,25期の谷合克行裁判官(対象行為当時,東京地裁判事補)は,昭和56年11月6日に罷免判決を受けました(「分限裁判及び罷免判決の実例」参照)。

3 昭和62年度からの民間企業長期研修等の名簿については,「裁判所,弁護士及び法曹養成関係のデータ」を参照してください。

第7の2 民間企業長期研修中の裁判官の死亡,及び安全配慮義務に関する裁判例等

1(1) 平成20年4月1日から民間企業長期研修として株式会社東芝で研修を行っていた58期の白石裕子裁判官は平成20年10月18日(土)午後2時頃,一人暮らしの官舎で死亡し,同月20日(月)の朝に発見されました「音萌の会会報」HPの「追悼文」参照)。
(2) 株式会社東芝での研修は平成20年度実施分が最後になりました。

2(1) 大阪高裁平成27年1月22日判決(裁判長は30期の森宏司裁判官)は,
   平成19年「5月24日」,兵庫県龍野高校のテニス部の練習中に発生した高校2年生の女子の熱中症事故(当日の最高気温は27度)について,
   兵庫県に対し,「元金だけで」約2億3000万円の支払を命じ,27年12月15日に兵庫県の上告が棄却されました(外部HPの「龍野高校・部活で熱中症,当時高2が寝たきりに 兵庫県に2億3千万円賠償命令確定」参照)。
   その結果,兵庫県は,27年12月24日,3億3985万5520円を被害者代理人と思われる弁護士の預金口座に支払いました(兵庫県の情報公開文書を見れば分かります。)。
(2)   大阪高裁平成27年1月22日判決を読む限り,高校側に何らかの法令違反があったわけではないにもかかわらず,過失相殺すら認められていません。
   また,厚生労働省HPの「職場での熱中症による死亡災害及び労働災害の発生状況(平成24年)」によれば,熱中症による死亡災害の月別発生状況(平成22~平成24年)は,6月が7件,7月が41件,8月が35件,9月が3件であり,5月は1件も発生していないにもかかわらず,兵庫県龍野高校のテニス部事故では,5月に発生した熱中症について予見可能性があると認定されました。
   そして,30期の森宏司裁判官(平成29年4月19日定年退官発令)は平成28年3月7日,大阪高裁民事上席裁判官に就任したことからすれば,安全配慮義務について厳格に考える裁判例は今後も継続すると思われます。
   そのため,民間企業長期研修中の裁判官に何らかの事故があった場合,研修先の民間企業は,結果責任に近い損害賠償責任を負うことになるかもしれません。

3(1) 49期の石村智京都地裁判事が執筆した「労災民事訴訟に関する諸問題について」(-過労自殺に関する注意義務違反,安全配慮義務違反と相当因果関係を中心として-)を掲載している判例タイムズ1425号(平成28年7月25日発売)45頁には以下の記載があります。
   客観的業務過重性が認められる場合には,業務の過重性についての予見可能性と労働者の心身健康を損なう危険についての(抽象的)予見可能性さえあれば(使用者側は,客観的にみて過重な業務を課しているのであるから,通常は,これが否定されることはない。),義務違反及び相当因果関係が肯定される関係にあり,その意味で,この場合においては,精神障害の発症や自殺についての予見がないとの使用者側の主張については,ほぼ失当に近いことになる。しかも,電通事件最判や東芝事件最判の判示によれば,当事者側の事情が過失相殺ないしは素因減額とされる場面はかなり限定され,その適用範囲が審理の中心となるということになろう。
(2)   「過労自殺の労災認定」も参照して下さい。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故(検察審査会を含む。)及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
 
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。